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博多区で連続道路陥没~博多駅前陥没事故との関係は?

2018-08-31 17:46:47 | 博多駅前陥没

29日、博多区で道路が陥没した。一瞬、またかと思ったが、現場は、キャナルシティ博多の近くで、博多駅前陥没場所とは違っていた。穴の大きさは、縦45センチ、横55センチ、深さ2メートル20センチ、かなり深い。と次の日、そこからわずか100mのところで、ふたたび陥没。穴の大きさは、直径10センチ、深さ8センチ、今度は小さいが、博多区で2日連続、道路が陥没する事態となっている。現場は、いずれも博多駅前の陥没事故現場からそう遠くない。(下地図参照)

これは陥没事故と何か関係があるのではないか。そこで、福岡市交通局の資料を見てみると、本日(31日)、地盤改良工事の進捗状況が更新されていた。見ると、陥没箇所への地下水の流入を防ぐために行われていた、高圧噴射撹拌工(陥没範囲の四方を壁で囲む工事)が、今月18日に終了していた。現在は、その機能を確認するためのボーリング調査が行われている。来月中旬からは、薬剤注入がはじまる。このあと、遮水壁で囲んだ範囲の地下水をくみ出して水位を下げ、土砂で積もったトンネル内に改良材を充填して固める。そこをナトム工法で掘削する。まだまだ先は長い。(下図参照)

報道によると、福岡市は、地下にある土砂が地下水の水位の変化などによって固まり、地下に空洞ができたことが原因の1つとしているが、陥没事故現場との関連性は否定している。果たして、そうだろうか。もしかすると、遮水壁が出来たことで地下水の流れが変わったのではないか。地下水は博多湾へ向かって流れていると思われるが、陥没したところで遮蔽され、新たな”水みち”ができているのではないか。

福岡市は今回の陥没について、何一つコメントを出していない。現場の近くには、キャナルシティ博多があり、交通量も多い。ましてや、大陥没の近くで起きているので、多くの市民が不安に思っている。市は、ホームページに掲載するなど、陥没状況や原因についてきちんと説明すべきだろう。今回は偶々、市道で工事をしていた人が穴に気付き事故にはならなかったが、発見が遅れていたらどうなっていたか。博多駅前陥没事故の教訓はどこに? 

 

 

陥没場所 大陥没の近くで起きている

 

 

 

 

 

 現在、陥没個所は遮水壁で囲まれている

 

 

 

《関連記事》

博多区で道路陥没一時通行止め(NHK福岡 2018.8.29)

JR博多駅近く 2日連続で道路陥没(西日本新聞 2018.8.30)

 

《関連資料》

福岡市交通局。地下鉄七隈線延伸建設工事における地盤改良工事の状況について(8.31更新)

 


陥没事故現場 路面沈下?

2018-02-15 17:25:00 | 博多駅前陥没

陥没事故から早いもので1年3か月が過ぎた。最近は殆ど報道されることもなくなったが、現在、現場では再掘削に必要とされる地盤改良のための準備工事が行われている。道路工事などでよく見かける覆工板を設置する工事で、2月末まで行われる予定となっている。

そこで、大成建設が毎日更新している「路面沈下計測状況」を見てみると、今月に入ってから路面沈下量が大きくなっていた。そもそも、このモニタリングは、陥没事故から2週間後、埋め戻した場所がふたたび沈下したことから、路面状況の変化を把握するために始められたもので、薬液注入による地盤改良が終了した後(2016年12月28日)は、平均1~2ミリ程度の沈下量で推移していた。ところが、覆工板設置工事が始まった先月末以降、沈下量に変化が現れた。

沈下量は最大9ミリ、これはこれまでで最高の数値。(建築的には致命的な数値)気になって、昨日、大成建設に確認をしてみたところ、覆工板の下にあるゴムが、このところの寒さで収縮したことによって起きている現象であり、心配することはない(気にしていない)とのことだった。調べてみると、覆工板下部のゴムパットの厚みは10ミリある。これまでも気温の変動によって、1~2ミリ程度の沈下はあったので、それを考慮するとゴム自体の収縮は8ミリ程度ということになる。果たして、これほど縮むものだろうか。

