都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「東北芸術工科大学卒業・修了展(東京展)」 東京都美術館
東京都美術館(台東区上野公園8-36)
「東北芸術工科大学卒業・修了展(東京展)」

東北芸術工科大学の本年度の卒業・終了制作から選抜された作品を一同に紹介します。東京都美術館で開催中の「東北芸術工科大学卒業・修了展(東京展)」へ行ってきました。
私自身、こうした大学の卒業展へ足を運ぶ機会は少ないのですが、会場で順に見て行くと、特に日本画と工芸で印象に残る作品が多いような気がしました。メモ程度で恐縮ですが、感想を以下に記録してみます。
・日本画
土井沙織「サバキノトリ」(大学院)
会場入口に掲げられた縦4m弱、横5m強の大絵画。その大画面を背にした巨大な怪鳥が叫びを挙げるかの如く羽ばたいている。鮮烈な赤に極太の黒い輪郭線が走る様はまるでビュフェ絵画のよう。またその奇怪なモチーフにも由来するのか、岡村桂三郎の作品を連想するものもあった。
針生卓治「山月記」(大学院)
幾層にも織り込まれた闇の中で二頭の牛が交互に対峙する。闘牛のイメージを元に描いた作品とのことだが、その岩のような身体と相まってか、立ちはだかる大きな山脈のようにも見えてきた。その重厚な画肌に押しつぶされそうになるほど。
鈴木尚武「音信不通」
床に側溝の蓋のような支持体を並べ、壁面に絵画を展開する、二つのイメージからなった風景画。ビルや電線の描かれた風景の中に、何らかの記号のような線や面が入り込んで抽象的な世界を呼び込んでいく。実景と虚像の間が揺らぐ様子も魅力的だ。
熊谷奈津子「Ymir」
和紙などを張り合わせた質感と、金泥や朱を交えた色彩感が美しい。泡のように増殖する球形のモチーフは、何らかの生き物のようにも見えた。泡をかき分けてその中へ入って行けそうなほどに脆い。
西山綾子「あしたには」
ごく日常の部屋の光景を上から覗き込んだような俯瞰の構図で描く。構図感云々よりも、カーペット部分に塗りこめられた砂など、モチーフ毎に素材や絵具を変えているのが興味深かった。
木村聡美「生ける」
白と青の混じり合う幻想的な色彩の海に花々が散っている。一枚の支持体ではなく、縦長のパネルに分けて起立させた展示方法も美しい。センスの良い調度品のようにあしらわれていた。簡素なインスタレーションでもある。
・工芸(漆芸、金工、陶芸)
鈴木祥太「凛」
金工にて何気ない草花などを象る。可憐に咲く小さな野菊は、木彫の須田悦弘を思い出させるものもあった。
高橋幸子「いとなむ」
チラシの裏面にも掲載された大掛かりな作品。羊毛に包まれた椅子が階段状に連なって宙へとあがっていく。もっと大きな空間であればより映えるのではないだろうか。
菊池麦彦「LURE BAG」
非常に細やかな彩色の施されたルアー各種。漆の質感も美しい。この質をそのままにした大作も見てみたい。
なお当日、オープニングイベントとして開催された、同大准教授の三瀬夏之介と美術評論家の福住廉によるギャラリートークも拝聴しました(都合により中座しました。)そこでも一部、三瀬がキーワードとして挙げた「東北画」という概念については、間近にも迫る以下のトークイベントでも議論がなされるようです。展示とあわせて伺おうと思います。

「roots/東北画は可能か?」
場所:アートスペース羅針盤(中央区京橋3-5-3 京栄ビル2階)
会期:2010年4月5日(月)~10日(土)
トークイベント:4月10日(土)13:00~ 出演/三瀬夏之介、鴻崎正武
*参考リンク:東北画について其の二。(三瀬夏之介ブログ)
上野へお出かけの際は是非お立ち寄り下さい。卒業・修了展は4月3日まで開催されています。(入場無料)
「東北芸術工科大学卒業・修了展(東京展)」

