指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『背後の人』

2020年11月11日 | 映画
1965年の松竹映画、原作は有馬頼義で、監督は八木美津夫。
この人監督は、特に評価されていないが、私は良いと思っている。
作家の池部良は、戦時中に妻の八木昌子を失い、自分も戦場で爆撃を受けて弾が体に入っていて、除去手術を受ける。
病院の看護婦は桑野みゆきで、互いに惚れあうようになる。
ところが、桑野と同居していて、病院で温湿布担当の岡田英次は、池部と付き合うなと言う。
だが、桑野は、「冬まで待ってくれ」という。
恋人同士かと思うとさにあらず、兄・妹なのだ。
そして、岡田は戦後の九州で、クリスマスの夜、家に乱入してきた母親を暴行しようとした米兵を刺し殺し、逃亡しているのだ。
あと、半月で時効という時なのである。
岡田は、池部が警察に通報すると誤解し病院を出て、江戸川あたりのボート小屋に潜む。彼は、風邪でひどい状況である。
桑野は、池部と共に、岡田を救い出して岡田の家に運ぶ。
だが、クリスマスイブの夜、岡田は死んでしまう。
池部と桑野は、別れるのがエンドで、この辺は松本清張と有馬の違いだろう。

松本には、同様の北九州で黒人兵に暴行された女性が、死体清浄で再会し、間接的だが「復讐」を遂げる『黒地の絵』があるが、有馬にはない。
桑野の看護婦の同僚で、路加奈子が出ているが、彼女は大ヒットのスキャンダル映画『白日夢』に出た後にこんな地味な映画にも出ていたとは驚き。

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