閉伊川ワカサギ博士の何でも相談室

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水産の未来を教育の立場から考える

2010-02-23 | 水圏環境リテラシープログラム
 港区虎ノ門にある山会堂ビル8階 「大日本水産会」会議室において水産ジャーナリストの会主催の講演会に講師として招かれました。

要旨
 現在,水産業界では,水産物価格,水産物消費の低迷,水産資源の枯渇,若年労働力の不足,文化の摩擦など様々な問題を抱えているといわれている。また,地球温暖化による海水温上昇,海流の変化,海面上昇,海の酸性化等,海洋環境にも問題が生じている。水産には,今後どのような未来が待ち受けているのであろうか?

 このような,不安定な時代にこそ,一般市民,消費者を対象とした”水産のリテラシー教育”が重要であり,リテラシー教育によって未来の水産は確実に変わる,と私は考えている。

 これまでの水産に関する教育は,水産教育が大きな柱であった。水産教育とは,担い手育成,職業人育成のための教育である。その結果,有能な職業人が輩出され,右肩上がりの日本の水産業を支えた。漁獲技術の革新,水産資源開発,冷凍技術の開発,流通の革命等,現在も様々な技術革新も進んでいる。

 しかし,水産教育は,水産技術の専門性の深化に力を入れてきたが,消費者に対する教育すなわち”水産のリテラシー教育”は,大きな柱ではなかった。水産のリテラシー教育は,一般市民や消費者を対象とした教育を指す。東京海洋大学では,平成19年から水圏環境リテラシー教育推進プログラムをスタートさせた。このプログラムは,水圏環境リテラシー普及活動を行うリーダーを養成するプログラムである。将来は,全国各地において,水圏環境リテラシー推進リーダーとして,水産を含む水圏環境のリテラシーを普及啓発することになる。

 水産技術者養成や担い手育成が中心の教育はこれまで通り重要であるが,それとともに一般市民の水産の理解向上を目的とした水産のリテラシー教育をいかに推進するかがこれからの課題である。

 水産のリテラシーが向上することによって,どのような成果が期待されるのだろうか?これまで低迷していた水産物消費が進み,さらに水産物の価格が上昇する,水産業の理解がすすむことで労働力の確保にもつながる,水圏環境に配慮した生活を行うことで水産資源の回復も期待できる,さらに,リテラシー教育を海外に発信することで,食文化の国際摩擦問題にも解決の糸口を見いだすことができる,等である。

 「教育は国家百年の計」といわれている。高校水産教育が1895年に始まって114年が経過した。これからは,従来の職業人育成のための専門教育とともに,一般市民消費者の水産のリテラシー向上を計るための水圏環境リテラシー教育が必要である。そのための”仕組みづくり”を水産業界のみなさんといっしょに考えていきたい。
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