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都政改革本部 3施設の見直し提言

2020年03月24日 16時16分42秒 | 東京オリンピック
都政改革本部 3施設の整備見直し提言
 ボート、カヌー・スプリント会場「海の森水上競技場」は、当初計画の7倍の約491億円に膨れ上がった経費に加えて、「一部の競技者が会場で反対している」「大会後の利用が不透明」だとして、宮城県長沼ボート場を代替地に提言した。「復興五輪」の理念にも合致するとしている。
 観客席2万席で設計した水泳会場「オリンピックアクアティクスセンター」は、大会後に74億円をかけて5000席に減らす計画を疑問視し、規模縮小や近くにある「東京辰巳国際水泳場」の活用の検討を提言した。バレーボール会場の「有明アリーナ」は、規模縮小のほか、展示場やアリーナの既存施設の活用を提案した。「有明アリーナ」については、既存施設の「横浜アリーナ」への変更を検討していることが報道されている。
仮設施設整備については、約2800億円に膨れ上がった整備について、国や組織委、東京都の費用負担の見直しにも言及し、都内に整備する仮設施設の内、最大1500億円は都が負担し、都外については「開催自治体か国」が負担するよう提言した。
 また東京都は、組織委に58億5000万円の拠出金を出し、245名もの東京都職員を出向させていることから、組織委を「管理団体」にするなど、都の指導監督を強化する必要性も指摘した。
これに対し、森組織委会長は、「IOCの理事会で決まり総会でも決まっていることを日本側からひっくり返すということは極めて難しい問題」と述べた。
 また海の森水上競技場については、「宮城県のあそこ(長沼ボート場 登米市)が良いと報道にも出ているが我々も当時考えた。しかし選手村から三百何十キロ離れて選手村の分村をつくることはダメなことになっているし経費もかかる。また新しい地域にお願いすればみんな喜ぶに決まっているが、金をどこから出すのか。東京都が代わりに整備するのか。それはできないでしょう法律上」と語った。
 一方、IOCのバッハ会長は、東京五輪の開催費用の増加について、「東京における建設費の高騰はオリンピック計画だけでなく、東日本大震災からの復興などそのほかの理由もあるだろう」とし「建設的な議論をしたい」として柔軟に対応する姿勢で、今後東京都や組織委員会と協議を始める意向を示した。



“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」


2020年1月1日
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廣谷 徹
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新型肺炎 収束期間 五輪開催までに終息しない可能性

2020年03月20日 08時12分29秒 | 東京オリンピック



SARSの感染拡大から終息宣言まで約9か月 五輪開催までに新型肺炎は収束しない可能性
 SARSは2002年11月16日に、中国南部広東省で非定型性肺炎の患者が報告されたの最初で、北半球のインド以東のアジアとカナダを中心に、世界32の地域や国々へ拡大し、感染者数は全世界で8000人を超えた。 
 初期初期には、中国国内で305人の患者(死亡例5人)が発生し、2003年3月 の始めには旅行者を介して、海外に感染が拡大してベトナムのハノイ市での院内感染や、香港での院内感染を引き起こした。
 2002年3月12日、WHOは、全世界に向けて異型肺炎の流行 に関する注意喚起(Global Alert)を発し、本格的調査を開始した。3月15日には、原因不明の重症呼吸器疾患としてsevere acute respiratory syndrome(SARS)と名づけ、「世界規模の健康上の脅威」と位置付けて、異例の旅行勧告も発表した。2003年4月16日、WHOは、起因病原体、新型SARSコロナウイルス(SARS-CoV)を特定した。
 WHOが終息宣言を出したのは2003年7月5日、最初に患者が発見されてから、約9カ月、「Global Alert」を出してから、約4カ月後だった。
 2003年12月31日時点のデータによれば、報告症例数は、2002年11 月〜2003年8月に中国を中心に8,096人で、うち774人が死亡している。1,707人(21%)の医療従事者の感染が示すように、医療施設、介護 施設などヒト−ヒトの接触が密な場合に、集団発生の可能性が高いことが確認されている。


新型コロナウイルス(2019-nCoV)  出典 世界保健機構(WHO) News

 これに対して、今回の新型コロナウイルスは中国・武漢市で感染が広まった。
 武漢市の当局によると、市内で原因不明の肺炎患者が最初に見つかったのは2019年12月8日。その後、発熱や呼吸困難を訴える市民が相次ぎ、専門家グループは2020年1月9日に新型コロナウイルスが検出されたことを発表した。
 市内の海鮮市場で働いている人や訪れた人から感染者が多く見つかったことから、市場で扱われていた動物から感染した可能性が指摘されている。同じくコロナウイルスによる中東呼吸器症候群(MERS)やSARSのようにコウモリが自然宿主で、ヘビやネコ、ネズミなどなんらかの動物を介してヒトに感染した可能性が排除できなとした。
 その後、感染拡大が進み進み、1月11日、武漢市の当局は新型コロナウイルスによる患者は41人に上り、61歳の男性が死亡(1月9日)したことを明らかにした。また夫妻で肺炎を発症した症例で、夫は海鮮市場で働いていたが、妻は市場には行っていないと証言していることから、ヒトからヒトへの感染拡大の可能性があるとした。1月15日、武漢市からの報告を受けてWHOも、患者から新型コロナウイルス(2019-nCoV)を検出したことを確認して、家族間など限定的だがヒトからヒトに感染する可能性を警告した。
 中国政府には、2002~03年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の苦い経験がある。初動の遅れもあり、WHOの報告によると、29の国・地域に感染が拡大し、 中国政府には、2002~03年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の苦い経験がある。初動の遅れもあり、WHOの報告によると、29の国・地域に感染が拡大し、感染者は8,096人に上り、少なくとも774人が死亡した。
 しかし、WHOは、しばらく、感染拡大は限定的であるとして、国際的に懸念される緊急事態(PHEIC)の宣言は出さずに注意喚起に留まった。
 その間に感染拡大が世界的に急速に進み、中国以外22の国と地域で9825人上った。
 WHOがようやく「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern)」を宣言したのは2020月1月30日である。
 緊急事態宣言が出るのは、昨年、コンゴ民主共和国で発生したエボラ出血熱で出されて以来6例目である。
 記者会見したWHOのテドロス・アダノム事務局長は「この数週間で前例のない感染拡大に直面している」と述べ、中国以外でも感染の拡大が止まらないことを判断理由に挙げた。
 しかし、WHOは人の移動や貿易の制限などの勧告には踏み込まず各国に冷静な対応を呼びかけた。偏見や差別を助長する過剰な対応には慎重であるべきだとの見解を示した。しかし、宣言を受け、各国は感染拡大に警戒を強める動きが広がり、中国との往来を禁じたり制約したりする動きが一気に広がった。


新型コロナウイルスの緊急事態宣言を発表するテドロス・アダノムWHO事務局長 (2020年1月30日)   出典 WHO Twitter

 今回の新型コロナウイルスとSARSでは、ウイルスの種類が違いうので必ずしも同列にはできないが、SARSを参考にすると、収束まで最長9カ月を要し、収束するのは「2020年8月」となる。
 2020東京五輪大会の開催期間は、7月24日から8月9日まで、新型コロナウイルスの感染の収束はまだ終わっていない懸念がある。
 世界各国から選手や大会関係者を始め、数百万人の観戦者が来日する。競技会場は数万人の人混みで大混雑、仮に新型コロナウイルスの収束が終わっていない場合には、果たして予定通り、五輪大会を開催できるのだろうか。



新型肺炎感染拡大 東京五輪大会に危機

ジカ熱感染拡大、WHO、緊急事態宣言 ゴルフ選手やテニス選手が不参加



2020年3月20日
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ジカ熱 リオデジャネイロ五輪 

2020年03月13日 15時59分38秒 | 東京オリンピック
ジカ熱、WHO、緊急事態宣言 新生児に小頭症の懸念
 2016年2月1日、ブラジルや中南米を中心に蚊が媒介する感染症「ジカ熱」の拡大を受けて、世界保健機関(WHO)が緊急事態を宣言した。新生児の小頭症との関連が疑われており、妊婦の感染に強く注意を促している。 
 そしてこれから夏を迎える北半球にも感染地域が広がるリスクがあると警告をした。
 ジカ熱は感染者に手足のまひや筋力低下をもたらす神経疾患「ギラン・バレー症候群」を発症させる可能性がある。さらに深刻なのは、ジカ熱に感染した妊婦が出産すると、生まれて生きた新生児が小頭症になる可能性が疑われていることだ。これらの病気とジカ熱の関わりを科学的に証明するのは未だにできないままでいる。WHOは今後1年で最大400万人の感染者が出ると警告している。ワクチンや治療法、簡易な診断法もまだない。
 ブラジルでは昨年からジカ熱の流行が拡大。同時に小頭症の新生児が相次いで生まれるようになった。小頭症と確認されたり疑いがあるとされたりしたのは、2015年10月以降だけで北東部ペルナンブコ州の州都レシフェではブラジル国内で最も多くの感染者が発生されているが、ペルナンブコ州では小頭症と確認されたり疑いがあるとされたりした症例が、2015年10月以降だけで国内最多の1312件に上り、ブラジル国内全体では4000件以上とされている。
 レシフェ市内のある病院では、昨年以降、小頭症の新生児約300人が運び込まれた。レシフェはブラジルでも有数の大都市で、この病院には各地から患者がやってくる。担当医師よると、小頭症の新生児が特に増えたのは昨年9月ごろから。それまで州全体でも小頭症の新生児は年に10人ほどだったが、一時は2週間で30人に達した。1日4人が運ばれたこともあったという。
 ジカ熱が原因とみられる小頭症には、これまでなかった特徴が明らかになり、「従来の小頭症は妊娠5カ月で診断できたが、8カ月になって初めてわかる場合もある。1度の検査だけで安全と言えなくなった」と担当医師は述べているという。

 広く感染が報告されている中南米では、リオデジャネイロ五輪開催を控えるブラジルやホンジュラスが非常事態を宣言するなど、世界各国が対策に動き出している。
 米疾病対策センター(CDC)は専門家チームを現地に派遣し、調査を開始したが。まだ断定はできないが、「ウイルス感染と小頭症の関連が強く示唆される」という。
 CDCによると、米国本土で確認されたジカ熱の発症者は今年1月時点で30人を超え、その後も増え続けている。ほとんどが中南米などで感染し、帰国後に感染が確認された。CDCは流行地域への渡航注意を発令し、特に妊婦は旅行を控えるよう呼びかけている。
 ジカ熱は、感染者との性交渉や輸血でも感染する可能性があることが指摘されている。CDCは、特に妊婦は、感染した可能性がある男性と性交渉する際には、コンドームの使用などを求めている。米赤十字社は、輸血の安全を確保するため、中南米などから帰国した人に対し、旅行後28日間は献血を控えるよう呼びかけている。

 一方、タイ保健省疾病対策局は2日、バンコクの病院でジカ熱に感染した22歳の男性が治療を受けていたことを明らかにした。またロイター通信によると、オーストラリアでも、ハイチから帰国した2人がジカ熱に感染していることが分かった。ニューサウスウェールズ州保健当局が2日、明らかにした。いずれも「感染の拡大はない」と冷静な対応を呼びかけている。

 2月5日に始まったリオデジャネイロのカーニバルでは、世界中から多くの人が集まることから感染拡大が危惧されている。8月には五輪開催も控え、ルセフ・ブラジル大統領は「蚊との戦争」を宣言。軍を動員して蚊の駆除にあたるなど、拡大阻止に全力を挙げている。

リオ五輪の延期を カナダの公衆衛生学の専門家
 こうした中で、カナダ・オタワ大のアミール・アタラン教授(公衆衛生学)は、ブラジルのリオデジャネイロ五輪は「延期するか、開催地を変更するべきだ」とする意見を、2016年5月、米学術誌「ハーバード・パブリックヘルス・レビュー」に寄稿した。
 ジカ熱は、妊婦が感染すると小頭症の赤ちゃんが生まれる原因になるとされ、大人にも手足のまひを起こすと考えられている。アタラン教授は「五輪で世界からさらに50万人の旅行者が訪れ、感染してウイルスを自国に持ち帰れば、世界的な大惨事になりかねない」と警告した。
 教授は過去に比べて2015年以降の流行では重症例が増え、「少し以前に考えられていたよりも危険な病気だ」と指摘。感染が深刻なのはブラジル北東部だとされているが、最新統計によれば、リオデジャネイロでの人口当たりの感染者数は全国で4番目に多く「中心的な流行地域だ」とした。


リオデジャネイロ五輪 ゴルフコース バラ地区 出典 Rio2016

ジカ熱感染拡大でゴルフ選手やテニス選手が不参加を表明
 ブラジルで流行するジカ熱への懸念から、ゴルフなどの競技でトップ選手が8月のリオデジャネイロ五輪への不参加を表明するケースが相次いだ。米国の競泳チームが7月の強化合宿を感染拡大地域のプエルトリコから変更するなど、各国選手団の直前の日程に影響を与えつつある。
 2016年6月、世界ランク4位のロリー・マキロイ選手(アイルランド)が、8月に開催されるリオ五輪に出場しない意向を表明した。マキロイは声明で「熟考を重ねた結果、リオデジャネイロで開催される夏のオリンピックから辞退することを決断した」とコメント。「近親者と話し、自分と家族の健康がなによりも優先されることを認識するにいたった。ジカ熱に感染するリスクは低いとされているが、それでもそれはリスクであり、そのリスクは取りたくない」と述べた。
 一方、松山英樹選手(日本)もブラジルなどで感染が拡大しているジカ熱などへの懸念を理由に、出場を辞退することを明らかにした。
 この中で松山選手は「ジカ熱もあるし、虫に刺されたときのアレルギー反応のしかたがまだよくなっていない。治安の問題もあるし、不安があるところではまだプレーは避けたほうがいいと思った」と、出場辞退の理由を説明した。
 この他 ジカ熱を理由にリオ五輪への不参加を表明したのは、アダム・スコット選手(オーストラリア)、ルイ・ウーストハイゼン選手(南アフリカ)、シャール・シュワルツェル選手(南アフリカ)、マーク・レイシュマン選手(オーストラリア)、ビジェイ・シン選手(フィジー)が、過密日程やジカ熱への懸念などを理由に五輪辞退を表明している。
 ジカ熱は新生児の小頭症や、感染者本人に手足のまひを伴う病気「ギラン・バレー症候群」を引き起こす可能性が指摘されている。ブラジル当局によれば、リオデジャネイロ州の感染者数は全国でも最上位クラス。WHOは妊婦のリオへの渡航を控えるよう警告しており、特に各国代表の女子選手の動向に影響を与えそうだ。
 陸上女子七種競技でロンドン五輪金メダルの英国のジェシカ・エニス・ヒル(30)も、ブラジルでの直前合宿の中止を計画。コーチは「今後も子供が欲しいと思っている」と報道陣に理由を説明した。
 ロイター通信によると、米当局は米国内で279人の妊婦がジカ熱に感染していると発表。うち122人は米自治領プエルトリコで、米競泳代表チームは予定していた直前合宿先をアトランタに変更した。
 テニスのトップ選手の出場辞退も相次いでいる。
 ウィンブルドンで自身初の決勝進出を果たしたラオニッチ(カナダ)や、女子で世界ランク5位のハレプ(ルーマニア)はジカ熱への懸念を理由に出場辞退を発表した。
 またウィンブルドンでベスト4進出したベルディヒは、3大会連続で五輪に出場していたが今回は出場を辞退した。
 その他ティエムやイズナー(アメリカ)、キリオス(オーストラリア)、ガスケ(フランス)も不参加を表明した。

ジカ熱、感染疑い12万人に 
 2016年5月、ブラジル保健省によると、今年1~4月下旬までにジカウイルス感染症(ジカ熱)に感染した疑いがある人が約12万人に達したことを明らかにした。人口10万人あたりで58・8人の感染者数となるという。
 ブラジル国内で感染者が最も多いのは北東部バイーア州で約3万4000人。8月に五輪が開催されるリオデジャネイロ州は、2番目に多い約3万2000となっている。保健省によると、2015年10月以降に小頭症と確認されたのは1434人、3257人が小頭症の疑いがあるとして検査されている。
 しかし、リオ州によると、今年のジカ熱による死者数は5月末時点でゼロ。冬に入って発生件数も激減した。リオ市の調べでは、今年1月に7747件あったジカ熱の感染件数は、6月には510件に減り、ジカ熱の流行は終息に向かっているとした。
 一方、世界保健機関(WHO)は6月14日、リオ五輪について「現時点での評価では、(五輪を)中止したり開催地を変更したりしても、ジカ熱の国際的な流行にはほとんど変化を与えない」との声明を発表し、開催を容認する姿勢を明らかにした。

 南半球は今が冬で、最も気温が下がる季節だ。ブラジルのウイルスの専門家によると、「冬のリオは気温が低く、乾燥するため、蚊は少ない。感染の可能性はほとんどない」と話す。統計によると、リオで今年1月のジカ熱に感染者は7733人。気温が下がるに従って減少し、6月は510人に減った。
 五輪期間中にリオを訪れると予想される外国選手団や観光客は約50万人とされている。感染の仕組みを数学的に分析してきた専門家は、同じく蚊が媒介するデング熱感染者の過去の統計をもとに、「ジカ熱に感染する可能性があるのは、50万人のうちの25人。実際に症状が出るのは5人ほどだ」という。
 「確率的には、リオの街ではジカ熱に感染するよりも、銃撃戦の流れ弾で死亡したり、性的暴行を受けたりする可能性の方が高い」と述べている。(出典 2016年7月31日 朝日新聞)



新型肺炎感染拡大 東京五輪大会に危機



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東京五輪中止 フェイク情報拡散

2020年03月08日 11時59分57秒 | 東京オリンピック



「五輪中止」 フェイク情報拡散


BUZZAP 2019年1月29日

 DPA通信の報道を受けて、情報サイト「BUZZAP」(https://buzzap.jp/news/)は、「東京オリンピック中止か 新型肺炎対策でIOCとWHOが協議」という投稿を1月29日夜に掲載した。
 投稿の内容は以下である。
「東京オリンピックにまたしても暗雲が立ちこめ始めました。詳細は以下から。
 ドイツメディアの報道によると、国際オリンピック委員会(IOC)が世界保健機関(WHO)と連絡を取り合っていることをDPA通信が報じたそうです。
 これは新型コロナウイルスによる新型肺炎対策の一環で、あと半年に迫った東京オリンピックについて『感染症対策は、安全に大会を開催するための重要な要素』としています。
 なお、新型肺炎の発生を受け、サッカーやバスケットボールのオリンピック予選トーナメントが中国から移転済み。
 2002年11月に発生したSARSの終息が2003年7月までかかったこと、新型肺炎がSARSを上回る勢いで感染拡大していることを踏まえると、東京オリンピックに重大な影響が及ぶ可能性はあります。
 その場合、急ピッチで設立した新国立競技場や3兆円にも及ぶ莫大な投資は、無駄になってしまうのでしょうか……。」

 DPA通信が報じた内容は上記の通りで、あくまで「国際オリンピック委員会(IOC)が、東京五輪での新型コロナウイルスによる肺炎対策をめぐり、世界保健機関(WHO)と連絡を取って協議した」ということだが、「BUZZAP」の記事に掲載された「東京オリンピック中止か」という見出しがインパクトあった。
 この情報はまたたく間に拡散し、ツイッターでは5万件以上の関連投稿があり、「東京オリンピック中止」のキーワードはツイッターのランキング上で一時、トップ10入りをするなど注目を集めた。
 これに対し、大会組織委員会は、1月30日、「東京オリンピック中止」の情報を完全に否定した。
 国際オリンピック委員会(IOC)のマーク・アダムス広報担当は、「東京大会は引き続き関係機関と協力し、必要なあらゆる対策を検討する」との談話を発表した。


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五輪開催経費 3兆円! 会計検査院 1兆600億円 五輪予算隠し 青天井五輪予算

2020年02月03日 05時35分43秒 | 東京オリンピック


五輪関連支出、1兆600億円 会計検査院指摘 開催経費3兆円超
2019年12月4日、会計検査院は2020年東京五輪・パラリンピックの関連支出が18年度までの6年間に約1兆600億円に上ったとの調査報告書をまとめ、国会に提出した。この中には政府が関連性が低いなどとして、五輪関連予算に計上していない事業も多数含まれている。検査院は、国民の理解を得るためには、「業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して公表に努めるべき」とし、「大会終了後のレガシーの創出に努めること」と指摘した。

 2018年10月、会計検査院は政府の2020東京五輪大会についての「取組状況報告」に記載された286事業を調査して初めて「五輪関連経費」の調査結果を明らかにして、2017年度までの5年間に国は約8011億円を支出したと指摘した。しかし、大会組織委員会が公表したV3予算では国の負担額は約1500億円、その乖離が問題になった。
 今回、会計検査院が指摘した関連支出額は、前回指摘した8011億円から2018年度の1年間で約2580億円増え、約1兆600億円になったとした。
 大会組織員会では、2018年12月、総額1兆3500億円のV3予算を明らかにしている。それによると、大会組織委員会6000億円、東京都6000億円、国1500億円とし、1兆3500億円とは別枠で予備費を最大3000億円とした。
 東京都は、V3予算とは別に「五輪開催関連経費」として約8100億円を支出することを明らかにしているため、約1兆600億円も合わせると、すでに「五輪関連経費」の総額は約3兆円を優に上回ることが明らかになった。

 これに対して、内閣官房の大会推進本部は指摘された約1兆600億円について、大会への関連度を3段階で分類し、Aは「大会に特に資する」(約2669.億円/65事業)、Bは「本来の行政目的のために実施する事業であり、大会や大会を通じた新しい日本の創造にも資するが、大会に直接資する金額を算出することが困難な事業大会に直接資する金額を算出することが困難」(約6835億円/239事業)、Cは「本来の行政目的のために実施する事業であり、大会との関連性が低い」(約1097億円/42事業)と仕分けし、「五輪関連経費」はAの約2669億円だけだと反論し、残りの「B・C分類」は本来の行政目的の事業などとして、五輪関連経費には当たらないとした。
 しかし、Bのカテゴリーは、「大会や大会を通じた新しい日本の創造にも資する」として五輪開催関連支出でもあることを認めながらが、「直接資する金額を算出することが困難」として金額の算定は困難だからすべてを五輪関連支出としないとしているのは、余りにも乱暴な仕分けである。
 国は、せめて五輪関連支出を、AとBのカテゴリーを合計した約9504億円とするのが適切だと筆者は指摘したい。
 「2669億円」のままでは、会計検査院が指摘した1兆600億円との隔たりは余りにも大きく、国民の納得が得られないだろう。

 会計検査院が指摘した1兆600億円の内訳は、約7900億円が「大会の準備や運営経費」として、セキュリティー対策やアスリートや観客の円滑な輸送や受け入れ、暑さ対策・環境対策、メダル獲得にむけた競技力強化などの経費で占められている。この内、暑さ対策・環境対策が最も多く、2779億円、続いてアスリートや観客の円滑な輸送や受け入れが2081億円となっている。
 2018年度はサイバーセキュリティー対策やテロ対策、大会運営のセキュリティ対策費の支出が大幅に増え、2017年度の倍の約148億円に上った。
 また今回も公表されていない経費が明らかになった。警察庁が全国から動員する警察官の待機施設費用として約132億円が関連予算として公表していなかったと指摘した。
 さらに会計検査院は大会後のレガシー(遺産)を見据えた「大会を通じた新しい日本の創造」の支出、159事業、約2695億円を「五輪関連経費」とした。
 被災地の復興・地域の活性化、日本の技術力の発信、ICT化や水素エネルギー、観光振興や和食・和の文化発信強化、クールジャパン推進経費などが含まれている。
 こうした支出はいずれも政府は「五輪関連経費」として認めていないが、政府予算の中の位置づけとしては「五輪関連予算」として予算化されているのである。
 問題は、「五輪便乗」予算になっていないかの検証だろう。東日本大震災復興予算の使い方でも「便乗」支出が問題になった。次世代のレガシーになる支出なのか、無駄遣いなのかしっかり見極める必要がある。
 その他に国会に報告する五輪関連施策に記載されていないなどの理由で非公表とされた支出も計207億円あり、五輪関連支出の不明朗な実態の一部が明らかになった。
 検査院はオリパラ事務局を設置している内閣官房に対し、「オリパラ事務局は、国が担う必要がある業務について、各府省等から情報を集約して、業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して公表することについて充実を図っていくこと」と指摘して、各府省から情報を集約、業務内容や経費を把握して公表するよう求めた。
 内閣官房は「指摘は五輪との関連性が低いものまで一律に集計したものと受け止めている。大会に特に資する事業についてはしっかりと整理した上で分類を公表していきたい」としている。






出典 会計検査院




「レガシー経費」は「五輪開催経費」
 国際オリンピック委員会(IOC)は、開催都市に対して、単に競技大会を開催し成功することだけが目的ではなく、オリンピックの開催によって、次の世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略を強く求め、開催都市に対して、レガシー(Legacy)を重視する開催準備計画を定めることを義務付けている。大会開催は、大会開催運用経費や仮設の施設だけでは不可能である。幅広い「レガシー経費」で支えなければなければならない。
 レガシーを実現する経費、「レガシー経費」は、開催都市に課せられた「五輪開催経費」とするのが当然の帰結だ。
 五輪大会は、一過性のイベントではなく、持続可能なレガシー(Legacy)を残さなければならないことが開催地に義務付けられていることを忘れてはならない。

 政府は「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(Bカテゴリー)は「五輪開催経費」から除外したが、事業内容を見るとほとんどが「レガシー経費」に入ることが明らかだ。
 気象衛星の打ち上げ関連費用も首都高速などの道路整備費も水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費も、ICT化促進や先端ロボット、自動走行技術開発、外国人旅行者の訪日促進事業、日本文化の魅力発信、アスリート強化費、暑さ対策、バリアフリー対策、被災地の復興・地域活性化事業、すべて2020東京大会のレガシーとして次世代に残すための施策で、明らかに「レガシー予算」、「五輪開催予算」だろう。被災地関連予算も当然だ。2020東京五輪大会は「復興五輪」を掲げているのである。

 一方、新国立競技場は「大会の準備、運営に特に資する事業」に分類し、「五輪開催経費」だとしている。しかし、国立競技場は大会開催時は、開会式、閉会式、陸上競技などの会場として使用されるが、その期間はオリンピックで17日間、パラリンピックで13日、合わせて30日間にすぎない。ところが新国立競技場は大会開催後、50年、100年、都心中心部の「スポーツの聖地」にする「レガシー」として整備するのではないか。 
 国の「五輪開催経費」仕分けはまったく整合性に欠け、ご都合主義で分類をしたとしか思えない。五輪大会への関与の濃淡で、恣意的に判断をしている。「レガシー経費」をまったく理解していない姿勢には唖然とする。
 東京都が建設するオリンピックアクアティクスセンターや有明アリーナ、海の森水上競技場なども同様で、「レガシー経費」だろう。しかし、この経費は五輪開催経費に算入されている。

 通常の予算では通りにくい事業を、五輪を「錦の御旗」にして「五輪開催経費」として予算を通し、膨れ上がる開催経費に批判が出ると、その事業は五輪関連ではなく一般の行政経費だとする国の省庁の姿勢には強い不信感を抱く。これでは五輪開催経費「隠し」と言われても反論できないだろう。
 2020東京大会のレガシーにする自信がある事業は、正々堂々と「五輪開催経費」として国民に明らかにすべきだ。その事業が妥当かどうかは国民が判断すれば良い。
 東京都は、「6000億円」のほかに、「大会に関連する経費」として、バリアフリー化や多言語化、ボランティアの育成、「大会の成功を支える経費」として無電柱化などの都市インフラ整備や観光振興などの経費、「8100億円」を支出することをすでに明らかにしている。国の姿勢に比べてはるかに明快である。過剰な無駄遣いなのか、次世代に残るレガシー経費なのか、判断は都民に任せれば良い。

 「3兆円」、かつて都政改革本部が試算した2020東京オリンピック・パラリンピックの開催費用の総額だ。今回の会計検査院の指摘で、やっぱり「3兆円」か、というのが筆者の実感だ。いまだに「五輪開催経費」の“青天井体質”に歯止めがかからない。

肥大化批判に窮地に立つIOC
 巨額に膨らんだ「東京五輪開催経費」は、オリンピックの肥大化を懸念する国際オリンピック委員会(IOC)からも再三に渡って削減を求められている。
膨張する五輪開催経費は、国際世論から肥大化批判を浴び、五輪大会の存続を揺るがす危機感が生まれている。
巨大な負担に耐え切れず、五輪大会の開催都市に手を上げる都市が激減しているのである。2022年冬季五輪では最終的に利候補した都市は、北京とアルマトイ(カザフスタン)だけで実質的に競争にならなかった。2024年夏季五輪でも立候補を断念する都市が相次ぎ、結局、パリとロサンゼルスしか残らなかった。
2014年、IOCはアジェンダ2000を策定し、五輪改革の柱に五輪大会のスリム化を掲げた。そして、2020東京五輪大会をアジェンダ2000の下で開催する最初の大会として位置付けた。
 「東京五輪開催経費」問題でも、問われているのは国際オリンピック委員会(IOC)である。「開催経費3兆円超」とされては、IOCは面目丸潰れ、国際世論から批判を浴びるのは必須だろう。
 こうした状況の中で、「五輪開催経費」を極力少なく見せようとするIOCや大会組織委員会の思惑が見え隠れする。
 その結果、「五輪経費隠し」と思われるような予算作成が行われているという深い疑念が湧く。
 V3「1兆3500億円」は、IOCも大会組織委員会も死守しなければならい数字で、会計検査院の国の支出「1兆600億円」の指摘は到底受け入れることはできない。
 「五輪開催経費」とは、一体なになのか真摯に議論する姿勢が、IOCや大会組織委員会、国にまったく見られないのは極めて残念である。

どこへ行った「コンパクト五輪」
 筆者は、五輪を開催するためのインフラ整備も、本当に必要で、大会後のレガシー(遺産)に繋がるなら、正々堂々と「五輪開催経費」として計上して、投資すべきだと考える。
 1964東京五輪大会の際の東海道新幹線や首都高速道路にように次の世代のレガシー(遺産)になる自信があるなら胸を張って巨額な資金を投資して整備をすれば良い。問題は、次世代の負担になる負のレガシー(負の遺産)になる懸念がないかである。また「五輪便乗」支出や過剰支出などの無駄遣いの監視も必須だろう。そのためにも「五輪開催経費」は、大会への関連度合いの濃淡にかかわらず、国民に明らかにしなければならい。
 2020東京五輪大会は招致の段階から、「世界一コンパクトな大会」の理念を掲げていた。大会の開催運準備が進む中で、開催経費はあっという間に、大会組織員会が公表する額だけでも1兆3500億円、関連経費も加えると3兆円を超えることが明らかになった。
 新国立競技場の建設費が3000億円を超えて、白紙撤回に追い込まれるという汚点を残したことは記憶に新しい。「錦の御旗」、東京五輪大会を掲げたプロジェクトの予算管理は往々にして甘くなる懸念が大きく、それだけに経費の透明性が求められる。
 2020年度の予算編成が本格化するが、まだまだ明るみに出ていない「五輪開催経費」が次々に浮上するに違いない。全国の警察官などを動員する史上最高規模の警備費やサイバーセキュリティー経費などは千億円台になると思われる。さらに30億円から最大100億円に膨れ上がるとされている暑さ対策費や交通対策費も加わる。一方、7道県、14の都外競技場の仮設費500億円は計上されているが350億円の警備費や輸送費(五輪宝くじ収益充当)、地方自治体が負担する経費は計上されていない。マラソン札幌開催経費もこれからだ。最早、「3兆円」どころか最大「4兆円」も視野に入っている。
 「コンパクト五輪」の理念は一体どこへ行ったのか。


竣工したした国立競技場  筆者撮影



東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011億円支出 会計検査院指摘

 2018年10月4日、会計検査院は2020東京オリンピック・パラリンピックの開催経費ついて、平成25年度から29年度までの5年間に国が支出した開催経費が約8011億円に上ったと指摘した。
 これまで大会組織委員会が明らかにしていた開催経費は、総額約1兆3500億円で、このうち大会組織員会は約6000億円を、東京都が約6000億円、国が新国立競技場の建設費の一部、1200億円やパラリンピック経費の一部、300億円の合わせて約1500億円を負担するとしていた。
 これに対し会計検査院は、各省庁の関連施策費を集計した結果、国は1500億円を含めて平成25~29年度に8011億9000万円を支出していると指摘した。
 今回の指摘で、組織委が公表した国の負担分1500億円から除外した競技場周辺の道路輸送インフラの整備(国土交通省)やセキュリティー対策(警察庁)、熱中症に関する普及啓発(環境省)などの約280事業に対し、約6500億円が使われていたことが明らかにした。
 五輪開催費用については、今年1月、東京都は組織委公表分の都の予算約6000億円とは別に約8100億円を関連予算として支出する計画を明らかにしている。検査院によると、組織委が公表した予算、1兆3500億円には「大会に直接必要なもの」に限られ、国の省庁や都庁が、五輪開催経費とせず、一般の行政経費として組んだ予算は含まれていないという。
 組織員会、東京都、国の五輪関連経費を改めて合計すると、約2兆8100億円となり、今後に支出が予定される経費も含めると、「3兆円」超は必至である。




出典「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院

東京2020競技会場マップ 最新画像付き




五輪大会開催経費 「1725億円」 国、会計検査院に反論

 11月30日、桜田義孝五輪担当相は、2020東京五輪大会に、国が2013~2017年の5年間に支出した経費は53事業で「1725億円」とする調査結果を公表した。会計検査院の「8011億円」という指摘に対し、内閣官房が精査した。
 桜田氏は、五輪関係の経費とそれ以外の経費の線引きを明確に示したと説明し、「透明性を確保し、国民の理解を得るために今後も支出段階で集計、公表していく」と述べた。
 2020東京五輪大会に開催経費については、2017年12月22日、大会会組織委員会は、総額「1兆3500億円で、東京都が「6000億円」、大会組織委員会が「6000億円」、国が「1500億円」を負担するとした。
 これに対し、11月4日、会計検査院は「1500億円」を大幅に上回る「8011億円」が、すでにこの5年間で支出されたとの指摘を国会に報告し、政府に経費の全体像を分かりやすく示すよう求めた。

