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ヨーロッパのワクチンプログラム比較

2010-12-14 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
ワクチン学会のために来日されたフランスの先生のお話の続き。

ヨーロッパでは国毎の予防接種プログラム異なるし、接種を推奨するかどうかもバラツキがあります。

例えば、日本でも導入されたHPVワクチンですが、認可した国は多いものの、国のワクチンプログラムに位置づけられているかというと、そうではありません。

EC27ヶ国+2カ国=29カ国のうち国の予防接種プログラムに位置づけられているのは15ヶ国です。

このほか推奨されていないワクチンには、ロタワクチン、水痘・帯状疱疹ワクチン、インフルワクチン等があります。

いっぽう、三種混合やMMRについては29ヶ国中29ヶ国が国のワクチンプログラムとして推奨されています。

Hibワクチンは29ヶ国中27ヶ国。ローマニアとブルガリアが経済的な事情で全員接種の推奨にいたっていません。

B型肝炎ワクチンは29ヶ国中下降中29ヶ国が推奨をしていますが、推奨の内容にはばらつきがあり、英国のようにハイリスク層への勧奨となっているところもあります。

誰が接種をするか?でですが、
小児科が対応をしているのはイタリア、ドイツ。主にプライベートセクターの医師が対応。
GP(General Practitioner)対応はイギリス。

小児科と公衆衛生の両方が対応しているのがフランス。
スペインも同様ですが、さらに学校での接種プログラムも併用されています。

フィンランドとオランダはWell Babies Clinic。(フィンランドはナースが対応)。

フランスはプライベートセクターの小児科医と、パブリックセクターの医師が対応しており、後者は所得制限無しで6歳までのワクチンは無料となっています。

フランスではさらに、助産師が医師の処方指示なしで予防接種をすることができます。
三種混合、ポリオ、風疹、百日咳、BCG、B型肝炎、インフルエンザがその対象です。

助産師が対象としているのは新生児だけではなく、若い両親もその対象で、コクーン戦略といい、周囲が免疫をつけることでまだ接種できない小さな赤ちゃんたちを守る戦略です。

看護師も成人を対象に(初めての人以外は)医師の処方指示なしでインフルエンザの予防接種が可能です。

コメディカルが協力することにより、接種率が上がることが期待されています。

フランスでも推奨しているワクチンの接種率はとても高いですが、推奨をしていないロタワクチンなどの接種率は5%程度と低いままになっています。

小児の肺炎球菌ワクチンは、EC全体では25-60%の接種率とばらつきがあり、これは多くは費用負担の問題からくるといわれています。

思春期を対象とした百日咳のブースター接種も、英国・デンマーク・オランダ・スペイン・ノルウェー・ポルトガルの6ヶ国はしていません。

こういった違いをモニタリングし、各国のキャッチアップに生かすための情報フィードバックもECDCの役割です。
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