風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

いまどきの若者

2010-07-11 17:32:40 | ほのぼの
 三丁目で下りるところを、乗り過ごしてしまった。
 義姉の入院している病院へは、何度か来ているが、下りたバス停が違うので、ちょっと迷った。
 通りかかった、旅行用のカートを引いた若い女性に道を尋ねた。
 立ち止まって、ちょっと、考える顔をした彼女は、ついて来てください、と歩きはじめた。
 ご旅行でしたか? と訊くと、ええ、壱岐まで行ってきました、という。何か美味しいものがありましたか……、あ、雲丹とかサザエですね、という会話があった。
 道を曲がったところで、彼女は携帯電話を取り出した。
 それまで機嫌よく喋っていた彼女は、急に黙ってしまい、歩きながら、一心に携帯の画面を眺めた。
 メールかあ、と思った。ま、いまどきの若者だものね、それに、こちらは、連れというわけではないから、彼女が、会話を中断してメールをしたって、咎める筋じゃないものね、とひたすら彼女の後ろを歩いた。
 また、角を曲がった。
 あ、ありました、あれです、と彼女は携帯から目をあげて、目的の病院を指さした。
 彼女は、たまたま道を尋ねたばあさんに、親切に、携帯で検索しながら病院まで案内をしてくれたのである。
 ありがとう、そして、どうもすみませんでした。


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