「ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち」
3/25-6/1



「美術のなかの子ども」をテーマに、ルーヴル美術館の7つの部門(構成を参照。)から約200点の文物が揃います。(美術館HPより引用。一部改変。)国立新美術館で開催中の「ルーヴル美術館展 美の宮殿の子どもたち」へ行ってきました。

構成は以下の通りです。

第1章 誕生と幼い日々(古代ギリシャ・エトルリア・ローマ美術部門)
第2章 子どもと日常生活(古代オリエント美術部門)
第3章 死をめぐって(古代エジプト美術部門)
第4章 子どもの肖像と家族の生活(絵画部門)
第5章 古代の宗教と神話のなかの子ども(古代ギリシャ・エトルリア・ローマ美術部門)
第6章 キリスト教美術のなかの子ども(絵画部門)
第7章 装飾モティーフとしての子ども(古代エジプト美術部門)

ルーヴル某展と聞くと、ちょうど今、上野の西美で開催中のような絵画展を連想してしまいますが、こちら乃木坂の展示でのそれはむしろ脇役です。上の構成を見ても明らかなように、展示は主に古代ギリシャ、ローマ、エジプト期の美術工芸品によって成り立っています。もちろんプッサン、ルーベンスなどのお馴染みの油彩も紹介されていますが、そう捉えるよりも、「子ども」というキーワードを、半ば考古の視点でも探る博物館的な展示と言って良いかもしれません。偶然にも展示方法自体がいつもの無駄に広く明るい新美と一転して、暗室に強めのライティング、そして細かなパーティションなどと、まるで東博の特別展を思わせるような凝ったつくりにもなっていました。



私の趣味からすると断然に面白くなるのは後半部、特に第5章と第6章における古代宗教、及びキリスト教美術関連の展示です。ここでは古代ギリシャの山の精「サテュロス」を子どもの姿に表した大理石像や、幼児ヘラクレスが蛇を殺めるシーンを壺に描いた古代ギリシャの「赤像式スタムノス」、また女神イシスが子どもに乳を与える姿をブロンズで象った古代エジプトの「幼いホルス神に授乳するイシス女神」などが紹介されていました。またキリスト教関連では、ちらし表紙も飾るティツィアーノの大作、「聖母子と聖ステパノ、聖ヒエロニムス、聖マウリティウス」が圧巻です。豊かな肉感表現をはじめ、各々の生き生きとした表情などは、本展示の他で紹介されている絵画よりも群を抜いています。当然ながら上野のルーヴル展にあっても何ら遜色ない名作でした。

数千年にも及ぶ時代変遷と、上記のように7つのジャンルから集められた品々は、深くその意図を読み込むことをせずとも新鮮味があります。次々登場する工芸品には目移りしてしまうのは事実でした。



なにも同時期に、しかも同じ東京で二つもルーヴル展を開催しなくても良いのではないかとは思ってしまいますが、殆どクロスしない内容はむしろルーヴルの幅広い収蔵品を一挙に知るに最適であるのかもしれません。とは言え、考古中心のラインナップは、あえてルーヴルという必然性を感じさせるまでには至っていませんでした。全く関係ありませんが、この内容、テーマであるならば、お隣イギリスの大英博物館の館蔵品で構成した方がより楽しめたかもしれません。



小瓶やゲームの駒などの小品が多いため、混雑しているとあまり良く作品が見えません。辛抱強く列に並ぶ他なさそうです。(館内は意外と混んでいました。)

6月1日までの開催です。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )