To be continued.

                   
アイリスの気ままに紡ぐダイアリー

蝉しぐれ / 藤沢周平著 : いまだ熟成中。

2005-12-09 18:10:10 | 読書
NHK金曜時代劇 「蝉しぐれ」 映画「蝉しぐれ」
両方とも高い評価を受けているようですね。
どちらも観ていませんが、内容やキャストはなんとなく目にしているので、イメージが邪魔をして本の世界に入りにくくなってしまいました。

時代小説・・・・・・読んだことは、、無いか?
歴史小説、伝奇小説はありますが、違いますしね。

初めのうちは情景描写が多くて、このペースで進んで行くと、途中で放り出してしまうかもと心配になりました。
でも、これがボディブロウのようにジワジワ効いてくるのです。
読み進むにつれて、その光景の中に立っている主人公たちの姿が鮮明に浮かんできます。

五感すべてに訴えてくるものがあります。
これが藤沢周平の世界なのですね。
日本人の佇まいの美しさに感動し、しみじみとした余韻が残ります。
最近のニュースを見ていると、空恐ろしい気持ちになったり、情けない思いでいっぱいになったりします。
ますます殺伐とした世の中になっていくようで、この先が不安です。

物語の舞台は海坂(うなさか)藩、架空の藩名です。
東南西の三方を山に囲まれ、北は海に臨む地にある庄内藩、現在の山形県鶴岡市を基にしていると言われています。
太平洋側に住んでいると、<北に海がある>という事実に違和感を覚えますね。

この作品では、主人公・牧文四郎の少年から大人に成長していく様が見事に描かれています。

友情、淡い初恋、父の非業の死、剣の修行、お家の世継ぎ争い、権力闘争・・・
全てが絡み合いながら広がっていき、最後は一点に終結します。
読み進むにつれて、面白さがどんどん増して行きますよ。

文四郎は理不尽な境遇の中でも、自分を律する高潔な精神と他者を思いやる心を持ち続けています。
剣の道にも精進し、ついに道場の秘剣村雨を伝授されるまでに。
この場面はあっさり描かれていて残念でしたが、剣術の試合は緊張感と躍動感にあふれ、息遣いまで伝わってきそうな素晴らしい描写になっています。

全編を通して、品格を保ちながらも分かりやすく、しかも読み物として面白い。
なかなか無いですよね、そんな作品!

最後の章に、20年後の文四郎とお福さまが描かれています。
心の内に秘めていた想いが、これほど強く熱いものだったとは・・・
こういう形になったのは少しショックでした。

さて、次も藤沢周平で決まりですか。。。


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2 コメント

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素晴らしきかな藤沢文学 (ひろ009)
2005-12-09 20:43:49
こんばんは。



おっ、「蝉しぐれ」読了されましたか。



>日本人の佇まいの美しさに感動し、しみじみとした余韻が残ります。



 藤沢作品の佇まい。ほんとに素晴らしいと思います。

 私はは藤沢作品を評するときによく”凛とした”という表現を使います。

 そんな作家って他にあまりいないんですよね。



>品格を保ちながらも分かりやすく、しかも読み物として面白い。



 そうそう。文章に品があるんですよ。でも、面白いし、暖かさもあり。



映画も観てから原作を読んだ「たそがれ清兵衛」、原作を読んでから映画を観た「隠し剣 鬼の爪」も良かったです。

 ----次にこれを読むべきという意味ではありませんが。









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ハマリそう。 (アイリス)
2005-12-09 23:28:52
早速のコメント、ありがとうございます。

“凛とした”そうですね。新鮮な驚きでした。

母の所から「隠し剣孤影抄」「隠し剣秋風抄」を借りてきました。

これが映画「隠し剣鬼の爪」の原作ですよね。



相変わらず読むよりもアップするのに手間取っていますが、ぼちぼち行きますわ。 
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