指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『新宿そだち』

2020年09月07日 | 映画
前から気になっていた作品で、脚本が成沢昌成なので、期待して見に行くと秀作だった。監督長谷和夫。
1968年の大木英夫と津山啓子のヒット曲の映画化で、二人も出てくる。

           

国電の車内で、松岡きっこが男のズボンの後ろポケットの財布をすると、手を掴まれ、そのまま旅館のベットに行き、セックス。
「なぜスリなんかしたのだ・・・」と川津佑介が聞くと、女は答える、「仕立屋銀次の三代目の子だから」
川津は言う、「なんだそいつは」
そして、ゴーゴー・クラブのシーンになり、ボディペインティグしている女たちがお立ち台で踊っている。
これは、『いれずみ無残』シリーズの3本目で、入墨がボディーペインテングに変わっていて、川津はそのボディアート師である。
彼らの根城のクラブのママは、三浦布美子、オーナーは喫茶店チェーンの金子信夫で、彼はバイ・セクシュアルで、ボーイの高橋長英美少年を恋人にしている。
もちろん、金子は、女も漁っていて、その斡旋を川津はしている。
そこには、松岡とこのシリーズのコンビの荒井千津子もいて、彼女は高橋に惚れて彼を「男にする」
さらに、王蘭芳や桜井浩子らも出入りしている店である。
そして、高橋は鹿児島の出で、ガーベラが好きとのことで、荒井は、自分の背中にガーベラの入れ墨を入れる。
松岡は、川津から金子に売られ、それを売春容疑で警察に逮捕されるが、二人は自供しない。
荒井は高橋と所帯を持ち、幸福になるが、高橋は荒井の独占欲の強さに次第に辟易とする。
途中で、秘密の乱交パーティーが行われ、そこには天井桟敷の一統が出ている。
まさに、時代である。

最後、金子が高橋を荒井の所から無理やり取り返そうとし、それに気付いた荒井は、高橋を自宅で果物ナイフで刺し殺し、自分も剃刀で自殺する。
さらに、応蘭芳と恋人の桜井浩子は、浴槽で手首を切って死ぬ。
この地獄絵図は、歌舞伎的だが、成沢さんの教養の高さがよくわかる優れたシーンだった。
本来なら、もっと真っ赤にすべきだが、松竹大船の限界だろう。
松岡は、川津とは別れて、佃島の幼馴染みの不良三上真一郎と一緒になることが暗示されて終わる。
松岡の祖父で、老スリの大矢市次郎と刑事の藤原釜足との台詞のやり取りはさすがだった。

国立映画アーカイブ 




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