バアチャンのいる郷里は廃坑の町で、若者に働く場所はない。
わたしは東京を捨てて福岡へ来たが、バアチャンもまた息子一家と暮らすために
故郷を捨てて福岡へ来た。新しい家で、家族のはじまりであった。
すでにこのときバアチャンは85歳。
室内をよちよち歩き、這いつくばって便所まで通った。当然、汚す。
上から下まで着換えさせ、洗濯がすんだとほっとしても、また汚す。
着物の裾についた汚物で床を引きずる。
優しいヨメさんでいられるわけもなく、わたしがヒステリーがおこす。
そのとき、バアチャンが言ったものである。
「誰でも齢をとればこげんなると、あんたも今にわかる」
あれからあっという間の50年。わたしもあのころのバアチャンの齢にちかづいた。
誰でも齢をとりこげんなる、まさに名言であった。
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