Hanews-はにゅうす

ウィーン歌曲歌手、「はにうたかこ」の毎日のちょっとしたことを書いています

ハンス・カンというピアニストをご存知ですか?

2005年07月01日 22時43分54秒 | Weblog
さっき、友だちからのメールでピアニストのハンス・カン氏が亡くなったらしいよ。という連絡がきました。78才だったそうです。

みなさんはこのピアニストをご存知でしょうか?昔々、私がはじめてピアノを習い、そして家族が一軒家に引っ越した時、我が家にはピアノの他に、大きな(当時は大きい方がよかった)ステレオがやってきました。その時に買ってもらった10枚セットのピアノ曲集の演奏がすべてハンス・カンさんだったのです。好きな曲は何度も何度も聴いて、勝手にピアノで弾いていました。今でも「かっこう」という曲と「わすれな草」という曲は、まだ一度も楽譜を見たことがないのに弾けます。

そしてウィーンで本物のハンス・カンさんに出会いました。実は、カンさんは、私の最初の大家さんだったのです。知り合いに紹介してもらって入った家は、最初からピアノがおいてある2部屋のアパートでした。しかし当時の私には広すぎたのと、家賃も他に比べて少し高かったので、しばらくして身の丈にあったアパートに引っ越しましたが。

最初に紹介してもらったとき、車で迎えにきてくれたのが、カンさんでした。もちろん私はドイツ語はほとんど話せなかったのですが、レコードを持っていること、毎日聞いていたことなどをなんとか(たぶん向こうが日本語も少しできたような記憶がある)伝えました。だって10年以上聞いていた、あのレコードの中の人がここにいるんだから、どれくらい興奮したかわかってもらえますか?でも、こちらは、すごい偉いピアニストだと思って話をしているのですが、向こうは普通のおじさん(大家さん)なんですよ。
もちろん当時のウィーンでは演奏会もよくしておられたので、舞台の上ではピアニストなんでしょうが、「シャワーの排水が詰まったので困っている!」と電話したら、我が家までやってきて、クリーニングでもらうようなハンガーを分解して、「こういうのはたいてい髪の毛が詰まっているんだよ。」といいながら排水溝を掃除してくれる親切なおじさんでした。

この時、私ははじめて、「有名な音楽家も人間やねんなぁ・・・」と思うことができ、留学の緊張も少し解けたのでした。
心からご冥福をお祈りします。
コメント (10)
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