 東京都は、すでに「8000億円」の他に、五輪関連経費として「8100億円」を投入することを明らかにしていて、会計検査院の指摘の「8011億円」や、今後支出する経費も加えて試算すると、「3兆円」に膨れあがることが明らかになった。
 
 内閣官房では、大会に関連すると指摘された計8011億円の286事業について、(1)選手への支援など「大会の準備、運営に特に資する事業」(1725億円)(2)気象衛星の打ち上げなど「本来の行政目的のために実施する事業」(826億円)(3)道路整備など「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(5461億円)の三つに分類し、五輪大会開催のための国の支出は(1)の「1725億円」だとした。

 (1)には、新国立競技場の整備費の国の負担分(744億円)やパラリンピックの準備費(300億円)が、(2)は気象衛星の打ち上げ関連費用(371億円)など29事業、826億円が含まれている。
 (3)は首都高速などの道路整備費(1390億円)、水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費(569億円)など208事業で合わせて5461億円と大半を占めている。
 このほか、会計検査院が指摘した8011億円に含まれていないが、大会に直接関連する事業として国立代々木競技場など5施設の整備や改修のための国庫補助金を直近5年間で約34億円支出したと明らかにした。
 しかし、五輪大会開催経費を「1725億円」する国の主張は、明らかに「五輪経費隠し」、膨れ上がった五輪開催経費をなるべく低く見せかけて、世論の批判をかわそうとする姿勢が見え隠れする。

「1725億円」は五輪開催経費隠し 国、会計検査院に反論 青天井体質に歯止めがかからない

“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」




「青天井体質」は止まらない!
 やはり懸念していた通り、一気に「1兆3500億円」の倍以上に膨らむことが明らかになった。五輪開催経費は、国民の批判を避けるために、本来は経費に含めるのが妥当な支出も、一般の行政経費に潜らせる国や都の姿勢を筆者は疑問視していた。五輪開催経費を不透明化しブラックボックスにして、「青天井体質」を許すのは絶対に避けなければならない。
 「3兆円」の経費の中には、五輪との関連性が薄い施策があり、開催経費とするよ、一般の行政投資とするのが適切だと指摘する声がある。しかし、五輪開催との関連性の「濃淡」の問題で、その施策がもっぱら五輪開催ためだけではなくて、大会後の日本にとって有益な施策であったにしても、大会開催時に利用される項目であれば五輪開催経費に組み入れるべきだと考える。これが五輪開催の“レガシー”で、“レガシー”創出経費も含めるべきだ。新国立競技場も、五輪開催だけのものではない。その後、50年、100年使用する“レガシー”そのものだろう。同様に暑さ対策に役立つとしている「気象衛星の予測精度向上の費用」(約371億円)や環境に配慮した五輪実現のためとする「電気自動車などの購入補助金」(約568億円)、「無電柱化の促進」、「天然痘ワクチン対策事業」、「エネファーム実用化推進技術開発」など、すべて五輪開催を契機として実現させる2020東京大会の“レガシー”である。なぜ新国立競技場は五輪開催経費に組み入れて、その他は除外するのかまったく理解に苦しむ。 真に次世代の“レガシー”にする施策であれば、各省庁は胸を張って堂々と支出の必要性を主張して、国民の納得を得れば良い。「隠し立て」する必要はまったくない。要は説明性の問題だ。
 一方で、五輪の便乗支出も大量に生まれていると思われる。五輪開催を「錦の御旗」にして、なりふり構わず予算獲得に奔走した省庁の姿が見え隠れする。東日本大震災の復興予算の際も、その予算項目が本当に被災地の復興に役立つのか、疑問視される項目が続出したのは記憶に新しい。
 
「五輪便乗」? すべての施策を精査する必要
 会計検査院では、「大会の円滑な準備・運営に資する」関連施策(8分野45施策)と「大会を通じた日本の創造」資する関連施策(7分野45施策)に分けて各省別にリストアップしている。
 「大会の円滑な準備・運営」に資する関連施策では、セキュリティーの万全と安全・安心の確保(10施策)、アスリート、顧客等の円滑な輸送及び外国人受け入れ対策(13)、暑さ対策、環境問題への配慮(3)、メダル獲得に向けた競技力の強化(4)、アンチ・ドーピング対策の体制整備(4)、新国立競技場の整備(1)、教育・国際貢献等によるオリンピックムーブメントの普及、ボランティア等の機運醸成(4)、その他(9)の合計148事業、5879億1300万円(平成25年~29年)とした。
 項目を見る限り、「濃淡」に差はあると思えるが、すべてが東京五輪開催経費そするのが当然だろう。この経費は、組織委員会は、「直接経費ではない」として、除外している。また、個別の施策は詳細に精査し、「五輪便乗」の不要な施策かどうかもチェックしなければならないだろう。 




出典「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院


 一方、「大会を通じた新しい日本の創造」に資する関連施策では、「被災地の復興・地域の活性化」(4施策)、「日本の技術力の発信」(7)、「外国人旅行者の訪日促進」(2)、「日本文化の魅力発信」(4)、「スポーツ基本法が目指すスポーツ立国の実現」(1)、「ユニバーサルデザイン・心のバリアフリー」(5)の136事業、2330億180万円としている。
 「大会の円滑な準備・運営」の施策とは明らかに有意差があって、ほとんどが五輪開催をきっかけに事業がする必要があるかどうかの疑念がある。「日本の技術力の発信」、「外国人旅行者の訪日促進」、「日本文化の魅力発信」は、今の日本の成長戦略の骨格で、毎年、各省庁は最優先で取り組みを進め、しっかり予算化している。五輪開催に合わせてさらに何を事業化しようとしてるのだろうか。「スポーツ基本法が目指すスポーツ立国の実現」や「ユニバーサルデザイン・心のバリアフリー」も継続して取り組んでいる課題だろう。「五輪便乗」の「無駄遣い」になっていないだろうか。その成果は大会開催後、しっかり精査すべきだ。










会計検査院の検査結果に対する所見は?
▼ 大会組織員会
 国が担う必要がある業務について国民に周知し、理解を求めるために、大会組織委員会が公表している大会経費の試算内容において国が負担することとされている業務や、オリパラ事務局がオリパラ関係予算として取りまとめて公表している業務はもとより、その他の行政経費によるものを含めて、大会との関連性に係る区分及びその基準を整理した上で大会の準備、運営等に特に資すると認められる業務については、各府省等から情報を集約して、業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して、対外的に示すことを検討すること

▼ JSC
 JSCは、新国立競技場の整備等の業務に係る確実な財源の確保等のために、財源スキームに基づく東京都の負担見込額395億円について東京都と協議を進めて、速やかに特定業務勘定への入金時期等を明確にするなどしていくこと
 (JSCの財政状況については、会計検査院は懸念を示している)

▼ 新国立競技場 
 早期に新国立競技場の大会終了後の活用に係る国及びJSCの財政負担を明らかにするために、JSCは、大会終了後の改修について文部科学省、関係機関等と協議を行うなどして速やかにその内容を検討して、的確な民間意向調査、財務シミュレーション等を行うこと、また、文部科学省は、その内容に基づき民間事業化に向けた事業スキームの検討を基本的考え方に沿って遅滞なく進めること
 (新国立競技場の大会開催後の維持管理には課題が多いと指摘している)

▼ 地方自治体
 大会の関連施策を実施する各府省等は、大会組織委員会、東京都等と緊密に連携するなどして、その実施内容が大会の円滑な準備及び運営並びに大会終了後のレガシーの創出に資するよう努めること。また、オリパラ事務局は、引き続き大会の関連施策の実施状況について政府の取組状況報告等の取りまとめにより把握するとともに、各府省等と情報共有を図るなどしてオリパラ基本方針の実施を推進すること

 会計検査院としては、大会が大規模かつ国家的に特に重要なスポーツの競技会であることなどに鑑み、要請後、大会の準備段階のできるだけ早期に、大会の開催に向けた取組等の状況及び各府省等が実施する大会の関連施策等の状況について分析して報告することとした。そして、今後、大会の開催に向けた準備が加速化し、32年には大会の開催を迎えることになることから、引き続き大会の開催に向けた取組等の状況及び各府省等が実施する大会の関連施策等の状況について検査を実施して、その結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。


 会計検査院の指摘に関して大会関係者は、「関連するにしてすべて五輪経費として積み上げるのはおかしい」とか「数字が一人歩きしているだけで、これで無駄遣いしていると思われたらミスリードになる」など、反発する声が上がっているとされている。
 しかし、五輪開催経費は、五輪開催との関連性の「濃淡」に関わらず、組織委や東京都や国はすべてを明らかにすべきだ。そして国民に対しその施策の必要性を説明する責任を負うだろう。その上で、その支出項目が無駄遣いなのか、妥当なのかどうかは国民が判断していくべきだ。全体像の実態が見えなければ経費膨張のコントロールも不可能で、五輪開催経費の「青天井体質」は止められない。



“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
 

2018年10月23日
Copyright (C) 2018 IMSSR


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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail
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imssr@a09.itscom.net
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東京オリンピック 競技会場 競技場 最新情報 東京ベイゾーン ヘリテッジゾーン 世界一コンパクトな大会 (上)

2020年01月24日 16時59分58秒 | 東京オリンピック
膨張する開催経費 
どこへいった五輪開催理念 “世界一コンパクトな大会”(上)
最新情報 東京2020 競技会場の全貌





新国立競技場 工事順調90%完成 芝生張り、陸上トラック工事に着手 12月21日にオープニングイベント 元旦の天皇杯サッカー開催



新国立競技場迷走 「陸上の聖地」復活か? 球技専用撤回へ

海の森水上競技場、完成披露式典開催
 2019年6月16日、2020東京五輪大会でボート・カヌー会場となる海の森水上競技場の完成披露式典が行われた。小池百合子都知事が「(五輪では)世界最高峰の試合が繰り広げられ、連日、世界中の多くの方々に感動を与えると確信している。大会後も、様々なイベントで活用していきたい」とあいさつした。
 ボート・カヌー会場はもともと新設予定だったが、小池知事が見直しを表明し、大会コスト削減のため、宮城県の長沼ボート場への変更が検討したが、施設の一部を仮設にするなどして、試算段階で約490億円だった整備費を約310億円に削減して新設された。
 大会後は、国際大会や国内大会など年間30大会や水上スポーツ体験や水上レジャーのイベントを開き、来場者数を年間約35万人と見込むが、収支は約1億6千万円の赤字としている。




出典 日本ボート協会



 2020東京オリンピック・パラリンピックの競技は、1964年の東京オリンピックでも使用された代々木競技場や日本武道館など過去の遺産を活かした「ヘリテッジゾーン」と、有明・お台場・夢の島・海の森など東京湾に面した「東京ベイゾーン」を中心開催する計画である。
 選手村から半径8キロメートルの圏内に85%の競技会場を配置するという「世界一コンパクトな大会」がキャッチフレーズだったが、相次ぐ「建設中止」や「会場変更」で、「世界一コンパクトな大会」は完全に消え去った。
 競技会場は、「既存施設」と「新設」があり、「既存施設」については改修や増設工事が伴う場合があり、「新規建設」は「恒久施設」と「仮設施設」に分けられている。
 2018年5月2日、国際オリンピック委員会(IOC)は、スイス・ローザンヌで開いた理事会で最後に残ったサッカー7会場を一括承認し、43競技会場がすべて決まった。
 この内、オリンピッックは42会場、パラリンピックは21会場(ボッチャ競技のみ幕張メッセCをパラリンピック単独会場として使用 その他はオリンピックと共通競技会場を使用)である。
 オリンピックで開催される競技数は、東京大会組織委員会が提案した追加種目、5競技18種目を加え、合計競技数は33競技、種目数は339種目で、選手数の上限を11,900人とすることが決定されている。一方、パラリンピックは22の競技が開催される。
 今回承認されたサッカー会場は、札幌ドーム、宮城スタジアム、茨城カシマスタジアム、埼玉スタジアム、横浜国際総合競技場、新国立競技場、東京スタジアムの7会場で、決勝は男子が横浜国際総合競技場、女子は新国立競技場で開催する。。
 また復興五輪のシンボルとなる野球・ソフトボールの福島あづま球場での開催も承認され、野球とソフトボールそれぞれ1試合(日本戦)を行う。
 43の競技会場の内、新設施設は18か所(恒久施設8/仮設施設10)、既設施設は25か所(内改修17)、既設施設の利用率は約58%となり、大会組織委員会では既存施設を最大限利用したと胸を張る。
 しかし、競技会場の決定に至る経過は、相次いだ迷走と混迷繰り返した結果であった。
* 2019年11月、四者協議で、暑さ対策でIOCの要請によりマラソンと競歩の札幌開催が決まった。

東京2020大会全競技会場マップ 最新詳細情報 必見!テストイベント開催(画像付き)

2020恒久施設(新設)の競技場

 2020東京大会競技場の「新設」(恒久施設)は、6万8000人収容可能なスタジアムへ建て替えられる「新国立競技場」(オリンピックスタジアム)を始め、東京アクアティックセンター(水泳・飛び込み・アーティスティクスイミング)、有明アリーナ(バレーボール)、海の森水上競技場(ボート、カヌー)、大井ホッケー競技場、夢の島公園アーチェリー場、カヌー・スラロームセンター、武蔵野の森総合スポーツプラザ(バドミントン 近代五種[フェンシング])の8施設である。
 国が建設するのは新国立競技場だけで、7か所の施設整備は東京都が担当し約1828億円で整備を行う。但し、新国立競技場については東京都も整備費総計約1849億円(本体工事と関連経費を含む)の内、約448億円を負担することが決まっている。

迷走を重ねた新国立競技場
 競技場の整備経費については、新国立競技場は国(主管は日本スポーツ振興センター[JSC])、その他の恒久施設は東京都、仮設施設は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会が責任を持つことが決められていた。
 「新国立競技場」は、2012年にデザイン競技公募を開始した際は、総工費は「1300億円を目途」としていたが、斬新な流線型のデザインのザハ・ハディド案が採用され、施工予定者のゼネコンが総工費を見積もると「3088億円」に膨張することが判明し、世論から激しい批判を浴びた。
 2015年7月、開閉式の屋根の設置の先送りなど設計見直しを行い「2520」億円に圧縮したが、それでも当初予定の倍近い額となり批判は一向に収まらず、ザハ・ハディド案の白紙撤回に追い込まれた。最終的に、安倍首相が収拾に乗り出し、2015年8月、屋根の設置を止めたり観客席の規模を見直すなどして総工費を「1550億円」(上限)とすることで決着した。迷走に迷走を繰り返して醜態を演じたのは記憶に新しい。
 2015年9月、新たな整備計画に基づき、総工費と工期を重視した入札事業者向けの募集要項を公開し、公募を開始した。
 新整備計画では、開閉式の屋根は止めてコンサートやイベントなども開催する「多目的利用」は放棄され、陸上競技やサッカー、ラグビーなどの競技スタジアムへ転換することを打ち出した。
 観客席は五輪開催時には約6万8000席(旧国立競技場 約54000席)とし、五輪後にはFIFA ワールドカップの開催も可能にするために観客席を陸上トラック上部に増設して8万席以上確保する。屋根は観客席全体(8万席拡張時を想定)を覆う固定式とした。建物の最高高さは70メートル以下、フィールドを含む面積は約19万4500平方メートル(同7万2000平方メートル)で、旧整備計画の約22万4500平方メートルから約3万平方メートル削減するとした。
 公募には、大成建設を中心に梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループと、竹中工務店、清水建設、大林組の3社の共同企業体と日本設計、建築家の伊東豊雄氏で構成するグループが応募した。
 2015年12月22日、審査の結果が公表され、「木と緑のスタジアム」をコンセプトにした大成建設、梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループが選ばれた。
 木材と鉄骨を組み合わせた屋根で「伝統的な和を創出する」としているのが特徴のデザインで、地上5階、地下2階建て、スタンドはすり鉢状の3層にして観客の見やすさに配慮する。高さは49・2メートルと、これまでの案の70メートルに比べて低く抑え、周辺地域への圧迫感を低減させた。
 総工費は約1490億円、完成は2019年11月末としている。当初目指したラグビーワールドカップ2019の開催は断念した。


出典 Olympic Channel

「新国立競技場」はサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに 「陸上競技の聖地」の夢は無残にも消えた
 2017年11月14日、「新国立競技場」の整備計画を検討する政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)は14日、五輪大会後はサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに改修する計画案を了承した。22年後半の供用開始をめざす。
 計画案では、大会後に陸上競技のトラックをなくし、収益性を確保するため、観客席を6万8千席から国内最大規模の8万席に増設する。
 運営方針として、(1)サッカーのワールドカップ(W杯)の招致にも対応できる規模の球技専用スタジアムに改修し、サッカーやラグビーなどの日本代表戦や全国大会の主会場とするともに、国際大会を誘致する。(2)イベントやコンサート、子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会等を積極的に開催する(3)運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入し、契約期間は10~30年間を想定して、20年秋頃に優先交渉権者を選定する。(4)収益を確保するためにJSCが管理する秩父宮ラグビー場と代々木競技場と合わせて運営することや命名権の導入も今後検討するなど掲げた。
 新国立競技場の維持管理費は長期修繕費を含めて年間約24億円とされている。収入が確保できなければ、50年、100年、延々と赤字を背負うことになる。
 結局、「新国立競技場」が“負のレガシー”(負の遺産)になるのは避けられそうもない。



東京アクアティクスセンター
 オリンピックアクアティクスセンターは、「競泳」、「シンクロナイズド・スイミング」、「飛び込み」の競技会場として、大規模な国際大会が開催可能な国際水準の水泳場として整備計画が立てられた。整備費は招致計画では総工費321億円としていたが、その後の見直しで683億円と約倍以上経費が膨れ上がった。
 整備計画では、建設時には延床面積5万7850平方㍍、約2万席の観客席とするが、大会後は屋根を低くして3階席を撤去するなどして観客席を5000席まで減らし、延床面積を3万2920平方㍍まで縮小する減築を行うとした。減築後も国際大会開催時には観客席を1万席から最大1万5000席(仮設席を含む)に拡張可能とした。メインプール(50m×25m)、サブプール(50m×25m)、飛込プール(25m×25m)が整備される。
 その後、2016年の「四者協議」トップ級会合で、座席数を2万から1万5000席に減らし、大会後の「減築」は取りやめて建設することで、683億円から567億円に削減する方針を明らかにした。
 五輪開催後は都民のための水泳場としても活用するとしている。メーンプールとサブプールの床や壁を可動式にすることで多様な目的に使えるようにした。
 2016年1月、本体工事については、大林・東光・エルゴ・東熱異業種特定建設共同企業体が、469億8000万円(税込価格)で設計・施工工事を落札した。予定価格は538億円(本体工事)で落札率は87%だった。
 しかし、約300メートルほどの近接した場所に東京辰巳国際水泳場があるのに、なぜ巨額の税金を投じて「二つ」も整備するのか、当初から過剰施設の象徴だとして批判にさらされていた。
 東京辰巳国際水泳場は1993年に開館し、世界水泳や五輪選考会など国内外の主要大会が開かれてきた水泳競技の「聖地」。50メートルのメインとサブのプール、飛び込みのプールがあり、一般にも開放している。整備費は181億円、維持費は年間4億7000万円である。2008年には五輪競泳の金メダリスト北島康介選手が、200メートル平泳ぎで世界新記録を出したことで有名な水泳競技場である。
 ところが、辰巳水泳場は、観客席は固定席が約3600席、仮設席が約1400席、合わせて約5000席が限界である。国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準は観客席1万2000席、この基準を満たすためには、大幅な拡張工事が必要だが、建物の北側が運河に面していて工事は不可能とされていた。またこの水泳場は、水深が両サイドの約半分は2メートルしかなく、国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準「水深2メートル」は満たしているが、推奨基準「水深3メートル」は満たしていない。「水深2メートル」の部分があるとシンクロナイズドスイミングの競技開催では支障が生じるとされている。さらに辰巳水泳場は、国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準、コース幅2.5メートルも満たしていない。
 このため東京都は、一回り大きい国際水準の水泳場として辰巳の森海浜公園内にオリンピックアクアティクスセンターを新設することとし、東京辰巳国際水泳場は水球競技場として使うことにした。当初は水球競技場をオリンピックアクアティクスセンターに併設してウォーターポロアリーナを建設する計画だったが建設は中止された。


東京アクアティクスセンター  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

都政改革本部調査チーム オリンピックアクアティクスセンターの大幅な見直しを提言

四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意


有明アリーナ
 有明アリーナは、地上5階建てで、延べ面積約4万5600平方メートル。座席数は仮設席を含めて大会開催時には仮設を含めて約1万5000席を確保するが、五輪開催後は、約1万2700席に縮小する。メインアリーナはバレーボールコート4面又はハンドボールコート3面で競技可能な規模に、サブアリーナ はバスケットボールコート2面が配置可能な規模とする。整備費は、招致計画では、総工費約176億円としていたが、見直し後は約404億円に膨れ上がった。
 五輪開催後は、ワールドカップや日本選手権といった国内外の主要な大会の会場として利用するほか、コンサートなどの各種イベント会場としても活用するとした。そのためメーンアリーナの床はコンクリート製とし、機材搬入用の大型車が通れるようになっている。 またショップやレストランを充実させたりすることで、五輪開催後は、首都圏での新たな多目的施設を目指す。
 2016年1月、本体工事は、竹中・東光・朝日・高砂異業種特定建設共同企業体が360億2880万円(税込価格)で設計・施工工事を落札した。

都政改革本部調査チーム 有明アリーナ建設中止も
 都政改革本部調査チームでは、バレーボール会場は既存のアリーナや大規模展示場を改修するなどして開催は可能とし、まず競技開催計画の変更を検討すべきと提言した。
 既存の会場変更する場合の候補として、「横浜アリーナ」を改修して使用する案を有力視した。
 また新設する場合でも、五輪開催後は他の既存施設でバレーボール競技大会の開催は十分運用可能なことから、有明アリーナの利用があまり見込めないとし、イベントやコンサートなど多目的展示会場の施設を目指すべきだとした。関東圏ではコンサートなどの利用に関しては、数万人を収容するアリーナクラスへの需要は高い水準が続くと見込まれているとしている。
 しかしイベント会場を目指すにしても、建設費については類似施設に比べ高く、404億円からさらにコストダウンの努力が必要とし、大会後の適切な座席数を見積もる必要や、コンサート会場として施設整備など民間事業者を巻き込んだ事業計画の詰めが必要と指摘した。
 既存施設を利用する開催計画の変更や、新設の場合にもイベント利用に向けた計画の詰めやコストの見直しが求めた。
 これに対し、日本バレーボール協会の木村憲治会長は、都政改革本部の調査チームのヒアリングに出席し、「国際基準である1万5000人を収容できる体育館が欲しい」と述べ、計画通り有明アリーナの建設を求めた。
 有明アリーナ建設用地については、約183億円の用地取得費を有明アリーナの整備費とは別枠で処理していることから、「五輪経費隠し」として批判されている。
 2016年12月21日、東京大会の会場見直しや開催費削減などを協議する国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が東京都内で開かれ、前回結論を先送りしたバレーボール会場は小池都知事が「有明アリーナ」を計画通り建設する方針を表明した。
 “ARIAKE LEGACY AREA”と名付けて、その拠点に「有明アリーナ」に据えて、有明地区を再開発して“五輪のレガシー”にする計画を示した。
 計画では、「有明アリーナ」はスポーツ・音楽などのイベント会場、展示場として活用し、周辺には商業施設や「有明体操競技場」も整備するとした。
 焦点の整備費は404億円を339億円に圧縮し、民間企業に運営権を売却する「コンセッション方式」を導入して、民間資金を活用し経費圧縮に努める計画だ。


有明アリーナ  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

海の森水上競技場
 海の森水上競技場(ボート、カヌー)は、防波堤内の埋立地の間を締め切る形で競技施設を建設するが、会場レイアウトの変更や護岸延長の縮小などにより整備費を大幅に圧縮し、延床面積3万2170平方メートル規模とする。建設費については、招致ファイルでは、約69億円としたが、地盤強化や潮流を遮る堤防の追加工事が必要とわかり、五輪開催決定後、改めて試算すると、約1038億円の膨れ上がることが明らかになり、世論から激しい批判を浴び、“無駄遣い”の象徴となった。舛添元都知事は防波堤工事などを見直して約491億円に縮減した。
 五輪開催後は、国際大会開催可能なボート、カヌー場として活用するとともに、海の森公園と連携した緑のネットワークを構成し、サイクリングコースや整備都民のレクリエーションの場、憩いの場とする計画だ。水辺を生かした水上イベントなどのイベントも開催して、多目的に活用するとしている。
 海の森水上競技場の本体工事については、大成・東洋・水ing・日立造船異業種特定建設共同企業体が248億9832万円(税込価格)で設計・施工を落札し着工した。
 しかし、その後も、整備費が巨額に上る上に、埋め立て地の先端に立地するた強風や波の影響を受けやすく、海水によるボートへの塩害の懸念や航空機の騒音問題などでも批判が止まず、小池都知事が設立した都改革本部の五輪調査チームは宮城県の長沼ボート場に会場変更をして建設中止をする提案をした。
 2016年11月29日、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が東京都内で開かれ、小池都知事海の森水上競技場を20年程度存続の「スマート施設」(仮設レベル)として、整備費は当初の491億円から298億円に縮減して建設することを明らかにした。都の調査チームがボート・カヌー会場に提案していた長沼ボート場は事前合宿地とすることをコーツIOC副会長が確約し、小池都知事も歓迎した。


海の森水上競技場  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心

カヌー・スラロームセンター(葛西臨海公園隣接地)
 カヌー(スラローム)の競技場は、水路に人工的に流れを作り出し、競技を実施することができる国内で初めてのカヌー・スラロームコースである。葛西臨海公園に建設する計画だったが、隣接地の都有地(下水道処理施設用地)に建設地を変更した。葛西臨海公園は貴重な自然環境を後世に残すという目的で整備された施設であることを配慮した。 大会後は、葛西臨海公園と一体となったラフティングも楽しめるレジャー・レクリエーション施設となるように計画を練り直した。整備経費、約73億円は東京都が負担する。




カヌー・スラロームセンター  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

大井ホッケー競技場
 大井ホッケー競技場は、大井ふ頭中央海浜公園内のサッカー用の第一球技場敷地にメーンピッチ(決勝など)を新設、サッカーやアメフト用の第二球技場敷地にサブピッチ(予選)を改修整備する計画である。
 座席数は、メーンピッチが大会時には仮設を含めて約1万席、大会後は約2600席、サブピッチは仮設を含めて大会時5000席、大会後は536席とする。
 立候補ファイルでは、公園内の球技場と野球場、6面をつぶしてメーンピッチ、サブピッチを整備する計画でいたが、地元の軟式野球連盟などから3万8千人分の反対署名が出され、東京都は見直し作業を進めた。野球場は残し、五輪開催時は大会運営に使うが、大会後はこれまでどおり4面の野球場が利用が可能となった。
 総事業費は約48億円を見込んでいる。


大井ホッケー競技場  提供 TOKYO2020

夢の島公園アーチェリー場
 夢の島公園内(新木場)に建設するアーチェリー場は、当初計画では緑地エリアを潰して建設する計画だったが、批判を浴びて、緑地を極力減らさない方向で会場計画を見直して整備することになった。
 予選会場は円形広場(多目的コロシアム)に、決勝会場は公園内にある陸上競技場にスタンドを仮設するなどして整備をする計画に変更し、緑地を極力残すことになった。また取り壊す予定だった「東京スポーツ文化館」も選手控室などで活用する。整備費は約24億円。
 夢の島公園は、運河と水路に囲まれた43ヘクタールの総合公園、ごみの最終処分場であった東京港埋立地夢の島を整備して作られた。熱帯植物館や競技場や野球場などのスポーツ施設やバーベキュー広場などが整備され、四季折々の花が咲き乱れる緑のオアシスに生まれ変わっている。せっかく整備した緑地を潰して五輪施設を建設することに対しては都民から強い批判を受けていた。


手前が決勝会場 奥が予選会場(竣工済) 提供 TOKYO2020

武蔵野の森総合スポーツプラザ
 武蔵野の森総合スポーツ施設(仮称)は、東京都調布市の東京スタジアムの隣接地の約3万3500平方メートルの敷地にメインアリーナとサブアリーナを建設する。
 メインアリーナは、バレーボール4面、バスケットボール4面が可能な競技フロアを備え、観客席は固定席で6662席、仮設席対応も含めると約11000席が収容可能である。大規模なスポーツ大会やイベントの開催も可能である。
 サブアリーナは、バレーボール2面、バスケットボール2面が設営可能なフロアが整備され、可動畳で武道競技の開催も可能である。屋内プールも設置し、50m、8コースの国際公認プールとなる。さらにトレーニングルームやフィットネススタジオ、カフェ等も設ける。 隣接地には東京スタジアムや「西競技場[陸上トラック]」がある。
 整備費は351億円。 バドミントンと近代五種[フェンシング(ランキングラウンド)]の競技場となる。


武蔵野の森総合スポーツプラザ  出典:東京都

有明テニスの森公園
 有明テニスの森公園は、当初計画では既存の屋内外のコート計49面を、35面のコートや観客席などに再整備し、ショーコートを2面(観客席5000席と3000席付きコート)やインドアコートを建設するとしていた。しかし、日本プロテニス協会などから「コートの減少を最小限にとどめてほしい」といった要望や、ショーコートを整備予定のイベント広場についても、近隣住民らから存続を希望する声が寄せられていた。こうした要望を受けてコートの配置を変更することで、大会開催時には37面を整備し、大会終了後には元の49面に復元。また、2面整備予定のショーコートは1面を大会後撤去し、イベント広場に戻すとした。また観客席を仮設とすることで34億円縮減し、改修費は約110億円となった。


有明テニスの森公園  提供TOKYO2020

建設中止や会場変更をする競技施設
 恒久施設では、「夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)」、「夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)」、「若洲オリンピックマリーナ(セーリング)」、仮設施設では、「ウォーターポロアリーナ(水球)」、「有明ベロドローム(自転車・トラック)」、「有明MTBコース(マウンテンバイク)」、「夢の島競技場(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)」は建設中止となり、他の既存施設に振り替える。
 「夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)」と「夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)」は、招致計画では、建設費を364億円としたが、見直しの結果、683億に膨張し建設中止に追い込まれた。
 バトミントンは、武蔵野森総合スポーツ施設(東京都調布市)、バスケットはさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)に会場変更された。
 「若洲オリンピックマリーナ(セーリング [ヨット・ウンドサーフィン])」は、招致計画では建設費を92億円としたが、見直しの結果、土手の造成費が新たに必要となることが明らかになり、417億円に膨れ上がり建設は取りやめられた。会場は江の島ヨットハーバー[藤沢市]に変更となった。
 水球は「東京辰巳国際水泳場」で開催する。
 自転車(トラック)は、日本サイクルスポーツセンター内の「伊豆ベロドローム」に会場変更し、マウンテンバイク(MTB)は同じ日本サイクルスポーツセンター内のMTBコースを改修して開催することが決まった。
 また馬術(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)は馬事公苑(世田谷区)に会場を変更し、カヌー・スラローム会場は、葛西臨海公園から公園に隣接する都有地に建設地が変更された。

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仮設施設の競技場

 「仮設施設」では、皇居外苑コース(自転車・ロードレース)、お台場海浜公園(トライアスロン・マラソン水泳)、潮風公園(ビーチバレー)、海の森クロスカントリーコース(馬術・クロスカントリー)、有明アーバンスポーツパーク(自転車[BMX]、スケートボード)、青海アーバンスポーツパーク(バスケットボール[3×3]、スケートボード)、陸上自衛隊朝霞訓練場(射撃)が整備される。当初計画では整備にかかる経費は原則として五輪組織員会が負担するとしていたが、結局、大会組織員会が約950億円を負担し、東京都が2100億円を負担することになった。 これとは別に東京都は周辺整備費や道路などの交通基盤整備費の負担も背負うことになる。
 馬術(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)は夢の島競技場内に仮設施設を建設する予定だったが、建設を中止し馬事公苑に会場を変更した。
 一方、馬術(クロスカントリー)については、計画通り、「海の森クロスカントリーコース」が仮設施設として整備される。
 マラソンは、スタート、ゴール共に新国立競技場で、競歩は、皇居外苑の周回コースで行う計画だったが、2019年12月、暑さ対策で札幌に会場が変更された。
 そのほかの「仮設施設」では、お台場海浜公園(トライアスロン[水泳]、マラソン水泳)、潮風公園(ビーチバレー)、青海アーバンスポーツ会場(バスケットボール3×3、スポーツクライミング)が整備される。
 自転車(ロードレース)は、当初計画ではスタート地点が皇居、ゴール地点が武蔵野の森公園としていたが、テレビ映りや景観を重視した国際自転車連合(UCI)から富士山を背景に走るコースを強く要請され、スタート地点を武蔵野の森公園、ゴール地点を富士スピードウェイ(静岡県小山町)とすることが決まった。



有明体操競技場
 有明体操競技場は鉄骨造・一部木造の地上3階建てで、敷地面積は約9万6400平方メートル(都有地)、延べ面積約3万9300平方メートル、観客席1万2000席の計画で整備される。3万2000平方メートルの体操競技場と約5000平方メートルのウオームアップ施設などが建設される。
 大会後は、敷地面積を3万6500平方メートル、延べ面積を約2万7600平方メートルに縮小し、面積は約1万平方メートルの展示場とする。ウオームアップ施設は撤去され、バックスペースは駐車場となる。
 有明体操競技場は当初計画では、「仮設施設」として、組織委員会が総工費約89億円で整備し、大会後は取り壊す方針だったが、「大会後に有効活用せずに取り壊すのはもったいない」との意見が出ていた。その後、資材の高騰などでさらに総工費が膨れ上がり、「恒久施設」として建設する場合と比較してもあまり経費に大きな差がなくなったが判明し、大会終了後、10年間をメドに存続させ、再活用する「半恒久」施設として整備することになった。 展示場やイベント会場などで10年程度利用され、都の関連企業の「東京ビッグサイト」が管理運営を行う。
 東京都では、組織委員会が管理する「仮設施設」として仕分けしているので、「五輪開催費用」に計上していない。
 整備費の総額は「約253億円」とし、「後利用に相当する部分」を「193億円」、「大会時のみ使用する部分」を「60億円」に仕分けすることで東京都と組織委員会で合意している。「193億円」は東京都が負担することが決まったが、「60億円」の負担の割合は調整がついていない。
 2016年11月、清水建設が本体工事を205億2000万円で落札した。


有明体操競技場  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

海の森クロスカントリーコース
 海の森クロスカントリーコースは、東京湾の最先端にある中央防波堤の埋め立て地に建設される。この埋め立て地では緑化事業が進められ、海の森公園が整備され、公園内に馬術のクロスカントリーコースが仮設施設で整備され、総合馬術(クロスカントリー)が開催される。
 海の森公園からは東京ゲートブリッジなど東京湾と巨大都市、東京の景観が一望に見渡すことができ、大会開催後は、「海の森」として、都民のレクレーション・エリアにしたいとしている。
 ボートとカヌー競技が開催される海の森水上競技場が隣接している。


海の森クロスカントリーコース  提供 TOKYO2020

青海アーバンスポーツ会場 
 選手村からも近い青海エリアの敷地に、仮設で整備される競技会場。東京湾が見える場所に位置し、都市型スポーツ競技のバスケットボールの3×3やスポーツクライミングが開催され、世界各国の若者のアスリートが集う東京2020大会を象徴する会場のひとつとなる。
パラリンピックでは、5人制サッカーの競技会場となる。


青海アーバンスポーツ会場の建設地(現駐車場)  筆者撮影

潮風公園
 潮風公園の前身は、東京港改造計画に基づいて造成された13号埋立地の一画の「13号地公園」で、この地域が臨海副都心として整備されるに伴い、全面改修工事が行われ「潮風公園」として生まれ変わった。臨海副都心内では最大の海辺の公園で、レインボーブリッジを背景とした東京湾の景観も素晴らしい。お台場海浜公園と隣接している。
 潮風公園の中心にある「太陽の広場」にビーチバレーボールの競技会場が仮設で建設される。


潮風公園 ビーチバレー競技会場 提供 TOKYO2020

有明アーバンスポーツパーク(自転車[BMX] スケートボード)
 若者に人気のあるBMX競技については、江東区有明地区に仮設会場を整備する計画だったが、大会組織員会は自転車(トラック・MTB)と共に既設施設の「日本サイクルスーツセンター」に会場を変更したいとした。しかし国際自転車連合は観客が集まりやすい首都圏での開催にこだわって難色を示し、結局、有明地区で開催することが決まった。約5000席の観客席を備えたBMXコースを、ゆりかめめ・有明テニスの森駅の隣接地に仮設で建設する。さらにスケートボードの競技会場も建設し、周辺を「都市型スポーツ」の拠点、アーバンスポーツパークとして整備する


有明アーバンスポーツパーク 完成予想図  提供 TOKYO2020


陸上自衛隊朝霞訓練場
 陸上自衛隊朝霞訓練場は、陸上自衛隊朝霞駐屯地に隣接して設置された施設で、訓練場内は自動車教習所、屋内射撃場、弾薬庫等が設置されており、一部の区域で陣地構築等の小規模な訓練も可能である。3年に一度、自衛隊記念日に中央観閲式が実施されことで知られている。
 屋内射撃場は、射撃の競技場・練習場として使用され、1964年東京五輪大会では射撃競技の会場となった。
 2020東京五輪大会時には訓練場内に仮設施設が整備され、オリンピックとパラリンピックの射撃競技が開催される。


陸上自衛隊朝霞訓練場  出典 東京2020大会招致委員会

既存施設の競技場

東京辰巳国際水泳場
 水球の競技会場となる東京辰巳国際水泳場は、東京都の水泳競技場の代表的な施設として建設され、1993年にオープンした。
50m×25mで公認8レーンで、水深を1.4mから3mまで変えられる可動床が設置されているメインプールや50m×15mで7レーンのサブプール、25m×25mで水深5mの国際公認ダイビングプールを備え、全国規模の大会などが多数開催されている。観覧席は固定で3,600席、仮設で1,400席、あわせて5,000席がある。ダイビングプールの観客席はメインプールと共通である。
 このメインプールは2008年に北島康介選手が世界新記録を樹立したり、2017年には渡辺一平選手がその記録を塗り替えるなどの舞台となった。


東京辰巳国際水泳場  出典 東京2020大会組織委 

お台場海浜公園 

マラソン水泳・トライアスロン 深刻な東京湾の水質汚染
 2017年10月、2020東京大会組織員会は、マラソンの水泳とトライアスロンの会場で、大腸菌(Coli)が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌(faecal coliform bacteria)が上限の7倍も検出されたと公表した。
 組織委では、雨期に海岸から流出する細菌の量を抑制するために、お台場マリンパークに水中スクリーンを設置するなど多数の実験を行い、水質改善に努めているとした。
 コーツ副会長は「トライアスロン競技連盟は依然として水質を懸念している。大会組織委から水のスクリーニング・カーテンの入れ方などの実験について説明を受けが、この姿勢には非常に満足している」としたが、水質問題に依然として懸念が残るとして改善を求めた。


お台場海浜公園  提供 TOKYO2020

江の島ヨットハーバー
 江の島ヨットハーバーは神奈川県藤沢市の沖にある「江の島」の中にある。
 1964東京オリンピックのヨット競技の会場となり、江の島の北東側海岸にあった岩場を埋め立てて、ヨットハーバーを整備した。
 埋め立て地の内、約330平方メートルにヨット係留施設を建設し、鉄筋3階建クラブハウスや約500台駐車可能の駐車場なども整備された。また2000t級の観光船なども発着できる岸壁も建設した。
 2020東京五輪大会ではセーリング(ヨット ウインドサーフィン)の競技会場となる。

シラス漁に影響 江の島セーリング会場
 セーリング競技については、国際セーリング連盟は、バンコクの会議で、「準備が1年遅れている」と指摘し、地元の漁業者との交渉が進まず、レース海面決定が遅れていることや津波対策や警備対策に懸念を持っているとした。
 コーツ副会長も、記者会見で、2020東京大会組織委員会に対し、地元の漁業者へ与える影響について懸念を表明したと付け加えた。
 江の島で開催されるセーリング競技では、ディンギー5艇種によるヨットとウインドサーフィンが行われる。海上に設置された3つのブイ(三角形のコース)を周回して争われる競技である。
 レース海面は、鎌倉市沖から葉山町沖の海域に、直径1852メートルと1574メートルの円形の5つのエリアの設定が計画されている。
 一方この海域は、古くから湘南名物のシラス漁の好漁場として知られている。
 セーリング競技団体はレース海面をなるべく沿岸に近い浅瀬に設定することを求めているのに対し、漁業者はシラス漁への影響を懸念してなるべく沖合にしたいとして調整が継続されていて、未だにレース海面が決まっていない。
 シラス漁の操業海域は、5市1町の8漁業組合に独占的に認めている「共同漁業権」エリアが設定され、さらにその沖合にはどの漁協も操業できる海域が広がっている。
 シラス漁は、元旦から3月10日までは禁漁だが、五輪セーリング競技の公式練習や大会開催期間はシラス漁の漁期と重なり、漁業者への影響は必至である。
 そこで浮上するのが漁業補償の問題だが、神奈川県と関連漁協の間の具体的な協議は始まっていない。
 漁業補償がからんでレース海面の決定は難航が予想され、セーリング開催準備も難問を抱えている。


江の島セーリング会場  提供 TOKYO2020


江の島沖のセーリング会場  提供 TOKYO2020  

釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ
 釣ヶ崎海岸(通称志田下ポイント)は九十九里浜(千葉県一宮町)の南端の海岸で、「世界最高レベル」ともいわれる良質な波が、年間を通じて打ち寄せる海岸として知られ、多くのサーファーが訪れる。
 プロサーファーやハイレベルなサーファーが集まることから「波乗り道場」とも呼ばれ、地元出身の多くの有力選手が活躍している。
ハイレベルな大会も多数開催されており、平成28年5月と平成29年5月にはこれまで国内で開催された国際大会の中でも最高レベルにあたる「QS6000 ICHINOMIYA CHIBA OPEN」が開催され、世界トップレベルの選手達がライディイグを披露した。
 2020東京五輪大会ではサーフィン競技の会場になる。


釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ  提供 TOKYO2020

 
釣ヶ崎海岸 サーフィン  提供 TOKYO2020
 

迷走 霞ケ浦CCゴルフ会場
 2017年1月4日、森喜朗組織委会長は、ゴルフ会場の霞ケ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市)について「輸送を計画通りにできるのかどうか。選手の疲労なども考えると、運営側としては心配だ」と述べ、アクセス面の懸念を示した。
 東京晴海の選手村から会場までは40キロ以上も離れている上に、渋滞の激しい関越自動車道を通るため、期間中に設置される五輪専用レーンを設置しなければならない。専用レーンを利用しても1時間半程度かかるとし、「強い(上位)選手ほど帰るのが遅くなる。遅ければ選手村に午後10時ごろ。翌朝6時(始動)となれば大変だ」と述べ、4日間の日程で選手の疲労度を懸念した上で、輸送計画の精査を求めた。 
さらに、内陸部で真夏には気温が40度近くになることもあり暑さ対策の懸念も指摘した。
 森会長は、問題の解決が難しい場合、2012年招致計画の会場だった江東区の若洲ゴルフリンクス(都営パブリックコース)や、千葉県などにゴルフ場があることも指摘し、会場変更の検討にも言及した。
 一方、小池都知事は、「21世紀に女性が正会員になれないということに違和感がある」と述べ。男女平等をうたう五輪憲章に反するという懸念を示した。国際オリンピック委員会(IOC)は日本ゴルフ協会(JGA)など4団体で構成する五輪ゴルフ対策本部や大会組織委員会に対応を求めた。
また2013年の立候補ファイルでは、若洲から霞ケ浦へ変更されたが、なぜ変更されたのか、その経緯が不明朗だという批判がこれまでも巻き起こっていた。「誰がどう考えても若洲の方が良い」とする意見も強い。
 2017年3月20日、「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は、臨時の理事会を開き、規則を改定し、女性正会員を容認することを出席した理事が全員一致で議決した。
 これまで霞ヶ関カンツリー倶楽部は、女性がすべての営業日を通じて利用できる正会員になることを認めていなかった。
 「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は「時代に沿った対応をすすめるため、自主的に改定の判断をした」とのコメントを出した。


霞ヶ関カンツリー倶楽部  提供 TOKYO2020

伊豆ベロドローム
 伊豆ベロドロームは、国際自転車競技連合(UCI)規格の周長250m木製走路を有する屋内型自転車トラック競技施設として2011年に開業した。観客席は、常設で1,800席、仮設で1,200席。全日本選手権自転車競技大会トラック・レースなど多くの国内主要大会で使用されている。また ナショナルトレーニングセンターとしての役割を果たすとともに、広く一般の方も利用できる施設になっている。
 自転車(トラック)は当初計画では、「有明ベロドローム」(仮設施設)を建設する予定だったが、建設費の高騰で、計画見直しを大会組織委員会が提案し、伊豆・修善寺にある「日本サイクルスポーツセンター」内にある「伊豆ベロドローム」に変更することが承認された。「伊豆ベロドローム」では、パラリンピックの自転車競技(トラック)も開催する。
 またマウンテンバイク(MTB)も、「海の森マウンテンバイクコース」(仮設)の建設を中止して、「日本サイクルスポーツセンター」内の既存の「伊豆MTBコース」を改修して使用することが決まった。
 このコースは全長2,500m、高低差85mのオフロードコースで全日本選手権大会なども開催され、初級者から上級者までが利用できるようにエリアやルートが分かれている。コースの途中には、富士山を望むことができるビューポイントもある。
 五輪大会のマウンテンバイク(MTB)競技は、クロスカントリーで行われ、起伏に富む山岳コースを舞台に全選手が一斉にスタートして着順を競うものでパワーとテクニックが必要となる。
 1周5km以上のコースを使用し、周回数は予想競技時間(男子2時間)にあわせた周回数となる。

* 「ベロドローム」とは自転車競技場の意味で、『Velo(ベロ)』はラテン語が語源のフランス語で自転車、『drome(ドローム)』はラテン語で競技場を意味する。




伊豆ベロドローム  


日本サイクルスーツセンター全景 出典 日本サイクルスーツセンター

富士スピードウェイ
 ロードレースのコースは、当初は、スタートとゴール共に、観客の集まりやすい皇居外苑としていた。
 しかし、ロードレースのコースは選手の実力差が出るように勾配のある難しいコース設定が求められ、リオ五輪では終盤は高低差約500メートルの山岳ルートを周回するコースが選ばれている。競技団体から、こうした条件を満たす富士山麓のコースが求められた。しかもテレビ映りの絶好な富士山を背景にすることができることも大きな要因だった。ゴールは富士スピードウェイ(静岡県小山町)が決まり、出発点は武蔵の森公園となった。
 組織委員会としても、都内の周回コースは一般交通への影響や警備の負担が大きく、富士山コースを受け入れた。
 それにしても「テレビ五輪」を象徴する計画変更である。


富士スピードウェイ  提供 TOKYO2020

サッカーの予選開催競技場 
 サッカーの予選開催競技場は、札幌ドーム(札幌市)、宮城スタジアム(宮城県利府町)、埼玉スタジアム2002(さいたま市)、横浜国際総合競技場(横浜市)の4か所がすでに決まっていた。組織員会では、茨城県立カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市)、豊田スタジアム(愛知県豊田市)、吹田市立スタジアム(大阪府吹田市)の3か所を追加したいとして国際サッカー連盟と調整したが、最終的に、茨城立カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市)、新国立競技場、東京スタジアムの4か所が追加開催競技場として決まり、全国7カ所で開催されることになった。
 決勝は男子が横浜国際総合競技場、女子は新国立競技場」で開催する。
 
選手村
 中央区晴海の東京ドーム3個分に及ぶ広大な都有地、約13万4000ヘクタールの敷地に、14~17階建ての21棟のマンション型の選手村と商業施設が建設される。工事費は約954億円。選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設となる。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの建物を配置するとしている。
 大会終了後は分譲マンションとして販売する計画で、超高層住宅棟2棟を建設し、住宅棟21棟、商業棟1棟に整備して、5650戸のニュータウンに衣替えする。2016年7月、三井レジデンスなど11社で構成する民間事業者グループが開発事業を受注し、2017年1月には着工する。基本的に国や都の財政負担なしに整備する方針だ。日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指す。
 しかし、東京都は選手村用地の盛り土や防潮堤の建設を始め、上下水道や周辺道路の整備に410億円を投入する計画だ。大会後は臨海ニュータウンになるので、社会資本整備投資経費として理解できるが、東京都の五輪開催経費、選手村整備費にはまったく算入していない。
 また都有地約13万4000ヘクタールを、周辺価格の約10分の1という「破格の優遇措置」で事業者グループに売却したという疑念が生まれて批判が集まった。


選手村  提供 TOKYO2020

IBC/MPC
 東京オリンピックの世界の報道機関の拠点、国際放送センター(IBC International Broadcasting Center)とメインプレスセンター(MPC Main Press Center)は東京ビッグサイト(江東区有明地区)に設置される。
 国際放送センター(IBC / International Broadcasting Center)は、世界各国。の放送機関等のオペレーションの拠点となる施設である。IBCの設営・運営は五輪大会のホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)であるOBS(Olympic Broadcasting Services )が行う。
 IBCには、国際映像・音声信号のコントロール(Contribution)、分配(Distribution)、伝送(Transmission)、ストレージ(VTR Logging)など行うシステムが設置されるOBSエリアや各放送機関等がサテライト・スタジオや放送機材、ワーキング・ブースなどを設置する放送機関エリアなどが整備される。
 メインプレスセンター(MPC / Main Press Center)は、新聞、通信社、雑誌等の取材、編集拠点である。共用プレス席、専用ワーキングスペース、フォト・ワーキングルーム、会見室・ブリーフィングルームなどが整備される。
 IBCとMPCには、約2万人のジャーナリストやカメラマン、放送関係者などのメディア関係者が参加する。
 
 東京ビックサイトは、江東区有明地区の東京湾ベイエリアにある国際展示場で、敷地面積24万平方メートル、延べ床面積23万平方メートル、会議棟、西展示棟、東展示棟からなる日本で最大のコンベンションセンターで、毎年さまざな業種の約230の見本市・展示会が開催されている。
 五輪大会開催のために、西展示棟南側に、延床面積約6万5000平方メートルの5層階の「拡張棟」を、約228億円の整備費で建設している。展示ホールや会議施設、事務所などが設けられる。さらに床面積約1万平方メートルの東展示棟の「増設棟」を約100億円で建設した。
 東京ビッグサイトは、当初はフェンシングなど3つの競技場として使用する予定だったが、その後の調整で、IBCのスペースが狭隘なことから、3競技会場を幕張メッセに変更して、IBCは東展示棟に集約して配置することになった。また、MPCの配置については、ICの配置変更に伴って余裕が生まれた会議棟と西展示棟のスペースで配置が可能になり、「拡張棟」は、MPCとしては使用しないことが決まった。
 東京ビックサイトにIBC/MPCに設置すると、最大20カ月に渡って占有されるため、見本市・展示関連企業から約2兆円の売り上げを失うとして反発を受けている。


国際放送センター・メインプレスセンター  提供 TOKYO2020



何処へ行った「世界一コンパクトな大会」
 新規に競技場を建設すると、建設費はもとより、維持管理費、補修修繕費などの後年度負担が確実に生まれる。施設利用料などの収入で賄えるのであれば問題ないが、巨額の赤字が毎年生まれるのでは、“レガシー”(未来への遺産)どころか次世代への“負の遺産”になる懸念が大きい。五輪開催期間は、オリンピックが17日、パラリンピックが13日、合わせてわずか30日間である。新規の施設整備は極力止めるのが基本だろう。
 また忘れてはならないのは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、ヘリテッジゾーンと東京ベイゾーンの選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置して開催するとしていた。「世界一コンパクトな大会」の公約は消え去ってしまった。

 それにしても東京五輪の「招致ファイル」は一体、なんだったのだろうか?
 舛添要一前都知事は、「とにかく誘致合戦を勝ち抜くため、都合のいい数字を使ったということは否めない」と述べている。結局、杜撰な招致計画のツケを負担させられるのは都民であり国民である。



東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌



月刊ニュメディア「東京オリパラ」連載 加筆
2016年12月7日  初稿
2019月1月12日   改訂
Copyright (C) 2019 IMSSR

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)

***************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
***************************************

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2018FIFAワールドカップ 国際放送センター IBC 4K HDR VAR 8K HBS UHD

2020年01月14日 10時29分26秒 | 東京オリンピック
2018FIFAW杯 4K/HDRサービスに乗り出したHBS
国際放送センターはクロクス・エキスポ設置
VARが“勝敗の分かれ目”を決める その威力と功罪


▼ 219の国と地域から79のライツホルダー((MRLs:media rights licensees)、約5000人が参加するIBC
▼ 放送機関の拠点、IBCの設備と機能
▼ 初めて導入されたVideo Assistant Refree(VAR)は威力を発揮するか
▼ VARが“勝敗の分かれ目”を決める その威力と功罪
▼ 日本対コロンビア戦で登場 “Goal Line Technology”
▼ 全64試合はUHD/HDR(4K/HDR)で配信
▼ スタジアムのカメラ配置はこうなる
▼ NHKは全64試合をBS1、32試合を総合TV、4K8Kは12試合を放送
▼ 民放は日本戦、決勝トーナメント戦を放送




巨額を投入したスタジアム建設 “負の遺産”に転落するのは必至
止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料 FIFAの収入の約62%は放送権料
Ultra HDとVRサービスに挑むBBC 2018 FIFA World Cup Russia

空前の汚職スキャンダルに見舞われたFIFA 再生は果たせるか?
2022カタール大会 65億6000万ドル(約7200億円)の巨額収入 目を見張る新スタジアム建設 新機軸eスポーツ


ロシアで開催される2018 FIFA World Cup
 2018 FIFA World Cup Russiaは、2018年6月14日から7月15日まで、世界各国から32のチームが参加し、32日間に渡って合計64試合が行われる。
 この大会で放送権を獲得したメディア(MRLs:media rights licensees)は、世界219の国と地域、260の放送機関で、FIFAでは各試合平均で2億人の視聴者(20分以上視聴)がいて、決勝戦は10億人の視聴者(20分以上視聴)がいると推定している。
 競技会場は、7つのスタジアムを新たに建設し、4つのスタジアムは改築して、11都市にある12のスタジアムを使用する。
 大会に参加するチームは、世界各地区の予選を勝ち抜いた31チームと開催国ロシア・チームの32チーム、ロシア国内にそれぞれチームキャンプ地が設けられ、30のトレーニング場も準備された。
 大会開催のハブとなる都市は、モスクワで、Luzhniki とSpartakの2つのスタジアムと5000人のメディアを収容するIBCが整備された。
 Luzhnikiスタジアムは72,385人、Spartakは41,262人を収容可能なスタジアムにリノベーションした。
 Luzhnikiスタジアムでは、開幕第1戦のロシア対サウジアラビア戦や決勝戦が行われる。
 その他のスタジアムは、Ekaterinburg、 Kaliningrad、 Kazan、 Nizhny Novgorod、 Rostov-on-Don、 St Petersburg、 Sochi、 Samara、Saransk、Volgogradで、合わせて11都市12か所の会場で開催される。



Luzhnikiスタジアム  出典 Goal.com

MOSCOW - 2018 FIFA World Cup™ Host City
Youtube

Russia 2018: Magic is in the air
Youtube

1億8900万ドルの巨額赤字を出したFIFA(2017年) ロシア大会開催で黒字転換に
 2018年7月、空前の汚職スキャンダルに見舞われていたFIFAは、財政報告を公表し、「信頼性喪失」で、2017年度の収支は、収入が7億3400万ドル(約800億円)に対し、支出9億2300万ドル(約1000億円)で、1億8900万ドル(約200億円)の赤字になったことを明らかにした。
 2016年度の3億9100万ドル赤字は約半分に縮小したもの、1億1700万ドルの赤字に転落した2015年から、3年連続の赤字を記録し、この結果、2015年から2017年の累積赤字額は6億9700万ドル(約770億円)となり、汚職スキャンダルの後遺症の深刻さを露呈した。
 この巨額の赤字によって、FIFA年の準備金は、2015年の14億1000万ドル(約1550億円)から2016年には10億4100万ドル(1152億円)に減少し、2017年には9億3000万ドル(約1000億円)に落ち込んだとした。
 しかし、FIFAは、2018年は、FIFAワールドカップ・ロシア大会の開催などで、38億7600万ドル(約4260億円)の巨額の収入を上げることができると強気の見通しを明らかにしている。
 その収入の“大黒柱”は、放送権収入で、2018年は24億1700万ドル(約2660億円)を見込んでいて、収入の約62%を占める。なんと60%を超えるFIFAの収入は放送権収入支えられるいるのである。
 これによって、2018年の収支は7億2300万ドル(約800億円)以上の黒字になるとし、2015年からの累積赤字は一掃して、4年間の収支計算で1000万ドル(約11億円)以上の黒字に転換になるとしている。
 その結果、FIFAの準備金は2015年末の14億1000万ドルから、2018年末には16億5300万ドル(約1820億円)に回復すると予想し、空前の汚職スキャンダルがもたらした「信頼性喪失」の後遺症から完全に回復できたとしている。



Crocus Expoに設営された国際放送センター(IBC)
 モスクワの北西、MKADリングの外側に位置し、競技会場になるSpartak Stadiumの近くにあるCrocus Expo International Exhibition Centerに国際放送センター(IBC)が設営された。2018年6月9日、関係者が出席しオープニング・セレモニーが行われた。


Crocus Expo International Exhibition Center


Crocus Expo International Exhibition Center Pavilion


出典 The International Broadcasting Center at the 2018 FIFA World Cup Russia FIFA TV Service

 国際放送センター(IBC)は、2018 FIFA World Cup Russiaの全世界のテレビやラジオなどの放送機関の拠点となる施設である。
 IBCでは、今回の大会で開催される64試合のライブ中継を始め、毎日のハイライト映像や各チームの最新情報、関連特集などが配信される。
 
 IBCには、全世界、219の国と地域から、78のライツホルダー((MRLs:media rights licensees)、約5000人が参加して、スタジオや編集・送出設備、ワーキング・スペースなどを設置して各国に向けてオペレーションを行う。
 IBCの設営・運営はFIFA傘下のHBS(Host Broadcast Service)が担当し、大会開催中の32日間、24時間サービスを実施する。

 IBCの総面積は5万4000平方メートル、HBS/FIFAエリアと各放送機関の専用エリア、サービスエリアなどに分かれていて、その内HBS/FIFAなどのスペース(multilateral areas)が8613平方メートル、各放送機関の専用スペース(unilateral production areas)が9054平方メートル、各放送機関の専用スペースで最大は1680平方メートル、最小は22平方メートルとなっている。またテレビスタジオが7つ設けられ、Fox U.S.、Fox Brazil、Telemundo、Televisa、Caracol TV、TYC Sports Argentina、CCTVがオペレーションを行う。テレビスタジオの中で、最大のスタジオは400平方メートルである。
 FOXやBBC、CCTVを始め、SBS Australia、 Globo and GloboSat(Brazil)、 TV Azteca(Mexico)、 DirecTV Latin America,、ITV(UK)、 Telemundo(U.S.)、 beIN(中東)の13の放送機関は、ビジュアルでアトラクティブなスタジオ建設を目指し、「赤の広場」にサテライトスタジオを設営してオペレーションを行う。


「赤の広場」に設置されたFOXのスタジオはロシアの雰囲気を重視したデザイン

 2017年12月1日に、IBCはCrocus ExpoからHBSに引き渡され、2018年5月14日にIBCとしてオープン、6月5日からIBCサービスが開始、7月15日の決勝戦の翌日、7月16日にIBCサービスは終了し、機材を撤収して8月15日にCrocus Expoに戻される。
 IBCの設営には133日間、撤去には30日間かけるとしている。

IBCの設備と機能

■ テクニカル・コンパウンド(Technical Compound)
 テクニカル・コンパウンドは、パビリオン1と2の間に設置され、電力や空調の仮設施設やバックアップ設備が整備される。

■ サテライト・ファーム(Satellite Farm)
 サテライト・ファームはIBCの駐車場に隣接して設置され、衛星が見通し可能な場所が確保されている。

■ 共通エリア(Multilateral Areas)
 共通エリアは、Master Control Room(MCR)/Central Equipment Room(CER)、コンテンツ制作センター、オフイスの3つのエリアに大きく分かれている。
 これらの施設は、パビリオン1と2に分散されているいるが、お互いに密接に連携してオペレーションを行うようにする。
  2018 FIFA World Cup Russiaで、IBCで初めてLive Infotaiment Content(情報・娯楽情報)が制作される。

■ マスターコントロール・ルーム(MCR)
 マスターコントロール・ルーム(Master Control Room MCR)は、映像・音声信号をコントロールするIBCの中枢の機能を担う。
 各都市の12のスタジアムや関連施設からIBCに送信されてくる映像・音声信号やIBCから光回線や衛星にアップリンクされるすべての映像・音声信号を監視して制御する。
 IBCに送信されてくる信号は、試合中継などの国際映像(Multilateral Feed/World Feed)と各ライツホルダー(MRLs:media rights licensees)が独自に制作したユニー映像・音声信号(Unilateral Feed)の二種類がある。
 ホストブロードキャスターのHBSは、こうした信号をすべてMCRで一括管理をし、ライツホルダー(MRLs:media rights licensees)に配信したり、HBSの制作センターへ配信したりして、さまざまな映像コンテンツを制作する。
 今回の大会では、UHD/HDR、UHD/SDR、3G-SDI(1080P)、HD/SDI(1080i)などの多様な信号が処理されることになったが、HBSは、こうした信号をすべてMCRで集中的に制御し、国際映像(Multilateral Feed)についてはラツホルダー(MRLs:media rights licensees)にニーズに応じて、多様な信号フォーマットのコンテンツで配信する。
 またMCRでは、ライツホルダー(MRLs:media rights licensees)のユニー映像・音声信号(Unilateral Feed)の入力・出力もコントロールし、各ライツホルダーに配信する。
 MCRは、送信コントロールも担い、国際映像(Multilateral Feed)やユニー映像・音声信号は、サテライトファームのSNGに送り衛星にアップリンクしたり、光回線にアップリンクして、世界各国の放送機関等に伝送する。

■ MCR Multivewer System
 これまでのMCR Multivewer Systemは、今回の大会で一新された。
 UHD/HDR、UHD/SDRの配信が始まったからである。
 すべてのフォーマットの信号は、ルーター・コントロール・システム(VSM)で制御され、MCRに設置されたモニターで表示可能なシステムを構築した。

■ Satelitte Distribution System
 MCRにはワールド・フィード・コントロール機能が整備され、サテライトファームにある衛星アップリンク車からオペレーションの制御可能にした。IBCから世界各国のライツホルダー(MRLs:media rights licensees)に送信される映像・音声信号はこの機能によって制御される。
 衛星アップリンク・オペレーションは24時間可能で、ライツホルダー(MRLs:media rights licensees)はMCRのサポートを得ることができる。
 ワールド・フィード・コントロール機能は、ルーター制御パネルと連結していて、IBCのすべての入力・出力の二つのオペレーションはMCRが管理する。



Master Control Room(MCR)



Pavilion1/2



Pavilion1
出典 The International Broadcasting Center at the 2018 FIFA World Cup Russia FIFA TV Service

■ スタジアムからIBCへの伝送(Stadium Feed)
 ロシア国内の各都市に分散した12のスタジアムからIBCへのライブ伝送は、ホスト・ブロードキャスターの重要なオペレーションである。
 各スタジアムからIBCへのフィードは、ベースバンドで10回線が準備され、Clean Stadium Feed(CSF)/UHD、Extended Stadium Feed(ESF)/3G-SDI、Clean Stadium Feed(CSF)/3G-SDI、Tactical Camera Feed、Player Camera Feed(A/B)、Team Camera Feed(A/B)、Clip Channel Action、Clip Channel Emotionの伝送が行われる。さらにIOS回線11回線でデジタル情報が伝送される。
 フィードされた映像・音声信号は、ラツホルダー(MRLs:media rights licensees)に配信される。

■ 制作センター(Production Center)
 ホスト・ブロードキャスターのHBSは、スタジアムから伝送された映像素材やHBSが40クルーのENGで取材する映像素材を元に、Extemded Basic International Stadium Feed Show(EBIF)やハイライト、5.1サラウンド音声、ストリーミングやVOD、Data Feed、VRなどのデジタル・コンテンツの制作センターで編集・制作を行い、ライツホルダー(MRLs:media rights licensees)に配信する。




VARが“勝敗の分かれ目”を決める その威力と功罪


Video Assistant Refree(VAR)




2018 FIFA World Cup Russiaで初めて導入されたVideo Assistant Refree(VAR)
出典 FIFA TV

 2018 FIFA World Cup Russiaでは、最先端の映像技術を駆使したVideo Assistant Refree(VAR)システムが初めて導入された。
 VARシステムは、モスクワのIBC内に設置されたVideo Operation Room(VOR)で、VARスタッフが、各都市にある12のスタジアムから光回線で伝送されてくるライブ中継映像をモニターして、試合の結果を左右するような重大な主審の判定ミスを監視するシステムである。
 VARの対象となるのは、「得点」、「PK」、「一発退場」、「退場・警告の人定」の4項目である。
 試合の進行を極力妨げないように、3回以上リプレーをして確認しなければならない微妙な判定は対象としない。
 FIFAは2018 FIFA World Cup Russiaのプレ大会として昨年ロシアで行われたコンフェデレーションズカップなどで試験的にVARを導入し、検討を進めていた。


出典 FIFA TV


出典 FIFA TV


出典 VAR at the 2018 FIFA World Cup Russia

 このシステムでは、VARチームを統括して判定を行い主審と連絡をとるVideo Assistant Refree(VAR)と試合を常時監視しているアシスタントVAR(AVAR)、映像を管理するリプレーオペレーター(Replay Operator)が一チームとなってオペレーションを担う。
 アシスタントVARは、メインカメラで試合の状況を常時、モニターしているAVAR1、テレビ中継映像を監視しているAVAR2、オフサイド・カメラを常時監視しているAVAR3の3人がいて、それぞれのAVARがインシデントを認識した場合にVARに伝える。
 リプレーオペレーターは、2人が該当するインシデントのベスト・カメラアングル映像をプレセレクトし、2人が最終的にVARに見せるベスト・カメラアングル映像を決める。
 VARは、リプレーオペレーターの選んだ該当の映像を見て判定を行う。
 VARはスタジアムの主審と直接、対話が可能で、判定の内容は主審に伝えられる。
 VARの判定の結果は、スタジアムの大型ディスプレーでもビデオ映像付きで観衆に伝えられる。
 判定を巡って紛糾するケースが多いオフサイドについては、“Vertial Offside Line”を複数の異なるアングルのカメラを映像を合成して画面に表示して、VARが判定を行う。“Vertial Offside Line”も大型クリーンで観衆に見せて判定の公平性を示す。
 また人間の「眼」の判定では限界があるゴールの判定は、FIFAは“Goal Line Technology”を導入した。フィールドに設置された7台の異なったアングルのカメラの映像を解析し、ゴールを判定して、Vertual Realityで表示する。そのシステムとして“Hawk-Eye”を採用し、音声技術は“Crescent Comms”を使用することになった。
 “Hawk-Eye”はイギリスの会社が開発した技術だが、2011年に日本企業のソニーが買収した。

