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安部悦生『文化と営利』「第5章」(その3):「集団主義」と「個人主義」の単純な比較では、中国人と日本人の行動パターンを説明できない!「家族主義」を入れるべきだ!

2020-08-11 14:02:18 | Weblog
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅰ部 経営文化の理論的解明」「第5章 組織文化のミクロ分析」(66-80頁)(その3)

(3)ミクロ組織論(その3):「組織文化」(「企業文化」)についてのフランシス・フクヤマ(政治学者)の視角:信頼&家族主義!(78頁)
L 安部悦生氏の議論を整理すると、「個人主義」・「家族主義」・経営者企業への信頼(「集団主義(a)」)・国有企業への信頼(「集団主義(b)」)が区別される。(※評者が「集団主義(a)」、「同(b)」を区別した。)①個人への信頼:「個人主義」、②家族への信頼:「家族主義」、③中間組織(Ex. 経営者企業)への信頼:「集団主義(a)」、④国家(国有企業)への信頼:「集団主義(b)」。
L-2 「集団主義」(grupizm)と「個人主義」(individualism)の単純な比較(※ホフステード)では、中国人と日本人の行動パターンを説明できない。もう一つの比較座標として「家族主義」を入れるべきだと安部氏が言う。
L-3 「信頼」の概念は、フランシス・フクヤマによるものだ。

(3)-2ミクロ組織論(その3-2):中国人の経営者企業における「個人主義」、「家族主義」、国有企業への信頼(「集団主義(b)」)(78頁)
M 中国人は、経営者企業や他家族が所有する家族企業では、容易にジョブホップし、忠誠心も少ない。「個人主義」だ。(「集団主義(a)」でない。)
M-2 中国人は家族への信頼が厚い。自らの家族が所有し経営する家族企業に対する信頼・忠誠心は圧倒的に強い。「家族主義」だ。イタリアも同様だ。
M-3 中国人は、国有企業への信頼は相対的に高い。「集団主義(b)」だ。

(3)-3ミクロ組織論(その3-3):日本人の経営者企業への忠誠心(信頼)!「集団主義(a)」!(78-80頁)
N 相対的に日本人は家庭での「家族主義」が弱い。
N-2 日本人は企業における忠誠心(信頼)が高い。家庭よりも企業重視の「会社人間」も少なくない。「集団主義(a)」だ。(これは「孝よりも忠を重視する儒教理解」の影響でもある。)
N-3 日本人は他家族の所有・経営の家族企業でも、企業への信頼(忠誠心)が強い。
N-4 日本人の場合、会社において「個人主義」よりも「集団主義(a)」が優越する。
N-5 日本人は国有企業に対する信頼は低い。(「集団主義(b)」は弱い。)ゲゼルシャフト的企業=中間組織に対する信頼は強い。(「集団主義(a)」は強い。)
N-6 日本で「集団主義(a)」が強いのは、「村八分」を避けようとする「ムラへの同調」という歴史的起源も考えられる。

(3)-4ミクロ組織論(その3-4):アメリカにおける「家族主義」・「集団主義」(組織人)の弱まりと「個人主義」化!(80頁)
O  アメリカの家庭における「家族主義」は弱くなり、「個人主義」が強くなった。
O-2 また企業(職場)においても、かつては中間組織である経営者企業の隆盛を見たが、「集団主義(a)」(組織人)から、より「個人主義」の方向に進んでいる。
O-2-2 これはサラリーマン型の所得(税率35%)より、キャピタルゲインの報酬(税率16%)の方が税制上、優遇されていることも一因だ。
O-3 アメリカでは国有企業への信頼(「集団主義(b)」)は極めて低い。
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