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ふたたび博多駅前陥没

2022-03-08 18:30:30 | 博多駅前陥没

5日夜、介護を終えツイッターを見ていて「博多駅前の市道が陥没」という文字が目に留まった。瞬間「またか」と思った。記事を読むと、5日午前11時12分頃、JR博多駅前のはかた駅前通りで、長さ約1m、幅約30㎝、深さ約30㎝の穴が開いているのを通行中のタクシー運転手が見つけ110番。けが人などはなく、県警は同日午前11時35分から約50分間、周辺を交通規制をしたとあった。

福岡市交通局によると、この現場ではNTT電話回線工事が行われていたという。工事業者によると、6年前の大規模陥没の際に断線した電話回線を元のルートに戻す工事を行っていたという。市は、現場は地下鉄七隈線の延伸工事が行われている場所ではないと言っている。本当なのか。現場へ行って確認したいが、時間もないのでメディア各社の写真で確認してみたところ、どうやら大規模陥没の南側100m付近で陥没が発生したようだ。もちろん地下鉄七隈線の延伸工事内である。

今回の陥没場所は、6年前に大陥没した場所ではないが、博多駅前区間であり、陥没原因の一つとして疑われるナトム工法でトンネルを掘削した区間である。大陥没事故の際、埋め戻しの早さが注目された(高島市長は時の人となった)が、国の検討委員会が最終報告書を提出(市にお墨付きを与えて)以降、陥没周辺の地盤への影響など地質調査がされた形跡はない。それゆえ、陥没は気になる。

現在、博多駅前区間では、電車線などの電線路工事が進められており、地下駅舎内では、階段や床のコンクリート打設、配管・配線などの工事が進められている。福岡市は、今年1月、地下鉄七隈線の延伸区間(天神南-博多1.4㎞)を2023年3月に開業すると発表した。当初は20年度を見込んでいたが、大規模陥没でトンネル掘削工事が中断したため2年延期となった。開業まであと1年、無事竣工となるか。

 

 

陥没現場 穴はさほど大きくはないが、、単に作業ミスなのか?(写真:西日本新聞の動画キャプチャー)

 

 

 

 

5日午後0時40分頃、工事は終わっている (左にJR九州ホテルブラッサム博多中央、正面に博多駅 写真:西日本新聞)

 

 陥没場所地図

 

 

こちらは地下鉄七隈線延伸部の地質縦断図(日経コンストラクションより)

6年前、オレンジ丸のところを掘削していた時に大規模な陥没事故が起きた。地質は風化頁岩や砂質頁岩などの軟岩層、岩かぶりは2~3mと薄く、地下水位は地表から2.5mだった。今回の陥没場所(推定)は、そこから約100mほど南側(博多駅側)とみられる。

 

 

 

こちらは現在の工事状況~博多駅区間(写真:福岡市交通局HPより)

電線路工事(櫛田神社前駅~博多駅間トンネル内)

 

 

 

 

土木工事(地下駅舎内、地下1階~地下2階階段)

 

 

 

 

建築・設備工事(地下駅舎内、地下4階の客用便所)

 

 

 

《関連記事》

JR博多駅近くで道路陥没 長さ1メートル、一時交通規制(西日本新聞 2022.3.5/3.8更新)※動画あり

JR博多駅前の市道が陥没 現場付近の道路が一時通行止め(NHK福岡ニュース 2022.3.5)

福岡市地下鉄七隈線 2023年3月に博多駅延伸(西日本新聞 2022.1.7)

 

 

《参考資料》

福岡市交通局・七隈線延伸事業

博多駅前陥没事故現場付近の地質について(産総研・地質調査総合センター 2016.11.10)

 

 


博多駅前陥没事故~再掘削、難所突破

2019-10-08 21:32:52 | 博多駅前陥没

博多駅前陥没事故からまもなく3年、最大の難所である陥没部分の掘削工が完了した。福岡市交通局が今月3日に公開した資料によると、大断面トンネルの掘削工が完了し、これからトンネルの躯体構築を進めていくという。報道はされていないが、大成JVが威信をかけ進めていたナトム区間の再掘削は無事終わっていた。(一時、路面沈下量が増えたので心配していたが)