 映像で判定を補助するビデオ判定システムは、選手やコーチが要求できる「チャレンジ制」と、VARと同じようにジャッジ・アシスタントが判定を要求できる二つに分けられる。
 「チャレンジ制」はNFL(アメリカンフットボール)、野球(MLB、韓国プロ野球)、テニス、バレーボール、レスリングなどで導入されている。
これに対して「チャレンジ制」は、「チャレンジ」可能な回数制限が設けられ、試合進行の妨げにならないように配慮されている。
テニスでは、各選手に1ゲームあたり3回の「チャレンジ」権が与えられるが、「チャレンジ」が成功した場合は、回数制限の枠の外になり、何回でも「チャンレンジ」が可能である。
 また「チャレンジ」で「明確な誤審」がなかった場合は、ペナルティが課される競技もある。レスリングではチャレンジが失敗した場合、1ポイント失うルールだ。
 一方、VARは試合の映像をモニターして、「インシデント」を察知した場合、さまざまなアングルのカメラ映像を検証して判定を下し、主審に伝える。しかし、VARは、あくまで主審の判定の“補助”で、判定の最終判断は主審が行うのである。
 しかし、VARがさまざまなアングルからの映像を検証しても判定ができない極めて微妙なプレーも残る。ハンドの反則は、「故意」かどうか決めてである。「故意」か「不可避」か、選手同士の接触プレーでは、激しいぶつかり合いなのかファールなのか、判定に苦しむケースが多い。ハンドの反則では「故意」かどうかがファウルの決め手になる。結局、主審の判定に頼らざるを得ないケースも現実には多発する可能性もあり、判定を巡る混乱は収まらない懸念は依然として残る。


VARチームの構成
出典 FIFA TV

VAR適用「第一号」 フランス対オーストラリア戦 フランスにPK


スタジアムの大型ディスプレーで表示されたVARの判定 フランス対オーストラリア戦 6月17日
出典 TASS 2018 FIFA World Cup Russia

 6月16日、サッカーW杯ロシア大会一次リーグBのポルトガル対スペイン戦で、 大会ポルトガル3―3スペイン サッカーW杯ロシア大会で、今大会から導入された映像で審判の判定を補助するVARが初めて使用された。
 判定されたのは前半24分にスペインが同点ゴールを決める直前のプレー。ペナルティーエリア近くの競り合いで倒れたポルトガルのペペがファウルを主張し、主審が耳元に手を当てるしぐさを見せた。通信機器で交信し、反則の有無を確認する合図だった。
 判定は変わらなかったが、VAR判定中もプレーが続行されていたため、見た目には分かりづらい「適用第1号」となった。(2018年6月16日 時事通信)
 続いて、スタジアムの観衆にも見える形での事実上の「第1号」となったのは6月17日に行われたフランス対オーストラリア戦である。審判は反則をとらなかったがVARによりファールが判定された。
 後半戦から開始から10分頃、フランスのグリーズマンがペナルティーエリア内に進入した場面で、オーストラリアのリスドンが滑り込んでタックルし、グリーズマンは倒された。主審はその場では即座に反則を取らず、プレーが続いたが、VAR判定が発動され、VARとのやりとりをした主審がピッチ脇にあるモニターで映像を確認するなどし、オーストラリアのファールを認め、フランスにPKを与えた。
 このPKでフランスは1ゴールを獲得し、さらにもう1ゴールを奪い、試合はフランスが2対1で勝利を収めた。
 FIFAは、VARの判定の結果について、「満足している」と語った。


オーストラリアのリスドンのタックルを受けるフランスのグリーズマン  出典 FIFA TV


VARシステムの映像を見る主審  出典 FIFA TV


VARシステム映像  出典 FIFA TV

“Goal Line Technology” 日本対コロンビア戦
6月19日に行われた日本対コロンビア戦で、開始直後、日本が香川選手のペナルティキックのゴールで1点を先行した後、前半の39分に、今度はコロンビアが吉田選手のファイルでフリーキンックを得て、キンテロ選手が右のゴールポスト隅にグランドを這うように転がるシュートを放ち、ゴールを決めた。ゴールキーパーの川島はゴールポスト上隅の弾丸シュートを予想していたと思われるが、その裏を取られ、懸命にセーブするもわずかに及ばず、シュートはゴール・ラインを割った。
 スロー再生で見ても、ゴール・ラインを割ったのは明らかだったが、初めてVARの“Goal Line Technology”を使用して、Vertial Realityの画面でキンテロ選手のシュートgゴール・ラインを割っていたことを明示し、コロンビアの得点を認めた。
 ゴールの判定は、スタジアムの巨大スクリーンでも表示され、スタンドにいる観衆やテレビの視聴率は大いに納得したようである。


コロンビアのフリーキックによるゴールはGoal Line Technologyの判定に    出典 FIFA TV/NHK


Goal Line Technologyの判定結果 ゴールラインを割っていたシュート  出典 FIFA TV/NHK 

ノー・ファール ネーマールは"シュミレーション"?
 6月22日にサンクトペテルブルグ・スタジアムで行われたブラジル対コスタリカ戦では、主審のファールの判定が、VARによって覆されNOペナルティの判定になった。
 試合の終盤近く、ペナルティエリア内の絶好の位置でパスを受けたブラジルのエース、ネイマール選手は、コスタリカのゴンザレス選手のディフェンスを受け、シュートをできずに倒れる、主審は、ゴンザレス選手のファールをとって笛を吹いたが、VARは主審にビデオ判定を要求した。
 スロー再生の中継映像を見ればはっきり分かるが、ゴンザレス選手の腕がわずかにネイマール選手の触れたが、ネイマール選手が倒れたのは、腕が触れてからしばらくして、接触プレーとは関係なく、見るからに“オーバー”なジェスチャーで“倒された”かのように振る舞ったのである。主審の眼は欺くことができても、映像御術の眼は欺くことができなかった。ネイマールにはシュミレーションの反則が与えれてもふさわしいプレーだろう。NOペナルティの判定が下された直後の中継映像には苦笑するネイマールの顔が映されていた。世界一のストライカーの看板が泣いている。


ペナルティエリア内のネイマール選手とディフェンスをするゴンザレス選手 出典 FIFA TV


VARのモニターを見る主審  出典 FIFA TV


VARの画面  出典 FIFA TV


NO ファールの判定後、苦笑するネイマール選手  出典 FIFA TV

“Vertial Offside Line” スペイン対モロッコ戦
 6月26日、カリーリングラードで開催されたB組の予選リーグ、スペイン対モロッコ戦の後半46分、コーナーキックを得たスペインはショートコーナーで挑み、DFのカルバハル選手中央に鋭いパスを入れ、これを合わせたFWのアスパス選手が鮮やかなヒールキックでゴール決めた。しかし、主審はオフサイドの判定をして得点は認めなかったが、VARが発動し、“Vertial Offside Line”で、オフサイドではないことを明らかにした。結果、主審は判定を覆し、スペインのゴールが認められた。
 これに対しモロッコの控えの選手がピッチになだれ込み抗議をし、スタンドではブーイングが響き渡り、スタンドからはペットボトルが投げ入れられるなど騒然とした。
 ところが、VARの“Vertial Offside Line”の画面を見れば、オフサイドではないことが明らかでである。
 シュートをしたアスパス選手の前にいたモロッコのDF、ハキミ選手(2)やすぐ背後にいたディラル選手(17)やダコスタ選手(4)に対しては明らかにオフサイドの位置にいたが、もう一人、最後方にもう一人、モロッコのDF、ブスファ選手(14)がいて、このDFの選手の足はは、アスパス選手よりゴール側にあったことがはっきりと分かった。
 肉眼でプレイを見ていると、背後のモロッコの選手の位置は、手前のモロッコの選手に気がとられて気が付かないし、一瞬の動きなので、選手の体の位置に気をとられて足の位置まで分からない。しかし、VARの“眼”はこれを見逃さなかった。
 オフサイドの判定が覆された結果、スペインのゴールが認められ、2対2の同点引き分けとなり、スペインは首位で決勝トーナメントに進出し、モロッコは予選リーグで敗退した。






モロッコDF、ブスファ選手(14)の位置は線審からは見えなかった可能性


画面に表示されたVertual Offsideline
出典 FIFA TV

“VARで覆った判定14件、正確性99.3% 一次リーグ48試合 FIFA発表
 2018年6月29日、FIFAは記者会見を開き、FIFA審判委員会委員長とPierluigi Collina元審判が、一次リーグを終了して、これまで試合でのVARシステムがどう使われたのか総括した。
 VARシステムは、一次リーグの48試合で、335件のインシデント(122のゴールを含む)を分析した。これは1試合あたり6.9回に相当する。
VARが映像をレビューしたのは17件で、そのうち14件は主審がフィールド・サイドでレビューを行い、当初の主審の判定が覆った。3件はオフサイドのような疑問の生じない明らかなファイルだった。
 その結果、審判の判定精度は、“VARなし”では95%、“VAR使用”で99.3%に上昇したとFIFAは総括した。

■ incidents analysed by VAR during the World Cup stage    335

■ reviews made by VAR                        17

■ decisions changed by VAR                     14


 Collina氏は「VARは完璧を意味するわけではない 。 間違った解釈や間違いがあるかもしれないが、99.3%の精度が確保されたので完璧に近いと思う」と述べ、VARの導入は成功だったとした。
 FIFAはVARの成果に満足している根拠に、VARコントロールルームからの映像とVARと審判の間のコミュニケーションの音声を、一次リーグ戦の4つのケースの激しいやりとりの瞬間を記者にクリップを示した。
 記者から、「FIFAは、このVARと審判のやりとりの音声を中継放送で使用することを検討するか」と尋ねられると、「実行には、様々な角度から慎重に検討することが必要だ」とし、「それは興味深いだろう。それを受け入れるかどうかは、サッカー界が意思決定をするだろう」と述べた。

「スイス戦でVAR適用拒まれた」ブラジル・サッカー連盟が主張
 ブラジル・サッカー連盟は6月20日、スイスとの1次リーグE組初戦で微妙な判定に対するビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の適用を要求したものの、拒否されたと明らかにした。
 同連盟はスイスが同点ゴールを挙げる直前と、FWガブリエルジェズスに対するペナルティーエリア内でのプレーについて、いずれもファウルがあり、VARを用いていればブラジルに不利な誤審が避けられたはずだと主張している。(共同 2018年6月20日)
 ブラジル代表のチッチ監督も、試合後の会見で、「言い訳をしたくはないが、(スイスのゴールの場面で)ミランダが押されていたのはとても明らかだった。VARシステムは評価できるが、公平にこのシステムが使えるように働きかけなくてはならない」とビデオ判定を採用する基準を疑問に感じていると述べたという。
 現状のVARの発動は、VAR側が一方的に判断して行うシステムであり、審判の判定に不満を抱いたベンチやプレーヤーが要求する権利は認められていない。
 しかし、公平な試合を担保するために、テニスの「チャレンジ制度」のようにプレーヤー側からの疑義に、何らかの形で答える必要があると思われる。VARシステムを根付かせるためにには運用上の問題を検討する必要がありそうだ。 

イランのクロイズ監督はVARの判定に激怒
 6月26日、イラン代表のカルロス・クイロズ監督は、引き分けに終わった対ポルトガル戦でのVARの対応に20分間以上激怒した。
ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド選手が、イランのモテエザ・プアリガンジ選手を“肘打ち”をしたにもかかわらず、審判がレッドカードを出さなかったことに怒ったのである。  ロナウド選手は、背後からプアリガンジ選手に迫りラフプレーを行うという悪質なファールだとした。
 ロナウド選手はイランのセアド・エザトラーヒと接触プレーで、ペナルティキックを得た後に、この怒りが爆発したのである。ロナウド選手のペナルティキックは失敗した。
ク イロズ監督は、「私は、特定の一人の審判について話をしているのではなく、VARというシステムについて話している。何千ドルももらっている5人がVARロームに座っていて、ロナウドの“肘打ち”を見逃している」と語った。

ま たクイロズ監督は、6月21日に行われた1-0で敗れたスペイン戦でのVARオフサイド判定も批判している。この試合でイランのゴールがVARのオフサイド判定で、ノー・ゴールになった。 クイロズ監督は、VARの導入は明確な判定が可能だとして支持を表明していたが、このオフサイド判定を受けて、議論の余地のあるプレーに対して、行き過ぎた判定をしていることに反対する明言した。
クイロズ監督は、「コーチもリアルタイムで情報を提供されなければならないし、プレーのレビューを見ることができなければならない。観客も何が起きたかを知りたがっている」と語った。
 更に「人間に間違いがあるのは疑問の余地はない。人間の間違いはVAR以前からあった。我々はそれを受け入れていた。それはゲームの一部だった。プレイヤーは間違いを犯す。コーチはミスを犯し、レフリーはミスをする。しかし今、膨大な経費をかけてハイテクという一つのシステムを手にしたが、このシステムに誰も責任を取らない」とVARシステムを批判した。

VARの解決しなければならない課題は
 シミュレーション(ファールを装うプレー)や審判の目線の外で行われるラフプレー、人間の「眼」で見ても分からない微妙なゴール判定などで、審判の「誤審」がなくなり、観客の疑念が一掃されるとVARの導入に期待が集まる。
 FIFAのインファンティノ会長は「主審の判定を手助けできる。より公平で透明なスポーツになる。とても重要で歴史的な決定だ」と意義を強調している。
 マラドーナの「神の手」は人間の「眼」は欺くことができても、最先端技術の「眼」はこれを見逃さないだろう。

 しかし、課題はまだ残る。
 ゴールの判定やオフサイドの判定は、“物理的”なもので、先端画像技術で判定は明らかになり、疑念は残らない。
 ところが、プレーヤー同士の接触プレーに伴うファールの判定は、極めて難しく、映像を何度もリプレーして見ても、ファールかどうか明らかに判定できない微妙なケースが多い。ボールを奪いにいってタックルをして相手プレイヤーの足をかけて倒した場合も、ボールにタックルにいって相手の足にからんだのか、相手を倒す目的で足をかけにいったのか、映像を解析してどちらともいえる場合がある。また腕で相手をブロックしたり、押し倒したりするケースもあるが、お互いに競り合っていていてファールといえるかどうか、判定が難しいケースもある。ハンドの反則も、故意なのかアクシデントなのかで一発退場かイエローカードなのか、“天と地”ほどペナルティの内容に差が出る。
 結局、最終的な判定は、主審の判断、主観に委ねられことになる。
 リプレーを視聴しても最終的に判断ができない部妙なケースがあるからだ。VARはあくまで主審の判断を補佐する“Video Assistant Refree”で、

 一方で、主審が見逃したファールや、肉眼では判別不能の一瞬のプレーなどは、超スローモーションやマルチアングル映像を見れば明らかに分かる場合も多い。こうした場合の判定には明らかに有効な機能だ。
 いずれにして、判定伴う疑念が巻き起こらないように、映像で情報をスタジアムの観衆やテレビの視聴者に映像情報を開示する姿勢は、公平性を保つ必要があるスポーツ・イベントには不可欠で歓迎したい。


VAR - The System Explained
FIFA TV/Youtube

Video Assistant Referee (VAR): Match-changing Incidents explained
FIFA TV/Youtube

Video Assistant Referee (VAR): The Virtual Offside Line
FIFA TV  Youtube




UHD 4K/HDRに乗り出したHBS
 2018 FIFA World Cup Russiaでは、FIAFは初めて、全64試合をUHD 4K/HDRで国際映像(World Feed)としてサービスすることに乗り出した。
 しかし、FIFAが映像サービスをどんな形で行うか決めたのは2年前、当時は4K/HDRの規格が策定されていなかったので、本格的なUHD 4K/HDRサービスの立ち上げは準備が間に合わず、「暫定的」なUHD 4K/HDRサービスとなった。
 結局今回の大会では、UHD 4K/HDRは、カメラ1セット、編集システム1セットのみの対応と極めて限定的な制作体制に留まり、3G-SDI(2160p/50[解像度](BT.2020[色域]、HDR[輝度]、4×2970Mbps[ビットレート])の映像制作をベースにして、4K/HDRへのアップコンバートで基本的に国際映像の配信を実施する。
 それでも3G-SDI(2160p/50)ベースの中継の解像度は、従来のHD-SDI(1080i)の解像度の約倍に増すだろう。
 FIFAの目指す本格的なUltra HDサービスに一歩近づいたと言える。
 ハイライト映像(EBIF、Highlights)の制作や、40クルーを投入した取材するENGベースの映像素材(FIFAチームクルー、ストーリークルー)も3G-SDI(1080P)で実施する。
 すべての3G-SDI(1080P)信号は、2160p/50[解像度]、BT.2020[色域]、HDR[輝度]、4×2970Mbps[ビットレート]、Slog 3の4K・HDRにアップコンバートされ、国際映像(World Feed)としてライツホルダー(MRLs:media rights licensees)に、ホスト映像・音声信号、Extended Stadium Feed(ESF)として配信される。
 こうした映像・音声信号はFIFA MAX Serverを中軸にしてコントロールされる。
 IBCでは、4K/HDRの他に、4K/SDR、3G-SDI(1080P/50[解像度]  Rec.709[色域」 SDR[輝度] 2970Mbps[ビットレート])やHD-SDI(1080i/50 Rec.709 SDR 14785Mbps)の映像信号もライツホルダー(MRLs:media rights licensees)に配信される。
 FIFA World Cupでこうした複数のフォーマットの映像信号が同時に配信されるのは初めてである。
 またすべてのコンテンツは、1080iにダウン・コンバートして配信するので、放送機関は従来通りのシステムに対応が可能である。

 試合の中継で使用する中継カメラは基本的に3G-SDI(1080P BT.2020 HDR)で信号制作が行われるのに対し、特殊カメラ(スローモーションカメラ、RF Steadycam、Spidercam)はすべてのカメラは1080P、Rec.709[色域]、SDR[輝度]で撮影が行われる。これらのカメラも高性能のCMOSセンサーを搭載しているので、従来より高画質の映像が得られるという。
 ホストブロードキャスターのHBSは、同時にHD-SDI(1080i REC709 SDR)のフルHD規格の信号を配信するので、各局が備えている現在の標準HD制作フローを変更する必要はないとしている。

 UHD/HDR中継については、UHDテレビの大画面サイズの利点を考慮して通常のHDカメラよりも広いフレーミングを持つUHD専用中継カメラ1台とUHD/ HDRとUHD/HDRと1080pのサイマル出力が可能な7台のカメラを使用し4K/HDR信号を制作する。
 また1080P/HDRと1080P/SDRのサイマル出力が可能な8台の中継カメラを使用し、色域はBT.2020、輝度はHDRで信号制作を行う。
 残りのすべての中継カメラや、スローモーションカメラ、steadycam、Spidercamは1080pで信号を制作し、色域はREC 709、輝度はSDRでキャプチャーされるが、最新鋭のコンバータを使用し、解像度だけでなく、色域はREC 709からBT 2020に、輝度についても、SDRをHDR(Slog 3)に変換され、すべての試合がUHD/HDRフォーマットの信号に統一される。
 2018 FIFA World Cup Russiaの組織員会のMiodownik氏は、「私たちは15放送機関のUHD/HDRユーザーを抱えている。実際には期待していたものの2倍だ」と語った。

スタジアムのカメラ配置

▼ Super Slowmotion Camera     8台(中継カメラ)
▼ Ultra Slowmotion Camera     2台(中継カメラ)   4台(小型カメラ)
▼ UHD(4K) Camera         1台(中継カメラ)     1台(小型カメラ)
▼ HD Camera(1080P)        11台((中継カメラ)   1台(小型カメラ)
▼ Goal Camera                          2台(小型カメラ)
▼ Crane Camera                          2台(小型カメラ)
▼ Steadycam                           2台(小型カメラ)
▼ Spidercam(空中懸架ワイヤーカメラ)            1台(小型カメラ)
▼ Offiseide Camara(VAR専用)                 2台(小型カメラ)
▼ Beaty Vamera(汎用)                     1台(小型カメラ)
▼ Cineflex heli-cam(空撮)                  1台(小型カメラ)

合計37台(1スタジアム)  放送中継カメラ  33台


スタジアムのカメラ配置
出典 VAR at the 2018 FIFA World Cup Russia  

NHKはBS1で全64試合、総合TVで32試合放送 日本戦・決勝戦は8Kで中継
 NHKは、2018 FIFA World Cup Russiaで、BS1で64試合の全てを放送し、総合テレビは32試合を放送する。 6月19日に行われる日本の初戦、コロンビア戦は、午後8時45分から総合テレビで放送する。また7月15日の決勝戦も総合テレビで放送する。
 BS1は全64試合を放送。日本の第2戦、6月25日午前0時からのセネガル戦はライブで中継放送、その他の63試合は中継録画放送となる。
 8K放送は、NHKが8K中継車や22.2.サラウンド音声中継車をロシアに送り込み8K中継をを行い、日本戦の初戦、日本対コロンビア戦では8Kライブ中継に挑む。その他は8K中継録画放送で、ロシア対サウジアラビア戦(6月15日)、ベルギー対チェニジア戦(6月23日)、セルビア対ブラジル戦(6月28日)、決勝トーナメント1回戦(7月2日)、準々決勝(7月7日)、準決勝(7月12日)、決勝(7月16日)の8試合は8K/22.2サラウンド音声で放送する。放送波は4K8K試験放送のBS17チャンネルだが、8Kチューナーがまだ市販されていないので、家庭では視聴できない。
 また、ワールドカップとしては初めて、FIFAは国際信号(World Feed)として4K/HDRで、全64試合を制作/配信を行う。
 NHKでは、4K8K試験放送で、日本対セネガル戦(6月25日)、日本対ポーランド戦(6月28日)、準決勝(7月11日)、3位決定戦の4試合を、4K/HDR、5.1サラウンド音声で放送する。
 インターネット配信は、パソコンやスマートフォンのワールドカップサイトや専用アプリで実施。
 総合テレビで中継する32試合は、FIFAが提供するマルチアングルの動画や試合の経過やシュート、ファウルなどの情報サービスがついた映像をライブ配信する。
 マルチアングル・サービスは、試合中継、戦術カメラ、ワーヤーカメラ、4分割A(Aチームの選手やコーチ・カメラ)、4分割B(Bチームの選手やコーチ・カメラ)などを視聴者が選択して見ることができる。
 全64試合の見逃し配信や、ハイライト動画の配信も実施する。
 また、大会期間中は総合テレビで放送する中継番組をのネット同時配信実験を行う「試験的提供A」も行う。
 放送同時配信サービスは、NHKの“悲願”だが、民放等の反対でなかなか実現はできない中でのネット同時配信実験である。
 平昌冬季五輪でも実施し、NHKは放送同時配信サービスの実績を着々と積み重ねていて、2020東京オリンピックまでにどのような形にするのか注目される。

日本初戦や決勝など東京と大阪で8K/4Kパブリックビューイング
 NHKは、東京・大阪の6会場において、4K/8K映像でパブリックビューイングを行なう。
8Kパブリックビューイングが行わるのは全64試合のうち、NHKが8K/22.2サラウンド音声中継を行う開幕戦のロシア対サウジアラビア戦(6月15日)、コロンビア対日本戦(6月19日)、ベルギー対チェニジア戦(6月23日)、セルビア対ブラジル戦(6月28日)、決勝トーナメント1回戦、準々決勝(7月7日)、準決勝(7月12日)、決勝(7月16日)などの8試合。
さらに国際映像として配信される4K映像/5.1ch音声でサービスされる4試合と合わせてサービスされる。
 4K/8Kパブリックビューイングを実施する会場は、東京・渋谷のNHKみんなの広場 ふれあいホールや、東京ミッドタウン日比谷 アトリウム、世田谷区のiTSCOMスタジオ&ホール二子玉川ライズ、千駄ヶ谷(JR新宿駅直結)のLUMINE O、グランフロント大阪 ナレッジシアター、渋谷のヒカリエホールBの6会場。
 全国のNHKの放送局のロビーでも4K/8Kパブリックビューイング・サービスが行われる。

日本戦、日テレ、フジテレビが放送 決勝トーナメントはTBS、テレビ朝日が放送
 6月25日の第2戦、セネガル戦は、日本テレビが放送、6月28日の第3戦、ポーランド戦はフジテレビが放送する。
グループリーグは、日本テレビ、TBS、テレビ朝日、フジテレビで放送する。
決勝トーナメントはTBSとテレビ朝日でそれぞれ4試合放送する。

2018FIFAワールドカップ ロシア大会 NHK・民放 放送予定






Ultra HDとVRサービスに挑むBBC 2018 FIFA World Cup Russia

平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~

“迷走” 2020年東京オリンピック・パラリンピックのメディア施設整備~IBC(国際放送センター)・MPC(メインプレスセンター)~
ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 オリンピックのメディア拠点 IBC(国際放送センター) MPC(メイン・プレス・センター)/ MPC(メイン・プレス・センター)

暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か

8Kスーパーハイビジョン 試験放送開始 準備着々 NHK技術研究所公開

5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ
5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP





国際放送センター(IBC) 設営・運営業務実績
国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)







2018年6月15日
Copyright (C) 2018 IMSSR





******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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東京オリンピック マラソン札幌開催 競歩 合意なき決定 暑さ対策 コーツ委員長 小池都知事

2019年11月06日 21時45分42秒 | 東京オリンピック



マラソンと競歩の札幌開催 四者協議で合意 小池都知事「合意なき決定」として了承
 11月1日昼、東京・晴海でマラソンと競歩の札幌開催を巡って国際オリンピック委員会(IOC)、国、東京都、大会組織委員会で四者協議のトップ級会合が開かれ、札幌開催が合意された。
 会合の冒頭で、コーツ調整員会委員長から、4つの号事項が示され、▼会場変更の権限はIOCにある、▼札幌開催で発生する新たな経費は東京都に負担させない、▼既に東京都が大会組織委員会が支出したマラソン・競歩に関する経費については、精査・検証の上、東京都が別の目的で活用できないものは、東京都に負担させない、▼マラソン・競歩以外の競技は、今後、会場変更をしないとした。
 これに対して、小池都知事は「東京開催がベストだが、大会を成功させるこが重要なことに鑑みて、IOCの最終決定を妨げることはしない。『合意なき決定』だ」と札幌開催に同意することを表明した。
 バッハ会長は、小池都知事に対し、2020五輪大会終了後、東京都が準備したマラソンコースを利用して「オリンピック・セレブレーション・マラソン」を開催することを提案した。
また小池都知事は、「地球温暖化の影響でこれから夏はさらに暑くなり、7月~8月の大会開催は、北半球のどこの都市で開催しても、暑さの問題が生じて無理がある。アスリートファーストの観点でIOCは五輪大会の開催時期をよく考える必要がある」と今後の五輪大会に向けてクギを刺した。
 これに対して、コーツ委員長は「『アジェンダ2020』ですでにオリンピック憲章を改正し、協議の開催地は開催都市以外や、場合によっては開国以外の開催も認められることになっている」と応じた。
 一方、10月30日、国際陸連などが札幌開催に向けて、マラソンと競歩の計5種目を3日間で開催する2案をまとめたことが明らかになった。いずれの案も男女のマラソンを同じ日に実施する計画である。
 変更案の一案は8月7日に男女20キロ競歩、8月8日に男子50キロ競歩を実施。マラソンは女子と男子を同じ日の8月9日に行う。
 二案は5種目を7月27~29日か7月28~30日に3日間で行う。男女マラソンは同日開催するが日にちは明示していない。二案の場合は新国立競技場で陸上競技のトラックが始まる7月31日以前の開催になり、同じ時期に東京と札幌の2カ所に分かれて陸上競技を行うことが避けられる。
 国際陸連は参加の各国・地域の連盟に対し、2案のどちらを望むかを10月31日までに回答するよう求めている。



際立った森組織委会長と武藤事務総長の手腕」
 IOCの札幌開催案を受けて、森組織委会長は東京都内で記者団に「暑さ対策の一環からみれば、やむを得ない。受け止めるのは当然」と述べ、いち早くこれを容認する姿勢を示した。
 IOCより札幌開催の一報を聞いて、森組織委会長は、武藤事務総長と二人だけで善後策を協議したという。最大の問題は小池都知事をどう納得するかが焦点だった。小池都知事が経費負担にこだわっているのを察知して、当初は予備費で札幌開催経費をまかなうというIOCを説得して、全額IOC負担とし、東京都には負担させないことで小池都知事を納得させる戦略をとったものと思われる。
 その一方で、IOCが負担するという札幌開催の経費増加分は、選手や大会関係者の旅費や宿泊費など一部で、大会運営費はもともと予算化されている上、札幌開催の方が東京開催よりコンパクトになる可能性大きいため、きわめて限定した額にとどまる見通しを持ったと思われる。コース整備も札幌マラソンのコースをフル活用したり周回コースにすることで最小限に抑えられる。また、東京都がすでにマラソン開催の準備に支出した経費の補填についても、道路の遮熱舗装などは、マラソン開催だけの目的ではなく、東京の街全体の暑さ対策を進めるインフラ整備費、「レガシー経費」とされた場合は、五輪開催経費の対象にはならないため、すでの東京都が支出した300億円のほとんどは対象にならないと可能性がある。元財務次官の切れ者の武藤氏であれば、簡単に見抜くことができたであろう。残されたのは、都民の反発や不満、落胆といった感情をどう抑えるかである。こうした感情が反オリンピックにつながるがIOCにとっては大きな痛手だろう。バッハ会長は、2020五輪大会終了後、東京都が準備したマラソンコースを利用して「オリンピック・セレブレーション・マラソン」を開催することを提案して、都民の感情に配慮する「切り札」を切った。
 札幌開催を巡る騒動では、森会長と武藤事務総長の沈着冷静な老練な手腕が際立った。IOCに札幌開催経費を負担させることでで東京都を納得させる根回しを行ったと思われる。大会組織委員会とIOC、タッグを組んで、周到に小池都知事の包囲網を張ったのである。今回の一件で、大会組織委員会はIOCの一層の信頼感を得てポイントを挙げた。

五輪マラソン・競歩 札幌開催めぐり協議開始
 10月30日、東京・晴海で、国際オリンピック委員会(IOC)の調整委員会が、ジョン・コーツ委員長や森喜朗大会組織委員会委員長、小池百合子東京都知事、橋本聖子五輪担当相が出席して3日間の予定で始まった。
 会議の冒頭で、コーツ委員長は、「10月16日にIOC理事会はマラソンと競歩の札幌での開催を決定した。この決定は迅速に決まった。IOC理事会がなぜこの決定をしたか東京都民からの理解を得なければならない。コンセンサスが得られず、良好な関係が築けないままで、日本を離れる気持ちはない。IOCがなぜこの決定をしたのか理解してもらいたい」とした。これに対し、小池都知事は、「10月16日にIOCから東京五輪のマラソンと競歩に関して突然会場変更計画の発表がバッハ会長から発せられた。東京都や都民にとっては大変な衝撃で、都や都議会になんら詳しい説明のないままの提案で、開催都市とは何なのかとのとの怒りの声寄せられている。開催都市の長として都民の代表としてマラソンと競歩の東京での開催を望みたい」と述べ、「開幕まで9カ月と切って準備が総仕上げの段階で開催地の東京に最後まで相談のないままこのような提案が行われたことは極めて異例の事態」と強く反発した。IOCからの札幌開催についての連絡が、東京都が一番遅くなって「蚊帳の外に置かれ、しかもなんの事前の協議もなくいきなり「決定」とされたことに猛烈に反発した。
 これに対して、橋本五輪担当相は、「競技会場は、開催都市契約を締結した当事者のIOC、東京都、大会組織委員会の間で協議するものと考えている」として協議を見守る立場を表明した。また森組織委会長は、「大会まであと9か月という中で、納得できる結論を出すことが重要」とし、「ラグビーW杯で『ワンチームの精神』は日本国民に感銘を与えた。この動きを五輪につなげることが大事だ」として小池都知事を牽制した。
 コーツ委員長は、「すでにIOCの決定は進んでいる。国、東京都、大会組織委員会、IOCの四者で実務者会議を立ち上げて実務者協議を行うことを提案したい。実務者会議には選手が選手村から競技会場に移動する輸送部会とオリンピックの遺産をどう残すのかをテクニカルな議論する部会の二つの部会も設置したい」と述べ、11月1日に再びトップレベルで四者協議を行いたいとした。
 東京都は、実務者協議で、▼経緯の説明、▼マラソン東京開催の可能性、▼競歩東京開催の可能性、▼暑さ対策、▼東京開催を望む都民の声、▼会場変更、▼財政負担の7つの項目について議論をしたいとしている。
 一方、大会組織委員会は、札幌開催で新たに生じる経費をすべてIOCに負担を求めることとし、東京都には一切、負担を求めない方針と伝えられている。札幌開催のコースは札幌マラソンをベースにしながら、スタート地点を大通り公園にするという案をIOCに提案する方向とされている。また、パラリンピックのマラソンについては、国際パラリンピック委員会(IPC)は東京開催(9月6日)を確認している。
橋本聖子五輪担当相は、10月19日に札幌で、「ドーハの世界陸上で棄権したアスリートが考えていた以上に多かったことに関して、相当な危機感を持って決断した」とし、札幌開催に理解を示し、IOCへの信頼感を示した。スピード・スケートや自転車競技で世界を舞台に活躍したアスリートとして、酷暑での過酷なレースの開催に反発していたのであろう。また森組織委会長も「暑さ対策の一環からみれば、やむを得ない。受け止めるのは当然」として、IOCの決定を容認する姿勢だ。
 また札幌市は、2026年の冬季五輪大会の招致を目指していて、マラソンと競歩の札幌開催に前向きである。
 あくまで東京開催を主張する小池都知事は孤立し、札幌開催の包囲網はすでに出来上がっている。また五輪憲章では、競技会場の選定についてはIOC理事会の権限を幅広く認められていてのでIOCの決定を覆すのは難しい。札幌開催は既定方針として、経費負担や開催日、コース選定などの条件に絞られていると思われる。小池都知事の「苦渋」の決断が求められた。東京都にとっても、札幌開催を巡っての混乱が長引くことで、2020東京五輪大会全体に悪影響が及ぶことが最大の懸念材料となった。

