夜はホテルの最上階のバーラウンジで
カクテルを飲みながらソウルの夜景を眺めた。
ユウトくんとわたしはノンアルコールのカクテルを頼んだ。
ユウトくん一家はいまオーストラリアに居住し、
ダンナは仕事で韓国と日本を往き来している。中国語も堪能だそうである。
まだ未成年のユウトくんの国籍は日本と韓国の両方にある、
成年になったらどちらか片方を選ばないといけないらしい。
ユウトくんの祖父である弟は、徴兵制のない日本国籍にしろよと言っている。
しかし、これには父親が反対らしい。
兵役は当然のこととして彼も学生のうちにすませたそうである。
日本に暮らすわたしたちは、青春の一番大事な時期を2年間も兵役で過ごすなんて、
と思うが、ユウトくんの父親によると、それは違うそうである。
生まれたときから誰もが果たさねばならない義務と思っていて、
軍隊の集団生活によって培われた逞しさがその後の人生にプラスになるのだという。
海兵隊が人気だが、希望して誰でも入れるわけではない。
入隊前には適性検査があるそうで、ちなみにユウトくんの父親は海兵隊出身であるという。
短い旅の一夜、軍隊を持たない国の人間と、
今も軍事境界線があり兵役を済ませたという彼との話題にしては、難しく微妙な話である。
差し迫った愛息子の将来を真剣に思わぬ親はおるまい、
おかれた立場も状況も違うわたしたちが軽率な意見を述べるべきではないと
わたしは口をつぐんだ。
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