目下のところまずまず健康である。
かかりつけの医師のところには、ごくたまに、消化薬を貰ったり、血圧を測ってもらいに行く。
「どうですか?」
「おかげさまで、なんともないんですが、たまには先生の顔を拝見したくて」
風子ばあさんは正直者だから、具合が悪くないのに、悪いとは言えない。
「せっかくそこまで来たんで、ついでに消化薬でも頂いていこうかと思いまして」
先生は、とたんに嫌な顔をなさる。
あわてて、
「いえ、ちょっと食べ過ぎて胃がもたれるんです」
などと言い訳を言う。
先日、珍しく風邪をひいた。 鼻水が出て喉が痛んだ。
しょぼくれた顔で先生の前に座ったら、
「口をあ~んして……」
先生はひどく機嫌がよくて、
「あ、腫れてる腫れてる……」
と、やけに嬉しそうだった。
もっと重症なら、もっと嬉しそうな顔をするのかもしれない、
それがプロというものかもしれないと、ちょっとひがんで帰ってきた。
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