感染症診療の原則

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終わり方

2010-02-04 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
「新型」の店じまいがはじまっています。と、同時に今やらなければいけない総括や検証も行われています。

カナダではワクチン直後に重症な健康問題がおきた17例について報じられています。
4例がギランバレー症候群、13例はアナフィラキシー。
http://www.torontosun.com/news/torontoandgta/2010/02/01/12701161.html

イギリスは2月11日でパンデミック・フルーの電話相談を終了。
http://www.dh.gov.uk/dr_consum_dh/groups/dh_digitalassets/documents/digitalasset/dh_111598.pdf

宮城県と仙台市はそれより早く1月31日に相談窓口中止。
http://mytown.asahi.com/miyagi/news.php?k_id=04000001001270002

失敗を認めることや「おかしかったんじゃない?」という意見は今後のためにとても大切。

米国ではある時期「N95マスクじゃなきゃだめ!」さわぎがありました。
感染症を専門とするCDC系の人や情報と、労働安全のOSHA系での情報統一の問題があったと関係者は言っています。

多方面にわたる危機管理の問題が生じたときに、この認知や連絡ミスというのは混乱のもとになるためIncident Command SystemというものがあるとFIMAにいたボズナー先生がおしえてくれましたが、いろいろな経験やノウハウのある米国でもこのようなことがおきた、ということは勉強になります。

自分の施設や地域を振り返る際に、時系列で書く記録は大切。(Chronology, Timeline)

シンプルにやるなら、エクセルで左の軸が時間、右に、自分・上司・病院・医師会・保健所・県・国、、、というかたちにして誰がいつ何を判断してどうなった・修正されたかをみるとわかりやすいです。
ファックスや通知などの記録があるうちにつくっておくといいですよ。
各種ブログやHPなども備忘録いなるなーと騒動のさなかで考えていました。
危機管理の研修などで使われる作業のひとつ。
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4 コメント

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研究者自身の総括 (bloom)
2010-02-04 11:03:15
去年は致死率に関する論文が頻発し、「季節性インフルエンザに感染すれば豚には感染する確率が低くなるから予防接種はしない方が良い」とか「水鳥が河川に排出されたタミフルを飲んでタミフル耐性ウイルスを作る可能性がある」といった報告があったりで、同業者と「アレはないよね~」と(”アレ”がどれかは言及しません)半ば呆れながら話題にしていました。

しかし一般の方々は「有名雑誌に論文が出たんだから」「ニュースでそう言っているじゃない」などパニックになり、海語学研修を中止しろだのと言うため説得するのが大変でした。

騒動が去りつつある今、豚インフルエンザに関する論文を出した研究者の方々には、「それは本当だと思っていたの?」「その論文は出す意味があったの?」という点など総括して戴きたいと思います。
社会的な影響の大きい論文には賞賛や注目と同時に批判と責任が伴うと考えているのです。

私達実験系の研究者の場合は他人が追試出来るのですが、特に疫学調査の場合は追試が難しいという事情だけに、まず本人が検証する方が次につながるような有意義な議論が出来ると考えています。

これに関して「科学論文の検証方法」という記事を書きました。
http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/62985344.html

今まで自分や家族を守るためだけでなく、社会的なパニックも収めようとして色々ブログ記事を書いたのですが、なかなか大変な作業でした。

私の行動もそのうち総括する必要があるかも知れません。
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Unknown (omizo)
2010-02-05 10:34:09
一番の問題は、感染症法の新型インフルエンザに指定されてままである事ですし。 入院処置も今でも取れる事にもなっています。

みんな忘れていますでしょうか?。
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勉強になります (編集部)
2010-02-09 15:47:35
bloomさんのブログを読ませていただきました。数字を真剣に扱う専門家の方々の姿勢やご意見、とても勉強になります。
感染症の領域でも学んで活かしていけるようにと思いました。
インフル騒動時のHPやブログの記載はとてもよい記録になるのでは、、と途中から思うようになりました。
本ブログでも総括をしたいと考えています。

omizoさま
法律はどうなるんでしょうね・・・誰の実務マターだかわからないものって切り出しにくいですね。現実と乖離したものをほうっておくのはよくないですね。
返信する
新型解除の考え方について (ひろ)
2010-02-11 22:31:20
感染症法における新型インフルエンザに対する介入は「できる規定」であり、「~しなければならない」という内容ではありません。ですから、いまでも入院措置ができるのは事実ですが、実際は行われていないわけです。

6月19日の運用指針の改定をもって、サーベイランスへの協力をのぞいて、感染症法が医療現場に求めていた規定はほぼ解除しました。私はこれで、新型インフルエンザ指定の論争については、行政サイドのマターとして限局したと思っています。

誤解がないように申し添えますが、行政サイドのマターだから口を出すなというつもりはありません。感染症行政にとって新型指定が必要かどうかを、国民参加のもと議論がなされるべきです。

また、行政の問題とはいえ、アクセルを踏めばいつでも動き出す状況にあり、運転席に座っているヤツは信頼できるのか、暴走するんじゃないか、といったリスコミの不安があることは理解しています。これは、深刻な問題なのですが、新型指定の論争にもちこむと、けっこう泥沼になるので、今回は割愛します。

さて、行政の立場から(発言はあくまで個人として)申し上げますが、新型インフルエンザの問題が終結したと言えるかどうか、第二波において備蓄している抗インフルエンザ薬を放出することはないのか、来年度のワクチン施策は平時の体制でよいのか等等、ということを考えると、まだ新型インフルエンザ指定を使わせていただきたいというのが本音です。

では、いつが解除のタイミングになるのか... 私はオーストラリアなどの南半球における第二波(今年の北半球の夏ですね)の疫学情報が、日本における指定解除の判断に大きな影響を及ぼすのではないかと思っています。過去のパンデミックでも第二波において、感染する年齢層が広がり、被害が増大したことをうかがわせる記録があるからです。つまり、今回の新型インフルエンザが、重症度のみならず流行動態として季節性インフルエンザに落ち着くことを見届けてから解除したいということです。

もちろん、今回の経験をふまえて、感染症法における新型インフルエンザ既定の見直しを検討することは、来年度以降の重要な宿題であると認識しています。

私ごとですが、3月末をもって行政を離れますので、もっと自由な立場から総括をしたいと思っています。正直なところ、この立場を離れてはじめて見えることが、きっと多いんだろうなと感じています。
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