私が50を過ぎてから転職した不動産会社は、従業員数が約40名なのだが、実在している役員は社長ただ一人で、その他は登記上だけのペーパー役員しか存在していなかった。まあこれは零細企業ではよくある常識であり、さほど驚くことではないのだが、何と言っても役職の構成がユニークだった。
私が入社する直前になって、経理部長という役職で募集していたにも拘らず、「申し訳ないが、貴方の実力が確認できるまでは、当面経理部次長として雇用したいのですが、了解してくれますか?」と念を押された。当然こちらも雇用してもらうという弱い立場なので、「承知しました」と言うよりなかった。
入社後にこの会社の組織図を見ると、社長の下に営業部・設計部・経理部が横並びで構成されているのだが、驚いたことに部長が一人も存在していないのだ。なんと営業部のトップと経理部のトップはともに次長であり、設計部は次長どころか、課長代理がトップだったのである。さらには課長代理や係長補佐がいるのに、課長も係長も存在していないのだ。つまり一言でいえば、部長・課長・係長などのまっとうな役職は存在せず、副職者だけで固められていたのである。
こんな小さな会社で、こんなに小さく役職を刻んでどうしようと言うのだろうか。はじめはそう思ったのだが、よくよく考えてみると、常に次の役職をチラつかせて、従業員のモチベーションを鍛えていたのかもしれない。とどのつまり、社長のしたたかな従業員操縦術だったのであろう。
作:蔵研人
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