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「東京DOLL」 石田衣良

2012-06-10 | 本と雑誌

Doll

講談社文庫 280ページ 495円+税
4月に読んだ「美丘」に続いての石田衣良さんの恋愛小説。

ゲームソフト制作者として成功を収めている相良一登はMG(マスター・オブ・ゲーム)と呼ばれ、ヒットゲーム「女神都市」の次期バージョンの原案書を作っていた。ある夜、MGはコンビニでアルバイトしているヨリに出会う。二十歳のヨリは美容師になるための専門学校の費用200万円を貯めるためにアルバイトしていた。MGはヨリの斜めにつり上がった強い目とCGに最適なバランスの良い体と動きに目をとめ、ゲームのモデルとしての契約をする。深夜の東京でヨリの撮影を繰り返しているうちに、MGはヨリに惹かれて行ってしまう。
しかし、MGには結婚を約束した裕香がいた。また同時に大手家電系のゲーム会社がMGの会社を吸収する動きを始める。

二十歳の少女に一回り年上のビジネスで成功した男が癒されどんどん惹かれて行くという恋愛小説。才能があり、いくらでもお金が入ってくる男、これに対してモデルとして最上級の才能を示し始めた美しい少女。お互いに相手にのめり込み出すが、男に婚約者がいることを知り、少女はモデルの仕事だけの関係に戻そうとする。しかし、本心は・・・という切ないラブストーリー。石田衣良さんの書く話は、次がどうなるか展開の幅が広くてが読めないです。このため、読み始めたら、一気に最後まで行かずにはおられない。今回も一晩で読んでしまいました。石田衣良さんは体に毒です。

連載の関係があったのでしょうか、エンディングが妙に駆け足。急ぎすぎの感がありました。女神伝説のプレゼンのシーン と ラストのタグボートのシーン。ここはあまりにも、簡単かつ無茶な設定があって、もったいない気持ちがしました。「この連載回で終了」という計画に無理に合わせたとしか思えないです。

「ヨリ」という名前 美味しくなかったです。 「美丘」というように一度聞いたら忘れない、個性的かつ魅力的な名前を この女神に与えて欲しかったです。

石田衣良さんの文章、またメモしました。
「夜のコンビニは灯台だった。目のなかで青い蛍光灯の光が揺れている。」 これは冒頭のMGがヨリに出会うシーンの書き始め。

「ヨリはチューリップグラスをあげた。桃のジュースと頬の色が重なる。女の頬にはシャンパンで割った淡い果汁と同じ透明感がある。」

「鐘は使用するそのときまで、ステルス戦闘機のように存在しないのだ。つかうときだけ、実体をあらわす。」
毎回読むごとに どうやったらこういう感性で事象を捉えて言葉に置き換えられるのか と感心するばかりです。この領域に一歩でも近づきたいです。

最後の章が、荒っぽいところがありますが、全体としての出来映えは上。心が温まる恋愛小説です。お薦め。


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