a passion for cars

自動車趣味…その果てしなき天国と地獄についてのブログです。オーストラリアでのロータスエクシージによる海外レースなど。

YZF-R1

2007年02月20日 14時15分39秒 | Weblog
ヤフオクに激安R1の出品があった。地域は千葉。出品者は他にも同じ年式のR1をもう1台、全部で4~5台のバイクをオークションにかけていた。ブレーキのサビなどからその全てが野ざらし、内容説明もあまり無い、R1は2台ともブレーキレバーが根本から折れている、出品日数が2日間のみでかなり急いでいる、そして新規出品者ということでかなり怪しい。盗品か、詐欺か、、、メールで聞くと佐倉とのこと、とりあえず見に行くことにした。

夜10時半、待ち合わせ場所のコンビニの裏へ行くとワンボックスの中から若者たちがこちらを見ている。6人いる。買いたたいてやろうと思ってお金をポケットにねじ込んできたことを少し後悔したが、こっちだって怪しげな車に乗ってやってきたひげ面のオッサンだ。なめられないようにそいつらをみながら携帯で出品者の電話を鳴らした。

するとワンボックスから10m程横の道路にうずくまるようにして携帯のゲームをしていたらしき男が電話をとった。なんだこっちかよ。少し拍子抜けしながら彼を乗せて彼のアパートへ。仕事を辞めて実家へ帰るために処分したいらしい。あさってにはアパートを出なけりゃいけない。

早速試乗。検切れ、フロントブレーキなしとかなりヤバイ状況だが、佐倉藩(100年前までだけど)の敷地内をノーヘル、グローブなしでドライブ。R1がシート、ステアリング、ステップを通して音と振動で語りかけてくる。ウン、アカン。私のメカ知識はゼロに等しいから何が悪いのか分からないが、あえて言えばこいつには愛情がかけられていない。値段交渉をするまでもなくあきらめる。

バイクより、ぼそぼそと話し全く感情の起伏が見られない無気力な25歳の彼に興味がわいていた。バイクを押しながら聞いてみると、彼の実家は愛知、オレの実家の隣町。転勤で和歌山を経て千葉へきた。オレと一緒じゃないか。同郷のよしみで飯をおごる。夜中というのに彼は今日はじめてご飯を食べるかのように(実際そうかも知れないが)ファミレスのステーキをむさぼる。

ニット帽をかぶったままで愛想のかけらもない彼。田舎や和歌山の話で少しだけ盛り上がり、ポツポツと自分のことを話し始める。大学を卒業し大手ゲームセンターチェーンに就職、今は店長。たちの悪い客とのトラブルの日々で毎日ストレスで吐く。店の売上金とレジが合わないと会社からは横領の疑いをかけられ、休みの日もトラブルの度に呼び出される。だんだんと感情が無くなり人嫌いになり、和歌山では多少いた友達も千葉では一人もいない。数少ない休みの日も誰とも話すことはなく、いまや完全に引きこもり。車はない。バイクと小鳥だけが唯一の話し相手。もはや自分は廃人一歩手前であることに気づき仕事を辞めバイクを処分し、実家へ帰ることを決断した。

俺は家に帰ってからも彼のことを考えていた。そして今も。のどに刺さった小骨のように引っかかる。なぜだろう。もう1台バイクを見に行く明日には忘れるのだろうか。