宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

「2000年代 戦争と格差社会」(その1):「同時多発テロと新自由主義経済」2001年「9・11」・アフガン戦争、2003年イラク戦争!2001年小泉内閣の新自由主義!(斎藤『日本の同時代小説』5)

2022-04-11 15:58:14 | Weblog
※斎藤美奈子(1956生)『日本の同時代小説』(2018年、62歳)岩波新書

(49)「同時多発テロと新自由主義経済」:2001年米国同時多発テロいわゆる「9・11」とアフガニスタン戦争開始!2003年イラク戦争開始!
A  21世紀は、2001年9月11日米国同時多発テロ、いわゆる「9・11」が世界を一変させた。ハイジャックされた複数の民間機がニューヨークの世界貿易センタービル等に激突し、全体で3000人以上の死者を出す大惨事となった。米国(ジョージ・ブッシュ大統領)は10月にアフガニスタン戦争を開始する。さらに2003年3月には国連の合意がないままイラク戦争を開始した。(174頁)
A-2  日本(小泉純一郎内閣)は「9・11」後ただちに、アメリカ支持を表明し、2003年8月「イラク特措法」を成立させイラクに陸上自衛隊を派遣した。(174頁)

(49)-2「同時多発テロと新自由主義経済」(続):2001年小泉内閣の「聖域なき構造改革」すなわち市場原理主義にもとづくネオ・リベラリズム、かくて(ア) 「規制緩和」が進み労働環境が悪化!(イ)「経済のグローバル化」!(ウ)2008年9月リーマンショック!(エ) 1990年代と2000年代は「失われた20年」だった!かくて2000年代後半に「格差社会」の出現!
A-3  2001年4月に発足した小泉内閣は「聖域なき構造改革」の名の下、市場原理主義にもとづく「新自由主義経済」(ネオ・リベラリズム)寄りの性格を明確に打ち出した。かくて(ア)「規制緩和」が進み労働環境が悪化。(174-175 頁) 
A-3-2  さらに(イ)「経済のグローバル化」もあいまって、所得格差が広がる。(175 頁)
A-3-3  かくて2000年代後半に「格差社会」という言葉が出現。「ワーキングプア」、「ネットカフェ難民」などが問題となる。(175 頁)
A-3-4 これに拍車をかけたのが、(ウ)2008年9月の世界的な金融危機(リーマンショック)だった。(175 頁)
A-3-5  それでなくとも、(エ)バブル崩壊後、景気低迷が続き1990年代と2000年代は「失われた20年」だった。(175 頁)

(49)-3 (a)橘木俊詔『日本の経済格差:所得と資産から考える』(1998)、(b)佐藤俊樹『不平等社会日本――さよなら総中流』(2000)、(c)山田昌弘『希望格差社会――「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』(2004)、(d)三浦展『下流社会 新たな階層集団の出現』(2005)、(e)湯浅誠『反貧困――「すべり台社会」からの脱出』(2008)!
A-4  この時期には、次のような著作が次々と話題となった。
(a)橘木俊詔(タチバナキトシアキ)(1943-)『日本の経済格差:所得と資産から考える』岩波新書(1998、55歳)
《書評》1998年の著。データから日本の格差を分析。戦後アメリカの政策で財閥解体、独禁制、農地改革、労働民主化、税制改革、教育機会均等で「平等化」が進んだ。高度成長で、就業構造の変化(一次→二次産業)、都市への移動、核家族化、農/非農格差。バブル期は財産による「不平等化」。この時点では格差は大きくないが不平等に向かっていて、不平等阻止政策を著者は主張する。日本とは異なる精神の「格差社会米国の効率優先の政策」を真似たのが「不平等化」の要因という。「まだこのころは良かった」が、この後すでに20年以上たち、格差は一層広がった。

(b)佐藤俊樹(1963-)『不平等社会日本――さよなら総中流』中公新書(2000、37歳)
《書評1》「エリートがどんなに立派な計画を立てても、どんなに完全なマニュアルを考案しても、実行するのは現場の人間である。現場の人間が自分の将来に希望が持てなくなれば、社会も企業も腐っていくだけだ。」「『努力すれば何とかなる』、『たとえ自分がだめでも子供に夢を託せる』、そういう社会への信頼があったからこそ、まじめに働く気になれたのだ」といった内容が書かれた本だ。
《書評2》高い学歴を持つ人は「自責主義」に傾く。つまり自分の地位が実力によるものだとみなす。「親の学歴や職業」といった資産が、「選抜システム」の中でロンダリングされている。
《書評3》「『機会の平等』が日本では実は保たれていない」ということを、データを用い立証している。(ただしそのデーターに出てくる指標がなじみ薄くわかりにくい。)「責任感を持てないエリート」と「将来に希望のない現場」が生まれる。
《書評4》著者の制度設計:①年齢を問わず「階層間の横断」を可能とするような「教養教育・職業教育制度」の拡充、②「ブルカラーの専門性」を社会的に承認する「ラベリング」、それに見合う収入、などを提示。