陥没した大断面トンネル部では、陥没時に中央から掘削していたところを、トンネル頂部から掘削する加背割(頂設導坑先進)に変更していた。また、補助工法として、※先受け工法(AGF工法)を採用し、陥没時より打設のピッチを小さくするなど安全策がとられた。問題の地下水対策は、人工岩盤を造り、浸透距離を約7.5m(陥没時の浸透距離は2m)にするなど浸水対策がとられていた。 (下図参照)

こうした対策で、難所は突破したようだが、工程表をみると、トンネル本体工事は2020年度までかかる。その後、2年かけて施設関連工事が行われ、試運転や検査を経て、問題がなければ2022年度開業することになる。これから下山といったところ。難所の山は下りのほうがリスクは高い。まだまだ気を緩めてはならないだろう。

 

※AGF工法(注入式長尺鋼管先受け工法)とは、掘削断面の上部に鋼管を入れ、薬液を注入することで地山を安定させて掘削するもの。

 

掘削が完了した大断面部トンネル(写真:福岡市資料より) 

 

 

こちらは陥没直前の大断面部トンネル 

 

 

 

掘削工事の様子(写真:福岡市資料より)

 

 

 

 

 支保工仮設材が設置されている(写真:福岡市資料より) 

 

 

 

陥没した部分の再掘削方法(福岡市資料より)

 

 

 

全工程表 なお、陥没事故により50億円もの税金が追加投入されている 詳しくはこちら

 

 

《関連資料》

福岡市交通局。七隈線延伸事業 工事進捗状況

大断面トンネル部の再掘削計画について

地下鉄七隈線延伸事業(天神南〜博多) における開業時期・事業費の⾒直しについて

 

 

 


博多駅前陥没事故~再掘削から1ヵ月、現地は今

2019-08-19 18:30:20 | 博多駅前陥没

博多駅前陥没事故から11月で3年、現場は大詰めを迎えている。今年1月からトンネル内の水抜きがはじまり、その後、土砂撤去が行われていたが7月上旬に無事終了。7月12日から再掘削がはじまり、1ヵ月が過ぎた。今、現地はどうなっているのか。昨日(18日)、博多駅に所用があったので、ちょっと立ち寄ってみることにした。

現地に行くと、車道に設置されていた占用帯が撤去され、通常の状態に戻っていた。陥没したところはアスファルトの色が違うのでわかるが、地上からだと中の様子はわからない。坑内入り口は明治公園横にあるが、当然のことながら中に入ることはできない。福岡市が公表している最新の工事進捗状況(7月31日発表分)をみると、大断面トンネル部の写真が1枚だけ、説明資料はほとんどない。これでは状況はわからない。一歩間違えれば大惨事になっていたような事故を起こしているのだから、再掘削の状況はもっと丁寧に報告すべきだろう。

陥没事故は大断面トンネル部分をナトム工法で掘削している時に起きた。ちょうど横断歩道あたりになるが(下写真)、よく見ると中央部分が凹んでいるのがわかる。何とも不安な気分になるが、大成JVが毎日行っている路面のモニタリング数値に大きな変化はない。ただ、先週あたりから少し沈下量が増えているのが気になる。

今のところ掘削工は問題なく進んでいるようだが、予定では掘削完了まであと2ヵ月程かかる。油断はできない。そういえば、今月9日、天神ビッグバンで福ビル解体中に地下水が天神地下街に流れ込む事故が起きた。原因は調査中でまだ公表されていないが、地下水の脅威は見えないところに潜んでいる証だろう。人工岩盤をつくり補助工法を増強したとはいえ、相手は自然。何が起きるかわからない。

 

撮影日:2019.8.18

陥没現場(写真左が博多駅)

 

 

 

 

 

横断歩道の中央部分が凹(色の変わっているところ) 

 

 

