Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

次期海洋基本計画に盛り込むべき施策の重要事項に関する提言

2012-09-11 | ツイッター


海洋に関係する皆さんはご存じのことと思うが,海に関連する法律として2007年に議員立法で成立した海洋基本法がある。この基本法を推進するための具体的な指針を示すものが海洋基本計画である。この海洋基本計画の策定から5年目を迎え,今年見直しが行われ来年度より新しい計画がスタートする。

海洋基本法戦略研究会による次期海洋基本計画に盛り込むべき施策の重要事項に関する提言が野田首相に提出された。
法律の整備からはじまり,海洋開発,人材育成,,漁村振興,国際協調,海洋教育と幅広い内容が盛り込まれている。

日本は,島国であるにもかかわらず,海洋に関する教育がほとんど行われていない。それはなぜか,海洋関係者の多くは疑問を抱く。しかしながら,思うほどに進まない。なぜか。それは,戦後海に目を向けてこなかった教育制度に問題があるのではないか。

では,明治時代はどうであろうか。以前も触れたが,全国の高等小学校や水産補習学校の650箇所以上で水産科の授業が行われていたようである。当時の小学校の国定教科書「水産」を見ると日本は海国であり,豊かな水産資源に恵まれた国であり我々国民は海を理解することが必要である.といった内容が書かれている。

本学で明治22年水産動物学の講義を行った内村鑑三は明治時代に「デンマルク国の話」の中で,九州程度の大きさしかない島国デンマークの富国政策について次のように語っている。

「(中略)富は大陸にもあります、島嶼とうしょにもあります。沃野にもあります、沙漠にもあります。大陸の主かならずしも富者ではありません。小島の所有者かならずしも貧者ではありません。善くこれを開発すれば小島も能く大陸に勝まさるの産を産するのであります。ゆえに国の小なるはけっして歎なげくに足りません。これに対して国の大なるはけっして誇るに足りません。富は有利化されたるエネルギー(力)であります。しかしてエネルギーは太陽の光線にもあります。海の波濤にもあります。吹く風にもあります。噴火する火山にもあります。もしこれを利用するを得ますればこれらはみなことごとく富源であります。かならずしも英国のごとく世界の陸面六分の一の持ち主となるの必要はありません。デンマークで足ります。然しかり、それよりも小なる国で足ります。外に拡がらんとするよりは内を開発すべきであります。(中略)」と,もっと内にある資源に目を向けよと述べている。そして,そのためには教育がとても大切であると述べている。

今回の提言にも,海洋風力発電等開発研究のみならず,海洋の教育を推進するための社会教育と学校教育との連携,学習指導要領における海洋分野の明確な位置づけ等が盛り込まれている。

今まさに,島国日本としての原点に立ち返り,何をすべきなのかを真剣に考える時期ではないだろうか。今回の提言が具体化につながるよう期待し,また努力したいものである。