経理・経理・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです

特定配当等の住民税申告不要制度廃止

2024-01-15 12:04:33 | 一口メモ

 上場会社の株式配当金を受け取ると、所得税15.315%と住民税5%の合計20.315%が源泉徴収されているはずである。またこれらは確定申告しなくても良いのだが、他の所得が少ない場合などには、申告することにより既に天引きされている税金の一部または全額が戻ってくる場合がある。
 まあそこまでは誰でも承知の助かもしれない……。ところが例え税金が全額戻ってきても、社会保険料の算定などに影響して、保険料が跳ね上がったり、給付金の支給対象から除外されたりすることがあるのだ。それでせっかく税金が還付されると分かっていながら、泣く泣く株式配当金を確定申告から除外してしまう人もいた。

 そんな不都合を払拭するために、2017年の税制改正によって「所得税は総合課税、又は申告分離課税」、「住民税は申告不要制度を活用する」等、所得税と住民税で異なる課税方法を選択することが可能であった。それで年金所得以外に僅かな配当所得がある私も、毎年の確定申告でこの便利な制度を利用していた。
 ところが2023年分の確定申告からこの制度が廃止になると言うのである。これではうっかり分離課税の配当所得を申告してしまうと、大変なことにならないだろうか。だからと言って申告しなければ源泉徴収された税金が1円も戻ってこない。

 それならば配当金を申告したほうが得なのか損なのかを、超精密シュミレーションしてみるしかないであろう。と考えて、いままで大雑把であった住民税、国民健康保険税、介護保険料の仕組みを懸命に学ぶことにしたのである。勉強方法はネットや市役所が作成している税務等の手引き書、それでもよく分からない場合は役所に電話して確認してみた。それにしても、それぞれの計算のもとになる所得の考え方がバラバラかつ複雑怪奇であることだけは分かった。
 さてそれからその勉強成果を踏まえて、エクセルでシュミレーションプログラムを作成してみたのである。結果的に私の場合は、配当金を申告したとしても、国民健康保険税はアップするものの、介護保険料はギリギリ従来と同額に収まったため、還付される税金のほうが若干多いことが判明した。
 ただもしかすると見落としや勘違いがあるかもしれない。だがそれを恐れていては毎年損を繰り返すことになるかもしれないので、思い切って本年度分は配当金も含めて申告してみることにした。万一見落としがあって損をしたとしたら、翌年から配当金の申告は除外すれば良いのだから……。

 それにしてもどうして政府は2017年に改正したばかりの便利な制度を、僅か5年で廃止にしてしまったのだろうか。表向きは国税・地方税を同一の課税方式で統一するためと謳ってはいるのだが、もしかすると、これにより源泉所得税の還付を減らそうと考えたのではないだろうか。
 もしも本当に課税方式を統一したいのなら、まずは国税と地方税の所得控除などを同一にすべきであろう。さらには国民健康保険税や介護保険料の算定に用いる所得概念も統一すべきである。そうしてデーターを一元化してコンピーターで運用すれば、どれだけ役人たちの人件費が節約できることか。いずれにせよ所得税・住民税・社会保険料の算定方法をチマチマといじくりまわさず、シンプルな仕組みに改善して欲しいものである。
 
作:蔵研人

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