広島大学附属三原学校園研究紀要第6集 2016,pp.75-82
グローバル環境問題の解決に向けた授業開発と実践研究 -第6学年「世界の中の日本」を事例としてー
伊藤公一
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/3/39635/2016040813411458582/MiharaEIKenkyukiyo_6_75.pdf
1.要約:
現在、日本に限らず,環境問題の解決のためには,国家、地域を超えて、地球市民として連帯と負担の分かち合いを核としたグローパル・パートナーシップを持つことが必要です。このようなパートナーシップの構築によって,人々や自然環境との関係価値が重視されることで、環境問題の課題解決の方法が見いだされるものと考えています。
この実践報告では,「関係価値」の構築を重視した「グローパル社会学習」の授業開発を行い,子どもたちのの環境意識の変容について記述しています。
人間と自然との「関係性」から生じる「関係価値」を意識しながら環境問題とつなげていくことのできる授業を構想していくために,「フェアトレード」を取り上げることができるのではないかと筆者は考えました。
先行研究により、今フェアトレードを取り上げた授業は,中学校・高等学校を対象にした実践が多く,また環境保護の観点から授業が構想されていないことから,小学6年生を対象に環境保護の側面から授業開発して実践結果を報告しています。
2.関係価値について:
生産地と消費地での活動は,別の地域の環境に対し大きな影響を与えています。したがって,私たちは,海外から輸入されているもの(食料品・原材料等)が環境問題とのつながり(関係性)を具体化したものである可能性があるとの認識をもち,食品・原材料等と環境との関係性を意識していくこと,想像していくのが重要です。消費者が食品等を通じて生産地の環境問題とのつながりを意識、重視することができれば,生産地の環境問題の解決への糸口に繋がる可能性があります。
3、授業開発の視点と授業実践
以上の考察を踏まえ、子供たちの消費活動と生産地の環境と関連させる学習活動は、環境問題を解決する方向に向かっていくと考え授業開発を行いました。
授業構成として,第 1次では現在の地球環境問題について概観し,消費者としての価値観について,第2次では,子どもたちの消費活動の先にある流通や生産者 (生産地)の現状について,安さと商品の多様性に価値を置く「100円ショップ」の生産地の現状や,日本が抱える「フードマイレージ」の問題から,生産地のことを知ろうとすること(知産知消)が必要であることをおさえる。これらの学習を踏まえて,第3次では生産者(生産地)のことを意識しながら,子どもたち自ら消費活動を行う際に「フェアトレード」等の商品を購入するだけで環境問題やその解決につながっていることについて理解させる,としています。
4、本論文の成果と課題
本研究の成果として,子どもたちの生活から遠い社会での出来事(地球環境問題)を取り上げる際に,まずは子どもたちの身近な教材を入口にして,「関係価値」を重視した授業を構成した点が,子どもたちの環境意識や社会参画への意識を高めることができた要因となったとのことです。
(担当 李思聡)