健康楽園。

健康に関する情報・提案を主にする。

大江健三郎さん。

2006-06-10 | 旨い!tasting.
ストックホルムは水の都です。バルト海とメーラレン湖に直接接していて、水位が違うので水門で、隔てています。ですから海に接しているのに磯の香りはほとんどしません。橋の多い町です。
メーラレン湖の畔に、ストックホルムの市庁舎があります。1911年に建てられた赤レンガの壁面を持つ立派な建物です。宮殿か古城を思わせるたたずまいで、ナショナルロマン方式・北欧中世風というそうです。
内部も素晴らしく、1階のブルーホール大広間は、中世イタリアを思わせるデザインで高窓からの採光が見事です。毎年12月10日に、ここでノーベル賞受賞式が行われます。授賞式あとのダンスパーティーが開催される2階も見事な部屋です。ビザンチン風の金色に輝くモザイクの壁面です。
夕食は、この市庁舎の1階にあるレストランで、1994年大江健三郎さんが受賞した時のディナーメニューそっくりそのままを頂きました。シャンペンから始まって赤ワイン、デザートまで・個室・ロウソクの光という雰囲気で供されます。
晩餐会メニューは事前に受賞者である大江さんの好みを聴いてから組み立てるそうで、大江さんの嫌いなものは出てきません。
このお皿は、鴨の胸肉をマンゴーと巻いて松の実を添えた前菜で、メインも子牛の肉でした。大江さん・お魚はお嫌いなようです。
大江さん、授賞式後の講演会では「あいまいな日本の私」という話をしました。
当時、新聞にも掲載されましたが、なかなか難解で、読むことさえしなかった記憶がありますが、丁度読んでいた、「ソクラテスよ哲学は、悪妻に訊け。」に解説が書かれていました。
「真面目がいいのだ・大江君」という池田晶子さんの文章です。
「20世紀がテクノロジーと交通の怪物的な発展にあるとしたら、私は人類全体の癒しと和解に、どのようにディーセントかつユマニスト的な貢献がなしうるかを探りたいと願っています。」という発表を評価しています。
しかし、判りにくい文章ではありますね。辞書でひいたらディーセントとはきちんとしたという意味でしたし、ユマニスト的って人間的っていうことでした。
大江さんは前回受賞した川端さんとの比較も、論文の中で述べています。
「自分の作品を虚無と批評するものがいるが、西洋風ニヒリズムという言葉はあたらない。それは強く禅に通じたものであるし、ここにも率直で勇敢な自己主張があると思います。川端さんも、アルフレッド・ノーベルが信頼と希望をたくした未来の人類に向けて、同じく心底からの呼びかけを行っていたのです。」161ぺージ・と大江さんの文章を引用しています。
大江さん自身のあいまいさは、アンビジューオスAMBIGIUOSで弁証法における正・反・合の中での、正と反、その両義性にこだわったのだと!!「川端さんが表現したかったのは、いきなり・合だったのだと。何故に大江自身が両義性にこそこだわり続けたというと、具体的な現実から出発するのが自分の根本的なスタイルだからだ。自分のスタイルにに忠実であるのは当然だ。」162ページ。
大江さんが、これから勉強したいというスピノザについては批判的です。
「民主主義を守るために、と君は言う。民主主義・自由・平等・人権・そして生命の尊さ。大江君・しかしそれは無理だ!民主主義とスピノザは絶対に相容れない。きっとスピノザだったらこう言うはずだ。自由・とは自分を自由だと思っているだけのこと。平等・世にふたつとして同じものでない。人権・誰が何に対して?生命・特に意味なし!・と。戦争も貧困も大虐殺も、邪悪のすべてが運命・宇宙としての神による機械的な必然、意図も目的もなし、したがって善悪もなし、これがスピノザのコスモロジーだ。なあ、見事に救われないだろう。」163ページ。
ここでスピノザの「エチカ」の結びの文章が紹介され・こんなミもフタもない認識にも唯一の救済があることが示されます。

「さあ、君にこれが出来るのかな?常に人々の魂の救済を求めて、人類全ての被害を鈍痛で受け止めてしまう君のような人にこれが、できるのかな。」164ページと問いかけます。
「僕は意地悪を言っているわけじゃない。いや、君が今スピノザに惹かれているのもたぶんそのためなんだろう。君は宇宙のもう一側面、つまりその絶対無意味を、ほんとうは知ってはいるのだろう。だって、ぼくらが存在することに意味があるかどうかなんて、いったい誰にわかるんだろうね。神だって。神について考えているのはやっぱり僕らなんだものね。であるにもかかわらず、僕や皆の心は、君の講演に確かに感動を覚えてしまうのだ。」と、大江さんへのエールに変わってきます。
「大江君・ひよっとしたら誰にもわからんじゃないか?意味があるといえばあるような気がするし、ないと言っちまえば、まるっきりないのでわからん!!あいまい(ambiguous)にして明瞭に(vague不明瞭)なのだ。僕らが理想をもつということは、手段なのか、目的なのか、そして、それはどういう可能で、どういう不可能なのか?きっと君の文学はもっとでっかい深いものになると思うよ!」164ページとソクラテスは励ますんです。

そして、ノーベル賞を受賞したソクラテスは、
「あいまいな宇宙の私」の論文も披露しちゃいます。
悪妻クサンチッペは「メダル剥奪だ!」と叫びます。ソクラテスは「毒人参ならくれるな。」とやり返します。ワッハッハ!!!!

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