昨日は気温が一気に上昇し(最高気温14度)、春一番が吹いた。そんな中、今日(15日)の沈下量は平均3ミリ、最大9ミリと平均沈下量が微増。大成建設は「心配ない」と言い切っていたが、誰も陥没個所を見ていないのだから、そこで何が起きているかはわからない。それゆえ、今後も路面の状況を注視していきたい。

 

 

 

覆工板設置作業の様子(2018年1月31日現在 福岡市交通局資料より)  

 

  

 

 

 

覆工板詳細図(縮んだのは赤丸印のところ)

 

 

 

 

《関連資料》

福岡市交通局。地下鉄七隈線延伸建設工事における地盤改良工事の状況について(2018.2.1)

 

 

 


博多駅前陥没事故、市民説明会を求める請願 

2017-12-22 19:40:04 | 博多駅前陥没

昨夜のNHK福岡ニュースによると、福岡市は明日(23日)夜から陥没事故現場の工事を再開させるという。どうやら市は、21日から現場周辺の住民のみに説明を行っていたようで、それが終了したところで工事再開と決めていたようだ。先程、交通局のホームページに「地下鉄七隈線延伸建設工事の地盤改良工事の着手について」がアップされた。それによると、明日は午後9時に工事を開始するという。

今月11日、交通局のホームページに「地下鉄七隈線延伸工事における道路陥没箇所の今後の工事の進め方について」が掲載された。今後の工事の進め方について、市民にわかりやすく伝えるために資料をまとめたというものだが、一方的に専門的な内容を図式化されても素人には分かりにくいだろう。ましてや交通局のホームページをこまめにチェックする人などそう多くはいないだろうし、ネット環境にない人もいるだろう。これで市民に説明したつもりでいるとしたら、お門違いというものだろう。

さらに、陥没事故に伴う事業費の増加分は138億円で、総事業費は587億円に上る。これについても、きちんと市民に説明する責任があるだろう。もともとは我々の血税なのだから。今月12日に開会した12月議会の常任委員会(19日)では、七隈線延伸区間の開業を最長2年延期することや事業費増加分についての説明があったようだが、福岡市では委員会のインターネット中継が行われていないので、市民がそれらの内容を確認することはできない。(ちなみに、議事録の公表には2~3か月かかる上、発言者名は△や〇で記載されるので誰が何を言ったかわからない)報道によると、議員からは「誰も責任を取らないで幕引きか」との批判もあったという。

そんな中、福岡市の市民団体「市民の安全・安心を考える会」は19日、「博多駅前陥没事故についての市民に対する説明会を実施することを求める請願」を議会へ提出した。(下参照)福岡市と交通局に対し、建設技術専門委員会や施工者とともに、陥没事故の原因や現状、今後の対策など広く市民に説明し、多くの人々の安全を確保するために説明会を実施するよう求めている。

陥没事故は多くの市民が利用する道路で起きた。死者が出なかったのは運が良かったというよりほかない。それゆえ、工事を再開する前に現場周辺住民に限らず、広く市民に説明をするのは当然のことだろう。福岡市の無責任な体質は相変わらずだが、二度とこのような事故が起きないようにとの思いで、請願に署名をした。まずは、今後の福岡市の動向を注視していきたい。 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 《関連記事》

地下鉄23日にも工事再開へ(NHK福岡ニュース 2017.12.21)

博多陥没処分者ゼロ? 福岡市 識者「法的責任は問えず」(西日本新聞 2017.12.20)

 

《関連資料》

福岡市交通局・七隈線延伸事業

 

 


博多陥没事故~再掘削に潜むリスク

2017-11-18 18:00:04 | 博多駅前陥没

福岡市地下鉄七隈線延伸工事中に起きた陥没事故から1年。福岡市は、11月7日、埋め戻した現場の再掘削工法として事故前と同じナトムの採用を決めた。これについて、土木情報誌・日経コンストラクションは『博多再掘削、なお残る“風化岩”への不安』(11.14)記事の中で「事故から1年を目前に控えたタイミングで決定した計画は、事故で浮かび上がったトンネル崩落のリスクを潰せているかのように見える。不均質な地層の地盤改良には不安が残る」と述べている。これは見逃せない記事なので、詳しく紹介したい。

