「入試問題実践テストの意味」
団では受験する子のために、また受験しなくても、中学進学時に同レベル以上の学力を身につけて送り出したいので、冬期講習も行います。冬期講習は団員諸君の志望校、また同等以上の入試問題を利用し、各科目・各単元の全体的なバランスや問題レベル・問題内容を考え、同条件で入試実践テストを行っています。
実践テストをする大きな意味のひとつは、受験のときに、ふだんの実力を十分発揮できるようにできるだけ平常心に近い精神状態で受験させたいという思いからです。まだ塾を始める前、長男の受験指導をしていて、「手が動かなかった」と青い顔をして出てきた姿を忘れることができません。受験場での緊張感「退治」には、「できる限りの努力をしたという確認(不合格であれば、その努力が足りなかったという真理に向かい、次に備える)」と「試験という特異な状況に対する慣れ」。指導すべき最善の対処法です。
14回の入試実践テスト。入試問題選択基準は、志望校と、やや難度の高い学校のテスト。「どの時期にどこの問題をテストするか」毎年スケジュールを組み立てます。
まず難度の高い学校の問題からはじめ、その時期に団のOBが受験したのと同一問題を使い、個人の最終の学力把握に役立てます。その結果が受験までの学習指導の大きなポイントになります。講習中盤から各年度の団員の実力・志望校に応じた過去問を、難易度・問題傾向・バランスを見ながらテストし、実戦の勘を養います。
なお、団では授業中あるいはテスト中、時計などを見ないよう指導しています。教室にも時計はありません。チラチラ時計を気にしながら集中できるとは思えません。授業には目いっぱいの集中力が必要です。
そうした日々と、毎月の学力コンクールや今回のような冬期講習の入試実践テストを通じて、子どもたちは、テスト時間をきちんと「感じられる」ようになってきます。「時間内」に力を十分発揮することができるようになるわけです。
入試直前、最後の実践テストは、「少しやさしめの学校の入試問題」です。このレベルは一回だけです。やさしい問題をたくさんやっても、精神状態(心の構え)にはよくありません。少し緊張感がほぐれ、心の余裕ができれば、それで十分です。必要なのは適度の緊張感です。
もちろん、これら実践テストをして終わりではなく、明らかになった、理解の行き届いていない個所や不得意部分に対して、別のプリントを用意し、スクランブル授業も行います。こうして不足部分を補っていくわけです。
さて、大手の受験塾の一年間の授業料は120~150万円(!)と高額(うらやましい)のようですが、受験指導は家庭だけでも十分(以上)可能です。「要」はその方法と学体力の養成です。
期間は二年間もあれば十分、もし難易度の高くない学校なら一年でも十分です。もちろん、いつもお話ししている、「人の話をきちんと聞ける」、「やるべきことをやれる」、「少し我慢ができる」等の「基本的な躾や習慣が整っていれば」ですが。「がまんが出来ない」・「好きなことしかしない」というレベルではだめです。
受験塾のバカ高い授業料不要、お父さん・お母さんでもできる「受験のための家庭学習」のノウハウを、この「夢の教科書」のシリーズが終わった後紹介します。
入試直前学習の参考に― 総評例
2017年度入試実践テスト第5回「T中学校平成14年英数コース」総評
人数が少ないので、実力を明確に判断したいとき、OB諸君との実力比較をよく試みます。今回もその一環です。平成14年度のT中学の英数コースの問題を使用しました。
このテストは京大大学院へ進んで現在ベトナムで言語の発生の研究をしているY君(西大和学園から京都大学)らをテストした時のものです。なおY君は、別紙成績表のように、合計で311点取っています。この時同じくテストを受けたK・T君は清風標準に合格しています(それぞれ237点・220点)。得点比較の参考にしてください。
なお、同学年のTA君は近大附属、5年生特進のYO君は奈良学園から阪大歯学部、KIさんは四天王寺、G君は清風理数合格です。子どもたちの学力面の確実な潜在能力把握は、以前から何度も紹介していますが、6年生の夏休み頃になると、はっきりわかります。
それは学習事項の難易度が上がり、長文が増え、学習ボリュームが大きくなると、それらをきちんと整理する処理能力、つまり能力のキャパシティが明らかになってくるからです。
簡単な計算や文章の問題では分からなかった、ある意味、シビアな現実が明らかになります。成績が頭打ち、あるいは逆に下がってしまう場合もあります。
5年生のKA君は「K」に通っていて、「国語が苦手」という感覚で入団しました。ところが、話をしたり、国語の授業の手ごたえから見ると、決して国語の能力が低いことはありません。「まったく問題ありません」と、入学後すぐお母さんに伝えましたが、この結果を見て予想通りであることがわかっていただけると思います。残念なことに、塾が「しょぼかった」というわけです。
全受験者の平均点(91点)をご覧いただくとわかるように、5年生では、そのKA君くらいが「ふつうの得点」だと考えてください。昨日も伝えましたが、6年の諸君は、現在の国語の力から見て、中学進学後の読書量と学習姿勢・学習量によって、今後(中学進学以降)の成績が大きく左右されると思います。おもしろい本をどんどん読んでください。Hな本でもいいよ(時々は)。
