君子蘭愛した友は遠く逝き
燃えるようなオレンジ色の君子蘭は狭い鉢のなかでもつぎつぎ株をふやした。
来るたびに、これ私好き、きれいだな、いいなあ、と言う友人に、それほどいうなら上げるよと言った。
彼女はいそいそと持ち帰ったが、つぎのシーズンには花付きが悪く、あっという間に枯れてしまった。
なんだかこちらの責任のように感じて、わざわざ新しく買った鉢をふたたび届けたが、二度目も育たなかった。
その後、彼女は体調を崩し、疎遠になったあと、数年まえ、ご主人の名前で訃報の知らせがあった。
君子蘭を見るたびに、彼女の、いいなあ、これ好きというあの笑顔を思いだす。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます