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巨額を投入したスタジアム建設
“負の遺産”に転落するのは必至
“負の遺産”に転落するのは必至
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2018 FIFA World Cup Russia™ - OFFICIAL TV Opening (EXCLUSIVE)
FIFA TV/Youtube
Russia 2018: Magic is in the air
FIFA TV/Youtube
ロシア大会の開催費用は6780億ルーブル(約1兆2760億円)
2018FIFAワールドカップ ・ロシア大会の4年前の2014年4月4日、ロシア・スポーツ省は、2018年のサッカーW杯の開催費用を改めて算定し、これまでより440億ルーブル(約13億ドル 約1230億円)減って、6200億ルーブル(約160億ドル 約1兆7300億円 2014年の為替レート)になると発表した。この内、スタジアム整備費は、約1250億ルーブル(約33億ドル 約3500億円 2014年の為替レート)に上るとしたが、最終的な費用は、現時点では、予想するのは困難だとしている。
2018年4月26日、ヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、「スタジアムのほか、私たちは、選手の宿泊施設、通信設備、エネルギー施設など、300以上の施設を建設する予定だ。予算の着服や建設の遅滞などの問題が生じているが、いつものことなので気にすることはない。オリンピックやサッカーのワールドカップといったイベントは、多くの雇用を創出し、国を新たな水準へ至らせてくれる」と2018FIFAワールドカップ ロシア大会の準備は順調に行われていると語った。(出典 ロシア NOW)
そして、ロシア国内における大会の経済効果は、2013年から23年までに最大で308億ドル(約3兆3800億円)に達するという試算を発表した。
また最新のロシア・スポーツ省の開催費用の見込みは約6780億ルーブル(約1兆2760億円)になると明らかにし、4年前の試算の6200億ルーブルに比べて10%近く増えるとした。開催費用は、リオデジャネイロ大会では150億ドル(約1兆6500億円)とされ、ロシア大会はリオデジャネイロ大会よりは下回るとした。
しかし、プーチン大統領は開催予算を少なく見せるために、W杯開催のために巨額の経費を投入して建設したいくつかの輸送プロジェクトを除外しているとされていて、ロシア大会の開催費用は不明確のままだ。
ちなみのソチ冬季五輪では、史上空前の510億ドル(約5兆6100億円)を費やしたとされている。(2018年6月9日 AP/WSP)
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開幕戦のロシア戦、決勝戦が行われる「ルジニキ・スタジアム」(モスクワ) 出典 Wikipedia
ロシアは2018 FIFA World Cup Russiaの開催にあたって、国の威信にかけて8年間に渡って11の都市に12の競技場整備に取り組んだ。
FIFAの基準では、収容4万人以上の会場が12カ所必要で、開幕戦と決勝戦は8万人以上・準決勝は6万人以上の収容人数が可能な競技場で行う事が決められている。
W杯ロシア大会組織委員会の委員長を務めるアレクセイ・ソローキン氏によると、国家予算から4800億ルーブル(約127億ドル 約1340億円)が支出されたという。
その内、建設済みのスタジアムで改修を行わないで使用するのは「オトクルィチエ・アリーナ」(モスクワ)と「カザン・アリーナ」(カザン)の2つ、既存設備だが改修工事を行うスタジアムが、「フィシュト」(ソチ)、「ツェントラーリヌィ」(エカテリンブルク)、「ルジニキ」(モスクワ)の3つ、残り7つのスタジアムが新設である。
新設するスタジアムの内、準決勝が行なわれるサンクトペテルブルクの「ゼニト・アリーナ」の総工費は、当初計画より増額され618億円に上ると2016年6月、サンクトペテルブルクの当局は明らかにした。
「ゼニト・アリーナ」は、格納式のフィールド、可動式の屋根を持ち、6万8000人を収容する屋内競技場。2006年の着工から10年で、予算は当初の6倍超に増大し、ついに「ゼニト・アリーナ」は世界で最もお金のかかるサッカー・スタジアムのひとつとなった。
