指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『ワイルド・バンチ』

2023年02月04日 | 映画

『明日に向かって撃て』を見たので、『ワイルド・バンチ』も見たくなり、久しぶりに見るが、やはり満足した。この話は、『明日に向かって撃て』の続編的内容で、「壁の穴強盗団」のその後なのである。

1913年の設定となっていて、南テキサスのある町、そこでは禁酒の集会が開かれていて、牧師が酒の害を叫んでいて、婦人会の連中が聞いていて、ついにはパレードに出る。

そのとき、ウイリアム・ホールデンのパイクを首領とする強盗団が、鉄道の事務所を襲って現金を奪おうとするところだった。

さらに、対岸のビルの屋上には、ロバート・ライアンのソーントンら、鉄道に雇われた賞金稼ぎの連中が襲撃を待っているところだった。

つまり、鉄道は現金輸送の噂を流して強盗団に襲わせて、一網打尽にしようとしていたのだ。

鉄道保安官は、ハリガンと、『明日に向かって撃て』の「ハリマンさん」を思わせる名になっているのが、笑える。

実は、このハリマンは、アメリカの鉄道王で、中国の南満州鉄道を買収することも計画し、来日したこともあるのだが、交渉はまとまらず、日本政府が経営することになったのである。

そして、強盗団と賞金稼ぎの間で、大銃撃戦となり、血が大いに流れ、それがスローモーションで表現される。街はずれでは、子供たちが、サソリとアリを火で焼いて、楽しんでいるが、これは何を意味するのだろうか。

さて、強盗を取り逃がして、ライアンは、ハリガンから再度追跡を命ぜられる。

「30日以内に捕まえなければ、お前も、また刑務所に戻すぞ!」

つまり、囚人を使って鉄道ギャングを捕縛しようとしているのだ。

実は、ライアンとホールデンは、昔は仲間だったこともあるのだ。

この辺の回想シーンも実に抒情的である。暴力的アクションを言われるサム・ペキンパーだが、その本質は抒情性だと私は思う。音楽も非常に抒情的で、カメラも大変に美しい。

そして、ホールデンらは、メキシコの村に逃れる。

そこでは、マパッチ将軍が支配していて、革命派のパンチョ・ビラと対立していて、マパッチにはドイツの将校団が着いていて、機関銃も出てくる。機関銃は、一次大戦中に出てきたと思うが、まあいい。

ここでは、車も出てきて、『明日に向かって撃て』の自転車と対照的である。

ホールデンらは、マパッチから情報を得て、米陸軍の武器を運ぶ鉄道からそれを奪う仕事を引き受ける。

列車には、ライアンらも乗っていて、ホールデンらに襲われると、すぐに追跡する。

途中で、川に掛けられた木製の橋があり、ライアンらが来ると、橋を爆破し、全員が川に落ちるシーンでも、スローモーションが使われて効果を上げている。

ホールデンの一味には、メキシコの反マパッチ派の若者もいて、彼に武器の一部を上げるが、バレて将軍らにリンチされる。

最後、ホールデンらの4人は、将軍らの余りのひどさに砦に行き、将軍に若者を返してもらう戦いを挑むことを決意する。

                   

この5人が、砦の売春宿を出て、全員が横一列で、将軍のところに向うシーンは、まるで『昭和残侠伝』の高倉健と池部良の殴り込みのシーンのようだ。

そして、ここでも大殺戮が展開されて、200人以上が殺される。

これでもかという血とスローモーションの大殺戮。

終わると、砦の門の外にライアンが屯していた。そこにホールデンの一味にいた老人がゲリラの連中とやってきた。

ライアンは、彼らに合流して去っていく。

エンドタイトルに「ラ・ゴンドリーナ」が流され、数々のシヨットが重ねられてエンド。

ここは、明らかに当時のベトナム戦争を思わせるラストシーンだったと思った。

 

 

コメント
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