ついに米国産牛肉輸入再々開 7月27日

米国産牛肉の輸入再々開を、政府は今日決定した。6月24日から7月23日までの間、厚労省と農水省が実施した米国の対日輸出承認施設35施設の現地調査の結果を踏まえ、輸入再々開を決定したのだ。政府の発表によると、実際には、35施設のうち15施設は、直ちに輸入再々開を決定できない何らかの不備や事情があったが、近いうちに、対日輸出リストに掲載されることが決まっている。

その15施設を、今後日本側があらためて査察する予定はなく、パッカーおよび米国の自主的な是正措置に委ねることで、リストに加えるというのだから、完全に米国ペースであることを誰もが否定できない。しかも、当該35施設の名前は、米側からの「施設が特定できる情報は非公開とのこと」との要請により、公開されていないのだから、現地調査そのものに本質的欠陥があると言わざるを得ないのだ。

日本が要求した「対日輸出プログラム」にあるウシの月齢確認とSRM(特定危険部位)の除去は、日本国内では当たり前に行われる作業であるが、米国の食肉加工施設で働く多くのヒスパニックなどの従業員にとっては、全てを履行することは、実際問題なかなか厄介だ。何よりも、彼らの多くはスペイン語しか話すことができない。仮に、AMS(米農務省農業販売促進局)の職員が監視したとしても、ヒスパニックの従業員が、EVプログラムの内容を理解することは困難かもしれないのだ。

米パッカーでのSRMの除去に、万が一不備があったとしても、全箱開梱して目視検査をする日本の税関で、なんとか流通を食い止めることはできるかもしれない。しかし、税関の目視で、月齢や使用された飼料まではとても判断がつかない。米国畜産業界で、今、最も注目しなければならないことは、肥育過程でウシが食する飼料に関する規制の甘さである。今回の査察で、米国の農場は、「肉用牛は、たん白質含量の高い飼料を必要としておらず、植物性の原料でたん白質の要求量を満たすことができるため、動物性たん白質を給与することは経済的でない」との回答を示しているが、ここで言う「動物性たん白質」とは、いったい何を指しているのだろうか。あえて「肉骨粉」だと仮定しても、鶏糞やチキンリッターなどがここで言う「動物性たん白質」に該当しないという根拠は、どこにもない。

調査対象となったレンダリング工場1施設が、「反芻動物由来の肉骨粉」を反芻動物に給与してはならない旨の注意書きを出荷書類に記載し出荷し、調査対象となった配合飼料工場2施設が、「反芻動物由来の肉骨粉」は原料として使用しない」と言っても、反芻動物由来すなわちウシの肉骨粉が鶏の飼料となり、その鶏糞やゲージ内の肉骨粉が混入したゴミ(チキンリッター)が、ウシの飼料となっていることは、もはや周知の事実なのだ。特に、吉野家が特注する「吉ギューの吉ギューによる吉ギューのための牛肉(ショートプレート)」は、鶏糞に甘い蜜をかけたものを飼料として肥育した、その名もずばり「糖蜜飼育若姫牛」なる「ブランド」なのだ。

日本政府の、米国の甘い飼料規制に対する認識・態度には、日本の消費者の不安や懸念を背負っているという使命感が、全く感じられない。そもそも、米国内で流通する所謂低所得者向けのオーガニックでない牛肉は、名実ともに「オーガニック」でないのだから、肥育に使用される飼料は、従来通り、肉骨粉混じりのリスキーな状態のままだ。米国の当初の主張が、「米国の条件下、米国民は食しているのだから、日本が示すレベルの高い条件は必要ない」であったことを思い出すと、米国全土に広がる畜産農家の一人一人が、飼料に配慮するとは、到底思えないのだ。

更に、今回の調査でも、月齢20ヶ月以下の規定が遵守される根拠はない。決定的なのは、米国の牛には、日本のように1頭1頭トレーサビリティの根拠となるロットが、プロッティングされてはいないことだ。結局、米国の牛は、月齢を正確に把握することなど、できるはずがないのだ。

多くの日本の賢い消費者は、このような状況の中、再び米国産牛肉が店頭に並んだり、加工食品に使用されたりすることに脅威を感じている。日本の消費者の健康と食の安全を守るべき日本政府が、日米関係を良好に維持するための政治的道具として、危険な米国産牛肉の輸入再々開に踏み切ることは、日本国民の1人として断じて許すことは出来ない。真に日本が、世界から健康で文化的な先進国家として認められるには、あえて米国および米国の畜産業界に対して、誤りを指摘する一石を投じる覚悟が必要だ。しっぽを振って寄り添うだけの、単なる米国のポチである以上、日本は世界のどの国からも評価もされなければ相手にもされないのだ。世界の公衆衛生の観点から、米国の畜産が、BSEリスクからの脱皮も含めて食の安全に律する行動をとることが、何よりも重要だ。

小泉路線を継承するポスト小泉政権では、日本の食の安全を守ることはできない。「美しい国」とは、それこそ言ってみるだけだ。政権は、選挙でしか代わらない。私たち消費者の賢い選択が、今度こそ求められるのだ。
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