指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

隠れた傑作 『昼下がりの暴力』

2017年01月24日 | 映画

監督の野口博志は結構いい監督で、赤木圭一郎の「拳銃無頼帖」シリーズなど当たりはずれの少なく、昔から好きだったが、これは傑作だった。

新宿の暴力団のボス菅井一郎は、最近の落ち目から麻薬の取引をすることになり、部下の水島道太郎にやらせる。

菅井の女は筑波久子で、当時(1959年)は日活のトップ女優だったが、いかにも腰軽なギャングの情婦にぴったりで、実は水島とできている。

                      

 

水島の子分でチンピラの川地民夫に手伝わせることにするが、彼は元は船員に憧れて上京してきた真面目な男で、バーの女稲垣美穂子と恋仲で、彼女は暴力団連中と手を切らせようとしている。

水島は、菅井の金を持って取引場所の箱根の山に行き、関西のギャングと麻薬を取引するが、水島は彼らを全部殺してしまい、現金と麻薬を取って逃亡する。

逃げた場所は、東京湾の島で、どうやら横須賀の猿島らしいが、今とはかなり形状が違う。

菅井は、海軍時代の戦友で殺し屋の宍戸錠に金を渡して、菅井をキャバレーで射殺させる。

最後、島に水島、宍戸、筑波、川地が集まり、さらに関西ギャングも来るが、その一人は後に鈴木清順作品によく出た長弘である。

宍戸と水島との銃撃戦では、音だけ聞こえて、二人の姿は見せず、宍戸が現れると花の匂いを嗅いで倒れて死ぬ。

あれ、どこかで見た映画だなと思うが、鈴木清順の名作『殺しの烙印』であり、この旧日本軍の軍事遺跡での銃撃戦といい、そっくりである。

鈴木は、野口のチーフ助監督だったこともあり、彼からの影響を言っているので、『殺しの烙印』のヒントの一つではないかと思えた。

撮影も永塚一栄で、音楽も山本直純と『殺しの烙印』のスタッフである。

もちろん、最後は水島、筑波は死に、関西やくざも警察に捕まり、川地は、稲垣美穂子の声に励まされて真面目に生きることが暗示されて終わる。

水島道太郎も菅井一郎も私のひいきの役者なので、見てるだけで楽しかった。

阿佐ヶ谷ラピュタ

 



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1 コメント

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水島道太郎 (弓子)
2017-01-25 10:09:24
映画は見たことなく、スチールからの水島さんは
渋くて理想のタイプの方でした。

YouTubeの「夜霧のブルース(ディックミネと水島道太郎)」で
玉置宏の司会で 水島さんが、あれこれ話され
夜霧のブルースを歌い、次にディックさんが歌ってましたが
その時の水島さん、83歳だったそうで、美声でビックリしました。

動いている水島さんを拝見したい時は
「上海帰りのリル」のYouTubeを のぞいていますが素敵です。
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