Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

教育の視点からの提案 その1 水産の定義を明確化

2010-03-04 | 水圏環境リテラシープログラム
教育の視点からの提案

1 水産の定義を明確化
2 思想の歴史から水産を見る
3 専門性の深化
4 プラスα 国民に対する教養としての水産の普及啓発

◎1水産の定義(水産ハンドブック)
 水産ハンドブックで水産の定義を見てみたいと思う。
 水産ハンドブックは水産学徒にとってはバイブルのような書物である。水産ハンドブックによると,水産とは何か?という明確な定義が記載されていない。

 あえて言えば,第1章の書き出しにある漁業の定義とその変遷の部分が当てはまるのであろうか?漁業とは,「水産動植物を採捕し,またこれを養殖する事業である。」と定義される。また,漁業の発展を歴史的に見ると,以下の通り第1期ー第4期に分けることができるという。
  第1期(1868年-1897年ごろ)江戸時代とかわらない,伝統的漁業
  第2期(1897年ごろ-1912年ごろ)沿岸漁業から沖合漁業への発展
  第3期(1912年ごろ-1945年ごろ) 遠洋漁業,母船式工船漁業
  第4期(1945年ー)1955年有史以来最大の漁獲量,漁業科学技術(魚群探知機,集魚灯,通信機器,衛星航法機器)の発展。

 確かに,これらの内容は,漁業の定義と発展の歴史が述べられている。しかしながら,「漁業」の定義であって「水産」の定義ではない。水産と漁業は同義であることになるが果たしてそれでいいのだろうか? 「漁業とは,水産動植物を採捕し,またこれを養殖する事業である。」は,英語のFisheryとほぼ同じ意味合いである。とすれば,Fishery=漁業ということである。すなわち,我々が水産高校をFisheries High Schoolと呼んでいるが,これは英語に訳すと漁業高校ということになる。

 水産は,「水産動植物を採捕し,またこれを養殖する事業である」以外にも,加工,販売,流通,教育など様々な分野を含んでいる。水産ハンドブックには,水産の定義が明確に記述されていない。明確な水産の定義づけが必要である。前にも触れたが,水産には,日本人が永い年月をかけて培ってきた生業としての意味合いも含んでいる。これからの時代に向けて,水産の定義を明確にすることが第一に必要になってくるだろう。

 さらに言えば,水産という英語訳をFishery とするのではなく,水産の意味を含めた用語,すなわちSUISAN という英語表記でいいのではないだろうか?と私は思う。