五輪マラソン札幌変更「決定だ」 IOC幹部が知事に明言
 10月25日、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長は、東京都庁で小池百合子知事と会談し、東京五輪陸上のマラソンと競歩を札幌に変更する案について「決定だ」と断言した。
 さらにコーツ委員長は、男女マラソンのメダリストの表彰式を閉会式で行うとともに、東京以外の都市で実施された競技の選手たちが閉会式参加を前に東京でパレードをする案も示して、札幌への変更に理解を求めた。
 これに対し、小池知事は「一生懸命準備してきて、都民もがっかりしている。納得できる説明がない。いきなり最後通牒となっているのは、まったく解せない」」とし、「東京でマラソンと競歩を行うと気持ちに変わりはない。(30日から始まる)IOC調整委でしっかり議論していきたい」と反論した。
 しかし、コーツ委員長は、「(札幌開催は)は決定事項だ。東京が主張したらどうするという問題ではない」と断言した。
 小池都知事は、仮に札幌開催になった場合は、追加経費(都民ファースの試算では約340億円)は「都が負担する考えはない」と明言した。一方、コーツ委員長は、V3予算案に計上している予備費の存在を指摘した。
 ドーハの大会では、酷暑をさけて男子マラソンも女子マラソンも異例の深夜11時59分スタート、それでも女子マラソンがスタートした9月28日の深夜は気温32.7度、湿度73.3%という過酷な気象条件だった。女子マラソンの68人の出場選手の内、約40%の28人が棄権、ゴール後に39人が救護所に担ぎ込まれたというまさに「命がけ」のレースとなった。コーツ委員長は、ドーハと東京は気温や湿度という気象条件で極めて似ているとした。
 東京都は、午前6時のスタートをさらに1時間早めて午前5時にスタートするという案を検討しているとしたが、コーツ委員長は、午前5時ではまだ暗闇でマラソンコースの景色が伝わらないし、放送用のヘリコプターが飛べないとして「午前5時案」を一蹴し、酷暑対策から見ても「スタート時間を早めても意味がない」と述べた。
 また小池都知事は、「とにかくプロセスが納得できない。東京都はこれまで調整・準備を行ってきて、警備・交通規制、沿道、宿泊などあらゆる観点から検討してきた。(今年の7月に来日した)IOCのバッハ会長は東京都の準備状況を高く評価していた」と憤り示した。
 東京都は、これまで、マラソンや競歩など路上競技の暑さ対策としてコースの路面温度を抑える遮熱舗装工事を、都道約136キロを対象に進めてきた。すでに約129キロ、大半が完成している。 さらに、コースの給水所にポリ袋に砕いた氷を詰めた「かち割り氷」、ゴールには氷入り水風呂を用意する。かち割り氷は選手が走りながら体を冷やせるほか、水風呂はゴール後に熱射病の症状が見られる選手に対処するためである。観客の暑さ対策でも、日よけテント設営や冷却グッズ、手回し扇風機を配るなど検証を重ねている。
 こうした暑さ対策で、東京都はすでに約300億円を投じたとしている。札幌開催が実現すればこうした経費は水泡に帰すことなる。
 また札幌移転が発表されたのは、都が検証結果を基に休憩所の増設など大会本番への方針を決めた直後だった。
 しかし、10月18日、そのバッハ会長が、ドーハで行われた各国オリンピック委員会連合(ANOC)総会で、約二百カ国・地域の代表者を前に「(札幌開催は)より涼しく選手の健康を守れる。これは大きな、そして重要な一歩だ」と発言しているのである。

マラソン・競歩札幌開催費は誰が負担する? 破たん寸前V3予算「1兆3500億円」
 東京五輪大会の開催経費は、東京都、国、大会組織委員会の3者で協議を重ね、2018年12月21日、総額を1兆3500億円(予備費1000億円~3000億円除く)とするV3予算を公表した。 
 V3予算では、1兆3500億円とは別枠で、「予期せず発生し得る、緊急に対応すべきき事態等に対処する」として1千億円から最大で3千億円の「予備費」を設けている。予測できない天変地異やテロ発生、大規模災害などに対処する経費とした。
 しかし、この「予備費」は、財源の裏付けがなく、東京都、国、大会組織委員会の誰がどれだけ負担するのかが決まっていない。曖昧な性格のままに放置されている。
 実は、この予備費とは別に、大会組織委員会は「調整費」として、350億円をV3で計上している。今後、新たな支出が発生してきた場合に対応する大会組織委員会の予備費である。
 しかし、酷暑対策費が膨らむことが確実になっていることや交通対策費や警備費も増えることなどで、大会組織委員会の財政状況は極めて苦しい。300億円以上といわれている札幌開催経費を負担することは不可能なのは明らかである。
 小池都知事は、10月15日に武藤事務総長から説明を受けた際、「国が持つ」と伝えられたという。一方、大会組織委員会の森会長は17日、「『IOCが持ってください』と、そういうことを言わないといけない」と述べた。一方、菅官房長官は18日、「東京大会は東京都が招致して開催するもの。その準備・運営は東京都と大会運営委員会が責任を持ってするものであると理解している」と述べ、コーツIOC調整委員長は、予備費で充当して欲しいとして、真っ向から食い違っている。
 小池都知事は、経費は「原因者が負担すべき」と主張する。2020東京オリンピック・パラリンピックの経費は東京都が開催地を含めて提案したらこそ負担するのであって、札幌開催の経費は積極的であれ、消極的であれ、それをやりたい人が負担すべきであると主張する。
 IOCの主張通り、仮に予備費から支出する場合は、按分はどうするかは別にして、東京都、国、大会組織委員会の3者で負担することになる。
 2016年末に、海の森水上競技場、オリンピックアクアティクスセンター、有明アリーナの会場建設を巡って、小池都知事と森大会組織委員会会長、コーツIOC副会長との間で激しい対立が繰り広げられたのは記憶に新しい。
 マラソンと競歩の札幌開催を巡って、三つ巴の攻防戦の第二幕が切って落とされた。



マラソンと競歩は真夏の東京開催を断念せよ 「アスリートファースト」の理念は何処へ行った?
 マラソンと競歩の札幌開催に強く反発する小池都知事は、これまで開催準備を進めていく際のコンセプトとして、「アスリートファースト」を何度も強調してきた。
 地球温暖化の異常気象が原因なのか、ここ数年の東京の真夏の酷暑は異常である。
 そもそも東京の8月に五輪大会を開催しようとするのが無謀な計画だろう。
 マラソンは、本来はスピード、走力、持久力を競う競技で、「暑さ」の「我慢比べ」を競う競技ではない。東京の真夏でレースはまさに「命がけ」のレースを選手にしいることになる。こうした競技運営は「アスリートファースト」の理念とはまったくかけ離れている。IOCの意思決定のプロセスや経緯は大いに批判されてしかるべきだ。しかし、五輪大会は「アスリートファースト」でなければならいだろう。小池都知事は酷暑の東京でのマラソンや競歩開催に固執して「アスリートファースト」の理念は放棄するのか。
 今回の札幌移転について、IOCの強引な進め方については、強く批判されてしかるべきだろう。今後の五輪の運営について禍根を残した。
 しかし、そのことは別にして、筆者は、マラソン・競歩の札幌開催は大賛成である。東京開催を支持する専門家もいるが、選手に「命がけ」のレースを強いて、なにがスポーツなのかまったく考えていないことに唖然である。
 経費が問題なら、札幌大会は本来の東京大会のコンセプトである「コンパクト」な競技会にすればよい。マラソン・競歩だけでなく水質汚染や水温が問題化しているトライアスロンやマラソンスイミングもきれいな海で泳ぐことができるように会場変更すればよい。東京以外で開催することになぜ抵抗するのだろうか。
 どうしても東京でマラソン・競歩を開催したければ、開催時期を秋や冬の期間にずらして行えばよい。競技を集中させなければならいない理由はなにもない。あるのは、一極集中にこだわり巨大な利益を守ろうとする商業主義だろう。
 オリンピックの肥大化や行き過ぎた商業主義が批判されてから久しい。競技の開催地や開催時期も分離することで、「アスリートファースト」の理念の下で「世界一コンパクト」な大会を目指すべきである。




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2019年11月1日
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廣谷  徹
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都政改革本部調査チーム オリンピックアクアティクスセンターの大幅な見直しを提言

2019年10月30日 16時54分13秒 | 東京オリンピック


都政改革本部調査チーム オリンピックアクアティクスセンターの大幅な見直しを提言
 調査チームは、国際水泳連盟や国際オリンピック委員会(IOC)の要求水準から見ると五輪開催時の観客席2万席という整備計画は過剰ではないかとし、大会開催後は減築するにしても、レガシーが十分に検討されているとは言えず、「国際大会ができる大規模な施設が必要」以上の意義が見出しづらいとした。
 「5000席」に減築するしても、水泳競技の大規模な国際大会は、年に1回、開催されるかどうかで、国内大会では、観客数は2700人程度(平均)とされている。(都政改革本部調査チーム)
 また「2万席」から「5000席」に減築する工事費も問題視されている。現状の整備計画では総額683億円の内、74億円が減築費としている。
 施設の維持費の想定は、減築前は7億9100円、減築後は5億9700万円と、減築による削減額はわずか年間2億円程度としている。(都政改革本部調査チーム) 減築費を償却するためにはなんと37年も必要ということになる。批判が起きるのも当然だろう。
 施設維持費の後年度負担は、深刻な問題で、辰巳水泳場だけでも年5億円弱が必要で、新設されるオリンピックアクアティクスセンターの年6億円弱を加えると約11億円程度が毎年必要となる。国際水泳競技場は赤字経営が必至で、巨額の維持費が、毎年税金で補てんされることになるのだろう。
 大会開催後のレガシーについては、「辰巳国際水泳場を引き継ぐ施設」とするだけで検討が十分ではなく、何をレガシーにしたいのか示すことができていない。大会後の利用計画が示されず、まだ検討中であること点も問題した。
 辰巳国際水泳場の観客席を増築する選択肢は「北側に運河があるから」との理由だけで最初から排除されており、検討が十分とは言えないとし、オリンピックアクアティクスセンターは、恒久席で見ると一席あたりの建設費が1000万円近くも上りコストが高すぎると批判を浴びた。
 結論として、代替地も含めてすべての可能性を検証すべきで、オリンピックアクアティクスセンターの現行計画で整備する場合でも、さらなる大幅コスト削減のプランを再考することが必要だと指摘した。
 2016年11月29日、競技会場見直しや開催費削減などを協議する国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が東京都内で開かれ、アクアティクスセンターは観客席2万席から1万5000席に縮減して、大会後の「減築」は止めて、683億円から514~529億円程度に削減して建設することで決着した。


東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 競技会場の全貌




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東京オリンピック ICTイノベーション戦略 史上最もイノベーティブな大会

2019年10月30日 12時49分37秒 | 東京オリンピック



「史上最もイノベーティブな大会」 ICTイノベーション戦略でレガシー創出
 2018年10月17日、幕張メッセで開催されたCEATECで、KEYNOTESセッション、「東京2020大会に向けテクノロジー&イノベーション」が催された。モデレーターは太田弘子氏(政策研究大学院教授)、パネラーは古宮正章氏(東京大会組織委員会副事務総長)、黒田 亮氏(内閣府大臣官房審議官)、栗山浩樹氏(オリパラ等経済界協議会運営員会座長)、テクノロジー&イノベーションの観点から、東京五輪大会のレガシーを議論した。
 政府は、2020東京大会開催に向けて、「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた科学技術イノベーションの取組に関するタスクフォース」を立ち上げた。
 2020年の東京大会のアクション&レガシープランでは、①全員が自己ベスト、②多様性の調和、③未来への継承の3つの基本コンセプトを掲げ、「史上最もイノベーティブでで世界にポジティブな改革をもたらす大会」にするという目標を打ち出している。
 タスクフォースでは、「Innovation for Everyone」というキャッチフレーズのもとに、「1964年大会は日本を変えた。2020大会は世界を変える」といういささか力の入りすぎた感があるスローガンを掲げている。そして、 競技観戦・観光を「快適」に楽しむ、「環境」の負荷を低減したクリーンな大会の実現、選手・観客・来訪者の「安全」の確保を柱にした9つのプロジェクトを推進するとした。


2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた科学技術イノベーションの取組に関するタスクフォース

 このプロジェクトの責任者の黒田 亮氏は、まず、1964年東京大会のレガシーを①交通インフラ(東海道新幹線、首都高速道路、東京モノレール)、②コンピューターを始めて利用して競技の記録を整理、③衛星放送技術、④国立競技場、代々木体育館などを指摘した。
 そして、2020東京大会のレガシーの基本概念は、“Society 5.0”、すべてのモノがつながるIoT、AI=人工知能、ロボット、多言語自動翻訳、顔認証システム、自動走行車、VR/ARなどの新臨場映像体験、水素エネルギー、イノベーションで様々なニーズをサポートする技術であるとした。
 この9つのプロジェクトは、すべて超高齢化社会に突入する日本の持続的な発展に欠かせないイノベーションで、「世界で最高水準のICT社会の実現」という政府のICT戦略そのものである。2020東京五輪大会があろうがなかろうが、日本の成長戦略にとって必須のICTイノベーション戦略である。ICTやSociety 5.0戦略は、すでに官民あげてオールジャパンで取り組みが進んでいる。しかし、これは2020東京五輪大会の開催とは無関係の日本が取り組まなければならない成長戦力で、大会開催のレガシーとするのは違和感がある。
 一方、古宮正章氏は、日本ならではの細やかな「思いやり」や「おもてなし」の心を養ってレガシーとして残したいとした。
 2020東京大会のレガシーを考えるにあたって、競技場施設や交通インフラ、社会資本、テクノのロジーなどの有形のレガシーはさることながら、「思いやり」や「おもてなし」などの無形のレガシーを育む姿勢には大賛成である。“箱物主義”のレガシーはとは決別することが肝要だろう。
 筆者にとって最大の疑問は、2020東京大会の開催経費、「3兆円」のレガシーはどうなるのかである。新国立競技場、海の森競技場、オリンピックアクアティクスセンターの赤字は、誰が負担するのか。本当に市民のための施設になるのか。
 今回のセッションを聞いていて、2020東京大会の現実の問題と向き合っていないレガシー論議に虚しさを覚えた。
 要は、「3兆円」のレガシーをどうしてくれるのかである。





「東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか


「東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

「1725億円」は五輪開催経費隠し 検証・国の会計検査院への反論 青天井体質に歯止めがかからない
東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011千億円支出 組織委公表の倍以上に膨張 会計検査院指摘

東京オリンピック 難題!交通対策 渋滞マップ 15%削減 渋滞・混雑は解消できるか?


東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 競技会場の全貌
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 「3兆円」!の衝撃
東京2020競技会場マップ








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東京オリンピック 競技場 競技会場 最新情報(下)

2019年08月08日 08時00分01秒 | 東京オリンピック

「3兆円」! 膨張する開催経費 どこへいった五輪開催理念
“世界一コンパクトな大会”(下)


東京五輪開催経費「3兆円超」へ 組織委公表の倍以上に膨張
国の支出は8011億円 会計検査院指摘

 2018年10月4日、会計検査院は2020東京オリンピック・パラリンピックの開催経費ついて、平成25年度から29年度までの5年間に国が支出した開催経費が約8011億円に上ったと指摘した。
 これまで大会組織委員会が明らかにしていた開催経費は、総額約1兆3500億円で、このうち大会組織員会は約6000億円を、東京都が約6000億円、国が新国立競技場の建設費の一部、1200億円やパラリンピック経費の一部、300億円の合わせて約1500億円を負担するとしていた。
 これに対し会計検査院は、各省庁の関連施策費を集計した結果、国は1500億円を含めて平成25~29年度に8011億9000万円を支出していると指摘した。
 今回の指摘で、組織委が公表した国の負担分1500億円から除外した競技場周辺の道路輸送インフラの整備(国土交通省)やセキュリティー対策(警察庁)、熱中症に関する普及啓発(環境省)などの約280事業に対し、約6500億円が使われていたことが明らかにした。
 五輪開催費用については、今年1月、東京都は組織委公表分の都の予算約6000億円とは別に約8100億円を関連予算として支出する計画を明らかにしている。検査院によると、組織委が公表した予算、1兆3500億円には「大会に直接必要なもの」に限られ、国の省庁や都庁が、五輪開催経費とせず、一般の行政経費として組んだ予算は含まれていないという。
 組織員会、東京都、国の五輪関連経費を改めて合計すると、約2兆8100億円となり、今後に支出が予定される経費も含めると、「3兆円」超は必至である。
 



出典 「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院

五輪大会開催経費 「1725億円」 国、会計検査院に反論
 11月30日、桜田義孝五輪担当相は、2020東京五輪大会に、国が2013~2017年の5年間に支出した経費は53事業で「1725億円」とする調査結果を公表した。会計検査院の「8011億円」という指摘に対し、内閣官房が精査した。
 桜田氏は、五輪関係の経費とそれ以外の経費の線引きを明確に示したと説明し、「透明性を確保し、国民の理解を得るために今後も支出段階で集計、公表していく」と述べた。
 2020東京五輪大会に開催経費については、2017年12月22日、大会会組織委員会は、総額「1兆3500億円で、東京都が「6000億円」、大会組織委員会が「6000億円」、国が「1500億円」を負担するとした。
 これに対し、11月4日、会計検査院は「1500億円」を大幅に上回る「8011億円」が、すでにこの5年間で支出されたとの指摘を国会に報告し、政府に経費の全体像を分かりやすく示すよう求めた。

 東京都は、すでに「8000億円」の他に、五輪関連経費として「8100億円」を投入することを明らかにしていて、会計検査院の指摘の「8011億円」や、今後支出する経費も加えて試算すると、「3兆円」に膨れあがることが明らかになった。
 
 内閣官房では、大会に関連すると指摘された計8011億円の286事業について、(1)選手への支援など「大会の準備、運営に特に資する事業」(1725億円)(2)気象衛星の打ち上げなど「本来の行政目的のために実施する事業」(826億円)(3)道路整備など「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(5461億円)の三つに分類し、五輪大会開催のための国の支出は(1)の「1725億円」だとした。

 (1)には、新国立競技場の整備費の国の負担分(744億円)やパラリンピックの準備費(300億円)が、(2)は気象衛星の打ち上げ関連費用(371億円)など29事業、826億円が含まれている。
 (3)は首都高速などの道路整備費(1390億円)、水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費(569億円)など208事業で合わせて5461億円と大半を占めている。
 このほか、会計検査院が指摘した8011億円に含まれていないが、大会に直接関連する事業として国立代々木競技場など5施設の整備や改修のための国庫補助金を直近5年間で約34億円支出したと明らかにした。
 しかし、五輪大会開催経費を「1725億円」する国の主張は、明らかに「五輪経費隠し」、膨れ上がった五輪開催経費をなるべく低く見せかけて、世論の批判をかわそうとする姿勢が見え隠れする。

「1725億円」は五輪開催経費隠し 国、会計検査院に反論 青天井体質に歯止めがかからない
“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」




東京オリンピック・パラリンピックの全競技会場決まる IOC承認
 2018年5月2日、国際オリンピック委員会(IOC)は、スイス・ローザンヌで開いた理事会で2020年東京五輪大会のサッカー7会場を一括承認した。これで東京オリンピック・パラリンピックの43競技会場がすべて決まった。
 オリンピッックは42会場、パラリンピックで21会場(ボッチャ競技のみ幕張メッセCでパラリンピック単独で開催 その他はオリンピックと共通競技会場を使用)で開催される。
 この内、オリンピックで開催される競技数は、東京大会組織委員会が提案した追加種目、5競技18種目を加え、合計競技数は33競技、種目数は339種目で、選手数の上限を11,900人とすることが決定されている。
 一方、パラリンピックは22の競技が開催される。
 今回、承認されたのは「札幌ドーム」、「宮城スタジアム」、「茨城カシマスタジアム」、「埼玉スタジアム」、「横浜国際総合競技場」、「新国立競技場」、「東京スタジアム」の7会場で、決勝は男子が「横浜国際総合競技場」、女子は「新国立競技場」で行う案が有力とされている。
 今回承認された43の競技会場の内、新設施設18か所(恒久施設8/仮設施設10)、既設施設25か所を整備するとしている。既設施設の利用率は約58%となり、大会組織委員会では最大限既存施設を利用したと胸を張る。
 しかし、競技会場の決定に至る経過は、相次いだ“迷走”と“混迷”繰り返した結果である。国際オリンピック委員会(IOC)や世界各国からも厳しい視線が注がれた。
 当初計画の約3倍の「3088億円」の建設に膨張し世論から激しい批判を浴び、ザハ・ハディド案を撤回して“仕切り直し”に追い込まれた「新国立競技場」、東京都の整備費が「4584億円」にも達することが判明して、「建設中止」や「会場変更」、「規模縮小」が相次いだ競技会場建設、「無駄遣い」の象徴となった「海の森水上競技場」の建設問題、唖然とする混乱が繰り返された。
 2020東京大会の開催にあたって掲げられたキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、そのキャッチフレーズはどこかに吹き飛んでしまった。
 競技場やインフラを建設すると、建設費だけでなく、維持管理、修繕費などの膨大な後年度負担が生れることは常識である。施設の利用料収入で収支を合わせることができれば問題は生まれないが、「赤字」になると、今後40年、50年、大きな負担を都民や国民が背負わされることになる。
 日本は、今後、超高齢化社会に突入することが明らかな中で、コンパクトでスリムな社会の求められている中で、競技場やインフラ整備は必要最小限にとどめるべきであろう。
 2020年東京都オリンピック・パラリンピックの開催を、負のレガシー(負の遺産)にすべきではない。

東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 競技会場の全貌 
東京2020競技会場マップ

五輪開催経費「1兆3500億円」 350億円削減 組織委
2017年12月22日、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、大会経費について、今年5月に国や東京都などと合意した開催経費から350億円を削減し、総額1兆3500億円(予備費を含めると最大で1兆6500億円)とする新たな試算(V2)を発表した。
 試算によると、施設整備費やテクノロジー費など会場関係費用については、仮設会場の客席数を減らしたり、テントやプレハブなど仮設施設の資材について海外からも含めて幅広く見積もりを取り、資材単価を見直したりして250億円を削減して8100億円とし、輸送やセキュリティーなどの大会関係費用については、100億円削減して5400億円とした。
 開催経費の負担額は東京都と組織委が6000億円、国が1500億円となった。
 2016年末のV1予算では1兆5000億円(予備費を含めると最大で1兆8000億円)としていたが、IOC調整委員会のコーツ委員長は10億ドル(約1100億円)の圧縮を求めており、組織委の武藤敏郎事務総長はV3ではさらに削減に努める考えを示した。



東京都の五輪施設整備費「1828億円」 413億円削減
 2017年11月6日、東京都は新たに建設する8つ競技会場の整備費は合計1828億円で、舛添元都知事の「見直し」案の2241億円から、413億円削減すると公表した。
 今回公表された整備計画では、小池都知事が見直しを主導した水泳、バレーボール、ボート・カヌーの3競技会場の整備費を計1232億円とし、計1160億円程度とした「4者協議」で明らかにした案より約70億円増えた。
 「オリンピックアクアティクスセンター」では、着工後に見つかった敷地地下の汚染土の処理費38億円、「有明アリーナ」では、障害者らの利便性を高めるためエレベーターなどを増設、3競技場では太陽光発電などの環境対策設備費25億円が追加されたのがその要因である。
 一方、経費削減の努力も行い、「有明テニスの森」では、一部の客席を仮設にして34億円を減らし、代々木公園付近の歩道橋新設を中止して23億円を削減した。
 この結果、413億円の削減が実現し、8競技会場の整備費は合計1828億円となった。
 五競技場整備費は、当初計画では4584億円、舛添元都知事の“見直し”で2241億円、そして今回公表された小池都知事の“改革”で1828億円となった。
 新たな競技場の整備費が相当程度削減されたことについては評価したい。
 最大の問題は、“五輪開催後”の利用計画にまだ疑念が残されていることである。
たとえば海の森競技場では、ボート/カヌー競技の開催は果たしてどの位あるのだろうか。イベント開催を目指すとしているが、成果を上げられるのだろうか。
 「アクアティクスセンター」は、すぐ隣に「辰巳国際水泳場」に同種の施設があり過剰な建設計画という批判を拭い去ることはできない。
 さらに保守・運営費や修繕費などの維持費の負担も、今後、40年、50年、重荷となってのしかかるのは明らかである。
 小池都知事は、かつて膨張する五輪開催経費を「もったいない」とコメントした。
 8競技会場を“負のレガシー”(負の遺産)にしないという重い課題が東京都に課せられている。



開催経費「1兆3850億円」 都・国・組織委・関係自治体で費用負担大枠合意
都「6000億円」 組織委「6000億円」、国「1500億円」、350億円は先送り

 2017年5月31日、2020年東京五輪大会の開催経費について、東京都、国、大会組織委員会、それに都外に会場がある7道県4政令市の開催自治体(「関係自治体」)は連絡協議会を開き、総額1兆3850億円(予備費含めると最大で1兆6850億円)とし、その費用分担の大枠で合意した。
 焦点の都外の会場の「仮設経費」は「立候補ファイル」通りに、全額東京都が負担することにした。
 小池都知事は、「「四者協議」で公表された2200億円から、「1000億円を超える額の圧縮」と強調し、負担軽減につなげたとした。しかし圧縮経費の詳細については、会場使用期間短縮による賃借料の縮減などを挙げたが、詳細な説明は避けた。
 「「四者協議」で示された開催経費(V1)では「1兆5000億円」、それに予備費が1000億~3000億円加わり、最大で「1兆8000億円」とした。 
 
大会開催経費 最大「1兆8千億円」 有明アリーナは建設 4者協議トップ級会合
 2016年12月21日、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の「4者協議トップ級会合」が再び開かれ、組織委が大会経費を約1兆6000億~1兆8000億円とする予算案(V1)を提示した。大会予算が公表されるのは初めてである。小池都知事は今後、焦点となる費用負担や役割分担を決める政府、組織委との3者協議を年明けから再開する方針を示した。
 大会予算の内訳は選手や観客の輸送などの運営費8200億円▽施設整備費6800億円▽資材の高騰などに備えた予備費が1000億~3000億円。
 前回結論を先送りしたバレーボール会場は小池都知事が「有明アリーナ」(東京都江東区)を新設する方針を表明した。
 “ARIAKE LEGACY AREA”と名付けて、その拠点に「有明アリーナ」に据えて、有明地区を再開発して“五輪のレガシー”にする計画を示した。
 「有明アリーナ」はスポーツ・音楽などのイベント会場、展示場として活用し、周辺には商業施設や「有明体操競技場」も整備する。
 焦点の整備費は404億円を339億円に圧縮し、民間企業に運営権を売却する「コンセッション方式」を導入して、民間資金を活用し経費圧縮に努めるとした。

「4者協議トップ級会合」 「海の森水上競技場」、「アクアティクスセンター」は建設 バレー会場は先送り
 2016年7月、東京都知事に就任した小池百合子氏は、膨張する2020年東京五輪大会の開催経費に歯止めをかけるため、都政改革本部の中に「調査チーム」を設立し、開催計画の見直しに乗り出した。その中でターゲットにしたのは、開催経費削減と競技会場整備の再検討で、海の森水上競技場やオリンピック アクアティクスセンター、有明アリーナの“見直し”が行われた。(下記参照)
 競技会場“見直し”については、小池都知事、森組織委会長が激しく対立して、決着が着かず、国際オリンピック委員会(IOC)が調整に乗り出し、東京都、大会組織委員会、国、国際オリンピック委員会(IOC)で構成する「四者協議」を開催し、この問題の解決を図ることになった。
 2016年11月29日、小池都知事、森組織委会長、丸山五輪担当相、コーツIOC副会長による「4者協議トップ級会合」が東京都内で開かた。
 この会合で、小池都知事は見直しを検討した3競技会場について、ボートとカヌー・スプリント会場は、森水上競技場を20年程度存続の“スマート施設”(仮設レベル)として、整備費は当初の491億円から298億円に縮減して建設することを明らかにした。
 また水泳競技場は「アクアティクスセンター」(江東区)を観客席2万席から1万5000席に削減して、大会後の「減築」は止めて、683億円から514~529億円に削減して建設するとした。
 一方、バレーボール会場については、「有明アリーナ」を新設するか、既存施設の「横浜アリーナ」を活用するか、最終的な結論を出さず、先送りすることになった。
 都の調査チームがボート・カヌー会場に提案していた長沼ボート場は事前合宿地とすることをコーツIOC副会長が“確約”し、小池都知事も歓迎した。

四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委



“迷走”と“混迷”を繰り返した競技場整備

競技場整備費、約4594億円 招致計画の約3倍に膨張
 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2020年夏季五輪大会の開催都市を決める最終投票が行われた。投票に先立つ最終プレゼンテーションでは、招致“Cool Tokyo”アンバサダーの滝川クリステル氏の「お・も・て・な・し」スピーチやパラリンピアンの佐藤真海氏のスピーチが行われ話題になったのは記憶に新しい。結果、ライバル都市のマドリードとイスタンブールを破り、劇的な勝利を手にした。
 しかし、招致成功に沸いた「祭り」ムードは、開催準備に乗り出すと厳しい「現実」に直面し、瞬く間に吹き飛んでしまう。
 競技会場問題の第一幕の主役は、舛添都元知事だった。

 東京都は、招致成功後、直ちに招致計画に基づく競技場整備計画の再検討を行った。 
 その結果、東京都が担当する競技場(恒久施設)整備費は、招致計画では約1538億円としたが、改めて試算すると当初予定の約3倍となる約4584億円まで膨らむことが判明したのである。
 中には、「海の森水上競技場」(ボート、カヌー)のように、招致計画では約69億円としていたが、改めて試算すると、約1038億円と10倍以上に膨れ上ったケースも含まれていた。
 招致計画時の余りにも杜撰な予算の作成にあきれる他はない。
 舛添要一東京都知事は、「『目の子勘定』で(予算を作り)、『まさか来る』とは思わなかったが『本当に来てしまった』という感じ」とテレビ番組に出演して話している。
 競技場の整備経費については、「新国立競技場」は国(主管は日本スポーツ振興センター[JSC])、その他の恒久施設は東京都、仮設施設は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会が責任を持つことが決められていた。
 「新国立競技場」は、2012年にデザイン競技公募を開始した際は、総工費は「1300億円を目途」としていたが、ザハ・ハディド案を採用して、施工予定者のゼネコンが総工費を見積もると「3088億円」に膨張することが判明し、世論から激しい批判を浴びた。
 その後、設計見直しを行い「2520」億円に圧縮したが、それでも当初予定の倍近い額となり批判は一向に収まらず、ザハ・ハディド案の白紙撤回に追い込まれた。最終的には、安倍首相が収拾に乗り出し、2015年8月、屋根の設置を止めたりや観客席の数を見直すなどして総工費を「1550億円」(上限)とすることで決着した。“迷走”に“迷走”を繰り返して、“醜態”を演じたのは記憶に新しい。
 ところが、問題は新国立競技場にとどまっていなかったのである。

経費削減に動いた舛添都知事
 2014年11月、舛添要一東京都知事は、競技会場建設費の削減に動き、恒久施設では「夢の島ユースプラザ・アリーナA・B」と「若洲オリンピックマリーナ」、仮設施設では「ウォーターポロアリーナ」、「有明ベロドローム」、「有明MTB(マウンテンバイク)コース」、「夢の島競技場(馬術)」の建設を中止し、他の既存施設に競技場を変更した。また「オリンピックアクアティクスセンター」や「海の森水上競技場」、「大井ホッケー競技場」などは整備計画を縮小して経費を削減した。
 これにより約2000億円を削減し、約4584億円まで膨らんだ整備経費を約2469億円までに圧縮するとした。
 さらに2015年11月、IBC/MPCが設営される東京ビックサイトに建設する「拡張棟」は計画を変更してIBC/MCPとして利用しないとして、その建設費、約228億円を五輪施設整備費枠からはずして、約2241億円までに圧縮したとしている。 もっとも東京都は、東京ビックサイトの「拡張棟」を建設することには変わりはないのだから、“みせかけ”の操作と思われてもしかたがない。
 2241億円のうち、新規整備費が約1846億円、既存施設の改修費などが約395億円とした。
 東京都は、開催都市として、2006から2009年度に「開催準備基金」を毎年約1000億円、合計約3870億円をすでに積み立てていた。この「基金」で、競技施設の整備だけでなく、周辺整備やインフラの整備経費などをまかなわなければならない。東京都が負担する五輪施設整備費は、4000億円の枠内で収まらないのではという懸念が生まれている。競技場の建設だけで2241億円を使って大丈夫なのだろうか?
 また、新規に施設を建設すると、建設費はもとより、維持管理費、補修修繕費など後年度負担が生まれることを忘れてはならない。
 五輪開催後は、整備された壮大な競技施設の収支は“赤字”にならないのだろうか? 利用料収入などで賄える展望があるのだろうか? 
 巨額の“赤字”が毎年生まれるのであれば、今後約50年間以上に渡って、東京都民は負担し続けなければならない。
 五輪開催期間はオリンピックが17日、パラリンピックが13日、合わせてわずか30日間である。施設の新設は極力抑制しなければならない。
 日本は確実に少子高齢化社会を迎える。五輪開催は、“レガシー”(未来への遺産)どころか“負のレガシー(負の遺産)”になる懸念が強まった。



