感染症診療の原則

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confusing messageの害

2009-05-07 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
以前、シアトルにあるUniversity of Washingtonで2週間の感染症の訓練を受けたときのリスコミのコマで、絶対にやってはいけないことといわれたのがMixed Message, Confusing Message(混乱するメッセージ)の発信でした。

一般市民がどう受け取るかを想像しながら読んでください。

例えばエイズ。医療機関で専門家が拒否をしながら「偏見差別はいけません」という。
「エイズは身近な感染症。もはや誰でもなりうる病気です」といいながら「日常生活ではうつりません」という。
「どんどん増えていて誰でもなる」といいながら「周囲にはそんな状況はない」(だれかれかまわず病気のことを言う必要もないし)

Confusing messageの結果として、「相反する二つのメッセージともに胡散臭く聞こえる」「情報発信者の言うことを信用しなくなる・軽視する」ということにつながります。(ま、うそつきに近いですね)


慌てた会見で「冷静に」と呼びかけ、個人情報を尊重しろと改正感染症法でうたいながら行政が自ら疑いレベルの個人関連情報まで流してどうすんですか。


メディア報道(批判記事)を受けて厚生労働省が5月6日に出した事務連絡(命令)は下記の短い内容です。

特定のところでみろといいながらどこでもみなさいです。
confusing messageのいい例ですね。今後講義で使ってみよう・・・。

現在ある最新情報を元に考えると

■毒性は通常のインフルレベル(対策の早い地域では対応をレベルダウン中)
■重症化するのは基礎疾患のある人

ですので、

Dr.木村ご指摘のように、慢性疾患がある・免疫に問題がある・妊娠している等への配慮のためのトリアージが重要になってきています。
http://ameblo.jp/moriyon/theme-10012481648.html
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/honda/200904/510481.html

この人たちは季節性インフルでもハイリスク群です。

今回の騒ぎで疑いレベルをオーバートリアージして消耗している場合ではないですね。

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各都道府県衛生主管部(局)医務担当者 御中
                厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部

国内未発生期における発熱外来を置かない医療機関への発熱患者の受診について

新型インフルエンザ患者の国内発生に備え、関係者との情報共有や発熱外来の設置など、医療体制の確保等について対応いただいているところですが、海外発生期(国内未発生期)における発熱外来を置かない医療機関への発熱患者の受診について、下記の通り、基本的な考え方をまとめましたので、所管の全医療機関にご周知いただきますようお願いいたします。



○まん延国への渡航歴や患者との接触歴が認められる発熱患者が、発熱相談センターを通じずに発熱外来を置かない医療機関を受診したり、電話による相談があった場合には、まず発熱相談センターに電話で相談し、必要に応じて紹介される適切な医療機関を受診するように勧めること。

○発熱相談センターの指導に従って発熱者が発熱外来を置かない医療機関に受診した場合は、患者にマスク等を使用するように指導するなど、感染予防に必要な指導を行った上で、当該医療機関が診察すること。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/090506-02.html
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発熱ナントカはいろいろな事情で間に合わないところもあるので、現実対応としてできることをアドバイスするほうが実益は大きいように思います。

(メキシコで見た豚の皮で作った椅子)
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