「川柳教室に通うことになったから、バッグを作ってくれないか」
父からそんな依頼が飛び込んできた。
小ぶりで、茶色という色合いと柔らかな革を使う、という程度の非常にシンプルな要件なので、構造面であまり悩むことはない。
年齢的におかしくないデザインにすることを考えて製作した。
材料は以前フリーマーケットで購入していたもの。あやしいオジサンが山積みにしていた革である。
半裁で1000円という格安な革だった。中国から仕入れてきたという。オジサン自身は革のことを良く知らず、牛革であるのはまちがいないが詳細は良く分からない。身内の依頼品なので、こうした革を使うチャンスだった。
やりほうだいのついでに「じいちゃんのおけいこバッグ」と名付けた。本人は知るよしもない。