小池都知事の“五輪改革”
 第二幕は、小池百合子東京都知事の登場で始まった。
 2016年7月、公費流用問題で激しい批判を浴びた舛添要一前都知事の辞職に伴い、都知事選挙が行われ、小池百合子氏が元総務相の増田寛也氏を破り、当選した。いわゆる「小池劇場」の開幕である。
 小池氏は、知事に就任すると、2020東京五輪大会の計画再検討に素早く乗り出した。
 小池氏は、都政改革を進める司令塔、「都政改革本部」を設立し、その中に東京五輪改革を進める「調査チーム」(座長上山信一慶応大学教授)を立ち上げた。
 「調査チーム」のターゲットは、巨額に膨れ上がった開催経費の圧縮や競技会場整備の見直しである。
 競技会場整備の見直しでは、海の森水上競技場やオリンピック アクアティクスセンター、有明アリーナ(バレーボル会場)がその対象となった。

「3兆円を超える」 調査チーム報告書
 「結果から申し上げると今のやり方のままでやっていると3兆円を超える、これが我々の結論です」
 2016年9、2020年東京五輪・パラリンピックの開催経費の検証する都政改革本部の「調査チーム」座長の上山信一慶応大学教授はこう切り出し、大会経費の総額が「3兆円を超える可能性がある」とする報告書を小池都知事に提出した。
 大会経費は、新国立競技場整備費(1645億円)、都の施設整備費(2241億円)、仮設整備費(約2800億円)、選手村整備費(954億円)に加えて、ロンドン五輪の実績から輸送費やセキュリティー費、大会運営費などが最大計1兆6000億円になると推計。予算管理の甘さなどによる増加分(6360億円程度)も加味し、トータルで「3兆円」を超えると推計した。 
 招致段階(13年1月)で7340億円とされた大会開催経費は、「2兆円」とも「3兆円」とも言われたが、これまで明確な積算根拠は組織委員会や国や東京都など誰も示さず、今回初めて明らかにされた。
 調査チームは「招致段階では本体工事のみ計上していた。どの大会でも実数は数倍に増加する」と分析。その上で、物価上昇に加えて、国、都、組織委の中で全体の予算を管理する体制が不十分だったことが経費を増加させたと結論付けた。

3施設の整備 大幅見直しを提言
 ボート、カヌー・スプリント会場「海の森水上競技場」は、当初計画の7倍の約491億円に膨れ上がった経費に加えて、「一部の競技者が会場で反対している」「大会後の利用が不透明」だとして、宮城県長沼ボート場を代替地に提言した。「復興五輪」の理念にも合致するとしている。
 観客席2万席で設計した水泳会場「オリンピックアクアティクスセンター」は、大会後に74億円をかけて5000席に減らす計画を疑問視し、規模縮小や近くにある「東京辰巳国際水泳場」の活用の検討を提言した。バレーボール会場の「有明アリーナ」は、規模縮小のほか、展示場やアリーナの既存施設の活用を提案した。
 仮設施設整備については、約2800億円に膨れ上がった整備について、国や組織委、東京都の費用負担の見直しにも言及し、都内に整備する仮設施設の内、最大1500億円は都が負担し、都外については「開催自治体か国」が負担するよう提言した。
 また東京都は、組織委に58億5000万円の拠出金を出し、245名もの東京都職員を出向させていることから、組織委を「管理団体」にするなど、都の指導監督を強化する必要性も指摘した。
 これに対し、森組織委会長は、「IOCの理事会で決まり総会でも決まっていることを日本側からひっくり返すということは極めて難しい問題」と述べた。
 また海の森水上競技場については、「宮城県のあそこ(長沼ボート場 登米市)がいいと報道にも出ているが我々も当時考えた。しかし選手村から三百何十キロ離れて選手村の分村をつくることはダメなことになっているし経費もかかる。また新しい地域にお願いしてみんな喜ぶに決まっているが、金をどこから出すのか。東京都が代わりに整備するのか。それはできないでしょう法律上」と語った。
 一方、IOCのバッハ会長は、東京五輪の開催費用の増加について、「東京における建設費の高騰はオリンピック計画だけでなく、東日本大震災からの復興など、そのほかの理由もあるだろう」とし「建設的な議論をしたい」として柔軟に対応する姿勢で、今後東京都や組織委員会と協議を始める意向を示した
 小池知事は報告書を受けて、都が整備を進めるボート会場など3施設の抜本的見直しや国の負担増、予算の一元管理など、各提案を実行するには、国際競技団体や国際オリンピック委員会(IOC)の承認を受け直す必要がある上で、国や大会組織委員会などと調整が必要で、実現には難関は多いと多いと思われる。
 “混迷”と“迷走”はさらに深刻化した。やはり新国立競技場や五輪エンブレムだけではなかった。
 競技場問題は、小池都知事、森組織委会長が激しく対立して、決着が着かず、国際オリンピック委員会(IOC)や国も加えた四者協議の場に持ち越された。

“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革”
“迷走”海の森水上競技場整備
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園
江の島セーリング会場 シラス漁に影響 ヨットの移設や津波対策に懸念


膨張する2020東京五輪大会 追加種目 野球・空手など5競技決まる
 2015年9月28日、大会組織委員会は、追加5競技を国際オリンピック委員会(IOC)に提案することを決めた。
 組織委の種目追加検討会議座長の御手洗冨士夫・経団連名誉会長は「若者へのアピールと日本中を盛り上げるに資する競技かどうかで決めた」と説明し、野球・ソフトボールと空手については「国内で広く普及しており観客動員力が大きい」とした。ローラースポーツ(スケートボード)、突起のついた人工壁をよじ登るスポーツクライミング、サーフィンは「時代の先端を行く若者へのアピールが期待できる」と話した。
 2016年8月3日、リオデジャネイロで開催されたIOC総会で、開催都市に提案権が与えられている追加競技・種目について、野球・ソフトボール、空手、ローラースポーツ(スケートボード)、スポーツクライミング、サーフィンの5競技18種目が採択され決定した。総会の質疑応答で、野球を巡って、米大リーグ所属選手の参加が保証されていない点を不安視する意見などが出たが、最終的には全会一致で採択された。日本が強く推した野球・ソフトボールと空手に、「若者へのアピール度が高い」とIOCがこだわったスケートボードなど新興3競技を組み合わせて一括審議とした“戦略”をとったことが功を制した。バッハIOC会長は「この決定はマイルストーン(記念碑)となる」と誇らしげに語った。
 これにより1競技に統合された野球・ソフトボールは2008北京五輪以来、3大会ぶりの復帰、他の4競技は初の実施になる。
 追加競技については、2015年12月に採択されたIOCの五輪改革プラン「アジェンダ2020」の中で、開催都市による提案権が盛り込まれ、東京五輪がこの改革プランの初めての適用となった。 
 しかしこの開催都市の追加競技提案権で、五輪大会の“膨張体質”に歯止めがかからなくなったのも事実である。
 IOCの五輪改革プラン「アジェンダ2020」は、五輪大会の“膨張体質”に歯止めをかけることが主目的だったのではないか。
 「世界一コンパクト」な大会を目指した2020東京大会のスローガンはどこにいったのだろうか。

「建設中止」、「会場変更」、“迷走”した競技開催計画
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技開催計画は変更が相次ぎ、招致計画から大きく変わってしまった。一体、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画はなんだったのだろうか? 新国立競技場の“迷走”も加えると、その杜撰な開催計画に唖然とさせられる。

 最終的に決まった2020東京五輪大会の開催計画では、オリンピックでは33競技、パラリンピックでは22競技をあわせて43会場で開催する。 その内、新設施設は18か所(恒久施設8/仮設施設10)、既設施設は24か所を整備するとしている。既設施設の利用率は約58%となり、大会組織委員会では最大限既存施設を利用し、大会開催の効率化に成功したと胸を張る。
 しかし競技会場の変更が相次ぎ、予定通り建設される競技場についても相次ぐ“見直し”で、“迷走”と“混乱”を繰り返した。

 建設中止の競技場(恒久施設)は、夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)、夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)、若洲オリンピックマリーナ(セーリング)の2施設、仮設施設では、ウォーターポロアリーナ(水球)(新木場・夢の島エリア)、、有明ベロドローム(自転車・トラック)、「有明MTB(マウンテンバイク)」、「夢の島競技場(馬術)」である。
 バトミントンは、「武蔵野森総合スポーツ施設」(東京都調布市)、バスケットは「さいたまスーパーアリーナ」(さいたま市)で開催することになった。
 水球については、辰巳の森海浜公園内に、「オリンピック アクアティクスセンター」に併設して総工費約76億円で約6500人の観客席を備えた水球競技場、「ウォーターポロアリーナ」(仮設施設)を建設予定だったが、これを中止し、隣接する「東京辰巳国際水泳場」に会場変更した。
 セーリング会場は、総工費322億円で建設予定の「若洲オリンピックマリーナセーリング」(恒久施設)を取りやめて、「江の島ヨットハーバー」に会場変更した。
 自転車競技4種目については、建設費の高騰で、大会組織委員会が会場見直しを提案し、トラックは「有明ベロドローム」(仮設施設)の整備を中止し、伊豆・修善寺にある「日本サイクルスポーツセンター」内にある「伊豆ベロドローム」に会場変更し、マウンテンバイク(MTB)は、「有明MTBコース」に整備を中止して、「日本サイクルスポーツセンター」内の既存コースを改修して使用することが決まった。
 しかし、BMX(フリースタイル、レーシング)については、組織委ではBMXも「日本サイクルスーツセンター」に変更したいとしたが、国際自転車連合は観客が集まりやすい首都圏での開催にこだわって難色を示し、当初計画通り東京都江東区有明周辺で開催されることになった。有明地区の“東京ベイゾーン”に5000席の観客席を備えた「有明BMXコース」(仮設施設)を予定通り建設することが決まった。
 大会組織委では「日本サイクルスーツセンター」の改修費を含めてもこの2つの会場変更で約100億円の削減につながるとしている。
 一方、ロードレースについては、当初計画では、スタート地点が皇居、ゴール地点が武蔵野の森公園としていたが、スタートとゴール共に都心で大勢の観客が訪れやすい皇居外苑に変更した。その後、競技団体の要望で、選手の実力差が出る勾配のある難しいコースが設定できるとして富士山麓が選ばれた。富士山を背景にしてテレビ映りが良いのもコース決定のポイントだった。スタートは武蔵の森公園、ゴールは富士スピードウエーに決まった。
 また個人タイムトライアルも富士スピードウェイで開催する。
 競歩については、「皇居外苑」で開催することが決まった。
 また、夢の島競技場内に仮設施設を建設する予定だった馬術(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)の会場は整備を取りやめ、「馬事公苑」に変更した。
 馬術(クロスカントリー)は「海の森クロスカントリーコース」で予定通り行われる。
 また東京ビックサイトに設営されるIBC/MPCの設置計画が変更になり、「東京ビッグサイト・ホールA 」で開催を予定したレスリングと「東京ビッグサイト・ホールB」で開催と予定したフェンシングとテコンドー)」は「幕張メッセ」(千葉市)に変更され、「幕張メッセ」では、レスリングとフェンシング、テコンドーの3つの競技の会場となった。
 幕張メッセではパラリンピックのゴードボールも開催される。
 7人制ラグビーは、「新国立競技場」から「東京スタジアム」(東京都調布市)に変更となった。
 カヌーは、「葛西臨海公園」に建設する仮設施設計画だったが、隣接地の都有地(下水道処理施設用地)に建設地を変更した。「葛西臨海公園」の貴重な自然環境を後世に残すという設置目的などに配慮して、公園内でなく隣接地に移し、大会後は、公園と一体となったレジャー・レクリエーション施設となるように整備計画を練り直した。
 一方、トライアスロンは、「お台場海浜公園」で変更せず、計画通り行うこととなった。
 こうした会場整備計画の見直しなどで、組織委では約700億円の経費削減につながるとしている。

 追加5競技の会場については、ソフトボールの主会場は横浜スタジアム、空手が本武道館(東京都千代田区)、スポーツクライミングとスケートボードは仮設の青海アーバンスポーツ会場(東京都江東区)、サーフィンは釣ケ崎海岸サーフィン会場(千葉県一宮町)となった
 野球・ソフトの福島開催については、福島あずま球場で野球とソフトボールの予選の日本戦、二試合を開催とすることで決着した。

 一方で仮設整備経費が膨れ上がっていることも大きな問題である。有明体操競技場、有明BMXコース、海の森カントリーコース、潮風公園などの仮設競技場の建設費やオーバーレーと呼ばれる競技会場に設置されるプレハブやテント、警護用柵などの仮設施設経費、既存施設の改装費が、当初計画の732億円から、約4倍の3050億の巨額に上ることが大会組織委のV2予算で明らかになった。東京都は、恒設競技場の建設の他に、こうした仮設整備費を約2100億円、大会組織員会は約950億円を負担することになった。国際オリンピック委員会(IOC)は巨額の仮設費を縮減することを求めた。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、選手村を中心に半径8キロメートルの圏内に85%の競技場を配置すると“公約”していた。

出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

(参考)立候補ファイルの競技場プラン

出典 2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員会



何処へ行った「世界一コンパクトな大会」
 新規に競技場を建設すると、建設費はもとより、維持管理費、補修修繕費など“後年度負担”が確実に生まれる。施設利用料などの収入で賄えるのであれば問題ないが、巨額の“赤字が毎年生まれるのでは、“レガシー”(未来への遺産)どころか“次世代”への“負の遺産”になる懸念が大きい。“新設”は極力抑えなければならない。五輪開催期間は、オリンピックが17日、パラリンピックが13日、合わせてわずか30日間である。
 また忘れてはならないのは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、“ヘリテッジゾーン”と“東京ベイゾーン”の選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置して開催すると公約していた。1964年大会のレガシーが現存する“ヘリテッジゾーン”と東京を象徴する“東京ベイゾーン”、そして2つのゾーンの交差点に選手村を整備するという開催計画である。
 しかし、相次ぐ変更で「世界一コンパクトな大会」の“公約”は完全に吹き飛んだ。

 それにしても東京五輪の「招致ファイル」は一体、なんだったのだろうか?
舛添要一東京都知事は、「とにかく誘致合戦を勝ち抜くため、都合のいい数字を使ったということは否めない」と述べている。
 結局、杜撰な招致計画のツケを負担させられるのは国民である。
 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催まであと2年余り、新国立競技場の迷走、五輪エンブレムの撤回、政治とカネにまつわるスキャンダルで舛添前都知事の辞任、そして、競技場見直しを巡っての小池都知事と森組織委員長の対立、“混迷”はまだ収まる気配はない。

「準備は1年遅れている」「誠実に疑問に答えない」 警告を受けた2020東京大会組織委
 2018年4月、2020年東京オリンピックの準備状況をチェックするIOC調査チームの(委員長 コーツIOC副会長)は、2020年東京大会組織員会に対し、開催準備の進捗状況と計画について、より誠実に質問に答えるように要請した。
 これに先立ってタイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機(GAISF)のスポーツ・アコード(Sport Accord)会議で、複数の国際競技連盟(International Sports Federations IFs)が、2020東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判した
 これを受けて、IOC調査チームが来日し、4月23日24日の2日間に渡って2020東京大会の準備状況をチェックしたのである。
 コーツ副会長は、準備作業は、大部分は順調に進んでいるが、2020東京大会組織員会は進行状況を完全に説明することを躊躇していると懸念を示した。
 その理由について、 コーツ副会長は、直接的で明快な表現をするオーストラリア人と、多くのポイントを留保する曖昧な表現をする日本人の文化的相違があるのではと述べたが、婉曲表現で日本の姿勢を批判した。
 2018年2月に開催された平昌冬季五輪が成功を収め、スポットライトが東京大会に移る中で、大会準備に関して誠実な答えを得られない五輪関係者のいら立ちはさらに増すだろうという警告である。
 準備の遅れが指摘された競技種目は、柔道とセーリング、トライアスロンで、開催準備の遅れに懸念を表明した。柔道競技では、2019年に開催されるプレ大会の準備状況、セーリング競技では地元漁業者との調整の問題、トライアスロンでは東京湾の水質汚染問題が指摘されている。
 日本のビックイベントのマネージメント力は、世界から高い評価を得ていたが、どうやら海外の五輪関係者の間では、その評価は失われ、“韓国より劣る”という批判が生れているように感じられる。
 あと2年余り、2020東京五輪大会は正念場を迎えている。


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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




2016年12月7日 
2018月10月10日改訂
Copyright (C) 2018 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
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東京オリンピック 北朝鮮 北朝鮮参加 南北合同選手団 金正恩 バッハ会長 拉致問題 安倍首相

2019年02月11日 07時59分18秒 | 東京オリンピック

北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至



IOC 2020東京五輪大会に向けて南北代表と3者会合
 2019年2月7日、国際オリンピック委員会(IOC)は7日、韓国と北朝鮮の各代表と今月15日、スイス・ローザンヌのIOC本部で3者会合を開くと発表した。2020年の東京五輪をめぐり、南北合同チームの結成や開会式での合同入場行進が議題になる見通し。
 IOCの声明によると、会合には韓国、北朝鮮双方の国内オリンピック委員会代表、スポーツ担当閣僚が参加。2018年の平昌冬期五輪から1年を迎え、南北のスポーツ協力をさらに深めるため、「東京五輪、さらに五輪の準備段階での共同活動の可能性」を話し合うとしている。
 北朝鮮の2020東京五輪大会への参加がほぼ確実になると見られる。

北朝鮮閣僚 異例の日本訪問 体育相ら五輪総会出席
 11月27日、北朝鮮オリンピック委員長を務める金日国(キムイルグク)体育相を団長とした同委員会代表団が、東京で28日から29日まで東京で開かれる各国オリンピック委員会連合(ANOC)総会に出席するために訪日した。
 菅官房長官は会見で、「国際スポーツ界においては、“国籍等による差別は禁止”との考え方が浸透し、オリンピック憲章にも同様の規定がある」と述べ、北朝鮮の金日国(キム・イルグク)体育相について、「例外的な特別事情」として入国を許可したことを明らかにした。
 北朝鮮の閣僚が日本を訪問するのは極めて異例である。
 28日に開始した各国オリンピック委員会連合(ANOC)総会には、206の国と地域の国内オリンピック委員会や国際競技団体などからおよそ1,400人が参加したが、金氏ら代表団も出席した。
 北朝鮮と韓国は、東京2020大会に南北合同チームを結成して出場するとして、IOC=国際オリンピック委員会や各競技団体との協議を進めていくことで一致している。
 さらに2032年の夏のオリンピック・パラリンピックを南北で共同開催したいとしていて、今回の総会でもスポーツ分野での南北の融和をアピールする狙いもあるとされている。
 バッハIOC会長は、ANOC総会で、スポーツを通じて韓国と北朝鮮の南北融和を促進するため来年初めにも両政府や国内オリンピック委員会(NOC)関係者と協議の場を持つ考えを明らかにしていた。バッハ会長は「和平を深めるために何ができるか、新たな対話をする」と述べ、南北合同チームの参加に意欲的な姿勢を貫いている。
 東京2020大会に南北合同チームで、北朝鮮が参加する可能性が現実味を帯びてきた。


平壌を訪問したバッハIOC会長を出迎える金日国(キム・イルグク)体育相 2018年3月30日 聯合ニュース)



 「歴史的」な南北首脳会談が板門店に建設された「平和の家」で行われた


握手する韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長


板門店軍事境界線(MDL)を超える南北首脳  出典 大韓民国大統領府


儀仗兵を閲兵する南北首脳


芳名帳に記帳する金正恩朝鮮労働党委員長  出典 大韓民国大統領府


南北首脳会談  出典 大韓民国大統領府


首脳会談場に掲げられた金剛山の絵画をバックに握手する南北首脳  出典 大韓民国大統領府

南北首脳が歴史的な握手
韓国大統領府 Youtube
「南北首脳会談」 ムン・ジェイン大統領 - キム・ジョンウン委員長、歴史的の最初の出会いのプールの映像
MBN NEWS Youtube
会談は笑いの海 キム・ジョンウンのユーモアは?
VIDEOMUG Youtube


歴史的な南北首脳会談 「非核化」実現へ 「板門店宣言」
 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は27日、南北の軍事境界線をまたぐ板門店で11年ぶりの首脳会談を行い、朝鮮半島の「完全な非核化」実現を目標に掲げた「朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」に署名した。1953年7月から休戦状態にある朝鮮戦争を年内に終わらせる意思を確認。文氏が今秋、平壌を訪問することでも合意した。
 南北首脳による会談は、2000年に金大中(キムデジュン)大統領、07年に盧武鉉(ノムヒョン)大統領が、それぞれ北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記と平壌で会談したのに続いて3回目。北朝鮮の指導者が韓国側に入ったのは史上初めてだ。
朝鮮半島の南北融和は一気に加速した。
 4月29日、トランプ米大統領は、ミシガン州の支持者の集会で、3~4週間以内に米朝首脳会談が行われるだろうと述べた。
 「非核化」、「朝鮮戦争終戦」、南北融和は一気に正念場を迎える。
 こうした歴史的な流れが急展開しているなかで、安倍政権は、「拉致問題」や「核ミサイル問題」などの解決をトランプ大統領や文在寅大統領に“仲介”を要請することしかできていない。北朝鮮との独自の外交チャンネルを失っているからである。日本にとって極めて重要な外交問題と日朝間で交渉できない政権は“お粗末”と言わざるを得ない。
 安倍政権だけが「かやの外」に置かれている懸念を抱くのは筆者だけであろうか。


金正恩朝鮮労働党委員長と握手するバッハIOC会長   出典 IOC NEWS


金正恩朝鮮労働党委員長と会談するバッハIOC会長   出典 NORTH KOREA TODAY

Kim Jong Un and the President of the International Olympic Committee

NORTH KOREA TODAY(2018年3月31日)

北朝鮮 東京五輪参加に意欲  IOCは参加を支援
 2018年3月19日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は北朝鮮を訪問し、翌30日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と平壌で会談した。
 バッハ会長は、「北朝鮮が東京五輪と北京冬季五輪への参加準備ができるよう長期的に協力する」と表明したのに対し、金委員長は、「今後もIOCと前向きな協力関係を発展させたい」と述べ、参加に意欲を示した。金委員長が東京、北京五輪への参加に前向きな意思を表明したのは初めてである
朝鮮中央通信の報道によると、金委員長は、IOCが平昌五輪に出場枠がなかった北朝鮮に対して特例枠で認めたことに謝意を示し、「凍り付いた北南関係が(平昌)五輪を契機に劇的な雪解けを迎えられたのは、全面的にIOCの功労である」と述べたという。

 バッハ会長は、「打ち解けた雰囲気で実り多い議論」を金委員長と行ったと述べ、北朝鮮の東京五輪、北京冬季五輪参加について「北朝鮮の最高指導者から全面的な支持を得た」ことを明らかにし、「われわれは緊張を緩和し、朝鮮半島の平和な未来に向けた解決策を模索している」と述べた。
韓国と北朝鮮の合同入場行進については、今後適切な時期に韓国と北朝鮮に、2020年の東京五輪や22年の北京冬季五輪でも南北合同入場行進などの実施を提案することを検討していると明らかにした。
 バッハ会長は、2月の平昌冬季五輪開会式での南北合同入場行進が世界に「平和の象徴」を示し、朝鮮半島の緊張緩和に向けた協議につながったと指摘。東京五輪や北京五輪での再度の実施に期待を示した。
 IOCは、オリンピックを通して南北朝鮮の融和を促す積極姿勢をはっきりと示している。この方針は、2020年東京大会でも貫かれるのは間違いない。


南北朝鮮女子サッカーの試合を観戦する金正恩朝鮮労働党委員長とバッハIOC会長

北朝鮮の五輪参加に慎重姿勢の安倍首相
 これに対し日本側の北朝鮮の五輪参加に対する姿勢は極めて消極的である。
4月2日、大会組織委員会の森喜朗会長は、「拉致問題は大変大きな問題。日本人の気持ちも承知して、今後の話を進めてほしい」と注文をつけた。
 森氏は「バッハ会長は平昌大会で大変な努力をされた」と評価した上で、「何も具体的なことは示されていない。これからは政治マターの話」と述べた。
 4月4日、安倍晋三首相は北朝鮮を訪れていた国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話で協議した。政府関係者によると、首相はバッハ氏から北朝鮮が2020年東京五輪への参加に意欲を示していると聞かされ「(日本には)拉致問題がある。国民感情に配慮してほしい」と応じて慎重な対応を促した。電話協議はバッハ氏が呼びかけたという。
 4月13日、小池百合子都知事は定例会見で、拉致、核問題の懸念材料を挙げ「東京大会に参加するならば、これら懸念の払拭(ふっしょく)を北朝鮮がなすべきこと」と述べた。

IOC調査チームも北朝鮮の五輪参加問題を指摘
 4月24日、2020年東京オリンピックの準備状況をチェックするIOC調査チームの(委員長 コーツIOC副会長)は、2020年東京大会組織員会に対し、開催準備の進捗状況と計画について、より誠実に質問に答えるように要請した。
開催準備をめぐり複数の国際競技団体から不満の声が上がっていたのである。2018年2月に開催された平昌冬季五輪が成功を収め、スポットライトが東京に移る中、大会準備に関して答えを得られない五輪関係者のいら立ちはさらに増すだろうと警告である。
この中には北朝鮮の五輪参加問題も含まれている。

 森組織委会長は、最終的に東京オリンピックで北朝鮮代表団を迎えることになることを懸念していると述べた。 日本は、北朝鮮による拉致問題を抱えていて、未だに解決されてと問題を提起した。
日本は北朝鮮に「裏切られた」とし、「拉致事件は平和な時代に起こった。そして日本人が拉致された」と述べた。
さらに「日本は朝鮮半島に近く、北朝鮮は隣国である。 そして我々は核兵器の脅威にさらされている。我々はこうした厳しい状況の下で生きていかなければならない」と語った。
 コーツ副会長は、日本は東京オリンピックで北朝鮮の五輪選手団を受け入れることがオリンピック憲章の下で義務づけられていると基本的な姿勢を明らかにした。
 しかし、「五輪開催国の政府が、五輪選手団以外の政治指導者や関係者の受け入れを制限する権利がないと言っているわけではない」とも述べた。
平昌冬季五輪では、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の実妹、金与正(キムヨジョン)氏や金永南(キムヨンナム)・最高人民会議常任委員長が開会式に参加した。また北朝鮮芸術団や“美女応援団”も訪れて話題になったのは記憶に新しい。

 米朝首脳会談の結果次第では、2020東京大会の最大の焦点は、金正恩朝鮮労働党委員長が開会式に出席するかどうかになってくると思わわれる。
 仮に金委員長が出席するれば、トランプ大統領や習近平主席の出席の可能性も出てくる。2020東京大会は、最早、スポーツの祭典でなく、歴史的な「政治ショー」の舞台になりそうだ。2020東京大会招致の際に掲げた「復興五輪」の看板は影もかけらもなくなる。
 もし金委員長が開会式に出席するという意向が示されたら、安倍首相、どうしますか?

東京2020大会は「北朝鮮」五輪?、吹き飛ぶ「復興五輪」
 バッハ氏は南アフリカの人種隔離政策の撤廃闘争を率い、ノーベル平和賞を受賞した故ネルソン・マンデラ氏の言葉、「スポーツは世界を変える力がある」を好んで引用しているという。(朝日新聞 2018年4月2日)
 北朝鮮を2020東京大会に参加させ、平昌冬季五輪と同様に南北合同入場行進や南北合同チームを実現させて朝鮮半島に平和を呼び戻す、IOCのバッハ会長は指導力を発揮して実現させる意欲に満ち溢れている。
 しかし、拉致問題やミサイル問題を抱える日本は、こうした問題に解決の目途が立たなければ、北朝鮮の五輪参加にもろ手を挙げて歓迎するわけにはいかない状況にある。拉致問題は置き去りにしていいのかという批判が巻き起こるだろう。
 仮に北朝鮮選手団が東京を訪れたら、これに反対するグループがデモや集会を行ったり、競技場内で非難行動を行ったりして、大混乱は必至であろう。
 開会式には、北朝鮮の要人の参加の可能性もあるだろう。また平昌冬季五輪で話題を独占した女性応援団も来日するかもしれない。
 一方で、北朝鮮を排除すれば、「平和の祭典の五輪に政治を持ち込んだ」として、世界各国から激しい非難が巻き起こるに間違いない。
 どちらにしても、2020東京大会は、北朝鮮を巡って、否応なしに「政治オリンピック」に巻き込まれる。まさに安倍首相の政治力が問われる正念場となる。
 2020年東京大会は、北朝鮮参加問題を巡って、泥沼の混乱に陥る懸念も漂い始めている。






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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)






2018年4月27日(初稿)
Copyright (C) 2018 IMSSR





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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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五輪経費隠し 2197億円 関連経費 レガシー経費 五輪開催経費に含めるべきだ

2019年02月06日 08時01分38秒 | 東京オリンピック

政府 国の支出は「2197億円」と反論
 止まない経費隠蔽体質! 


 
 1月29日、桜田義孝五輪相は、政府が2013年度~19年度に計上した東京五輪・パラリンピックの関連予算の総額が2197億円にのぼるとの調査結果を発表した。このうち60%以上の1380億円が、これまでに公表した国の負担額1500億円の枠外の経費で、今の時点で東京五輪大会の国の負担額は、2880億円と倍近くに膨らむことが明らかになった。
 
 2018年10月、会計検査院は、2020東京五輪大会の開催経費について、「直接費」と「関連経費」を合わせた「五輪関連支出」として、国は2017年度までに8011億円を支出している指摘した。
 「五輪関連支出」8011億円の中には、競技場周辺の道路輸送インフラの整備(国土交通省)やセキュリティー対策(警察庁)、熱中症に関する普及啓発(環境省)などの約280事業に対し、約6500億円が使われていたことを明らかにした。また280の事業には気象衛星の打ち上げ、燃料電池自動車などの購入補助費、ICT化促進や先端ロボット、自動走行技術開発、外国人旅行者の訪日促進事業、日本文化の魅力発信なども含まれている。
 これまでに組織委が公表した大会開催予算(V2)の総額は1兆3500億円、その内、国の負担分は、新国立競技場整備費の一部、1200億円とパラリンピック経費の一部、300億円の合わせて1500億円としていた。今回、会計検査院が指摘した「五輪関連支出」の内、約6500億円は開催経費として計上していない。
 会計検査委員は大会開催経費の透明性を確保するためにその全体像を明らかにするよう求めた。

 2018年12月、大会組織員会は、大会開催予算(V3)の総額を1兆3500億円とし、その内、新国立競技場整備費を1200億円、パラリンピック経費300億円の合わせて1500億円を国の負担額とし、従来通り直接経費のみを計上し、「関連事業費」はゼロとしていた。会計検査院の指摘については、会計基準が違うなどとして考慮しなかったとした。
 V3予算をまとめるにあたって、大会組織委員会は、国際オリンピック委員会(IOC)から「開催経費削減」を強く求めれていた。しかし、開催準備が進むにつれて、次々に新たな経費や経費増が生じ、経費削減どころか、V2予算を上回る懸念すら浮上したと思われる。ようやくなんとか懸命に努力して、V2予算と同額を維持したというのが真相だろう。こうした状況では、大会組織委員会が会計検査院の指摘と向き合うのはあり得ない。大会開催経費の透明性の確保は二の次で、「同額維持」が至上命題だった。

 今回の国の調査は会計検査院の指摘を受けて実施したもので、「大会運営や機運醸成、大会成功に直接資する」とみられる各省庁の事業を抽出し、2020東京大会の招致が決まった2013年度以降の事業費の合計額を算出したとしている。
 国の支出、2197億円には、すでに大会開催予算で計上している「直接経費」の新国立競技場整備費の一部、517億円と、パラリンピック経費の一部、300億円の817億円が含まれるが、これとは別に、メダル数増のための「競技力強化」(1010億円)やテロ対策といった「セキュリティー」(214億円)などの「関連事業費」が1380億円に上っていることを明らかにした。
 これまで、大会開催経費については、国の負担額が「直接経費」のみの1500億円とする姿勢を崩さなかったが、今回、初めて関連経費の1380億円を加えることを公式に認めた。
 しかし、会計検査院が指摘した「五輪関連支出」経費の内、未計上な事業支出は約6500億円にも上る巨額な支出である。今回明らかになった1380億円は氷山に一角に過ぎない。
 五輪開催経費の透明性を確保するために会計検査院の指摘に真摯に向き合ったとは到底思いない。
 相変わらず、世論の批判をかわすために、大会開催経費を極力抑えようとする隠蔽体質が見え隠れする。
 新国立競技場整備費1200億円には、今回、国の予算に計上した517億円のほかにスポーツ振興くじ(toto)の収益分など683億円も投入される。こうした額を含めると実態上の五輪開催経費の国の負担総額は、2197億円ではなく、2880億円に膨れ上る。

 大会組織委が公表した大会開催予算額(V3)は1兆3500億円、これとは別に東京都はすでに五輪関連費として8100億円を見込んでいる。これに今回、国の支出の増加分、1380億円を加えると、開催経費はすでに2兆2390億円に上っている。
 桜田五輪相は「当初の予定(1500億円)より膨れあがった」と認め、「できる限りコストを抑制できるように努めていく」とした。
 しかし、国の五輪関連予算については、19年度の補正予算や20年度当初予算でさらに大幅に増えることが予想され、国の負担額は総額でいくらになるのか、まったく不透明になった。
 大会開催経費の「青天井体質」に歯止めはかかっていない。



出典 新国立整備スケジュール 2018年10月12日 JCS


筆者撮影  2018年10月31日


出典 新国立整備スケジュール 2018年9月18日 JCS


出典 新国立整備スケジュール 2018年9月18日 JCS



 11月30日、桜田義孝五輪担当相は、2020東京五輪大会に、国が2013~2017年の5年間に支出した経費は53事業で「1725億円」とする調査結果を公表した。会計検査院の「8011億円」という指摘に対し、内閣官房が精査して反論したものである。
 しかし、国は「五輪開催経費」をまったく理解していない。いや理解していながら、世論の反発を避けるために、膨れ上がった「五輪開催経費」をなるべく低く見せるための「偽装」をしていると言ってもよいと思える。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、「五輪開催経費」を、大会開催に直接関わる一過性の「大会開催経費」と大会開催後も持続的に社会の発展に寄与する「レガシー経費」に分けて、「大会開催経費」のみ「五輪開催経費」とするとしている。
 「大会開催経費」は、もっぱら大会開催時に必要とされる一過性の経費で、競技施設では、大会後には取り壊される仮設施設やオーバーレイ、会場の警備費、シャトルバス運行などの輸送費、大会運営費などである。一方、恒久施設の競技場建設費や周辺整備費、道路などのインフラ整備費などの五輪関連経費は「レガシー経費」としている。
 ところが、国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪大会の開催を一過性のものとせず、持続的に社会の発展に寄与する「レガシー」を残すことを義務付けている。
 ここ数年、巨額に膨れ上がった五輪開催経費の負担に開催地の住民が反発し、相次いで開催都市に立候補しようとしていた準備を進めていた都市が辞退に追い込まれている。
 国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織員会は、巨額に膨れ上がった五輪開催費への世論の反発を避けるために、五輪開催経費を抑制するとともに、なるべく低額に見せる必要があった。
 その便法として、「大会開催経費」と「レガシー経費」を分離させ、「大会開催経費」を「五輪開催経費」としていると考えるべきだ。一方で「レガシー」を残すことを義務付けているのはまったく論理矛盾だろう。
 2020東京五輪大会の開催経費と検証するにあたって、「大会開催経費」も「レガシー経費」も「五輪開催経費」とすべきである。国民が知りたいのは、一体、五輪大会開催の「五輪開催経費」は総額でいくらになり、何に使われるかである。
 「レガシー経費」は、極めて広範囲に渡る事業が含まれるので、「五輪便乗の無駄遣い」がないかどうかを厳しくチェックする必要がある。
 また、「五輪開催経費」をなるべく低く抑えるために、本来は「五輪開催経費」に該当するのに、一般行政経費として処理する「五輪経費隠し」も監視しなければならない。
 「五輪経費隠し」、「無駄遣い」、「五輪便乗」、国民の信頼感を失わないために、五輪予算の全体像を明らかにすることが必須である。
 2020東京五輪大会のスローガンは、““DISCOVER TOMORROW”、大会ビジョンの3つのコンセプトは、「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」である。そして「2020年は市場最もイノベーティブで、世界にポジティブな変革をもたらす大会」を目指すとしている。
 
 「3兆円」のレガシーをどう実現してくれるのだろうか。次世代の日本のために、五輪大会開催を「負の遺産」にしてはならない。

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登場したオリンピックの“レガシー(Legacy)”
 国際オリンピック員会(IOC)は、オリンピック競技大会を開催するにあっって、“Legacy”という理念を強調し、IOCの使命と役割として、「オリンピック競技大会の“遺産”を、開催都市ならびに開催国に残すことを推進すること」(To promote a positive legacy from the Olympic Games to the host cities and countries)を「オリンピック憲章」の中で掲げている。
 この“Legacy”(レガシー)という言葉は、オリンピック100年にあたる2002年に定められた「オリンピック憲章」に新たに登場した。
  「レガシー」とは、オリンピック競技大会を開催することによって、単にスポーツの分野だけでなく、社会の様々な分野に、“有形”あるいは“無形”の“未来への遺産”を積極的に残し、それを発展させて、社会全体の活性化に貢献しようとするものである。開催都市や開催国にとって、大会開催が意義あるものにすることがオリンピックの使命だとしているのである。
 その背景には、毎回、肥大化する開催規模や商業主義への批判、開催都市の巨額の経費負担、さらにたびたび起きる不祥事などへの批判などで、オリンピックの意味が問い直され始めたという深刻な危機感があった。
 その反省から、IOCは、開催都市に対して、単に競技大会を開催し成功することだけが目的ではなく、オリンピックの開催によって、次の世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略を強く求めこととした。
 そして、国際オリンピック委員会(IOC)は、「2013 OLYMPIC LRGACY」を採択して、開催都市に対して、レガシー(Legacy)を重視する開催準備計画を定めることを義務付けた。
 
五輪改革、「アジェンダ2020」
 2013年、リオデジャネイロで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、ロゲ前会長と交代したバッハ会長は、オリンピックの肥大化の歯止めや開催費用の削減に取り組み、翌年の2014年の「アジェンダ2020」を策定する。
 「アジェンダ2020」は、合計40の提案を掲げた中長期改革である。
 そのポイントは以下の通りだ。
* 開催費用を削減して運営の柔軟性を高める
* 既存の施設を最大限活用する
* 一時的(仮設)会場活用を促進する
* 開催都市以外、さらに例外的な場合は開催国以外で競技を行うことを認める
* 開催都市に複数の追加種目を認める 
 そして2020東京大会を「アジェンダ2020」を最初に適用する大会と位置付けた。
 バッハ会長のオリンピックの生き残りをかけての五輪改革である。

大会開催基本計画で示されたアクション&レガシープランの基本理念
 2015年1月23日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会(森喜朗会長)は、東京都内で理事会を開き、大会開催基本計画案を承認した。
 基本計画では、開催開催のスローガンとして““DISCOVER TOMORROW”を掲げ、大会ビジョンの3つのコンセプトして、「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」を示し、「アクション&レガシー」の基本理念を明らかにした。そして「2020年は市場最もイノベーティブで、世界にポジティブな変革をもたらす大会」を目指すとした。
 この基本理念に基づいて、(1)スポーツ・健康(2)街づくり・持続可能性(3)文化・教育(4)経済・テクノロジー(5)復興・オールジャパン・世界への発信-を5つの柱とし、地域スポーツの活性化やスマートエネルギーの導入、東日本大震災の復興状況の世界への発信などに取り組むとし、アクションプランのロードマップも明らかにした。
 16年リオデジャネイロ五輪開幕前に具体的な行動計画をとりまとめとしている。またパラリンピックを2度開催する初の都市となることから、武藤敏郎事務総長は「共生社会、多様性と調和を大会ビジョンに入れているので、重視したい」と話した。

アクション&レガシープラン2016を公表
 リオデジャネイロ五輪の直前の2016年7月、大会組織委員会では、「5本の柱」に基づいて、2016 年から2020 年までの具体的なアクションプラン、「アクション&レガシープラン2016」を策定した。IOC総会で採択された「アジェンダ2020」の趣旨も具体的に大会運営に反映させ、東京2020大会を「アジェンダ2020」によるオリンピック改革のスタートの年にするとしている。
 このプランは、2020年まで毎年夏を目処に更新しながら「アクション」を実施し、2020東京大会終了後、「アクション&レガシーレポート」をまとめるとしている。

 「アクション&レガシープラン」のキャッチフレーズは「東京 2020 大会に参画しよう。そして、未来につなげよう」で 、2020東京大会は「東京を中心に開催」される、 「スポーツの祭典」で、大会そのものは、①分野的、② 地域的、③時間的に限られたイベントだが、これを単なる一過性 のイベントとするのではなく、できるだけ多くの人が参画し、多く の分野で東京 2020 大会がきっかけとなって変わったと言われる ような、広がりのある大会としたいしている。
 そして具体的には、 スポーツだけでなく、文化・教育、経済・テクノロジーなど様々 な分野と連携し、 東京だけでなく、オールジャパン、そしてアジア・世界に ポジティブな影響を与えたいとしている。 こうした取組はリオ 大会後の 2016 年の秋から開始して、大会後の2020 年以降にもつなげるとしている。
 2020東京大会のレガシーは、スポーツだけでなく「文化・教育、経済・テクノロジーなど様々 な分野」をターゲットにし、一過性のものではなく持続的に次世代につなげていくことを目指しているのである。
 「アクション&レガシープラン」を実現するためには、国を始め、東京都や地方自治体、企業、組織などに経費負担が発生する。その中核となる国は、巨額の「レガシー経費」を予算化することが必須となる。「レガシー経費」は「五輪開催経費」なのである。


アクション&レガシープランの推進体制 国は「各分野のアクションを推進」する義務を負っている 推進予算は大会開催のレガシー実現のための「五輪開催経費」












アクション&レガシープラン 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

五輪大会開催経費 「1725億円」 国、会計検査院に反論
 11月30日、桜田義孝五輪担当相は、2020東京五輪大会に、国が2013~2017年の5年間に支出した経費は53事業で「1725億円」とする調査結果を公表した。会計検査院の「8011億円」という指摘に対し、内閣官房が精査した。
 桜田氏は、五輪関係の経費とそれ以外の経費の線引きを明確に示したと説明し、「透明性を確保し、国民の理解を得るために今後も支出段階で集計、公表していく」と述べた。
 2020東京五輪大会に開催経費については、2017年12月22日、大会会組織委員会は、総額「1兆3500億円で、東京都が「6000億円」、大会組織委員会が「6000億円」、国が「1500億円」を負担するとした。
 これに対し、11月4日、会計検査院は「1500億円」を大幅に上回る「8011億円」が、すでにこの5年間で支出されたとの指摘を国会に報告し、政府に経費の全体像を分かりやすく示すよう求めた。

 東京都は、すでに「8000億円」の他に、五輪関連経費として「8100億円」を投入することを明らかにしていて、会計検査院の指摘の「8011億円」や、今後支出する経費も加えて試算すると、「3兆円」に膨れあがることが明らかになった。
 
 内閣官房では、大会に関連すると指摘された計8011億円の286事業について、(1)選手への支援など「大会の準備、運営に特に資する事業」(1725億円)(2)気象衛星の打ち上げなど「本来の行政目的のために実施する事業」(826億円)(3)道路整備など「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(5461億円)の三つに分類し、五輪大会開催のための国の支出は(1)の「1725億円」だとした。

(1) には、新国立競技場の整備費の国の負担分(744億円)やパラリンピックの準備費(300億円)が、(2)は気象衛星の打ち上げ関連費用(371億円)など29事業、826億円が含まれている。
 (3)は首都高速などの道路整備費(1390億円)、水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費(569億円)など208事業で合わせて5461億円と大半を占めている。
 このほか、会計検査院が指摘した8011億円に含まれていないが、大会に直接関連する事業として国立代々木競技場など5施設の整備や改修のための国庫補助金を直近5年間で約34億円支出したと明らかにした。

「レガシー経費」は「五輪開催経費」
 国際オリンピック委員会(IOC)は、開催都市に対して、単に競技大会を開催し成功することだけが目的ではなく、オリンピックの開催によって、次の世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略を強く求め、開催都市に対して、レガシー(Legacy)を重視する開催準備計画を定めることを義務付けている。
 レガシーを実現する経費、「レガシー経費」は、開催都市に課せられた「五輪開催経費」とするのが当然だ。
 五輪大会は、一過性のイベントではなく、持続可能なレガシー(Legacy)を残さなければならないことが開催地に義務付けられていることを忘れてはならない。
 気象衛星の打ち上げ関連費用も首都高速などの道路整備費も水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費も、ICT化促進や先端ロボット、自動走行技術開発、外国人旅行者の訪日促進事業、日本文化の魅力発信、アスリート強化費、暑さ対策、バリアフリー対策、被災地の復興・地域活性化事業、すべて2020東京大会のレガシーとして次世代に残すための施策で、明らかに「レガシー予算」で「五輪開催予算」だ。
 とりわけ「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」は「五輪開催経費」から除外したが、事業内容を見るとすべて「レガシー経費」に含まれるのは明らかだ。

 新国立競技場の建設費を「五輪開催経費」に含めて、「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」は五輪開催経費が除外する姿勢はまったく論理矛盾である。
 新国立競技場は、大会開催時は、開会式、閉会式、陸上競技の会場として使用されるが、その期間はわずか2週間ほどである。しかし、新国立競技場は大会開催後、50年、100年、都心中心部のスポーツの拠点にする「レガシー」として整備するのではないか。 
 国の仕分けに基づけば、まさに「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」の事業、「レガシー経費」の範疇であろう。ところが新国立競技場の経費だけは「大会の準備、運営に特に資する事業」に分類し、「五輪開催経費」だとしている。国の仕分けはまったく整合性に欠け、ご都合主義で分類をしたとしか思えない。単に五輪大会への関与の濃淡で、仕分けすべきではない。「レガシー経費」をまったく理解していない姿勢には唖然とする。
 東京都が建設するオリンピックアクアティクスセンターや有明アリーナ、海の森水上競技場なども同様で、「レガシー経費」である。

 通常の予算では通りにくい事業を、五輪を「錦の御旗」にして「五輪開催経費」として予算を通し、膨れ上がる開催経費に批判が出ると、その事業は五輪関連ではなく、一般の行政経費だとする国の省庁の姿勢には強い不信感を抱く。これでは五輪開催経費「隠し」と言われても反論できないだろう。
 2020東京大会のレガシーにする自信がある事業は、正々堂々と「五輪開催経費」として国民に明らかにすべきだ。その事業が妥当かどうかは国民が判断すれば良い。
 東京都が五輪開催経費を「6000億円」のほかに、「大会に関連する経費」として、バリアフリー化や多言語化、ボランティアの育成、「大会の成功を支える経費」として無電柱化などの都市インフラ整備や観光振興などの経費、「8100億円」を支出することをすでに明らかにしている。国の姿勢に比べてはるかに明快である。

 「3兆円」、かつて、都政改革本部が試算した2020東京オリンピック・パラリンピックの開催費用の総額だ。今回の会計検査院の指摘で、やっぱり「3兆円」か、というのが筆者の実感だ。
 いまだに「五輪開催経費」の“青天井体質”に歯止めがかからない。
 開催1年前の2019年度には、国の五輪開催予算がピークに達すると思われる。
  

「3兆円」は「モッタイナイ」!
 「3兆円」、都政改革本部が試算した2020東京オリンピック・パラリンピックの開催費用だ。これまでオリンピックを取り巻く最大の問題、“肥大化批判”にほとんど向きあわないないままで、開催準備を進めてきたツケが表面化したのである。
 2020東京大会の開催にあたって最も重要なポイントは、次の世代を視野にいれた持続可能な“コンパクト”なオリンピックを実現することである。
 「アジェンダ2020」はどこへいったのか。国際オリンピック委員会(IOC)は、2020東京大会を「アジェンダ2020」の下で開催する最初のオリンピックとするとしていたのではないか。 招致委員会が世界に宣言した「世界一コンパクな大会」はどこへいったのか。
 開催費用を徹底的削減して次世代の遺産になるレガシーだけを整備すべきだ。今の日本に世界が目を見張る壮大な競技施設は不要だし、“見栄”もいらない。真の意味で“コンパクト”な大会を目指し、今後のオリンピックの手本を率先して示すべきだ。
 日本は超少子高齢化社会が突入する。1964年の東京五輪とは“時代”が違う。その“時代認識”を踏まえた東京オリンピック・パラリンピックでなければならない。
 「3兆円」は「モッタイナイ」!





東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園
江の島セーリング会場 シラス漁に影響 ヨットの移設や津波対策に懸念
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 競技会場の全貌
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 「3兆円」!の衝撃
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京五輪大会 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか





国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




2018年11月8日
Copyright (C) 2018 IMSSR





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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
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東京五輪招致 贈収賄疑惑 The Gaudian

2019年01月18日 05時08分43秒 | 東京オリンピック

The Gaudian(2016年5月11日)の記事抄訳
Tokyo Olympics: €1.3m payment to secret account raises questions over 2020 Games




The Gaudian(2016年5月11日)


 本紙(The Gaudian)の取材で、日本が招致に成功した東京2020年五輪大会の招致活動期間中に、東京五輪招致委員会から億単位の金銭が国際陸上競技連盟(IAAF)のラミン・ディアク前会長の息子と関わりのある口座に振り込まれていたことが明らかになった。
 フランス検察が現在捜査中である約130万ユーロ(100万ポンド)の資金の流れの疑惑について、国際オリンピック委員会(IOC)に対して、ラミン・ディアク氏が会長を務める国際陸連とオリンピック招致競争との関連について、適切な調査を求める圧力が高まっている。2013年の東京開催決定についても深刻な疑惑が浮上しているのである。
 ディアク氏は1999年から2013年までIOC委員を務め、2014年に、ドーピング検査でロシア人選手の陽性結果の隠蔽工作で、少なくとも100万ユーロを受け取ったという疑惑を受け、2015年11月に国際陸上競技連盟(IAAF)会長を辞任するまで、IOCの名誉委員を務めた。同氏はフランス検察が国際陸連の汚職捜査が終わるまで、フランスからの出国禁止処分を受けている。
 本紙は1016年3月、フランス司法当局が捜査対象を拡大し、2016年と2020年のオリンピック大会の招致活動も捜査対象に含めたと報じた。
 捜査の対象となっている銀行振り込みのうち約130万ユーロは東京オリンピック招致委もしくはその代理業者から、シンガポールのブラック・タイディングス社の隠し口座に直接送られていることが明らかになった。この口座は、ラミン・ディアク氏の息子で、国際陸連のマーケティング・コンサルタントを務めているパパ・マッサタ・ディアク氏に関係している。



 1999年から2015年まで国際陸連の会長だったラミン・ディアク氏は、東京がイスタンブールやマドリッドに勝利した2013年当時も、影響力のあるIOC委員だった。
 ブラック・タイディングス社は、10年以上にわたる国際陸連の組織的腐敗疑惑の中心にある。
 世界反・ドーピング機構(WADA)が設立した独立委員会が2016年1月に提出した報告書には、ディアク氏とマーケティング・コンサルタントのパパ・マッサタ氏、カリル氏の二人の息子が、法律顧問のハビブ・シセ氏と共に、国際陸連の「非公式で不適正な統治機構」として、いかに振る舞っていたか、実態を明らかにしている。
 本紙は以前、パパ・マッサタ・ディアク氏がマーケティング・パートナーである電通との契約して市場開発に関するスポンサー契約探し業務を請け負い、2017年の世界陸上競技選手権と2020年のオリンピックの招致に名乗りを上げていたカタールに対し、500万ドル(350万ポンド)の賄賂を送ることを提案した可能性があったことを報じた。
 また、2016年1月、カタールの首都ドーハが2016年のオリンピック招致活動をしていた2008年当時、パパ・マッサタ・ディアク氏がIOCの影響力のある委員6人に対し、「贈り物」を届ける計画に関与していたことも報じた。
 しかし、今回は、IOCにとって最も厄介なものとなりそうだ。IOCのトーマス・バッハ会長は国際サッカー連盟(FIFA)や国際陸連など醜聞にまみれたスポーツ組織と比較して、IOCは誠実さに満ち溢れた組織だとくり返し述べてきた。そのなかで贈収賄疑惑が発覚したことで、オリンピックのムーブメント全体に衝撃を与えるだろう。
 2020東京オリンピック招致委からの億単位の支払いにより、2029年まで国際陸連とスポンサーシップに関する包括契約を結んだ日本の巨大マーケティング会社、電通の役割に対する疑惑も浮上している。この契約は、ディアク氏の会長任期が終わる直前の数ヵ月以内に強引に2029年まで延長されたのだ。
 世界アンチ・ドーピング機構独立調査委員会(ディック・パウンド委員長)の報告書は、電通スポーツの子会社で国際陸連から与えられた商標権販売のために設立されたアスリート・マネジメント・アンド・サービス(AMS)社(スイス・ルツェルン)のコンサルタント、イアン・タン・トン・ハン氏がブラック・タイディングス社の口座を保有するようになった経緯を詳述している。
 コンピューターに残された記録を解析の結果、タン氏はラミン・ディアク氏など国際陸連幹部と日常的に接触していることが明らかとなり、「国際陸連の重役レベルに溶け込み」、「国際陸連の非公式な統治系統の一員のようだった」。
 タン氏は2014年に生まれた我が子にマッサタと名付けるほど、パパ・マッサタ・ディアク氏と親密な関係にある。報告書には、タン氏が現在もシンガポールとセネガルでディアク家と関連があるビジネス上の利益を有しているとみられる、と書かれている。パパ・マッサタ・ディアク氏は国際刑事警察機構(インターポール)から逮捕通知が出されているが、現在もセネガルに滞まっている。
 電通の広報担当者は、本紙の取材に対し、ブラック・タイディングス社への支払いについては何も知らないし、タン氏をコンサルタントとして雇ったこともないと話した。世界最大級のマーケティング会社である電通は、以前にも、パパ・マッサタ・ディアック氏をコンサルタントとして雇っておらず、同氏は国際陸連と契約していると述べた。
 ブラック・タイディングス社の口座は、2014年3月、ロシア人マラソン選手、リリア・ショブホワ選手のドーピング違反隠蔽失敗後に 返金された30万ユーロ が同口座を経由したことで知られるようになった。
 国際陸連の独立の倫理委員会は同年、この問題について調査を開始し、今年1月に公表した170ページの手厳しい報告書で、パパ・マッサタ・ディアク氏や反ドーピング責任者のガブリエル・ドレ氏ら上級職員4人を追放した。
 パウンド報告は、「ブラック・タイディングス(Black Tidings)」とは、ヒンドゥー語で黒いマーケティング、あるいは文字通りには「黒いカネの洗浄」を意味すると指摘している。
 複数の情報筋が、「何千万」ユーロが同口座を通過しているとみている。また、調査について知る2人の別個の情報筋が、東京招致委からの億単位の振り込みについて調査が進行中であることを認めた。
 2020年の招致レースにおける不正行為の可能性ついて、ラミン・ディアク氏が支持をイスタンブールから東京に変更したと考えられており、それは日本のスポンサーが国際陸連と契約したからだと、パウンド報告書の脚注に記載されている。
 当時、東京招致委はこの指摘に対して「我々の理解を超えている」と話し、イスタンブール側もそれは敗因にはないと思うと話していた。IOCは疑惑の根拠とされる会話の記録を調査すると語った。
 パパ・マッサタ・ディアク氏は今年、警察から7時間におよぶ事情聴取を受けた。しかし、セネガル当局は、同氏は国外退去させられないだろうと話している。本紙の取材に対し、同氏は「これらの疑惑はフランス警察と裁判所が調査中であり、今回の法的手続きの対象とされているため、コメントは控えたい」と話した。
 IOCは、夏季大会に先立ち、第129次総会をリオデジャネイロで開催する。IOCの広報担当者は、同委員会の倫理・コンプライアンス部門責任者は、世界反・ドーピング機構および事件の発端から国際陸連を調査しているフランス警察判事と連携し、現在、フランス司法手続きの民間当事者であることを明らかにした。
 また、IOCの倫理・コンプライアンス部門の責任者は、「疑惑の不適切な行為すべてについて明らかにするため、あらゆる当事者と連絡を取り合っていく。IOCは調査に関して、現段階ではこれ以上はコメントしない」とつけ加えた。


The Gaudian原文
Tokyo Olympics: €1.3m payment to secret account raises questions over 2020 Games



竹田JOC会長を捜査開始 五輪招致で贈賄容疑 窮地に追い込まれた東京2020大会



2019年1月18日
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東京オリンピック 豊洲市場 築地市場移転 環状2号線 五輪道路 BRT 選手村 陸の孤島 交通渋滞

2018年11月22日 12時29分28秒 | 東京オリンピック

陸の孤島 東京2020五輪大会施設
頓挫する交通インフラ整備 臨海副都都心
環状二号線完全開通は五輪開催後



環状2号線 暫定開通
 2018年11月4日、午後2時過ぎ、環状二号線の豊洲市場-新大橋通汐先橋付近間の未開通区間、2.8キロメートルが暫定開通した。環状二号線は、築地市場跡地内の未完成区間が残されているが、築地大橋を渡った後に、築地川沿いに暫定迂回道が完成した。これで、とりあえず環状二号線は、豊洲から晴海、築地大橋までは完成した環状二号線、築地大橋から汐先橋交差点付近までは暫定迂回道路、汐先橋から東新橋一丁目(日比谷神社前)までは地上暫定道路、築地虎ノ門トンネルに入って虎ノ門までの区間が走行可能になった。しかし、暫定迂回道は片側一車線、新大橋通りや第一京浜の交差点の信号を通過しなければならないため、渋滞発生が懸念される。
 小池都知事は、豊洲市場の渋滞解消のために、予定より1週間前倒して11月4日(日)に暫定開通させることを明らかにしていた。
 築地大橋から暫定迂回道路に入るには急カーブを通過しなければならないため通行量は制限されるため、2020東京大会開催までに、築地大橋から築地市場跡地を通り青果門に至る直線的な地上仮設道路を建設する計画だ。しかし、この地上仮設道も片側1車線のため、臨海部と都心部を往来する膨大な五輪関連や豊洲市場関連車両を処理するのは絶望的である。
 地下トンネルが完成し、片側2車線で虎ノ門まで全通するのは、五輪開催後の2022年になる。







環状二号線暫定開通区間 東京都

東京オリンピック 難題!交通対策 渋滞マップ公表 交通量15%削減で、渋滞・混雑は解消できるか?


豊洲市場開場 交通渋滞で混乱 築地市場解体開始
「日本の台所」として食生活を支えた築地市場は10月6日、83年の歴史に幕を閉じ、11日豊洲市場が築地に代わる中央卸売市場として誕生した。
 環状二号線がまだ開通していないため交通渋滞が予想されていたが、懸念通り、勝どき橋を渡る晴海通りは激しい交通渋滞に見舞われた。豊洲市場では、晴海通りは渋滞しているので迂回道路を通るようにと指導したそうが、豊洲市場からはかなり離れた佃通りやレインボー・ブリッジしか、都心部と結ぶ道路はない。市場関係者も「われわれが危惧していた以上にひどい」と話していて、仲卸からも「お客さんが時間通りに来られない」、「配達が間に合わない」などの声が聞かれたという。(FNN ニュース 10月11日)
 市場関係者は大渋滞に悩まされる毎日が、当分続きそうだ。
 築地市場は解体工事が10月11日から始まり、東京2020大会で選手や大会関係者を輸送するバスや乗用車約2700台分を駐車するための車両基地として整備される。そして、大会開催の最大の懸案課題である五輪選手村や国際放送センター(IBC)や競技施設と都心部を結ぶ環状2号線の未開通分の工事が始まる。






環状二号線築地大橋を通るターレ 築地大橋は開通していないが、東京都は特別措置としてターレを豊洲市場へ移動させた  出典 ANNニュース(10月6日)


「配達が間に合わない!渋滞が課題」 FNNプライム(10月11日)


閉場した築地市場水産物部 10月10日


閉場した築地市場水産物部 10月10日



豊洲市場 10月11日に開場 交通渋滞で混乱必死
 2018年7月31日、小池百合子都知事は、築地市場(中央区)から移転を目指す豊洲市場(江東区)について、汚染された地下水対策のために東京都が実施していた追加の安全対策工事が終了し、「安心、安全な市場として開場する条件を整えられた」と述べ、「安全・安心宣言」を行った。
 そして、翌8月1日、東京都は農林水産相に豊洲市場の開設認可申請を行い、9月10日、農林水産相は中央卸売市場として開設することを認可した。
 これで約30年にわたる議論を経た市場移転が正式に決まった。
 豊洲市場は、計画より2年遅れて、10月11日に開場することが決まった。
  豊洲の汚染問題では、舛添要一知事(当時)が汚染対策終了後の2014年に「安全宣言」をしたが、小池知事が移転を凍結。汚染対策の柱とされた建物の下の「盛り土」がないことが分かり、地下水から環境基準値を超えるベンゼンも検出されたとして安全性に疑念が噴出した。
 東京都は有害物質が揮発して建物に入るのを防ぐために地下の床をコンクリートで覆い、地下水位を下げるポンプの増設をするなどの追加工事を実施した。
 7月30日、都の専門家会議は、追加工事が完了し、安全性について、「科学的な安全は確保されている」との見解を示した。これを受けての小池都知事の「安全宣言」である。
 今回の追加工事費は38億円。汚染対策費は総額で897億円に上っている。今後もコンクリート補修や地下水くみ上げ設備の維持に年間数億円かかるという。
 豊洲の汚染問題のもたらしたツケは大きく、東京都民への重い負担が残された。
 豊洲市場移転と築地市場の再開発は、東京2020大会をターゲットに完成させる予定だったが、その目論見は外れた。
 臨海部と都心を結ぶ環状二号線は、東京2020大会開催時の交通渋滞対策の切り札として、臨海部と都心を結ぶ「信号のないスムーズな輸送」を目指して建設が進められていたが、築地市場の跡地に建設される地下部分の工事が間に合わず、地上仮設道路の「暫定開通」に追い込まれた。
 選手村とメイン会場となる新国立競技場は、5万人近くの選手や大会関係者、メディア関係者が移動するメインの動線だ。その輸送ルートとして環状二号線を整備する計画だった。
 そして選手村の後方には、豊洲市場がある。豊洲市場の開場で市場関係者の車両も加わり、五輪大会関係車両も合わせると収拾がつかなくなる懸念がある。
 東京2020大会の最大の課題は、酷暑対策とならんで交通渋滞対策に絞られた。
 このままでは、首都圏は交通渋滞で麻痺状態になるの必死の様相だ。


環状二号線と築地市場






出典 環状二号線事業概要 東京都第一工事建設事務所

五輪開催時 環状2号線、地下トンネルは断念 地上暫定道路で対応
 2018年6月7日、東京都は豊洲市場への移転が大幅にずれ込んだことで、2020年東京五輪・パラリンピックで五輪のメイン会場となる新国立競技場など都心と選手村やMPC(国際メディアセンター)などを結ぶ「五輪道路」として計画されていた環状2号線を、地下トンネル(片側2車線)での開通を断念し、地上につくる片側1車線の仮設道路で五輪を迎えることを決めた。
 第一段階として、暫定迂回道路を豊洲市場開場の約1か月後の11月4日に、浜離宮恩賜庭園に面した築地川沿いの道路を利用し、臨海部から都心に向かう「上り」の一方通行で開通させる。そして築地市場の青果門を入り口として築地市場跡地を横切り、築地川沿いの暫定迂回道路に接続させる「下り」の片側1車線道路も開通させる。
 しかし、暫定迂回道路は片側1車線でカーブもきつく、スムーズな車両の通行が確保できず、往来する大量の車両で激しい交通渋滞が巻き起こるのは必至で、輸送力は大幅に低下するのは明らかである。豊洲市場関係者の車両の交通渋滞に対応する応急対策にすぎない。
 第二段階は、2019年末までに、築地市場の青果門を入り口として築地市場跡を横切る地上仮設道路を、環状二号線の本線建設エリアの両側に片側1車線で建設し、築地大橋とほぼ直線で結ぶ。第一段階の暫定迂回道路に比べて、きついカーブはなくなり直線の道路となるが、片側1車線であり渋滞は避けられない。これは2020東京大会関連車両の応急措置である。
 しかし、地上仮設道路の大量の車両が殺到しする汐先橋は、交通量の多い新大橋通りとの交差点で、しかも首都高速の出入り口があり、激しい渋滞が予想されるだろう。また都心に向かうには、次に通過しなければならない東新橋交差点はこれも平時から渋滞している第一京浜との交差点で激しい渋滞は必至である。東新橋交差点を抜けると、ようやくすでに完成している築地虎ノ門トンネルの出入り口に到達し、虎ノ門までは地下トンネルで通行できる。
 東京都では築地市場移転後の跡地に建設する地下トンネルの出入り口が完成して、虎ノ門まで至る環状二号線が片側2車線で全線正式に開通するのは2022年になるとした。

 環状二号線は、JR秋葉原駅周辺(千代田区)と江東区有明地区を結ぶ全長約14キロの都道で、この内、築地市場跡地を通る新橋―豊洲間(3.4キロメートル)が未開通の「事業中区間」で、その他の区間は開通している。また3.4キロメートルの未開通区間の内、工事が完了していないのは、築地市場付近の約500メートルだけで、他の区間はすべて工事は完了している。
 環状二号線の虎ノ門から築地市場跡地までの区間は、「築地虎ノ門トンネル」と名付けられた全長約1.84キロメートルの片側二車線の地下トンネルが建設され、築地市場跡地にトンネルの出入り口が建設される。この内、虎ノ門・新橋の区間の1.25キロメートルの地下トンネルの一部が完成し、2018年3月に供用がすでに始まったいる。
 地下トンネルの一部完成で、地上区間も含めて虎ノ門・新橋の区間の1.4キロメートルが開通し、「新虎通り」と名付けられた。
 「築地虎ノ門トンネル」が全通すれば、虎ノ門から晴海の選手村や豊洲まで「信号のないスムーズな輸送」の確保が可能となる。
 環状2号線は、築地市場移転後の跡地に建設する地下トンネルの出入り口で地上に出て、高架道路となり築地大橋で隅田川を渡り、勝どき陸橋や黎明大橋を経て晴海地区に入り、さらに豊洲大橋を渡って豊洲市場に至る。そして東雲運河を渡って終点の有明地区に至り、臨海道路に接続する。
 1993年、環状二号線は、新橋・豊洲までの区間から、新橋・晴海までの区間に延長され、工事対象区間は3.4キロメートルから、4.7キロメートルとなった。豊洲から晴海の延伸区間は工事は完成し、すでに供用が始まっている。
 環状二号線は、2020東京大会開催時には選手や大会関係者、メディア関係者などを輸送する約6000台の車両が往来する臨海部と都心を結ぶ大動脈とする計画で建設が進められ、大会組織委員会ではオリンピック・ルート・ネットワーク(ORN)の幹線に指定している。片側二車線で完全開通していれば、専用レーンや優先レーンの設置も計画され、晴海の選手村と新国立競技場の間は10分、他の都内の競技場のほとんどと20分以内で結ぶ「切り札」であった。
 また10月11日に開場した豊洲市場と都心部を結ぶ幹線としても期待されていた。

