指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『父ちゃんのポーが聞こえる』

2019年12月05日 | 映画
1971年の東宝映画、監督は石田勝心、主演は小林桂樹と吉沢京子。
北海道の映画と思っていたが、タイトルに協力高岡市とあるので、北陸で撮影されたようだ。



国鉄のSLの運転手小林は、釜焚きの藤岡琢也とコンビで北陸を運転しているが、北陸線、七尾線、高山線などだろうか。
この二人のコンビがいつも、悪口を言い合っているが、仲が良いことが分かり、非常に面白い。SLは主にC56のようだ。

小林の妻は亡くなっていて、吉沢は「お父ちゃん子」である。ある日、二人は旅行に出るが、千葉の行川アイランドで、その宿は国鉄の施設である。
そのアイランドの中で、吉沢は転ぶ、家に戻って学校の中でも度々転び、ついに普通の中学から病院内の学校に転校する。
小林は、司葉子と再婚し、幸福な日常となるが、吉沢の病状を詳しく診察すると、ハンチントン舞踏病であることが分かる。
この病院も国鉄病院であり、当時国鉄は全国に様々な施設を持っていた。
私も、最初に脳梗塞で倒れた時、足の皮製の膝から下を被う義足を作ったが、それは新宿の国鉄病院だった。

そこにボランティアが絵を教えに来て、中の佐々木勝彦を好きになり、吉沢は初潮も迎える。
車椅子に吉沢を乗せ、二人は高岡のデパートに連れて行くが、今年閉鎖された高岡大和である。
佐々木は、言うまでもなく千秋稔の息子で、二枚目ではないが堅実な役者として、この時期東宝の若手スターの一員だった。
病状はさらに悪化し、学校内の教室では治療は無理とのことで、山奥の施設に移ることになる。
この辺の路線の近くで、そんなところがあるかと思うと高山線しかないと思うが、どこだろうか。
山の下がループになっていて、養護施設から、そのSLが通過するところが見え、小林は、そこを通過する時に汽笛を鳴らす。
ある日、小林は、司との夫婦喧嘩から前方不注意で、踏切に泊まっていたダンプカーにぶつかってしまい入院することになる。
小林の不在の機関車で、藤岡は運転手に頼んで、汽笛を鳴らしてもらう。
汽笛を聞く中で、吉沢は死んでいく。
非常に地味な話だが、石田は成瀬巳喜男の弟子らしく、悲劇を淡々と描いているのは良い。

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