風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

誰でもこげんなる (バアチャンの迷言)

2019-01-08 10:42:45 | 家族

 バアチャンのいる郷里は廃坑の町で、若者に働く場所はない。

わたしは東京を捨てて福岡へ来たが、バアチャンもまた息子一家と暮らすために

故郷を捨てて福岡へ来た。新しい家で、家族のはじまりであった。

 すでにこのときバアチャンは85歳。

室内をよちよち歩き、這いつくばって便所まで通った。当然、汚す。

上から下まで着換えさせ、洗濯がすんだとほっとしても、また汚す。

着物の裾についた汚物で床を引きずる。

優しいヨメさんでいられるわけもなく、わたしがヒステリーがおこす。

そのとき、バアチャンが言ったものである。

「誰でも齢をとればこげんなると、あんたも今にわかる」

 あれからあっという間の50年。わたしもあのころのバアチャンの齢にちかづいた。

 誰でも齢をとりこげんなる、まさに名言であった。

 

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