 築地市場跡地を通る地下トンネルの建設は、工期がかかる開削工法で地下部分を建設することや、換気装置の設置、地盤工事などで、3年以上は必要とされていた。勿論、築地市場移転が完了しなければ工事は始められない。その築地市場移転が土壌汚染問題で約2年遅れて「2018年10月11日」が決まり、五輪大会開催までのトンネル開通は不可能となった。地下トンネル、片側2車線での全線の開通は五輪大会開催後の2022年に延期された。
 東京都は、その間は、「暫定道路」を整備して、暫定開通させることを決めた。しかし、片側1車線の地上道路で、交通量の多い新大橋通りや第一京浜の交差点を通過しなければならないため、激しい渋滞に巻きまれ、輸送能力は極めて限定的になることが懸念される。

 このため、東京都や大会組織員会では、「交通需要マネージメント:TDM」を行い、全体の通行量を「15%削減」して「休日並み」の通行量に抑える施策を進めている。また特定のエリアや道路への流入を規制する「交通システムマネージメント:TSM」も取り入れて、信号調整や、料金所の流入規制、車線規制など行い、一般車の通行を抑えて交通量の削減を図るなどの対策の検討を進めている。
 しかし、「15%削減」は、強制力を持って実施するもではなく、企業や一般市民に呼びかけて協力ベースで交通量抑制を図る計画なので、果たして「15%」の削減が本当に実現できるのか疑問が残る。
 いずれも渋滞対策の決め手を欠くと思われる。

 環状二号線の内、虎ノ門から豊洲までの2003年に着工した4.2キロメートルの区間で建設費は約1260億円、1キロメートル当たりの建設費はなんと300億円の巨額に上る。「五輪道路」として巨費を投じて整備している環状2号線、五輪大会開催までに完成できず、「五輪道路」の大動脈にという目論見は、事実上、“破綻”した。
 築地市場移転延期で、また一つ、東京五輪準備に大きな失態が生まれている。





第一段階(2018年11月10日ごろ)供用開始 東京都建設局

一足先に環状二号線豊洲市場-築地市場間を走行体験
 2018年10月10日、翌日の豊洲市場開場を前に、移転作業があわただしく行われている中に、築地市場を訪れた。10月10日の午後6時までの期間限定で、豊洲市場への移転作業の便宜をはかるため、築地市場-豊洲市場間に大型バスを使用してシャトル便が運航されていた。コースは、豊洲市場から工事は完成したがまだ未開通部分の環状二号線にはいり、晴海、勝どきを経て、築地大橋を渡り、急カーブで築地川沿いに建設された暫定迂回道路を通り築地市場に至る。
 豊洲から築地大橋を渡るまでは片側二車線か三車線の臨海部と都心部を結ぶ大動脈に相応しい道路が完成していた。この日はシャトルバスだけでなく、市場関係者の車両の通行も、移転作業の便宜をはかり特別に許可され、資材を積んだトラックやVANなどが頻繁に往来し、4日間の最終日を迎え移転作業の最後の追い込みに入っていた。



豊洲市場から環状二号線に入った付近 片側3車線


勝どき高架橋 防音壁に囲まれている


隅田川を渡る築地大橋


築地大橋を渡ると急カーブして暫定迂回道路に


環状二号線は築地市場で行き止まり(築地市場側から築地大橋を見る)


築地川沿いに建設された暫定迂回道路


築地市場と築地大橋、臨海部



“陸の孤島”東京ベイエリア  頓挫する交通インフラ整備
 東京2020大会の競技場や選手村、IBC/MPCが集中する臨海部と都心部を結ぶ道路や鉄道などの交通機関の輸送力不足の懸念が深刻化することが明らかになった。このままでは、一般車両に加えて、約6000台とされる選手や大会関係者、報道関係者の車両で、道路は大渋滞、バスや乗用車、トラックはまったく動かず、「りんかい線」や「ゆきかもめ」は観客で超満員でホームに人が溢れるという光景が繰り広げられるのは必至の様相である。
 築地市場の豊洲市場移転を巡って、汚染対策の柱とされた建物の下の「盛り土」がなく、謎の“地下空間”が広がっていることが明らかになったり、地下水から環境基準値を超えるベンゼンが検出されたりして、豊洲市場の安全性に疑念が噴出し、豊洲市場移転は頓挫寸前の瀬戸際に立たされた。
 仮に予定通り豊洲市場移転が実施されても、予定より大幅に遅れて、築地市場の跡地に建設される環状2号線の完成を2020年五輪開催に間に合わせるのは絶望的になった。 環状2号線は、都心部と五輪競技場や選手村、IBC/MPCなどが集中する東京ベイエリアを結ぶ重要な交通路、「五輪道路」として建設が進められてきたのである。
 開催まであと4年を切った2020年東京オリンピック・パラリンピック、新国立競技場や五輪エンブレムの迷走に続き、膨れ上がった開催経費問題の深刻化、それに追い打ちをかけているのが豊洲市場移転に端を発したこの輸送問題だ。
 東京五輪招致が決まったIOC総会で、安倍首相を始め、猪瀬元東京都知事や五輪招致関係者は、高らかに五輪運営のマネージメント力の高さを世界各国に訴えたが、あれは一体何だったのだろうか。







2020年東京オリンピック・パラリンピック招致ファイル  招致委員会


2020年東京オリンピックの輸送計画について 東京オリンピック・パラリンピック招致本部


交通機関の整備が貧弱な東京湾臨海部
 2020年東京オリンピック・パラリンピック招致にあたって、招致委員会では、競技場や選手村、IBC/MPCの施設を「東京ベイエリア」と名付け、開発途上で用地が容易に確保可能な臨海部に集中させる戦略をとった。東京都は、東京湾に埋め立て地の造成を着々と進め、臨海部には、約7000haと東京区部の約12%を占める広大な土地が生まれていた。その大半がまだ利用されていない空き地で、五輪大会開催をきっかけに臨海部の再開発を一気に加速させようとする狙いがあった。



東京ベイエリア21 東京湾臨海地域の持つ潜在力 東京都都市整備局

 しかし、東京湾臨海部は、まだ開発途上で、公共交通機関や道路の整備が十分になされていない。東京都は、かつて都市博覧会の開催で、開発に弾みをつけることを目論んだが、開催は中止、そしてバブル経済も崩壊し、これまで交通インフラ整備はなかなか進まなかった。
 鉄道については、1988年に月島、豊洲、辰巳、新木場を結ぶ東京メトロ有楽町線が開通、2000年に月島や勝どき駅を設置した都営地下鉄大江戸線が完成、2002年に「りんかい線」が新木場-大崎間で全通、2006年には「ゆりかもめ」が新橋-豊洲間が全通し、交通インフラ整備の整備は徐々には進んでいる。 現存する主な公共交通機関は、東京臨海高速鉄道「りんかい線」と地下鉄都営大江戸線、東京メトロ有楽町線、東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」である。
 しかし、臨海部と都心部を結ぶ道路整備は遅れていた。 

 東京ベイエリアの道路インフラの中核は、東京湾横断する大動脈、首都高速湾岸線である。一日の通行台数は全国の高速道路でNO1、約17万台(辰巳JCT 平成22年)で、成田空港や羽田空港と都心部を結ぶ幹線道路で、乗用車、大型トラック、バスなどで常に渋滞する高速道路だ。
 さらに東京湾臨海部の最南端には東京港臨海道路があり、大田区城南島から江東区新木場まで通行可能だ。
 東京港臨海道路は、城南島から臨海トンネル(全長3.1キロメートル)で、東京湾を渡り、中央防波堤外側埋め立て地に入り、東京ゲートブリッジで、若狭海浜公園に至る。そして新木場で首都高速湾岸線に接続する。
 この二本の幹線道路は都心部と臨海部を結ぶルートではなく、横浜方面から千葉方面に都心部を迂回するいわゆる湾岸バイパスである。
 2018年3月10日、首都高速晴海線(10号線)が開通し、晴海から首都高速湾岸線に接続する動脈が完成した。五輪大会開催期間は成田空港から選手村を結ぶルートとして建設を急いだのである。 首都高速晴海線は五輪大会開催時はともかく、通常時はほとんど通行量のない閑散とした路線だろう。
 しかし、首都高速晴海線(10号線)は晴海が終点で、晴海通りに接続する。隅田川を渡って都心部の環状線に接続される計画はあるが、まだまったく具体化していない。相変わらず都心部と臨海部を結ぶ道路交通網は改善されないのである。
 現状では、臨海部と都心部を結ぶ幹線道路は、墨田川にかかる勝どき橋を通る晴海通りと佃大橋を通る佃大橋通り、そしてお台場経由のレインボーブリッジの3ルートしかない。臨海部と都心部を結ぶ道路は、隅田川や東京湾を渡らなければならないことがネックになっているのだ。佃大橋通りやレインボーブリッジは、都心部に向かうには大きく迂回するので時間がかかるので敬遠される。都心中心部に直結するのは晴海通りだが、通常でも膨大な通行台数でも渋滞の“名所”である。そこで期待されているのが第4のルートの建設で、環状二号線の開通が期待を集めていたのである。


完成した墨田川にかかる環状二号線築地大橋 東京都第一建設事務所

 その環状二号線の開通が、築地市場の豊洲市場移転が2年遅れたことで、五輪大会開催時には間に合わないのは確実になった。
 豊洲市場への移転は、東京臨海部の交通インフラ整備と深くからんでいることを忘れてはならない。築地市場の跡地は、東京ベイエリアに立地する選手村や競技場、IBC/MPCなど施設と都心を結ぶ交通インフラの“切り札”、環状2号線の建設に必須なのである。
 東京都が築地市場の移転を急いだのは“東京五輪”があったのである。


“頓挫”寸前 “五輪道路” 環状2号線
 環状2号線は、JR秋葉原駅近くから都心を半円状に進み、虎ノ門や新橋、汐留、築地市場を経由して、隅田川に架かる築地大橋を通り、晴海地区の選手村、豊洲市場、有明地区の競技会場、東京ビックサイトのIBC/MPCを結ぶ全長約14キロの都道、総工費は1790億円である。東京ベイエリアの五輪施設と都心部を結ぶ重要な交通インフラとされているため、“五輪道路”と呼ばれている。
 東京2020大会のメインスタジアム、新国立競技場や都心部の競技施設と臨海部の選手村やIBC/MPCを結ぶ五輪開催の最重要路線として建設が計画された。
 招致ファイルでは、「環状第2号線は、2020年までに完成し、オリンピックスタジアムパーク、選手村、IOCホテル間を結ぶ大動脈で、大会開催時には、オリンピック・レーンも設置することにより、移動時間を大幅に短縮させる。例えば、選手村からオリンピックスタジアムまでの所要時間は、15分短縮し、10分となる」と公約している。
 しかし、環状二号線は、新橋から築地市場を経て豊洲までの区間(3・4キロ)がまだ未開通である。
 2014年3月、環状2号線の虎ノ門─新橋間(「新虎通り」)、1.4キロメートルが開通した。東京五輪組織委員会がある虎ノ門ビルの脇から「築地虎ノ門トンネル」で新橋に至る区間の部分開通である。新橋から先の築地大橋に至るまで区間は、築地市場の跡地に現在建設中、完成は五輪大会後の2022年である。築地大橋から有明までの区間はすでに完成している。東京都では、未完成の区間を仮設道路を建設して「暫定開通」させて、東京2020大会を迎えるとしている

 環状2号線は、JR神田駅前の神田佐久間町から虎ノ門までは「外堀通り」と呼ばれているが、虎ノ門から臨海部に抜ける部分は通称「マッカーサー道路」と呼ばれている。
 終戦直後の1946年、戦災復興院が、神田佐久間町から新橋まで約9.2キロ、幅100メートルの道路として都市計画決定した。GHQが虎ノ門のアメリカ大使館から東京湾の竹芝桟橋までの軍用道路を要求したという説もあったことから、いつしか「マッカーサー道路」と呼ばれるようになった。  そして「マッカーサー道路」は“五輪道路”となった。
 10月11日に開場する豊洲市場も環状2号線沿いにある。
 環状2号線は、虎ノ門から地下トンネルで新橋、汐留を通過し、築地市場の敷地内の浜離宮恩賜庭園側に地下トンネルの出口を建設して地上に出る。そして高架道路にり、築地大橋で墨田川を渡り、黎明大橋、豊洲大橋を経て、有明で湾岸道路に接続させる計画である。道路の開通のためには、築地市場の移転が条件だ。有明から豊洲までの区間はすでに供用が始まっていて、隅田川の渡る築地大橋など豊洲から築地までの区間の工事はほぼ完成し共用開始を待つばかりである。また汐留から虎ノ門の区間も供用が始まっている。ネックは築地市場区間だけに絞られた。



環状二号線事業概要 東京都第一工事建設事務所


2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国土交通省の取り組み 国土交通省

 しかし東京都の築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転が2年延期となり、12月に予定されていた環状2号線の築地―豊洲間(約2・8キロ)の完成は挫折し、暫定開通に追い込まれた。2020年東京五輪・パラリンピックまでに全線開通させ、臨海部と都心部を結ぶ“五輪道路”のメインルートにするという目論見はもろくも崩れ去った。。
 立候補ファイルでは、環状2号線は、五輪開催時の主要輸送道路として、大会関係者の車両専用通行レーン、「オリンピック・レーン」が設置され、晴海に整備される選手村から10分で新国立競技場に行くことができると公約していた。さらに72%の選手が選手村から各競技会場へ10分以内に確実にアクセス可能な快適な輸送環境を提供するとした。
 しかし、片側1車線の仮設道路の暫定開通で東京2020大会を迎えると、「オリンピック・レーン」を環状二号線に設置はすることは不可能になる。片側1車線しかないと、一般車両が通行止めにしなければならい。豊洲市場関係者の車両を始め一般車両の通行量が多いと予想される環状二号線で、一般車両を通行止めにすれば、周辺は激しい渋滞が発生して収拾できなくなるからだ。
 結局、大会期間中は、1車線の道路を、数千台の輸送バスや大会関連車両は、一般車両に混ざって激しい渋滞の中を通行する光景が繰り広げられることになる。競技の開始時間に合わせて、選手や大会関係者、メディア関係者などを適格に輸送することが果たして可能なのだろうか、深い疑念を抱く。
 「10分で選手村から新国立競技場に」という公約は不可能になった。招致ファイルの公約違反がまた一つ増えそうだ。
 環状二号線以外に、東京ベイエリアと都心部を結ぶ幹線道路は、勝どき橋を渡る晴海通りとお台場経由のレインボーブリッジ、佃大橋を通る佃大橋通りの3ルートしかない。
 晴海通りは、通常でも膨大な通行台数でも渋滞の“名所”で、信号も多く、五輪大会関係の車両が加わったらまったく動きがとれない状況が発生する懸念があり、立候補ファイルでは、大会関係者の輸送ルートから外されていた。
 レインボーブリッジは、立候補ファイルでは、環状二号線とともに「オリンピック・レーン」を設置し、臨海部と都心を結ぶ主要輸送道路としていたが、片側2車線のため「オリンピック・レーン」の設置は困難で、大会関係車両は一般車両に混ざって通行になる可能性が強い。
 佃大橋通りは、迂回距離が長くなり、時間短縮につながらず、大会関係者車両の通行ルートからは除外されている。


「オリンピック・レーン」「オリンピック・プライオリティ・レーン」の設置計画 首都高速を中心に広範囲に設定 
立候補ファイル 2013年1月7日


「オリンピック・レーン」「オリンピック・プライオリティ・レーン」の設置計画 都心部と臨海部を結ぶルートは環状二号線とレインボーブリッジ
立候補ファイル 2013年1月7日

 また首都高速道路の渋滞も深刻な問題である。
 選手や大会関係者、メディア関係者の輸送は、首都高速道路に頼らざるを得ない。東京都と大会組織員会では、首都高速道路の渋滞は約1.8倍になると予測している。
 渋滞を避けて円滑な輸送を実現させるためには「オリンピック・レーン」の設置である。招致ファイルでは、首都高速道路の都心環状線全線、4号線、5号線、9号線、10号線、11号線、それに湾岸線の一部、そして中央自動車道路の調布インターチェンジまでの区間などに、2車線の内、1車線に「オリンピック・レーン」を設置する計画だった。
 しかし、首都高速道路は片側2車線だが、ジャンクション区間ではほとんどが1車線となるので、専用レーンは設置できないため、ジャンクション区間は、一般車両に混ざって通行しなければならない。このため、本線に「オリンピック・レーン」を設置しても、ジャンクション区間を先頭に大渋滞が本線上に発生し、首都高速道路全体がマヒ状態に陥る可能性がある。首都高速道路で「オリンピック・レーン」を設置すると、むしろ渋滞に巻き込まれて、悪影響が出ることことが明らかになっている。
 結局、首都高速道路では、五輪大会関係の車両は、ほとんどの区間を一般車両に混ざって通行せざるを得ない。
 残された首都高速道路の渋滞解消対策は、通行量を削減することだある。
 東京都と大会組織員会では、大会期間中の交通量を、全体で「15%削減」することを目標に「交通需要マネージメント(TDM)」に取り組むが、果たして「15%削減」が実現するのか、確実とはまったくいえない。「15%削減」は物流関連、企業、市民などに、協力を依頼するあくまで「お願い」ベースで達成しようとする施策で、強制力を伴う施策ではない。
 また「15%削減」が実現できても、朝夕の時間帯やエリアによっては渋滞が発生する可能性が大きい。
 このため東京都と大会組織委員会では、朝夕のピーク時などには、入り口の閉鎖や車線規制、一部区間の通行止め規制や、東名高速など首都圏外から流入する一般車両を規制する方針も検討している。
 ところが、入り口の閉鎖や車線規制、通行止め、流入規制を行うと大量の車両が一般道路に殺到し大渋滞になることは明らかだ。
 五輪大会開催のために、一般市民の生活に大きな影響を及ぼす交通規制は問題が多い。誰のための東京2020大会なのか、激しい批判を浴びるのは必至である。
 築地市場の移転が2年遅れたことで、東京大会の輸送対策問題に一気に暗雲が立ち込めている。

臨海部交通幹線の“切り札” BRT 本格運行は五輪開催後
 東京都では、環状2号線を利用して、都心から勝どきを経由して選手村、豊洲市場、国際展示場、豊洲に至る地域において、五輪開催時には五輪関係者の輸送力を確保し、五輪開催後は、通勤・通学・観光、企業活動などの需要に対応するために、都心と臨海部とを結ぶBRT整備計画を具体化していた。とりわけ五輪開催後の選手村再開発で誕生するニュータウンの住民の重要な交通インフラにする計画である。
 BRTとは、「Bus Rapid Transit」の略で、連節バスやICカードシステムを導入し、道路改良等により路面電車と比較して遜色のない乗り心地と大きな輸送力の実現が可能だ。またバスを使用するので柔軟性兼ね備えた新しい都市交通システムで、地下鉄建設に比べて整備投資の負担がはるかに少ない。
 BRTは都心部と臨海部を結ぶ新たな交通幹線として期待を集めている。



リオデジャネイロ五輪で導入されたBRT ITDP


都心と臨海副都心を結ぶBRTに関する基本計画 東京都都市整備局

BRTの運行計画は?
 BRTサービスは、表定速度を現状の都バスの約11kmに対して、倍の速度の約20km/h以上を目標として、運行回数は朝夕のピーク時では最短で3分~4分間隔、地下鉄並みに朝5時頃から夜12時頃までの運行とし、定員130人の連節バスを使用することで、将来的には一日10万人以上の輸送力の確保が可能としている。
 BRTの運行は、虎ノ門や新橋から、勝どき、選手村、国際展示場、豊洲の4路線を開設し、ピーク時輸送力(時間)は、新橋-勝どきで4000人以上、新橋-選手村で3000人~3999人、新橋-国際展示場で1000人~1999人を想定し、1日の輸送力は合計10万人以上を確保、都心部と臨海部を結ぶ主要幹線にする計画だ。
 BRTの都心部の拠点は、虎ノ門である。環状二号線の「築地虎ノ門トンネル」の脇にある虎ノ門ビルズの1階には、面積約1000平方メートルのバスターミナルが設置され、BRTの都心部の拠点となる。バスターミナルには成田・羽田空港シャトルバスの発着や地下鉄日比谷線の新駅、虎ノ門駅(2020年供用開始予定)が直結される。東京2020大会に向けた交通網整備の中核である。


虎ノ門ヒルズの1階に設けられるバスターミナル 森ビル

 BRTの停留所は、都心部には虎ノ門、新橋、東京、銀座(検討中)、臨海部には、勝どき、晴海三丁目、選手村(晴海五丁目)、豊洲駅、市場前駅、有明テニスの森駅、国際展示場駅、東京テレポート駅、東京国際クルーズターミナル(検討中)に設置する予定である。またターミナル兼車庫を晴海二丁目に整備する計画だ。
 2019年春には、京成バスと東京都などで新会社を設立し、2020年度、東京大会前に、プレ運行(第一次)として、第一次運行ルート(虎ノ門-新橋-勝どき-晴海二丁目)を開設する予定だ。新橋-勝どき間の目安所要時間は約10分、使用するバスは、燃料電池バス(単車)と連結バス(BRT)である。
 当初計画では、2019年度にプレ運行を開始するとしていたが1年遅れのスタートである。
 そして2020年東京大会開催時も第一次運行ルートのサービスに留まることが決まった。
 2020年東京大会開催後には、幹線ルート(虎ノ門-新橋-勝どき-市場前-有明テニスの森-国際展示場-東京テレポート)や晴海・豊洲ルート(虎ノ門-新橋-勝どき-晴海三丁目-晴海二丁目-豊洲-市場前)、勝どきルート(新橋-勝どき)が加わり、プレ運行(第二次)を開始する。
 東京ビックサイトへの延伸はイベント開催時に検討するとともに、国際クルーズターミナルへの延伸も今後検討するとしている。
 そして選手村再開発が終わり、環状二号線が完全開通後の2022年以降には、選手村ルート(新橋-選手村地区[晴海五丁目])を開設し、最終的には合計4ルートを運行する計画である。
 さらに銀座・東京駅への延伸も今後検討するとしている。
 運行本数と輸送力(平日ピーク時)でについては、勝どき-新橋間で、プレ運行開始時は、1時間に6本で約600人、しかし運行速度は、一般車両に混ざってい走行するために時速11~15キロメートルとなり、BRTのメリットは発揮できない。
 五輪開催後の本格運行開始時には、1時間に20便(幹線ルート/6便、晴海・豊洲ルート/6便、勝どきルート/2便、選手村ルート/2便 約3分間隔)で、約2000人という運行計画をたてている。環状二号線が片側二車線で完全開通するので、BRTの専用レーンが設置可能で、運行速度は、路線バスの倍の時速約20キロメートルで運行が可能になるとしている。
 連結バスを使用するBRTのスムーズな運行を確保するためには、BRT専用レーンの設置が必須で、BRTの本格運行は、環状二号線の片側二車線の完全開通を待たなければ
ならないのである。
 五輪大会開催時は、環状二号線は片側1車線の暫定開通でBRTの運行に必要な専用レーンの設置は不可能になった。
 肝心の五輪大会開催時には、BRTは目論見に反して、臨海部と都心部の輸送力改善にほとんど役立たないことが明らかになり、五輪開催の輸送対策に痛手となった






プレ運行(第一次)


プレ運行(第二次)


本格運行開始時


BRT停留所


都心と臨海副都心を結ぶBRTに関する事業計画 東京都都市整備局/京成バス株式会社   2016年4月

選手村は“陸の孤島”?
  環状2号線が開通しないと、都心部と臨海部の道路は大渋滞になるだろう。新たな公共交通機関として期待されているBRTの運行は頓挫する懸念も生まれている。運行は開始できたにしても、大幅なサービス低下は必至である。

 一番の問題は、公共交通機関のない選手村エリアだ。
 晴海地区の埋め立て地に建設される選手村は、工事費約954億円を想定して、14~17階建ての22棟のマンション型の施設を建設する。選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設となる。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの建物を配置するとしている。選手村の整備計画は素晴らしい。
 五輪開催時は、選手村の選手や大会関係者は専用バスで移動するので、BRTへの依存度は少ないだろう。
 しかし、五輪開催後の選手村再開発にあたってはBRTの開通は必須である。
 選手村は、大会後、住宅として供給する計画で、住宅棟22棟、超高層住宅棟2棟、商業棟1棟を整備して、約5600戸、1万2000人が暮らすのニュータウンに衣替えする。開発経費は、民間事業者の出資を促し、国や都の財政負担なしに整備する方針だ。
 日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指すとしている
 しかし、このニュータウンは、環状2号線が完成しないと“陸の孤島”になる恐れが大きい。輸送力の大きなBRTの運行が始まらないと1万人を超える市民の足が確保できない。路線バスでは輸送力が追いつかないだろう。

 問題は選手村のニュータウンだけではない。臨海部では、各所でマンション、高層オフイスビル、商業施設の建設ラッシュが続いている。臨海部は、日中や夜間の人口が急激に増加し、輸送力が追いつかなる懸念が大きい。そこでBRTのような新都市交通システムに期待が集まっているのである。
 しかし、環状二号線が片側1車線の暫定道路では、たとえBRTの運行が始まってもBRT専用レーンが設置できず、激しい交通渋滞に見舞われて十分なサービスを維持できない。臨海部の住民にとって悲惨なのは環状二号線が完全開通する2022年までの間である。

問題はさらに深刻 “陸の孤島”海の森公園 
 東京五輪のボート・カヌー競技場が整備される海の森公園は、ごみと建設残土で作られた中央防波堤内側の埋立地で、1230万トンのごみが高さ約30メートルにわたって積み上げられた“ごみ山”だった。
 この土地を東京都は緑あふれる森林公園にして東京湾の玄関口にふさわしい臨海部のランドマークにしようとするのが海の森プロジェクトである。工事は2007年から始まった。広さ約88ヘクタール、日比谷公園の約5.5倍の広大なスペースに約48万本の木々が植えられ、「海の森」にする計画だ。
 この海の森公園の防波堤内の埋立地に挟まれた水路を締め切る形でボート・カヌー競技場施設を約491億円で整備する計画だ。
 しかし、この開催計画には、現状では大きな問題がある。選手や大会関係者、観客の輸送機関の整備である。
 海の森公園は、東京湾の埋めた地の最先端、とにかく都心部から遠い。しかも地下鉄などの鉄道がない。道路は、江東区若洲と大田区城南島結ぶ東京港臨海道路とお台場経由で都心部に至る東京港臨海道路(青海縦貫線)、更に2021年には、有明地区に至る東京港臨海道路(南北線)が、総工費約1100億円の巨費を投じて完成する。この内、東京港臨海道路は、城南島から海の森公園を抜けて、東京ゲートブリッジを通り、若狭海浜公園経由で千葉臨海部につながる。東京港臨海道路は、基本的に大田区や羽田空港、京浜地区から千葉臨海部に抜けるバイパスであり、都心部と海の森公園を結ぶ道路ではない。
 海の森公園と都心部を結ぶ道路は、東京港臨海道路(青海縦貫線)と建設中の東京港臨海道路(南北線)である。しかも、隅田川を渡って都心部に入るには、環状二号線の暫定道路や晴海通り、レインボーブリッジ、佃大橋しかない。
 朝晩に集中する選手や大会関係者、観客などの都心部からの輸送はどうするのだろうか?
 いずれにしてシャトルバスの臨時便で対応する他ないが、湾岸部の激しい渋滞でスムーズな運行は確保できるのだろうか、海の森公園の“陸の孤島”問題は深刻である。
 


海の森水上競技場 出典 東京都五輪準備事務局

臨海部の公共交通機関の大動脈「りんかい線」
「りんかい線」は、大崎駅から新木場まで、全長12.2km、大井町、品川シーサード、天王洲アイル、東京テレポート、国際展示場、東雲の8駅がある東京臨海副都心の大動脈だ。
長さ20メートルの車両の10両編成、1両編成の定員は約1300人である。ピーク時には4分間隔で、1時間に最大15本程度、運転可能としている。現状では、ピーク時には1時間に11本、1日143本が運転されている。輸送能力は、1時間に最大1万9500人、1日で約20万人程度とされている。
 しかし、沿線にはフジテレビや東京ビックサイト、商業施設や物流施設、工場などがあり、朝晩の通勤時間帯は既に相当混雑している。
有明テニスの森や有明BMXコース、有明体操競技場、有明アリーナ、お台場海浜公園、それに東京ビックサイトに設置されるIBC/MPCに行く利用客が多いだろう。
 五輪開催時には、臨海部の主力交通機関になるだろう。




観光客に大人気 「ゆりかもめ」 輸送力には難点
「ゆりかもめ」は、新橋駅から豊洲駅まで、全長14.6km、お台場海浜公園、台場、国際展示場正面、有明テニスの森、市場前(豊洲市場)などの駅がある。
ピーク時には4分間隔で、1時間に最大15本の運行が可能で、1両編成の定員は300人~350人、輸送能力は1時間で最大約5250人程度、1日で約11万人程度とされている。
「ゆりかもめ」の沿線にはフジテレビや東京ビックサイト、有明テニスの森、お台場海浜公園、船の科学館など施設があり、土日・祝日は大勢の乗客で、車体のサイズが小さく、編成も短いので、車内はいつも満杯。地下を走る「りんかい線」とはちがって、高架の軌道を走るゆりかもめは臨海部が見渡せるので、観光客には圧倒的な人気だ。
 五輪開催時には、競技場を訪れる観客を始め、大会関係者やメディア関係者でホームは乗客であふれ、車内は超満員で、いつ乗れるのかわからないような状況が発生する懸念が大きい。とりわけ乗客の集中する朝晩は深刻だろう。
 「ゆりかもめ」は将来の輸送能力増強を見込んで、ホームの延長用に駅周辺のスペースに余裕を持たせてあり、線路の間に駅を伸ばすスペースを残している。現在6両編成を10両編成程度にすることは可能と見られている。それでも輸送力は不足し混雑緩和にはつながらない懸念が残る。五輪競技場集中地域の主力輸送機関としては十分な輸送能力に欠くと思われる。






晴海エリアのアクセス 都営地下鉄大江戸線
 大江戸線は門前仲町、月島、勝どき、築地市場などに駅があるが、沿線に東京五輪の施設はなく、選手村も海を隔てた隣の晴海エリアで駅から遠く、東京五輪開催時の輸送力にはあまり貢献しないだろう。
 2016年9月28日、森組織委員会会長は、突然、築地市場の豊洲市場移転後に生まれる跡地に乗用車約4000台とバス約1000台、合計約5000台の五輪関係車両の駐車場を設けるとテレビ番組で発言し波紋を呼んだ。
 2017年12月26日、東京都はバスや乗用車を収容する車両基地として築地市場跡地を含め、都内や臨海部などに7カ所を整備する計画を明らかにした。
 築地市場跡地は、メインの車両基地となり、バスと車両、計約2700台、江東区若洲にはバス約700台、江東区新砂には車両、約600台を駐車できるようにする。また中央区や港区、新宿区の4カ所は一時待機場として整備し
、車両基地の総面積は約30ヘクタールとなり、その大半が都有地としている。
 東京都では、築地市場跡地には駐車場の他に運転手の食堂、管理事務所なども整備する計画である。
 築地市場跡地に車両基地が整備されることになり、築地市場駅のある大江戸線は輸送関係者の有力な交通機関になると思われる。



辰巳、夢の島のアクセスを確保 東京メトロ有楽町線
  有楽町線は、辰巳地区にあるオリンピック アクアティクスセンターや辰巳国際水江場、夢の島公園のアチェリー会場にアクセス可能な唯一の公共交通機関である。
 しかし、臨海副都心地区の有明エリアや晴海・豊洲エリアにとっては、距離があるため五輪開催時には公共交通機関としての役割はあまり果たさせない。
 江東区では、有楽町線の豊洲駅から、東陽町を経て、住吉駅まで至る地下鉄8号線の建設計画の検討を進め、2010年から江東区では建設基金の積み立てを開始している。全長約2.5キロメートル、総工費約900~1200億円で、一日約20万人の利用客を見込む。しかし、まだ建設開始の見込みはたっていなしい。





オリンピックアクアティクスセンター  出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

 次世代へのレガシー(未来への遺産)を目指した臨海副都心開発の目論見も十分な交通インフラが整備されていない限り“陸の孤島”となり、負のレガシー(負の遺産)の象徴になるだろう。
 リオデジャネイロ五輪の準備で、東京大会関係者やメディアは五輪施設の整備の遅れや大会運営の不備、治安の悪さ、政治混乱などネガティブ・チェックを頻繁に報道した。リオデジャネイロの市街地からオリンピックパークを結ぶ鉄道の完成が開会式直前になったことも批判の対象だった。しかし、開幕直前に完成すればまだ上々だろう。振り返って東京五輪の準備状況を冷静に見てみよう。原因はともあれ五輪の交通インフラの要である環状2号線はそもそも五輪開催までに完成しない。五輪大会開催の輸送幹線となる首都高速は、開催時には約1.8倍の渋滞が発生するとして、交通量全体の「15%削減」を掲げ、物流業界、企業、市民に協力を要請し始めているが、「15%削減」が達成できるかどうか、まだ確実ではない。2020東京大会の課題は、暑さ対策と交通渋滞対策に絞られてきた。
 そしてその双方の課題に決め手が未だに見いだせない。
 日本にリオデジャネイロ五輪を批判する資格はない。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと2年を切った。まさに正念場である。




東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!
有働由美子 news zero批判 ニュースになっていないnews zero ニュースキャスター失格 あさイチの成功




“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 競技会場の全貌
東京オリンピック 競技会場最新情報(下)膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
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江の島セーリング会場 シラス漁に影響 ヨットの移設や津波対策に懸念

北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京オリンピック・パラリンピック 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか








国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2016年9月28日 初稿
2018年11月10日 改訂
 
Copyright (C) 2016 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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