感染症診療の原則

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感染症 と がん

2010-07-23 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
感染症がどれくらい広がっている、流行しているかは、全数報告・定点報告、各種サベイランスを駆使して把握する努力があります。

簡易検査キットが開発されたり、保険で検査できるようになると、検査件数が増え、結果として把握される症例数も増加します。

ワクチンが普及すると、そのワクチンがカバーしているタイプの感染症は減り、カバーされていないタイプの感染症がメインになります。

罹患数や死亡数の把握ができれば政策にも役立つのですが、その数字の精度は常に問題です。

たとえば、今、ワクチンが話題になっている子宮頸がんについてですが、情報はばらばらです。メディアはちゃんと調べて書いているでしょうか。

ふたつあるHPVワクチンのひとつ、サーバリックスを扱うグラクソスミスクライン社の使う数字はページによって異なります(修正忘れ?)。

「日本国内では年間約8,000人が子宮頸がんと診断され、約2,400人が死亡しています」
祖父江友孝ほか:がん・死亡動向の実態把握の研究(平成18年度)

「日本国内では年間約15,000人が子宮頸がんと診断され、約3,500人が死亡」
2008年人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編)より算出

診断された人は「いきなり倍」です。
検診啓発の結果でしょうか?

しかし、同じ2008年の人口動態統計をつかっている国立がん研究センターの記載は、この数字とは異なっています。

「子宮がんにかかる方は、全体として年間約17,500人で、このうち子宮頸がんが約8,500人、子宮体がんが約8,200人、どの部位か情報がない子宮がんが約800人となっています(全国がん罹患モニタリング集計2005年報告 上皮内がんを除く)。また、子宮がんで亡くなる方は、全体として年間約5,700人、このうち子宮頸がんが約2,500人、子宮体がんが約1,700人、どの部位か情報がない子宮がんが約1500人となっております(人口動態統計2008年)。」

子宮頸がんが約8,500人、死亡は約2500人です。どういう計算をしたのか、GSKに直接聞いてみます。

最新がん統計のページ。

地域レベルでは「がん登録」システムが動いていますが、コンテンツの充実はこれから。
地域がん登録連絡協議会

現在、国内の疫学研究の主流は循環器やがんだといわれています。
感染症の疫学もがんばろう!
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