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「安田靫彦展 - 花を愛でる心」 ニューオータニ美術館

ニューオータニ美術館千代田区紀尾井町4-1
「安田靫彦展 - 花を愛でる心」
3/13-4/18



主に川崎市市民ミュージアムの所蔵品にて、日本画家安田靫彦(やすだゆきひこ)の画業を概観します。ニューオータニ美術館で開催中の「安田靫彦展 - 花を愛でる心」へ行ってきました。

今年のニューオータニの最大の目玉と言っても過言ではないかもしれません。最近、都内でまとめて俯瞰する機会の少なかった安田靫彦を、本画と下絵をあわせて全74点もの作品にて一堂に展観しています。所狭しと作品が並んでいました。

本展の構成は以下の通りです。一部、画業を時系列に辿りながら、主にジャンル別に作品を紹介していました。

第一章「歴史画」:初公開「八橋」をはじめとする約10点。
第二章「花木」:「春暁」他、下図を含め計40点。
第三章「写生画」:主に自宅周辺で描いた野草のデッサン。約30点。

決して大きな会場ではありませんが、見どころがいくつもあるのが日本画ファンにとっては嬉しいところです。以下、私の思う展示のツボを4つほど挙げてみました。ご鑑賞の参考にしていただければ幸いです。

1.初期の歴史人物画~安田靫彦は歴史好き~



安田靫彦は14歳で有職故実の小堀鞘音に入門します。元々歴史好きであった彼は、そこで師の指導のもと、主に歴史画を描くようになりました。

展示でも中国の古典、そして源氏物語や伊勢物語に主題をとった作品がいくつか紹介されています。

2.琳派と安田靫彦



伊勢物語から「八橋」(1934)を描いた安田靫彦ですが、彼はそれを描く前年、宗達の展覧会を見たことがあるそうです。また随所に駆使されるたらし込みの技法など、彼が琳派に親しみを寄せていたのも事実かもしれません。

3.花木画の成立の由縁



タイトルに「花を愛でる心」とあるように、今回の展示のメインは安田が多数描いた花木画の紹介に他なりません。そして彼がこれらの主題を取り上げるようになったのは、そもそも歴史画の背景にあった花を独立させ、つまりはそれを単独で描きだしたことに由来しているのだそうです。

安田靫彦は梅をこよなく愛していました。もちろんそれ以外にも、チューリップや桜、また菖蒲を描いた作品など、多様な花木画を描いています。

4.写生への眼差し~本画と下絵の比較~



同一作品の本画と下絵を一部、比較展示しているのも重要なポイントです。

安田は下絵では対象を的確に捉え、精緻な線で有りのままに描き出しましたが、本画ではその趣を変え、あくまでも一種の静物画として独立させています。



「佐久良」(1941)は下絵と本画の変化が一番分かりやすいかもしれません。下絵の桜がまさにデッサン風であるのに対し、本画ではもっと華やいだ春の美しさを表現していました。



入口付近の展示ケースに入れられた「春暁」(1935)に目を奪われました。木々のうねるような形態は何やら晩年の速水御舟を連想させるものがありますが、よく見るとその枝の先には可憐な花がいくつも咲いています。まさに春の装いを感じる一枚と言えるかもしれません。

3月27日と4月10日の各土曜日には美術館学芸員による展示解説が行われるそうです。

なお出品元の川崎市市民ミュージアムでも同じく安田靫彦の展覧会が昨日より始まっています。



安田靫彦展 歴史画誕生の軌跡@川崎市市民ミュージアム 3/13~4/18

こちらは文字通り、安田靫彦の歴史画の成立史を辿る展示です。ニューオータニ美術館の半券にて入場料が100円引きの400円になります。忘れずにお持ち下さい。

小冊子風の図録が1300円で販売されていました。また川崎の図録については、受付に申し出ると実物を見せていただけます。(販売はなし。)なお両展覧会は二つで一つ、事実上の共催展です。川崎も是非伺いたいと思いました。

4月18日までの開催です。おすすめします。
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