東北芸術工科大学の本年度の卒業・終了制作から選抜された作品を一同に紹介します。東京都美術館で開催中の「東北芸術工科大学卒業・修了展(東京展)」へ行ってきました。
私自身、こうした大学の卒業展へ足を運ぶ機会は少ないのですが、会場で順に見て行くと、特に日本画と工芸で印象に残る作品が多いような気がしました。メモ程度で恐縮ですが、感想を以下に記録してみます。
・日本画
土井沙織「サバキノトリ」(大学院)
会場入口に掲げられた縦4m弱、横5m強の大絵画。その大画面を背にした巨大な怪鳥が叫びを挙げるかの如く羽ばたいている。鮮烈な赤に極太の黒い輪郭線が走る様はまるでビュフェ絵画のよう。またその奇怪なモチーフにも由来するのか、岡村桂三郎の作品を連想するものもあった。
針生卓治「山月記」(大学院)
幾層にも織り込まれた闇の中で二頭の牛が交互に対峙する。闘牛のイメージを元に描いた作品とのことだが、その岩のような身体と相まってか、立ちはだかる大きな山脈のようにも見えてきた。その重厚な画肌に押しつぶされそうになるほど。
鈴木尚武「音信不通」
床に側溝の蓋のような支持体を並べ、壁面に絵画を展開する、二つのイメージからなった風景画。ビルや電線の描かれた風景の中に、何らかの記号のような線や面が入り込んで抽象的な世界を呼び込んでいく。実景と虚像の間が揺らぐ様子も魅力的だ。
熊谷奈津子「Ymir」
和紙などを張り合わせた質感と、金泥や朱を交えた色彩感が美しい。泡のように増殖する球形のモチーフは、何らかの生き物のようにも見えた。泡をかき分けてその中へ入って行けそうなほどに脆い。
西山綾子「あしたには」
ごく日常の部屋の光景を上から覗き込んだような俯瞰の構図で描く。構図感云々よりも、カーペット部分に塗りこめられた砂など、モチーフ毎に素材や絵具を変えているのが興味深かった。
木村聡美「生ける」
白と青の混じり合う幻想的な色彩の海に花々が散っている。一枚の支持体ではなく、縦長のパネルに分けて起立させた展示方法も美しい。センスの良い調度品のようにあしらわれていた。簡素なインスタレーションでもある。
・工芸(漆芸、金工、陶芸)
鈴木祥太「凛」
金工にて何気ない草花などを象る。可憐に咲く小さな野菊は、木彫の須田悦弘を思い出させるものもあった。
高橋幸子「いとなむ」
チラシの裏面にも掲載された大掛かりな作品。羊毛に包まれた椅子が階段状に連なって宙へとあがっていく。もっと大きな空間であればより映えるのではないだろうか。
菊池麦彦「LURE BAG」
非常に細やかな彩色の施されたルアー各種。漆の質感も美しい。この質をそのままにした大作も見てみたい。
なお当日、オープニングイベントとして開催された、同大准教授の三瀬夏之介と美術評論家の福住廉によるギャラリートークも拝聴しました(都合により中座しました。)そこでも一部、三瀬がキーワードとして挙げた「東北画」という概念については、間近にも迫る以下のトークイベントでも議論がなされるようです。展示とあわせて伺おうと思います。

「roots/東北画は可能か?」
場所:アートスペース羅針盤(中央区京橋3-5-3 京栄ビル2階)
会期:2010年4月5日(月)~10日(土)
トークイベント:4月10日(土)13:00~ 出演/三瀬夏之介、鴻崎正武
*参考リンク:東北画について其の二。(三瀬夏之介ブログ)
上野へお出かけの際は是非お立ち寄り下さい。卒業・修了展は4月3日まで開催されています。(入場無料)
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