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コロナ医療崩壊への処方箋 #3   デジャブ

2020-04-22 | Aoki Office

タイトル写真は厚労省、感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム3期生の神代 和明先生です。コロナ患者を忌避する風潮に対してTwitter発信しておられます。

神代先生は、編集長が、1990年代後半、国立国際医療研究センターの前身である、国立国際医療センターのエイズ治療研究センターのエイズ情報専門官であったころ指導した北陸の若手の一人です。 当時、毎週、金沢と仙台を交互に訪問しながら、北陸3県と東北6県の薬害エイズの患者さん達の診療指導に伺っていたのですが、エイズ診療の指導のついでに金沢で若手を集めて感染症の指導をしていました。その結果、北陸から3人の米国感染症専門医が生まれました。富山の狩野先生、石川の神代先生、そして福井の兒子先生です。

さて、「コロナ医療崩壊とデジャブ」の話しでした・・。はい、これ、極めてHIV感染症の時のデジャブなのです。 正確には日本が新しい微生物(HIV、MRSA、鳥フル、エボラ・・)に遭遇すると、いつもです。

①日本でとくに顕著であった症例の忌避:
神代先生のコメントを待つまでもなく、コロナを診療する医療従事者の師弟を保育園や学校が拒否する例。神奈川県のコロナ診療に積極的な病院の退院患者は、コロナと全く関係ない症例でも後方施設、老健施設などが受け入れを拒否する例。 診療経験が無いといった???な理由で診療拒否する病院の例・・。これは1980年代のHIV感染症の時と酷似しています。

②診療施設の微生物名による分類:
コロナは感染症指定病院、HIVはエイズ拠点病院、結核は「結核専門病院」と微生物名で診療担当の病院を行政が分けていきます。(コロナの咳、PCPの咳、結核の咳を患者が鑑別して医療機関を選択する可能性は低いですか・・)

③ワクチンが難しいかも:
1990年代後半、編集長の師匠であるUCSD医学部のRobert Schooley先生が、「HIV感染症についてはワクチンの開発が旨くいかない可能性もあり、その場合には抗ウイルス薬に強く依存した診療戦略の選択を強いられる可能性がある」と予言しておられました。 そして30年余が経過した今、ART(抗ウイルス薬)中心の治療と予防戦略が主軸となり、その予言の正しさが証明されたのです。インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、どれもワクチン開発者を困らせるRNAウイルス達です。同じRNAウイルスであるSARS-CoV-2のみワクチン開発が容易であるとは限らず、逆に抗体が関与するEnhancement(ワクチンで症状が悪化する現象)の可能性さえ心配されています。

NIHから治療ガイドラインが出て、その原稿も概略出来たのですが、疲労困憊の高齢者である編集長は、明日、掲載致します。 「Breakthrough的な新しい事がNIHからあるのか?」という質問に対して、今夜は「軽々に新しい事をGuidelineに載せないところにNIHの凄さがある」という予言に留めます。 一見何気ない当たりまえの事しか書いてないような推奨の背景にIntensityとVoulumeにおいて凄まじいまでの学術的検討がある・・
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