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食中毒とぬれぎぬ

2011-05-05 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
特定のお店/チェーン店でユッケを食べた人たちで報告されている病原性大腸菌(O111とO157)ですが、「その他の原因もありうるのではないか?」というコメントがありました。

実際に、最初は「これだろう」と大規模に食品の自主回収が行われたあと、「実は別のものが原因でした」「菌はみつかりませんでした」という事例もあります。

記憶に新しいところでは、米国でのサルモネラ集団感染事例です。

当初は(よくある原因としての)トマトが疑われ、リコール(自主回収)となったのですが、産地からすべて調べても、探しているサルモネラが出ません。サルモネラじたいはさがせばでるのですが、原因となったサルモネラ・セントポールという種類の菌がみつかりませんでした。

トマトと一緒に調理されるハラペーニョからこの菌がみつかりました。
「複数の生の食品に関連したSalmonella Saintpaulの集団発生、2008年-米国」MMWR
IASR Vol. 30 p. 218: 2009年8月

怒るのは生産者や農業関連団体です。賠償問題など、そのあとの問題はMMWRにはのりませんが、食中毒専門弁護士団もおり、関連サイトはいつも熱いです。

特定されない段階でアラートや介入が行われて行くのは、死亡や障害につながるリスクが大きく、食品という性質上、広域に被害者が出る可能性があるからです。
日本でもよくある「対応が遅い!」「かくしてたんじゃ?」となると、それはまたそれで問題になります。

米国人は基本的に生肉を食べませんが、病原性大腸菌のアウトブレイクはおきています。原因としては、サラダとして食べる生のほうれんそう、アルファルファなどがあります。

畑のそばに家畜の施設があり、そこから流れてくる水などで汚染されるパターンがあります。

日本ではどうか。

【つけもの】2000年6月、埼玉県の老人保健施設入居者で7名が発症、うち3名死亡。「かぶの浅漬け」と患者の検体から分離された病原大腸菌O157のPFGEパターンが一致。
【つけもの】2002年6月、福岡の保育園の事例。症例は園児86人、家族、職員を合わせて102人(20人入院)。キュウリ浅漬けと患者由来のO157のPFGEパターンが一致。

調理や保管/配膳の時点での汚染か、もともと出荷した時点/流通ルートでの汚染かは、他の納入先でおきているか、菌株は一緒か(まぎれこみはないか)が検討されます。

記憶に新しいところでは、2007年に都内の大学でおきた大規模アウトブレイク事例があります。要約が公開されています。

「学生食堂で発生した腸管出血性大腸菌O157による大規模食中毒事例」
東京都発表 2007年

腸管出血性大腸菌O157による患者数445名、内HUS発症者3名(大学生2名、中学生1名)
。都は7000名規模の調査を行いました。

症例の菌株は遺伝子検査の結果同じものだとわかったのですが、施設や保村食材の調査をしても原因は判明しませんでした。

保存している肉から肉汁がもれたり、汚染した手で周囲をさわったところに、生食するような野菜が保管されていた場合にこのような事故につながる可能性があります。

今回のユッケが原因とされる食中毒事例は、早くから遺伝子情報とあわせて発表されていますが、喫食調査状況、複数店舗からの報告とあわせて、報道になっているのだと思います。
(通常、同時に出ていたメニューの保存していた食材も検査はされます)
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