家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

住宅情報におけるInformationとIntelligenceを意識する

2008年04月27日 | 家について思ったことなど
書籍・雑誌やインターネット、あるいは直接会って住宅関連業界人が発する情報を見聞するとき、以下のような点に注意したい。
・ライバル業態・業者の成功事例を無視し、失敗事例を選んでその業態・業者を語っていないか
・ライバル業態に属するレベルの低い業者を例に出して、その業態全体を語ってはいないか
・自分たち以外の複数のライバル業態・業者の失敗例をまぜこぜにして語っていないか
・ライバル業態・業者との成功事例を特殊なパターンのように語っていないか(例えば、施主が真実を知らないから成功したと勘違いしているだけ、施主が普通でないというだけ、特段おかしくはないが余計に金をかけすぎている、とか)

情報という言葉は意外と意味が漠然としている。
しかし英語では情報といってもインフォメーション(information)とインテリジェンス(intellgence)に分かれ、もう少し明確になっている。
おおづかみに説明すると、インフォメーションは、そこにある厳然たる事実を表したもので、インテリジェンスはインフォメーションを分析して組み立てた戦略のことである(※)。
<インフォメーションとインテリジェンスの関係についての簡単な例>
上昇しそうだった金利はむしろ低下傾向にある(インフォメーション)
不動産は値下がり傾向である(インフォメーション)
 ↓
マンションを買うのはもう少し様子をみてからでいい(インテリジェンス)

インフォメーションの正誤を判定するのは比較的たやすいが、インテリジェンスの正誤判定はけっこう難しい。ものによっては意思決定者の制約や意思決定時間の違いによって正誤が変わったりすることもある。
情報発信者が、敵対する陣営に関し、第三者向けに流す情報について注意すべきことは、提示されたインフォメーションにウソはない場合でも、提示されたインテリジェンスが正しいとは言いきれないことである。
業者サイドが発信する情報は多かれ少なかれ以下のような傾向がある。
A:「自分達の成功例というインフォメーションを提供しながら、自分達を選んだほうがいいというインテリジェンスを提示する」
B:「敵対陣営の失敗例というインフォメーションを提供しながら敵対陣営を選ぶべきではないというインテリジェンスを提示する」
提示するインテリジェンスありきでインフォメーションを選び出している、と言えなくもないわけである。
分析に使われたインフォメーションの選び方に偏りがあるインテリジェンスをまともに受け止めると、情報の受け手はミスリードされるリスクがある。
したがって依頼先を選ぶ側としては、依頼先候補が提示していないインフォメーション(依頼先候補あるいは同種組織の失敗例、敵対者・業界の成功例)を探して見つけ出し、自分なりのインテリジェンスを組み立てることが重要なのだ。

ビジネスで顧客を自分の陣営に引き込もうとしたら、競合している相手への批判的な言動(上記Bのインテリジェンス)が出てくるのはいたしかたない。その指摘が当たっていることだって少なくないし、そういう言動をすること自体を声高に非難するつもりはない。
しかし、そのことに異様に力を入れている業者の情報はちょっと問題があると思われる。情報の裏に下記の項目のいずれか、あるいは複合した背景があるのではないかと疑ってみてもいい。
①競合が激しくて余裕がなくなっている
 実力に乏しい業者ほど「口撃」という手段に訴えようとするものである。逆に口達者な業者にお客が集まっているのが悔しくて、つい口撃で対抗することも。
②(邪教から一般人を救おうと考える)宗教的正義感による行動
 例えば、自分達のやり方が最高のやり方だと自信がある業者が、思ったように主流化しないことがおかしいと思い始め、他者を糾弾することで世間を啓蒙しようとしている、というようなこと。そのほかには、自分達の基準ではカルトだと思っている業者・業態が世間的に印象良く取り上げられていることに対し警鐘を発したくなっている、というようなこと
③ライバル業態になびく人々の性質が気に入らず、機会があれば批判を言わずにいられなくなっている
 例えば○○ファンの気質が嫌いな△△業界人が○○というカテゴリを見下すような行為(「○○」と「△△」の項目を、「ハウスメーカー」だの「建築家」だの「工務店」だの「分譲マンション」だのいろいろ組み替えながら置き換えてみるといい)。そもそもファンの気質が一律であるとみなすのはなんとも短絡的なのだが…。

情報発信者に上記のような背景がある場合、提示されたインテリジェンスの有効性はよくよく考えて判断すべきである。敵対者に対する憎悪や差別意識までインテリジェンスの内容に反映している可能性が高い。
とくに掲示板系の情報はそういうことを意識して読んだほうがいい。2chのように発言者の行儀の悪さが認知されているところばかりではなく、その他の普通の掲示板でも業界人と思われる論評はよく見かけ、上記のような背景がうかがえる発言は少なくない。
掲示板に限らず、こぞって批判的な発言を繰り返している場所・場面は「サイバーカスケード化」を意識しながら冷静に眺めたほうがミスリードされにくだろう。
ただそういう場所でも、提示されたインテリジェンスはともかく、パーツとして盛り込まれたインフォメーションが事実であることだってあるわけだ(関連エントリ→)。

情報を有効に使うには、リテラシーを意識しながら、役に立つ情報を丹念に拾い出して自分が判断することが肝要である。

さらにいえば、「百聞は一見にしかず」。
役に立ちそうなテキスト情報を拾い出したとて、リアルな場面に赴いて接する生の情報のほうがもっと大事だ。

(※)informationとintelligenceに関する本質的な考え方に興味がある人は↓がオススメ。
NED-WLT「重要度を増すinformationとintelligenceの違いに関して


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