サンクトペテルブルク市長グリゴリア・ポルタフチェンコ氏によると、追加費用はFIFAおよび治安機関のセキュリティ要件の変化にともなうものだという。
ロシアNOWは新設される12のスタジアムの建設費用を概算している。
▼ ゼニト・アリーナ(サンクトペテルブルグ 収容人数 69000人) 建設費用 618億円
▼ コスモス・アリーナ(サマラ 収容人数 45000人) 建設費用 264億円
▼ ポベーダ・アリーナ(ヴォルゴラード 収容人数 45015人) 建設費用 260億円
▼ ヴォルガ・アリーナ(ニジニ・ノヴゴロド 収容人数 44899人) 建設費用 276億円
▼ ロストフ・アリーナ(ロストフ・ナ・ドヌー 収容人数 44000人)建設費用 305億円
▼ カーリングラード・スタジアム(カーリングラード 収容人数 35000人)建設費用 264億円
▼ モロドヴィア・アリーナ(サランスク 収容人数 45000人) 建設費用 253億円
(出典 RUSSIA BEYOND)
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ツェントラーリヌィ・スタジアム(エカテリングブルグ)出典 FIFA TV
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フィシュト・スタジアム(ソチ) 出典 FIFA TV
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モロドヴィア・アリーナ(サランスク) 出典 FIFA TV
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ヴォルガ・アリーナ(ニジニ・ノヴゴロド) 出典 FIFA TV
FIFA World Cup Russia 2018 | All 12 Completed tadiums
FIFA TV/Youtube
12のスタジアムのうち、「カザン・アレーナ」(カザン)は、改修工事も行わないでそのまま使用する。
45000人の観客を収容できる「カザン・アレーナ」は、世界最高峰のスタジアムの一つであるロンドンの「アーセナル」の本拠地「エミレーツ・スタジアム」に似ているが、同じ設計会社が、カザンのスタジアムを設計している。
建設費用は、143億ルーブル(約4億200万ドル 約462億円)だった。
ブラジルで建設された収容人数がが同規模のスタジアムは、「アレーナ・ダス・ドゥーナス」(45000人収容)は2億500万ドル、「アレーナ・アマゾニア」(44000人収容)は2億6000万ドル、「アレーナ・パンタナール」(44000人収容)は2億5500万ドルと、かなり低コストで建設されている。
オリンピックとパラリンピックの開閉会式が行われたソチの「フィシト・スタジアム」も、すでにサッカーの試合を行える。ニューヨークの「ヤンキー・スタジアム」やシカゴのオリンピック・スタジアム、「ソコンポ・スタジアム」などの設計を担当したポピュラス設計事務所が担当した。
2018 FIFA World Cup Russiaの開幕戦や決勝戦が開催されるメインのスタジアム、「ルジニキ・スタジアム」は、1980年の五輪のメイン会場で、“伝説”のスタジアムと呼ばれ、モスクワのスポーツ競技場の象徴である。
「ルジニキ・スタジアム」は、190億ルーブル(約5億3400万ドル 約587億円)の巨額の費用を投入して、サッカー・スタジアムに改修された。
新しいスタジアムを一つ建設する経費をはるかに上回る空前の改修費用だ。
“不正”が絶えなかったスタジアム建設
「W杯の開催費用が高すぎるという議論は開催が決定した直後からあった」とし、例えば、「サンクトペテルブルク・スタジアム」の建設費は67億ルーブル(約116億円)から480億ルーブル(約837億円)まで7倍以上に膨れ上がっている。その原因の一つが使途不明金、あまりにも巨額に上り、不正は告発されたが、国民はその事実に驚かなかったという。
また「カリーニングラード・スタジアム」も7億5200万ルーブル(約13億円)の使途不明金が横領として告発された。「サマラ・アレーナ」でも25億ルーブル(43億円)が消え、「ロストフ・アリーナ」でも横領があったとしている。
巨大なスタジアムは “負の遺産”
