宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

ノディエ(1780ー1844)『トリルビー』1822年: ジャニーは、永遠の愛と、地上の愛に引き裂かれた!&永遠の愛は、互いが不死の存在(非地上の存在)でないと成立しない!

2018-10-23 22:39:51 | Weblog
いなせな小妖精(いたずら小鬼)トリルビー。色男でかわいらしい。漁師ダガルの藁ぶき家に居ついて、褐色の髪のジャニー(ダガルの妻)に惚れていた。小鬼トリルビーがジャニーをいつも口説くので、彼女は困ってしまった。老僧ロナルドが呼ばれ、祈祷により小鬼トリルビーはダガルの藁ぶき家から追い出された。
(2)
ところが、ジャニーは追い出された小鬼トリルビーが可哀そうだと思うようになった。そして、トリルビーが居なくなって家は淋しい。湖の青い魚も捕れなくなり、夫ダガルの漁は不漁となった。ジャニーは憂鬱がひどくなる。ジャニーは実は、自分が「トリルビーを好きだったのだ」と気づいた。
(3)
妖精トリルビーの追放から1年たち、不漁に困ったダガルは妻ジャニーとともに、老僧ロナルドの僧院まで巡礼に出た。僧院に着くと、老僧ロナルドが「追放した悪霊を呪え」と説教し、それを信徒たちに誓わせた。「妖精たちは悪霊で彼らは追放後、災厄を引き起こすからだ」と老僧が言った。ジャニーは気が進まなかったが、夫ダガルととともに(トリルビーを含め追放された小妖精すべてに対する)呪いの宣誓をした。
(4)
僧院には、ベールで隠された肖像画があった。ジャニーは、それに惹かれベールを取った。何とそれは呪われたジョン・トリルビー・マクファーレンの肖像画だった。(つまり、それは人間の姿をとった小鬼トリルビーだった。)
(5)
呪いの宣誓をし巡礼から戻っても、ジャニーはトリルビーを忘れられない。そしてある日、湖に舟を出した。向こう岸で年老いた旅人がジャニーを呼んだ。その旅人が「湖を渡りたい」と言った。ジャニーは彼を舟にのせた。ところが、その老人は姿を変えたトリルビーだった。
(6)
トリルビーは、ジャニーに、ダガルの藁ぶき家(ジャニーの家)に戻してくれと頼んだ。ところで老僧ロナルドは、トリルビー追放に当たり、トリルビーが家に戻れる条件を2つ定めた。①ジャニーがトリルビーに「好きだ」と言うこと。②夫ダガル自身がトリルビーを家に運ぶこと。ジャニーはその時、「好きだ」と言わなかった。しかし実はすでに、彼女は、「トリルビーが好きだって、これまで私はわかってなかった」と舟の上で一人呟き、それをトリルビーが聞いていた。(つまり「好きだ」と言っていた。)(①)
(7)
トリルビーは、「一時でもジャニーに愛されたことは、永遠の喜びだ」と言った。ジャニーは、夫ダカルに結婚の誓いをしたので、ジャニーはトリルビーに「愛してる」と言えないと思った。トリルビーは、「妖精の愛は地上の愛でないから自分に『愛してる』と言ってもダカルを裏切ったことにならない」と言った。しかしジャニーは終に「愛してる」と言わなかった。トリルビーは水に飛び込み消えた。
(8)
ジャニーが舟を家に向けた時、ちょうど夫ダガルの舟に会った。ダガルが網を上げると、たくさんの青い魚が捕れ、それとともに宝石で装飾された小箱が網の中にあった。ダガルは宝物を手に入れ喜んだ。「巡礼のおかげだ」と言った。だがトリルビーが小箱の中に隠れていた。かくて夫ダガル自身がトリルビーを家に運び(②)、トリルビーはダガルの藁ぶき家に戻った。
(9)
老僧ロナルドが、ダガルの家を訪れにやって来た。彼は、ダガルに「悪霊を呪う誓いで、最後の悪霊まで断罪した」と述べた。ジャニーは、彼らから見えない位置でそれを聞いた。だが喜びのあまり、「これでもうトリルビーが断罪され絶滅されることはない!」と大きな声で言ってしまった。
(10)
老僧ロナルドがそれを聞いた。彼は、墓場に新しい墓穴を掘り、トリルビーへの呪いの儀式を始めた。すると宝の小箱が割れる音がし、同時に死に際の最後の吐息のような声がして、その声が墓穴のそばの「聖者の木」の中に消えて行った。「トリルビー!・・・・」とジャニーは叫び、新しい墓穴に身を投げた。瀕死の彼女は、ダガルの方に手を伸ばし、彼と「聖者の木」にかわるがわる視線を投げかけ言った。「いとしいダニエル、地上の千年も一瞬でしかないわ。」彼女は死んだ。
(11)
それから何百年がたった。私はその墓地を訪れた。ジャニーの墓の上の石には「永遠に離れられないものにとって、地上の千年は一瞬でしかない」と刻まれていた。今もトリルビーがジャニーの墓の前でつくため息が聞こえる。妖精は地上のものでないから、不死だ。「愛するものをかちうるには、そして愛するもののために泣くのには、千年なんて、ほんのわずかのときなのだ!・・・・・・」不死の者の愛は永遠だ!

《感想1》
不死の妖精トリルビーは、非地上の存在であり、非地上の愛、つまり永遠の愛に生きる。永遠の愛は地上にない。永遠に比較すれば、「地上の千年も一瞬でしかない」。(そもそも人は千年も生きられない!)
《感想2》
ジャニーは、永遠の愛と、地上の愛に引き裂かれた。ジャニーは地上で夫ダガルを愛し、夫ダガルとの愛の誓いを守った。彼女は、心からダガルを愛していた。
《感想3》
だがジャニーは、同時に地上で、不死の妖精トリルビーを愛してしまった。トリルビーとの愛は、永遠の愛であり、地上にない。彼女は夫ダガルとの地上での誓いを守りつつ、死ぬことで、トリルビーとの永遠の愛も手に入れようとした。(永遠の前には、地上は些細な存在だ。)
《感想4》
だが地上の存在であるジャニーは、その死とともに、身体も魂も消え去った。不死の妖精トリルビーは、もはやジャニーに会うことが出来ない。非地上の世界に住むトリルビーの永遠の愛を求めたジャニーは、地上の存在なので、ついに永遠の愛を手に入れることが出来なかった。
《感想4-2》
すなわち、地上の存在であるジャニーは、不死でないため、永遠を手に入れることが出来ない。地上の存在のジャニーは、死によって身体も魂も消え去る。
《感想5》
非地上の存在である妖精トリルビーは、不死であり永遠であるので、永遠の愛に生きることが出来る。しかし、彼が愛したジャニーが地上の存在であるため、死によって彼女の身体も魂も消え去り、トリルビーの永遠の愛はその対象を失った。
《感想6》
永遠の愛は、互いが不死の存在(非地上の存在)でないと成立しない。地上の存在のジャニーと非地上の存在である妖精トリルビーが互いに求めた永遠の愛は、成立しない。
《感想6-2》
地上の存在のジャニーの悲劇は、「死によって、永遠の愛が手に入る」と思ったことだ。ジャニーは「魂の不死」を信じた。だが著者ノディエは「魂の不死」を信じない。「死によって身体も魂も消え去る」のだ。この『トリルビー』の物語は「魂の不死」を信じない時代、宗教が理性に敗北した時代の悲劇物語だ。
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