「秋の青森のアートと史跡・街歩き」 Vol.4:弘前市街(土手町・弘前城周辺・禅林街ほか)

Vol.3:弘前れんが倉庫美術館に続きます。弘前の街を訪ね歩いてきました。



弘前を旅するのは初めてだったので、まずは街の雰囲気を肌で感じるべく、しばらく歩きのみで市内を巡ることにしました。



美術館を出て、中央弘前駅付近から弘前城の方向を目指していくと、古い商店やデパートなどの立ち並ぶ通りが見えてきました。



それが江戸時代から城下町として商工の町屋が並んでいた土手町で、現在も飲食店などが集中する中心街でした。



いわゆる看板建築や蔵を改装したと思われる建物、それに洋館風のビルなどが続いていて、風情ある街並みを形成していました。



そもそも古い歴史を有する弘前には、明治、大正、昭和へと遡る歴史的建築物が多いことでも知られています。



土手町からお城の方へ進めば進むほど、車と人通りが明らかに増えてくることが分かりました。この日はちょうど弘前公園にて「弘前城 秋の大祭典」が開催されていて、スポーツイベントやフード関連のショップ、アートクラフト展などを目当てに、主に地元の方が多く出かけていたようでした。



渋滞する道路を横目に中央広場から旧第五十九銀行本店本館へと歩くと、江戸時代から弘前に山車まつりの文化を伝える山車展示館が建っていました。



ここでは各町会が運行する山車や、ねぷたともに出陳するという大太鼓などが並んでいて、手狭なスペースながらもまつりの活気を感じることができました。



山車展示館より弘前市役所を過ぎて、かつて旧陸軍師団長の官舎だった洋館のスターバックスを過ぎると、左手に見えてきたのが東北地方有数の規模を誇る藤田記念庭園でした。



藤田記念庭園とは大正時代の弘前の実業家、藤田謙一が別邸を構える際、東京から庭師を招いて築いた江戸風の庭園で、1992年に一般向けに開園しました。総面積21800平方メートルある庭園は、岩木山を望む高台部の庭と池泉回遊式の低地部の2つから構成されていて、高低差は実に16メートルにも及んでいました。



ちょうど高台部の東案内所から入場すると右手に和館、左手に洋館があり、それぞれクラフト&和カフェ匠館と大正浪漫喫茶室のカフェが入っていました。しかしお城のイベントゆえか、どちらも混雑していて、特に大正浪漫喫茶室は相当の待ち時間が発生しているようでした。



とはいえ、手入れの行き届いた庭園自体は人もまばらで、和館を含めてゆっくり見学することができました。



さて弘前城や藤田記念庭園の南西方向にあるのが、津軽家の菩提寺である長勝寺をはじめとした33の曹洞宗寺院が並ぶ禅林街でした。



入口の黒門を抜けると、すぐ左に東北で2つしかない栄螺堂(六角堂)が建っていて、真っ直ぐに伸びた一本道には杉の木が整然と立ち並んでいました。



その並木道の左右には大小の寺院が点在していて、杉並木と合間ってか独特の景観を築き上げていました。なお同じ宗派によって造られた寺院街は全国でも珍しいことから、長勝寺構として国の史跡に指定されています。



秋のお彼岸の時期からかお墓参りをしている方々が目立つ中、杉並木を進んでいくと一番奥に位置する長勝寺に辿り着きました。



1528年に津軽家の祖である大浦光信を弔うため、子の盛信が鰺ヶ沢町に創建した長勝寺は、1610年の弘前城の築城とともに現在の地に移され、長らく同家の菩提寺として信仰を集めてきました。



境内には鎌倉時代に遡る梵鐘や、江戸時代の本堂や三門、それに御影堂などが並んでいて、歴代の藩主や正室の霊屋とともに重要文化財に指定されています。



基本的に外観のみの拝観は自由で、杉林に囲まれた霊屋も遠目に見ることができました。私自身、弘前に寺町のイメージがなかったので、まさかこれほど立派な寺院が建っているとは知りませんでした。

そして一度、弘前城付近から駅へ土手町100円バスへ戻り、軽く昼食を済ませた後、再び弘前城へ行きました。



依然としてイベントのために大勢の人で賑わう中、弘前文化センター近くの東門より入城し、東内門を過ぎると内濠の向こうに天守が見えてきました。



1611年、二代藩主の津軽信枚によって完成した弘前城は、6つの郭と3重の濠から築かれていて、門や櫓などの城郭の遺構が、ほぼ当時のままの姿で残されています。



現存する天守は1810年に建てられたもので、他の遺構と同様に重要文化財として指定され、東北地方唯一の江戸時代の天守としての威容を誇っています。



現在、100年ぶりの本丸石垣工事のため、当初の位置より北西約70メートルに移されていて、内部を見学することも可能でした。三層の天守は風格がありながらも小規模ゆえか、どこか可愛らしく見えるかもしれません。



それにしても廃城時の姿をほぼ留めているだけあり、櫓や天守はもちろん、濠や石垣などからも長い歴史の蓄積がひしひしと感じられました。



本丸から鷹丘橋を渡り、北の郭に出て丑寅櫓などを見学した後、三ノ丸から城外へ出ると、北側に位置するのが弘前ねぷた館でした。



弘前ねぷた館は、10メートルにも及ぶ大型のねぷたの展示のほか、三味線の生演奏、工芸体験、また土産店などからなる観光施設で、ちょうど私が出向いた際もねぷたの解説とともに太鼓の演舞が披露されていました。



帰りの電車の都合もあり、あまり時間的に余裕がなく、じっくりと見学は出来ませんでしたが、力強い太鼓の轟きともに、壮麗なねぷたの魅力をしばし味わうことができました。



ねぷたを見学すると16時を過ぎていました。この日の18時過ぎの新青森発の「はやぶさ」で帰る予定をしていたため、そろそろ青森と弘前の旅を終えなくてはなりません。最後に一休みしようと土手町へ向かい、老舗カフェレストラン煉瓦亭にてアップルパイをいただきました。



朝から夕方にかけて弘前れんが倉庫美術館、藤田記念庭園、禅林街、弘前城、弘前ねぷた館など、弘前の街を練り歩きましたが、反省点をあげるとすれば、やはりスケジュールがタイトであったことでした。



また連休中やイベントの開催もあってか、大勢の人が繰り出していて、事前に気になっていたカフェやレストランの殆どは満席などで利用できませんでした。よって昼食のタイミングを逸してしまったのも反省材料でした。



それに弘前には前川建築など想像以上に見どころが多く、1日では十分に廻りきれませんでした。再度行く機会があれば弘前に宿泊し、より広域を巡るのも良いのかもしれません。

青森には十和田市現代美術館など注目すべきアートスポットも他に存在します。またぜひ旅したいと思いました。

「弘前公園」@HIROSAKIPARK_JP
休館:11月24日~3月31日(弘前城)
 *弘前城本丸・北の郭は11月24日~3月31日の期間は入園無料
時間:9:00~17:00(4月1日~11月23日)
料金:大人320(250)円、子供100(80)円。
 *有料区域入場料金(本丸・北の郭)
 *弘前城本丸・北の郭、弘前城植物園、藤田記念庭園の共通券あり。大人520円、子供160円。
 *( )内は10名以上の団体料金。
住所:青森県弘前市下白銀町1
交通:JR弘前駅より弘南バス(土手町循環100円バス)「市役所前」下車徒歩4分。
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