(c)山田昌弘(1957-)(※「パラサイトシングル」「格差社会」「婚活」という語を作った社会学者)『希望格差社会――「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』ちくま文庫(2004、47歳)
《書評1》「親の収入や生まれた環境によって左右される時代が来た」と著者は言う。収入の多い夫婦のほうが、収入の少ない若年夫婦よりも共働き率が多く、強者がより強者になってゆく。高い収入から、高い教育が可能になり、“平等”と言われている勉学さえも、親の収入や生まれた環境によって左右される時代が来た。
《書評2》(ア)「いい大学→いい企業→終身雇用・年功序列」という予測可能な人生パターンが崩壊しつつあり、「先行きが予測できない社会」になってしまった。将来の人生がどうなるかわからないリスク化社会。つまり今の社会では、(ア)-2 一生この企業に勤められるかわからない、(ア)-3 一生懸命勉強していい大学に入っても、社会人になって安定した生活を送れるかわからない。(イ) 年金がもらえるかもわからない。(ウ) 希望喪失し、目先の生活に追われる若者の出現。(エ) 希望に格差が生まれる。(オ) 学力低下は勉強しても思う職に就くことが出来ない現実が引き起こしている。(オ)-2 大学院生がいっぱいいるが、ほとんど就職できない。

(d)三浦展(アツシ)(1958-)『下流社会 新たな階層集団の出現』光文社新書(2005、47歳)(※80万部のベストセラーとなった。)
《書評1》団塊ジュニアが「下流」化しているとし、「所得が低い」だけでなく「意欲や能力が低い」のが「下流」だと主張する。表やグラフを多数載せ、客観的なフリをしている。
《書評2》「マーケティングの本だ」という感想に尽きる。著者はマーケティングアナリストだ。この本を今後のマーケティングに活用しようと考える人もいるだろう。しかし、このような階層区分がまことしやかに、なにか裏付けがあるかのように扱われることには疑問がある。
《書評3》著者の「独断と偏見」が見え隠れする。フリーターやニートが生まれる素地として、親の学歴や年収の良し悪しを上げたり、33歳以上のパラサイトしている女性はすべて「下流」と決めつけるなど、「下流」の定義も曖昧な中で、かなり不快感をもった。一流大学を出てヒルズ族になっているような人々を「上流」と定義するのかもしれないが、上っ面の現象を個人的な偏見で味つけし、「すべて金が物を言う」と述べ、「所得の低い層」や「利便性の低い地方」への差別感にあふれる。

(e)湯浅誠(1969-)(※2008年「年越し派遣村」の「村長」)『反貧困――「すべり台社会」からの脱出』岩波新書(2008、37歳)
《書評1》2008年の本。うっかり足を滑らせたら、すぐどん底まで転げ落ちる「すべり台社会」。今も、「たいして変わらない」と感じるのは、間違いでない気がする。「人間社会の繋がりをとことん切断するコロナ禍」の今、ゲストハウス、ネットカフェの人々は無事なんだろうか?この手のものを見てしまうと、「正社員」辞められない…。
《書評2》生活保護について「自己責任だ」、「頑張ればそんなことにはならない」というような話をよく聞く。本書を読んで改めて思うが、それは想像力の欠如だ。また「自己責任論」は、自分自身の首を絞めることにも繋がる。「自己責任論」を振りかざし、足を引っ張り合うのでなく、「強い社会」をどうにかしてつくる努力をしなければいけないなと思った。
《書評3》書店に「平成の名著」として陳列されていたのを見て手に取る。リーマンショック(2008)直前に出版された本だ。その後の年越し派遣村、政権交代、東日本大震災と激動の10年が思い返される。現代社会を通底する「自己責任論」はどうにかならないのかと思う。
《書評4》「反・自己責任論」の本だ。自己責任という印籠をかざす生活弱者切り捨てを非難する。
《書評5》日本は、「雇用・社会保険・公的扶助」の三層のセーフティネットをすり抜ける人がたくさんいる「すべり台社会」だという。「その道を選んだ者が悪い」と「自己責任論」を説くものも多いが、「貧困」とは「選択肢が奪われていき、自由な選択ができなくなる」ことだ。貧困に陥るものは、人との繋がりなどの「溜め(タメ)」がない。「社会資源」を充実させること、当事者に自信をつけさせることが、「溜め」を拡大し、貧困者を助ける糸口になる。 一人一人のエピソードが胸に刺さった。誰しもが人権を守られる社会でないと、良い社会であると言えない。10年経って、社会は変わったのか?
《書評6》本書において著者は「溜め(タメ)」の重要性を説く。「溜め」とは「潜在能力」のことだ。大きな溜池を持っていれば、多少雨が少なくても慌てることはない。「溜め」は外界からの衝撃を吸収してくれる緩衝材であると共に、エネルギーの源泉となる。金銭的な「溜め」、人間関係の「溜め」、あらゆるものに「溜め」の機能は備わる。著者は、「貧困」とはそのような「溜め」が失われた状態だと語る。つまり、金が無い状態だけでなく、頼れる仲間がいない状態も「貧困」である。

A-5 2000年代の出版界は、インターネットの普及で、雑誌や書籍の費用が通信費に回され、紙メディアは大苦戦に陥った。小説そのものもネットメディアに大きな影響を受ける。(次節「インターネットから生まれたベストセラー」参照。)(175-176頁)

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