宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『伊勢物語』(Cf. 在原業平825-880)「第27段 たらひの影」:男が言った:昨晩、あなたに会えなくて、私もあなたとともに、泣いています!「たらひ」に映った「影」は私です!

2021-12-19 18:47:11 | Weblog
むかし、男が、女のもとに、一晩行ったが、再びは行かなくなった。男が来なかった翌朝、女は、手洗う所で、貫簀(ヌキス)が取り除けであったので、自分の顔が水に映って見えた。女は自ら歌を口ずさんだ。(Cf.「貫簀(ヌキス)」は、竹で編んだ簀(ス)で、盥(タライ)の上に置いて、注いだ水が撥ね返らないようにする。)

「わればかりもの思ふひとはまたもあらじと思へば水の下にもありけり」
私ほど悲しい思いの人は、ほかにあるまいと思っていましたが、この水の下にも悲しい思いの人がいたのでしたね。

女が口ずさんだ歌を、来なかった男が物陰で立ち聞いて、歌を詠んだ。

「みなくちにわれや見ゆらむかはづさへ水の下にてもろ声に鳴く」
水口(ミナクチ)で、盥の水の下にいた悲しい思いの人とは、私の姿が見えたのでしょう。(田に水を注ぎ入れる水口では)蛙(かはづ)さえ、水の下で声を合わせて鳴きます。私もあなと声を合わせ泣いています。

《感想1》悲しむ女は、水の下に、自分とは別にもう一人悲しい思いの人がいると、捉える。自分が客観化され二重化する。悲しむ女が、「ここ」と「そこ」に2人いる。自分一人が悲しんでいるのでないと、女には思えて、気持ちが少し救われる。
《感想2》男は前の夜、訪れなかったにもかかわらず、翌朝会った女に、優しく言い訳する。男は事情があって行けなかった。(orそのような振りをする。)「水の下にいるもう一人の悲しい思いの人とは、あなた自身でなく、あなたに私の姿が見えたのです。昨晩、あなたに会えなくて、私もあなたとともに、今、泣いています。」

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オウィディウス(前43-後18)『変身物語』(上)「巻2」(19)-3「オーキュロエ」(その3):彼女は神ユピテル(ゼウス)から予言を禁じられ、馬(ヒッペー)に変身させられた!

2021-12-19 13:07:46 | Weblog
(4)オーキュロエは神ユピテル(ゼウス)から、予言を禁じられ馬に変身させられ、ヒッペーと呼ばれることとなった!(83-84頁)
アポロンとコロニスの赤ん坊(将来の名医アスクレピオス)の運命と、自分の父ケイロンの運命を予言したオーキュロエは、神ユピテル(ゼウス)から、以後、「語ること」(予言すること)を禁じられ、「言葉を用いること」を許されなくなった。オーキュロエは「神の怒りを身に招いた」自分の予言の能力を恨んだ。「未来のことなど、知っていない方がどれだけよかったことか!」とオーキュロエは言った。だが、人間の声と姿がオーキュロエから奪われていった。
(a)草を食べたい気がしきりにしてきた。
(b)広い野原を無性に走りたくもなってきた。
(c)オーキュロエは言った。「お父さま譲りの馬の姿に変わろうとしているのね。でも、どうして全身が?お父さまは半分だけ馬なのに!」だが彼女のこの訴えの最後の部分は、紛れもないいななきに変わった。
(d)それから指がひとつに集まり、馬蹄となった。
(e)顔と頸(クビ)の長さが増した。
(f)裾(スソ)の長い上衣の大部分が、尾となった。
(g)頸をおおっていた乱れ髪はたてがみとなった。
こうしてオーキュロエは今や、声も姿も一変し、まぎれもなく馬となった。この異変によって名前もヒッペーと変わった。

《参考》ギリシャ語でヒッペー(hippos)は「馬」という意味だ。英語で「hippo-」関連の言葉がある。
◎「hippopotamus」:カバ。hippo(馬)+ potamus(川)=川にいる馬。ギリシア語「hippos potamios」に由来し、字義は「川の馬」。エジプトのカバを説明する際にHerodotus(ヘロドトス)が用いた学術語。(※ヘロドトスは「エジプトはナイルの賜物」の言葉で有名なギリシアの歴史家。「歴史の父」。)
◎「hippocampus」:ギリシア神話のヒッポカムポスで、ポセイドンの乗る馬車を牽く。ギリシア語hippo(馬)+ kampos(怪物)。半馬半魚の海馬。なおHippocampus はタツノオトシゴ属(sea-horse)の学名。また(脳の) 海馬。


★「ヒッポカムポスに乗るポセイドーン」3世紀中葉のローマ時代のモザイク

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