 

 

大断面トンネルのところを掘削中に陥没、横断歩道あたり(福岡市資料より)

 

 

 

 

最新の報告はこれだけ、、(福岡市資料より) 

 

 

 

《関連記事》

博多陥没現場、トンネル掘削がついに再開(日経コンストラクション 2019.7.8)※有料記事

福岡・天神地下街で浸水 ビル解体現場付近から流入か(西日本新聞 2019.8.9) 

 

《関連資料》

福岡市交通局。七隈線延伸事業(随時更新)

福岡市地下鉄七隈線建設工事 博多駅工区(ナトム・人工岩盤掘削区間)に関する情報(毎日更新)

 ・福岡市交通局ナトム区間大断面トンネル部の再掘削着手について(2019.7.11)

福岡地下街開発株式会社。天神地下街東3b階段からの漏水につきまして(2019.8.9) 

 


博多駅前陥没事故から2年2ヵ月、難関工事はじまる~水抜きのリスクとは

2019-01-29 09:58:08 | 博多駅前陥没

衝撃的な陥没事故から2年2ヵ月、今月18日から事故現場では、最大の難関である水抜き工事がはじまった。工事開始から10日余り、今はまだ準備段階のようだが、もうすぐ試験水抜きが行われる。トンネル坑内には1万4,000㎥(1400万リットル)もの水が溜まっており、さらに6,200㎥の土砂が詰まっている。地盤改良されているとはいえ、これらを上手く取り除くのは容易ではないだろう。

先日、福岡市建設技術専門委員会のメンバーでもある、九大三谷教授は「今からはじめる水抜きが一番の肝、ここが上手く進むかどうかによって、今後の計画も変更になる可能性がある。これは本当に慎重にやらなくてはならない作業だ」とコメントされている。さらに、水抜き後の再掘削(ナトム工法)についても「中の状況が以前掘った時とほぼ同じような健全な状況であれば、それなりの工法(ナトム工法)でいけるが、もし、変状が起こっていると工法は変えなければいけない」と工法変更の可能性を示唆されている。福岡市は、ナトム工法にかなりの自信を持っている(というか懲りていない)が、リスクは潜んでいる。そこを三谷教授も指摘されている。

水抜きが上手くいくかどうかは、地盤改良がいかに確実にできているかによる。というのも、地盤改良範囲には、地下約11mに直径約2.5mの雨水幹線が通っており、陥没時に一緒に落ちた信号機や管路なども埋まっている。こうした箇所は、固化材の噴射や撹拌の度合いを適切に設定できず、改良不足になる恐れがあるといわれている。また、岩盤層と改良部の境界部分、いわゆる難透水性風化岩層の改良が上手くいっているかどうか。高圧噴射撹拌工法は、難透水性風化岩層のような比較的固い地盤では効果を発揮しにくいといわれている。これらの改良が上手くいっていなければ、トンネル内の水位と一緒に周辺の地下水位も下がり、上からの水の流れを止められなくなる。そうなると(ここで手を打たなければ)、ふたたび陥没する恐れもある。こうしたリスクは、市民には知らされていない。

高島市長は著書「福岡市を経営する」の中で、陥没事故の対応を安倍首相や世界から称賛されたことを得意げに語っているが、そもそもの原因は福岡市にある。にもかかわらず、その振り返りも、市民への説明も未だになされていない。あり得ない話だが、これが今の福岡市。そんな中で、水抜き工事がはじまる。工期は約2ヵ月。ポンプを使い、溜まった水を下水管に流す。その後、約4ヵ月かけて土砂を撤去、夏頃から再掘削がはじまる。大成JVも威信をかけて臨むだろうが、油断はできない。



立坑の長さは28m、ここからポンプを使って排水する(写真:RKBニュースより 以下同じ)





このイメージ図には書かれていないが、岩盤層と改良部の境に難透水性風化岩層がある





九大三谷教授、御用学者揃いの委員会の中で貴重な存在

 

 

 

 

トンネルの状態はいかに、、(ナトム工法がよくわかる写真)




