介護保険制度改革 12月27日

介護保険制度改革が、着実に進められている。個人的には「元氣高齢者サービス」と呼びたいのだが、厚生労働省のいう「予防介護サービス」を、介護認定に組み込むため、これまで「要支援・要介護1・要介護2・要介護3・要介護4・要介護5」の6段階に分かれていたサービスが更に細分化されることになる。純粋予防サービスを意味する「要支援1」と次の段階の「準要介護」、さらに従来の要介護1のレベルを、予防サービスを受ける「要支援2」と予防サービスを受けない「要介護1」に分けることによって、全体で8段階に区分されることとなる。順番をつけるとするならば、「要支援1」「準要介護」「要支援2」「要介護1」「要介護2」「要介護3」「要介護4」「要介護5」ということになる。

ともかく、呼び名はともあれ、元氣維持のためのサービスを導入するという発想は、私の年来の主張だ。膨らむ高齢者医療費そして介護報酬を抑制する最大のポイントは、医療や介護を必要としない健康体を維持していくことであり、それこそまさに人間として最大の喜びであるはずのものなのだ。その意味において、今回の厚生労働省の取り組みは、前向きだ。ただ、予防介護に筋力トレーニングを導入するという点は、にわかに受け入れ難い。現実に、元氣な高齢者の多くが筋力トレーニングに励んでいるという姿は、非常に想像しにくい。むしろ、ウォーキングやスイミング、あるいは高齢者が高齢者を介護する形などなど、普段の生活の中で、十分に生きがいや体力は磨かれていくものだ。あえて「筋力トレーニング」を導入する必要性を、私は認めない。

更に、今回は、特養や老健に所属するケアマネジャーが、施設利用者の要介護度を認定調査することを禁止するとしている。当然のことだ。遅きに失した感もある。農村部では、民間事業所が存在しないこともあるので、一概に断定はできないが、基本的に、認定調査も含めてケアプランの作成は、独立した立場で中立性を持ったケアマネジャーが行なうべきものだ。医療費抑制の為に導入された介護保険制度であったはずなのに、抑制どころか介護報酬さえも膨れ上がり、結果的に医療と介護との総費用は縮減されるどころか増加傾向にある。

その大きな要因は、介護の必要度の低い人にまで、過剰な介護サービスを提供するケアプランにあることは、残念ながら否定できない事実なのだ。特定の事業所に利益をもたらすことを可能にしている現行の介護保険制度の問題点を丁寧に分析し、1つ1つ解決していくことが必要なのだ。厚生労働省は、事業所に所属しないケアマネジャーがケアプランを作成した場合、報酬を上乗せすることも併せて決定した。地域からの信頼と専門性の観点から、たとえば街の薬局がその任を担うことが最もふさわしいと、私は考えている。

元氣高齢者サービスは、必ず医療費や介護報酬の抑制へとつながる決定打になると、私は確信している。介護保険の中に、元氣を維持するための運動や学習を組み込むことと併せて、元氣高齢者が、NPO法人などの形で、地域のニーズに有償ボランティア(年金プラスアルファ)として貢献できるネットワークを構築していくことが、最終的に目指すべき高齢化社会の在るべき姿だと私は考えている。子育て支援や地域の児童への教育支援はもとより、長年培った職能を発揮していただく各種シルバー人材サービス、そして勿論、高齢者による介護支援など、高齢者の生きがいを見出す可能性は無限大だ。元氣高齢者政策の充実こそが、介護保険制度の充実をも意味することになるのだ。介護保険料の徴収年齢を引き下げること以前に、取り組むべき課題は山積しているのだ。

介護保険制度が成熟してくれば、障害者福祉との一体化も当然議論されてしかるべきだろう。ただし、介護保険と障害者福祉との一体化は、現段階では居宅サービスに留まるべきものだと、私は考えている。施設での一体化は、もう少し深く検討する必要がある。

そして、何よりも、介護保険制度の改革で忘れてはならないことは、介護現場で働くスタッフの労働条件の改善だ。フラフラになり薬を飲みながら、この年末年始も休日返上で必死に働く介護スタッフの過重労働に、厚生労働省は目を向けなければならない。現場の悲鳴は、厚生労働省には届いていない。より良い制度設計がなされたとしても、それを支える介護スタッフの劣悪な労働条件が改善されない限り、介護保険に未来はないと、私は断言する。

すべての介護職員に介護福祉士の資格をとらせることで、介護の質の向上が図れるものなのだろうか?介護は、人対人だ。そして多くの場合、年下の人間が人生の大先輩を相手にサービスを提供する。まさに、ここでも人間力が問われているのだ。働くスタッフが、精神的にゆとりを持って仕事に臨める環境を作り上げていくことが、何より大事なことなのだと、私は思う。
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