同誌が再掘削のリスクと位置付けているのは、トンネルを掘削する岩盤層の上端付近に1.9~2.8mの厚さで広がる(岩盤が風化して粘性土化した)難透水性風化岩層。事故前は、トンネル掘削によって生じる地中の変位やひずみに難透水性風化岩層が耐え、すぐ上の砂れき層からの地下水の流入を阻む想定だった。ところが、難透水性風化岩層の厚さや強度が想定を下回っていたため、トンネルの掘削によって難透水性風化岩層に緩みや亀裂が発生し、大量の土砂が地下水とともにトンネル内に流れ込み陥没に至った。そこで、再掘削は、難透水性風化岩層の支持力や止水性に頼らない施工方法として「人工岩盤掘削工法」を採用した。(これについては、先週、さかんに報道されていた)

再掘削の手順は、まず、地盤改良で陥没穴の緩い砂層と周囲の土砂層を固める。改良範囲の四方には、高圧噴射撹拌工法や薬液注入工法で高さ約15mの遮水壁を立ち上げる。周囲からの水の流入を防いだうえで、遮水壁で囲んだ範囲の地下水をくみ出して水位を下げる。次に、崩落によって土砂が積もったトンネル内に改良材を充填して固める。そこをナトム工法で掘削する。(下図参照)

(ここからが重要なところ)安全に掘削するには、地盤改良をどれだけ確実にできるかがポイントになる。しかし、事故で一度崩れた地盤の改良は容易ではないという。 予定されている地盤改良範囲には、地下約11mに直径約2.5mの雨水幹線が通るが、福岡市技術専門委員会はこうした障害物の直下でも、高圧噴射撹拌工法ならば地盤改良できるとみている。しかし、問題は、事前に把握できない障害物が地中にあった場合だと同誌は指摘している陥没範囲には、トンネル崩落時に一緒に落ちた信号機や管路などが埋まっている。こうした箇所は、固化材の噴射や撹拌の度合いを適切に設定できず、改良不足になる恐れがあるというのだ。

さらなるリスクは、岩盤層と改良部の境界、つまり難透水性風化岩層の部分。難透水性風化岩の亀裂などが水みちとなり、トンネル内に水を引き込む懸念があるという。計画では難透水性風化岩層の上半までを高圧噴射撹拌工法で改良し、岩盤に改良体を「根入れ」するとしている。しかし、高圧噴射撹拌工法は難透水性風化岩層のような比較的固い地盤では効果を発揮しにくい。加えて、強度や厚みのばらつきが大きく、十分な強度を持つ改良杭を形成できない恐れもあるという。技術専門委員会の委員の1人は日経コンストラクションの取材に対し、「トンネル内の水を抜くまで、狙い通りの改良ができているかどうかは分からない」「もし、トンネル内の水位と一緒に周辺の地下水位も下がれば、上からの水の流れを止められていないことになる。そうなれば、追加の止水対策を検討せざるを得ない」と打ち明けている

こうしたリスクに対し、福岡市の担当者は「ナトムの補助工法で対応可能だ」と述べている。(補助工法とは、切り羽から斜め前方に鋼管を打ち込んでトンネル天端の崩落を防ぐ注入式長尺鋼管先受け工法のこと)。事故前と異なり、鋼管が薄い難透水性風化岩層を突き破っても大量の地下水がトンネル内に流れ込む危険性は低く、必要な向きや長さで鋼管を施工できると言っている。

以上が記事の要点となるが、やはり気になるのは福岡市のナトム工法への”過信”。国の第三者委員会が市の選定した工法に誤りはなかったと判定したことが背景にあると思われるが、陥没事故の引き金となっていただけに不安は大きい。再掘削にこのようなリスクが潜んでいるのだから、なおさらのこと。福岡市は再掘削前に市民に向けた説明会を開くべきだと思うが、今のところそういった動きはない。

 

 

 陥没直後の穴の様子。崩落時に一緒に落ちた埋設管や電柱、信号機などが陥没範囲の中心部に埋まっているとみられる(日経コンストラクションより)

 

 

  

 

 

 

 地盤改良範囲の横断図。流動化処理土と難透水性風化岩層に挟まれた緩い砂層と周辺の土砂層に高圧噴射撹拌工法で地盤改良を施す(福岡市資料より)

  

 

 

 

 

地盤改良範囲の平面図。陥没範囲の四方を壁で囲むように改良し、周囲からの地下水の流入を防ぐ(福岡市資料より)