 

地盤改良、果たして上手くいっているか、、


 

 

 

現在は準備中、来週5日ごろから試験水抜きがはじまる予定(福岡市資料より)





福岡市交通局がウエブで発信している「工事だより」、市民への説明はこれだけ(1月25日)



 

《関連記事》

博多駅前陥没現場で水抜き工事開始 再掘削に向け、福岡市(西日本新聞 2019.1.18)

《関連資料》

福岡市交通局HP。七隈線延伸事業。

大成JV。福岡市地下鉄七隈線建設工事 博多駅工区(ナトム・人工岩盤掘削区間)に関する情報

 


博多駅前陥没事故から2年、掘削に向けた課題

2018-11-09 21:59:29 | 博多駅前陥没

博多陥没事故から2年、市民の関心が薄れる中、昨日、あの衝撃映像が流れていた。それで思い出した方も多かったのではないだろうか。現在、陥没現場では地盤改良工事が行われているが、今のところ工事は順調に進んでいるようで、地盤に大きな変化は見られない。だが、問題はこれから。いろいろ難関が待ち受けている。(報道はされていないが)

福岡市交通局の資料によると、先月末、陥没箇所の地盤改良工事、⾼圧噴射撹拌⼯(地下水の流入を防止する工事)と薬液注⼊⼯(地盤の強度を上げる工事)が完了。現在、その部分のチェックボーリングが行われている。今後はトンネル坑内の地盤改良工事が行われる。 それが終わると、いよいよ水抜き作業がはじまる。報道によると、水抜き作業は年明けからおよそ2か月半かけて慎重に行われるらしい。

ここが難関のひとつ。地下鉄のトンネル内は事故で流れ込んだ地下水で満たされている。その水抜きを行うわけだが、安全に水を抜くためには、地盤改良がどれだけ確実にできるかがポイントになる。というのも、トンネル内の水位と一緒に周辺の地下水位も下がれば、上からの水の流れを止められず、ふたたび陥没する恐れがあるからだ。地盤改良部分の地下約11mのところには、直径約2.5mの雨水幹線が通っている。さらにトンネル崩落時に一緒に落ちた信号機や管路なども埋まっている。こうしたところは固化材の噴射や撹拌の度合いを適切に設定できず、改良不足になる恐れがあると言われている。(だからチェックボーリングを行っているのだろうが)果たして、上手くいくか。

無事に水抜き作業が終われば、トンネルの再掘削(ナトム)工事となる。再掘削は地盤改良が行われているところ(人工岩盤)を掘るわけだが、ここにもリスクはある。岩盤層と改良部の境界、いわゆる難透水性風化岩層がどうなっているかだ。高圧噴射撹拌工法は、難透水性風化岩層のような比較的固い地盤では効果を発揮しにくいと言われている。もしも難透水性風化岩に亀裂が生じればそこが水みちとなり、ふたたびトンネル内に水を引き込む恐れがある。しかも、掘削工法は前回と同じナトム。福岡市は工法に問題はないと自信たっぷりだが、地質が複雑なところだけに油断はできない。順調にいけば、再掘削は来年夏頃からはじまる。ロープウエーどころではない。

 

写真:NHK福岡ニュースより(11月8日放送)

事故当時の様子 

 

 

 

 

 

現在の様子

 

 

 

 

10月31日現在の工事状況(福岡市資料より)

 

 

 

 

再掘削前に説明会をすべきだと思うが (福岡市資料より)

 

 

 

《関連記事》

博多駅前大規模陥没事故から2年(NHK福岡 2018.11.8)

博多陥没2年、トンネル掘削へ準備進む 福岡市長選、当時の対応も争点(西日本新聞2018.11.8)

 

 《関連資料》

福岡市交通局。地下鉄七隈線延伸建設工事における地盤改良工事の状況について(2018.11.1更新)

大成JV。福岡市地下鉄七隈線建設工事 博多駅工区(ナトム・人工岩盤掘削区間)に関する情報