2018 FIFA World Cup Russiaのホスト国ロシアは、国の威信をかけて8年間に渡って開催準備に取り組み、新スタジアムの建設やインフラの整備などに巨額の費用を投入した。ロシア紙「versia」は大会後の維持費なども含めて、「ロシアはどれだけ損をするのか」と特集。大会後のスタジアム維持費などを考えると赤字が予想されていると警告した。
コンサルティング会社がW杯に向けて建設されたスタジアムを分析し、一番の問題として指摘したのは、あまりにも巨大すぎるスタジアムの規模だった。
FIFA(国際サッカー連盟)の条件に適合したスタジアムとはいえ、大会開催後の維持管理は大きな課題として残る。
「例えば、2002年のW杯で使われたソウルのスタジアムは、今では最大でも35%しか集まらない。サッカーが国民の魂であるブラジルでも、一試合当たりのスタジアムの総収容集客率があまり高くない。ロシアもそうなるだろう」とロシア紙「versia」は警告している。
W杯開催後のスタジアム維持費は年間10億円…赤字の予想
関係者の分析データに基づくと、W杯終了後、スタジアムによっては総観客数の10%から20%程度しか埋まらないと見られている。スタジアムの維持費は、4万から5万人規模のスタジアムでおよそ6億ルーブル(約10億円)。仮にスーパースターのコンサートやスポーツイベントに使用されたとしても、収入は4億ルーブル(約7億円)程度しか見込めないとしている。
記事では、赤字分は国家予算から捻出しなければならないだろうと指摘。「実際、地方は政府にスタジアム維持費を捻出するように依頼した」と報じている。
ロシアスポーツ省は4月初頭、スポーツ施設の維持を目的とした「レガシー・プログラム」を発表。2023年までの間に、スタジアム維持費として129億5000万ルーブル(約225億円)を拠出するとしている。
ロシア紙「versia」は、「2010年12月にW杯開催国に決定した時、ロシアには潤沢な資金があり問題なかった」とし、その結果、「レガシー・プログラム」は壮大なものとなったが、情勢が一変して一部のプロジェクトは頓挫したと伝えている。
(出典 Football ZONE web)
W杯開催の経済効果は「3兆円」
2018年4月25日、ロシア大会の組織委員会は、今回のW杯がロシアのGDPに与える経済効果は、2013年から2023年までの間で、260億米ドル(約2兆8600億円)から最大308億米ドル(約3兆3880億円)に達するとしている。その要因に観光客の増加と大規模建設への投資を挙げている。
“3兆円”と聞くと巨額のように感じるが、ロシアは経済規模が大きいので、ロシア全体に与える経済的な影響に鑑みるとあまり大きいとは言えないだろうという分析がある。(三井住友アセットマネジメント 調査部)
ロシアの名目GDPは2017年で大体1兆5000億米ドル、300億米ドルはGDPの2%程度となる。これは10年間の合計なので、1年の効果を単純平均で求めればGDPの0.2%となり、ほとんど経済へのインパクトはないと考えるのが自然だ。
米国の格付け機関のムーディーズは、ロシア大会の経済効果を検証し、「経済刺激効果はあるものの、その大半はインフラ関連投資であり、その果実の多くは既に実現している。また、ロシアの経済規模は大変大きいため、ワールドカップがもたらす経済的効果は国全体では限られたものとなろう」としている。
一方、大会開催経費については、約約6780億ルーブル(約110億ドル 約1兆2千億円)と見積もり、一時は約7000億ルーブルまで暴騰したの経費を約1000億ルーブル程度圧縮するのに成功したとしている。
2014年の当初計画、6200億ルーブル(約160億ドル 約1兆7300億円 2014年の為替レート)の水準に収まると見込んでいる。
しかし、巨額の費用をかけた整備された12のスタジアムは、大会後の利用計画のメドは立たず収支は赤字が予想され、とりわけ維持管理を任される地方財政を圧迫し続ける懸念が多い。
国の威信をかけて開催するビックスポーツ・イベントが生み出す“負の遺産”、その構図は、五輪大会もFIFA World Cup大会もまったく同じである。
巨大なスタジアムや競技施設を建設したのはいいが、大会後の利用計画もなく、維持管理費の重圧に耐えきれず、荒れ果てて打ち捨てられる競技施設が世界各地で後を絶たない。
この構図を抜本的に変革する時が来ているのではないだろうか。
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2018年6月19日
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