福岡県の53自治体の中で、図書購入費が一番低いのが福岡市だと聞いて、
随分待たされることへの納得がいった。
この本も、忘れたころに貸出オーケーを知らせてきた。
あまりの分厚さに、期間中に読みおおせるかと心配したが、
面白くて、久々に首が痛くなるくらい夢中で読んだ。
時は日中戦争のさなか、舞台は上海。
主人公は工部局公安課勤務の警察官、芹沢一郎。
ふとしたことから陸軍参謀本部の嘉山少佐にはめられて
上海の黒幕との橋渡しをさせられる。
阿片中毒の元女優の黒幕の妻、ロシア人の男色美少年。
長い物語の紹介は出来ないが、これだけの人物が登城して面白くないはずがない。
いきがかり上、二人を殺し、殺人犯として追われる身になった芹沢だが、
戦後も生きのびたエピローグまで一気に読んだ。
国家は国民の財産も命も徴用してよいという国家総動員法が本会議で、
可決された昭和13年前後の話で、国民の代表で構成される議会が承認したのだから、
国民総意の総力戦に突入したということになる。
歴史は繰り返す……にならねばよいのだが、と孫や子の行く末を案じる昨今である。
新潮社 5400円