 NATMによる再掘削の手順。福岡市技術専門委員会は掘削前にNATMに適した固い地盤を人工的に造る工程も含め、今回の再掘削工法を「人工岩盤掘削工法」と呼んでいる。だから資料にナトムの文字はない。(福岡市資料より)

 


《関連記事》

博多再掘削、なお残る“風化岩”への不安(日経コンストラクション 2017.11.14)※有料記事

 

《関連資料》

福岡市交通局。福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会(H29.11.7)の開催結果について



博多陥没事故~ふたたびナトム工法で

2017-11-11 15:54:18 | 博多駅前陥没

先日、あの衝撃的な映像がふたたび流れていた。博多駅前道路が陥没した日は、ちょうど山口で母の介護をしていたが、あれから早1年。高島市長は事故原因を解明するため、事故直後、国に第三者委員会(検討委員会)の設置を依頼(というか丸投げ)。検討委員会は、今年3月の最終報告会で、事故原因について、高い地下水圧やトンネル上部の岩盤が想定より薄かったことなど複合的に作用し、陥没に至ったと結論付けた。安全性に対する認識の甘さを指摘しつつも、予見は困難だったとして、福岡市や大成建設JVへの責任は言及しなかった。結局、誰も責任を取らないまま、ふたたび工事は再開されることになる。

福岡市は、今月7日、「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」を開催し、トンネル再掘削について、委員会が提言した「人工岩盤掘削工法」を採用すると発表した。NHKは例の映像を流しながら、再掘削は「人工岩盤掘削工法」と報じた。だが、これはおかしい。というのも「人工岩盤掘削工法」は、トンネル上部の軟弱な地盤を強化して掘削することを意味するもので、トンネル本体の掘削工法ではない。怪訝に思い、市が公表した資料を見ると再掘削工法については、非開削工法を前提として討議したとある。つまり、これは「ナトム工法」で再掘削するといっているようなものだが、「ナトム」という文字はひとつもない。

人工岩盤は、地表から機材を地中に差し込み、埋め戻しに使った流動化処理土とトンネル上部の岩盤層の間にある砂層の周辺にセメント系固化剤を高圧で噴射してつくる。トンネル内部に溜まった地下水や土砂も含めて一体的に地盤改良することで、地盤強化と止水効果を確保する。その上で、トンネル本体は、事故前と同様「ナトム工法」で掘削すると、地元紙(西日本新聞)は伝えている。(下図参照)

陥没事故は「ナトム工法」で掘削中に起きた。それで福岡市は意図的に「人工岩盤掘削工法」とだけ明記し、「ナトム」を封印したのではないだろうか。”都合の悪いことは隠す”が常習化している高島市政だから、あり得ない話ではない。谷本大阪大名誉教授(トンネル工学)は「市民の不安は当然。再開にあたっては、専門家を交えた市民目線で分かりやすい公聴会のようなものを開くべきだ」とコメントされている。まさに仰せの通りで、福岡市は再掘削の前にきちんと説明すべきだろう。市民の命がかかっているのだから。

 

《追記 2017.11.14》

本日(14日)、土木専門誌「日経コンストラクション」に、「博多再掘削、なお残る“風化岩”への不安」記事が掲載されている。福岡市が再掘削工法に事故前と同じNATMを採用したことについて、「事故から1年を目前に控えたタイミングで決定した計画は、事故で浮かび上がったトンネル崩落のリスクを潰せているかのように見える」とある。(まさに的を得たご意見だ)さらに、不均質な地層の地盤改良には不安が残ると指摘している。福岡市は強気だが、やはりリスクはあるようだ。中身については、後日、詳しく報告したい。

 

 

陥没は一番奥、重機のあるところで起きた 現在、ここは地下水で満たされている(写真は事故前日、調市議が撮影したもの) 

 

 

 

 

 

建設技術専門委員会、樗木委員長(九大名誉教授)の記者会見 (11月7日 NHKニュースウオッチ9より)   

 

 

 

 

 

西日本新聞が作成したイメージ図 コンクリート吹付部分が「ナトム工法」

 

 

 

 《関連記事》

陥没事故前の工法維持 福岡市地下鉄延伸、地下に人工岩盤 市専門委が結論(西日本新聞 2017.11.8)

追跡:博多陥没1年 再掘削「事故前と同法」 早期工法決定に異論も(毎日新聞 2017.11.7) 

 

《関連資料》

福岡市交通局HP。福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会開催結果について(29.11.7)