「衆参同日選挙」の安倍戦略 7月11日

「チーム安倍」のステルス作戦は、着々と進行している。安倍官房長官は、8月15日までは総裁選への出馬表明を保留する意向を明らかにしているが、実際には、側近は勿論のこと、ベテラン議員への根回しも既に始め、総理の座を射止めるための動きを、水面下で活発化させている。更に安倍氏は、総理就任後の舵取りまでも考慮に入れ、来夏の参院選に必勝するための方策を、あらゆる方向から検討しているようだ。

特に東アジア外交と対米外交については、専門家を交えたブレーンストーミングに余念がない。なんといっても、総理就任後に起こり得る様々な事象に対するシミュレーションがすごい。側近とは絶妙の距離を保ち、ベテラン議員の意見も忖度しようとする安倍氏は、「チーム安倍」という形態を組んで、多角度的な分析を行い、あらゆる方面にアンテナを張り巡らしている。1人1人のチームメイトに責任感と闘志を植え付け、いかなるアクシデントにも揺るがない磐石な安倍政権を樹立するために、安倍氏は既に、他の総裁候補の追随を許さない勢いで、事実上の次期総理大臣として数歩も先を歩いている。

民主党は、そんな安倍氏のステルス作戦に、どんな対抗手段を用意しているのか。坊ちゃん右翼・ワルガキ・超親米派の安倍氏の手腕は、あまねく世界各国から支持されるものではない。むろん、東アジアを挑発するような安倍氏の傲慢な態度は、多くの日本の国民からも支持されない。しかし、極めて高い確率で誕生が間違いない安倍政権に対抗し得るだけの統治能力を、今の民主党は準備しているだろうか。小沢代表は、「チーム安倍」に比肩するだけのシンクタンク「チーム民主党」を、作り出していけるだろうか。

「チーム安倍」が、最重要命題として掲げているのは、間違いなく来夏の参院選勝利だ。現段階では必ずしも肯定はできないと思うが、来夏の参院選は民主党が優勢だと言われている。しかし、誕生したばかりの安倍政権は、参院選で絶対にミソを付けるわけにはいかない。そこで、安倍政権が、参院選で必勝するための唯一の手段が、衆参同日選挙なのではないだろうか。一方、民主党が、切れ味の良い政策をなかなか打ち出せず足踏みし、参院選が自民党にとって優勢ということになれば、安倍氏は、一気に憲法改正を掲げて、同様に衆参同日選挙に打って出る可能性がある。

非常に残念ながら、実際、その懸念は払拭できないのだ。今回の北朝鮮のミサイル発射劇を端緒とする小沢代表の反応が、なんともしっくりとしないからだ。今、日本が目指すべき外交の形は、日米関係を機軸とした中国・ロシアとの等距離外交であるはずだ。日米中の3カ国が正三角形に位置するような外交では、日本は特に北朝鮮に対して、対抗措置を持てなくなるのだ。

民主党が「チーム安倍」に比肩する強力な戦略チームを構成することができるか否かに、当然、来夏の参院選での勝敗もかかってくる。ましてや安倍氏は、衆参同日選挙も辞さない構えだ。民主党は、油断をしてはならない。せっかくの小沢・菅・鳩山の3枚看板が有名無実に終わらないよう、目標を達成するにたり得る最強の民主党・政権戦略チームが、一刻も早く誕生することを、とにかく願ってやまない。21世紀の世界の中での日本の役割を見据えた高い志が、今、民主党には求められているのだ。
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