脊振山系風力発電計画に動きがあった。1日、佐賀県山口知事は、環境影響評価審査会の審議(7月15日と9月24日開催)を踏まえ、事業者である大和エネルギーに意見書を提出した。意見書では、事業実施想定区域は脊振北山県立自然公園に指定されており、自然環境への影響が懸念されるとし、重大な環境影響等を回避や低減できない場合は、風力発電機の削減もしくは事業計画の見直しを行うよう求めている。また、周辺住民や地元関係者に丁寧に説明し、理解を得るよう求めている。(知事には計画はあり得ないと言ってほしかったが)
意見書を読むと、風力発電によって想定される影響がてんこ盛りである。騒音の問題、影の問題、土壌や河川の水質問題、動物への影響、景観の問題など。最後、設置区域周辺に位置する脊振山系「浮嶽」に触れ、ここに多くの登山者が訪れることから、眺望のよいところ以外についても調査し、地元関係者からも情報収集を行うよう求めている。(いやいや、ここは県の意見を入れるところだろう)
それにしても、これほど多くの懸念材料があるところに、わざわざ風力発電を設置しなければならない理由は何なのか。是が非でもここに設置しなければならない理由は、営利目的以外に何があるのか。全く理解できないが、今後、大和エネルギーは、これらの意見を踏まえ、アセス項目や調査手法を示す方法書の作成に取り掛かる。こうした動きに、糸島市民からは計画見直しを求める声が出ている。一方、設置場所となる唐津市では今のところ動きはない。今後、場所がはっきり示されれば、唐津市民からも反対の声が上がるのではないか。
ちなみに、全国では風力発電計画の撤回や見直しを求める動きが相次いでいる。先月、山形県の霊峰「出羽三山」の風力発電計画が地元の強い反対により撤回された。事業者(前田建設工業)が説明会をはじめて事業内容が明らかになると、全国に反対の声が広がったという。また、青森県十和田市奥瀬の風力発電計画に関しても、「霊山十和田参詣道・十和田古道」の歴史的な景観に甚大な影響を与えるとして、十和田市の市民グループが反対している。(こちらも声を上げないと)
かく言う、脊振山系の「浮嶽」も霊峰である。その歴史的価値を失うことがあってはならないだろう。先月の審議会で、大和エネルギーは住民説明会を開催する意向を示している。同社には、是非とも反対の声に耳を傾けてほしい。
9月24日、佐賀県庁で開催された環境影響評価審査会の様子 写真左が専門委員で反対側が事業者かな? (写真:佐賀新聞より)
手前に浮嶽、画面中央に女岳、奥に二丈岳 ここに巨大な発電機が立ち並ぶ、、(写真:ヤマレコより)
こちらは、風力発電事業実施想定区域図(大和エネルギー資料に加筆)
《流石!和歌山県仁坂知事の意見書 2020.10.13更新》
大和エネルギーは和歌山県でも風力発電計画を進めている。9月3日、仁坂知事は同社に意見書を提出しているが、これがなかなか読み応えがある。地球温暖化により再生可能エネルギーの導入が進められていることに対して、「それはあくまで自然環境や生活環境との調和を前提としたものでなければならず、そうでないものは是認できない」ときっちり述べている。さらに、「事業実施想定区域及びその周辺には、県民の財産として将来にわたり守っていくべき自然環境が形成維持されている」とも述べており、県民への思いがひしひしと伝わる。山口知事の意見書はまるで是認しているかのようだったが。流石、仁坂知事、的を得ている。
・仮称)DREAM Wind和歌山有田川・日高川風力発電事業 知事意見書(2020.9.3.)
《関連記事》
・脊振山系風力、「丁寧な説明を」 事業者に知事意見提出(佐賀新聞 2020.10.1)
・脊振山系の風力発電計画 住民説明会実施へ 糸島の市民団体反発(佐賀新聞 2020.9.25)
・山形・出羽三山周辺の風力発電計画を撤回 業者、反対運動受け判断 (河北新報 2020.9.10)
・十和田古道の景観考慮「風力発電見直しを」(Web東奥 2020.9.1)
《参考資料》
・佐賀県HP。「(仮称)DREAM Wind佐賀唐津風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」に対する知事意見を提出しました(2020.10.1)