2017年度入試実践テスト第6回「N学園中学校平成29年C日程」総評
今年のN学園のC日程のテストです。
近年はあまりなかったのですが、上位二人は受験前のボリュームに、少しアップアップしている様子です(YA君は真剣さが足りません。点数にあらわれているように、勉強や受験を甘く見過ぎです。「気分屋でペースを維持できない」、「好きなことしかしない」など、心構えや態度など、進学や受験以前に学習する生徒としてたいせつなことを学ぶことが必要です)。
「アップアップ」とは、頭のなかの情報が整理しきれず(これは個人差があり不可抗力です)、なかなかクリアな頭で論理的に解答に向かえない状況になっているような場合を云います。昨日も書きましたが、わかりやすくいえば、たとえば、「散らかし放題」にしてしまった部屋があるとします。やることや片付けるものが多すぎて、集中することができない。手を付けられない。何から手を付けていいか纏まらないうちに、時間が過ぎてしまう。そんな状態です。
F君は「このテストはテスト済み」のようで、参考成績です。しかし、それにしてはテスト後の見直しが、全く機能していません。特に、算数は一度やった受験校の問題は全問正解しないとだめです。漢字も、この時期は一度出れば、その漢字は必ず覚えていくという厳密さが大切です。
これからはバタバタしても、しょうがないですから、まずテストに出た問題は一つずつ、すべて答えられるようにすることが最重要事です。また漢字の宿題は受験まできちんと続けないと、勘が鈍ります。
昨日のT中学の結果報告で、4年生のTさんとYOさんのこと(国語)に触れましたが、今日同一条件で同一テストをしました。その結果報告を団員諸君に渡していますので、参考にご覧ください。
6年生・4年生国語学力比較参考資料
このテストは、4年生「充実特進」の女の子が二人いるのですが、国語がよくできるので、「ぼくの指導の手ごたえ」から、彼女たちは80点くらいとるだろうと予測して子どもたちに伝えていたテスト結果です。
26日実施。参考テストです。漢字が、まだ蓄積していないため、合計点数は80に届かなかったですが、読解力は6年生をそれぞれ約20点凌駕しています。こういうふうに国語の点数がとれる場合は、算数の方も、指導とトレーニングによって高い得点がとれるという「めど」が立ちます。ところが逆の場合は、そういうふうにはいきません。つまり、「算数はできるが国語が・・・」という場合は、その克服ははるかに難しくなります。
漢字をできるだけ早く学習しなければならない、たいせつな意味
漢字学習の大切さについては、何度もお伝えしています。子どもたちやお母さん方にも、口酸っぱくアドバイスしてますが、「漢字学習とどうかかわってくるか」、くわしくお話しします。「なぜ漢字の習得は早い方がいいか」、その意味です。
以前日本初のノーベル賞学者湯川秀樹博士の幼年時代、おじいさんとの「素読」で漢文学習したことを伝えました。湯川博士はそのころを辛かったけれど、漢字に対しては(つまり、読むことは)まったく苦労しなかったと振り返っていました。
「意味の関連がとらえられない丸暗記」でも、幼い子は、幼いがゆえにそれほど苦労もなく、おもしろがって覚えてしまうのは(たとえば駅名の暗記など)、広く知られていることです。そういう意味から云えば、かつての素読の訓練は理にかなっていたのでしょう。
たとえば、中学入試で使われる問題文のなかの、小学校高学年(以上)で出てくる漢字をすべて、「黒塗り」してみてください。いかに文章の意味が取れないかが、よくわかると思います。また、英語の不得意な人・ボキャブラリー不足の人が英文を見せられ、「読んでください」と云われたとしましょう。頑張って読もうとしても、手も足も出ないはずです。そのうちに、「こんなことやってられない」となるか、あきらめてしまうでしょう。「漢字不足で読めない子の精神状態」は、そのように想像すれば手に取るようにわかるのではないでしょうか。
中学入試くらいの難度の問題文になれば、国語に限らず、どの科目を学習しても、そうした「漢字のハードル」が待ち構えているはずです。「読解力は、文章を繰り返し読んでこそ身につくもの」なのに、そのはるか以前の段階で、「飛び越えられないハードル」があり、「競技にさえ参加できない」わけです。
「文字のストレス」がなくなってはじめて、読み続け読み重ねることができます。読解力が身につきます。「漢字が読めないと、読解トレーニングそのものができない」、いわば「練習」でさえ嫌になってしまうわけです。こういう意味から、最低、小学校学習漢字については、できるだけ早い段階で身につけておくことがベストです。
受験レベルの難易度が上がると、条件や解答までの道筋がとらえにくい、さらに「意地の悪い?」文章を読まなければならなくなります。読むことに慣れてなくて苦手な子は、読んで考えるまでいくことが、まずできません。つまり、漢字がわからないことで、手も足も出なくなります。「『練習』できない、練習以前のハードルや障害を先に取り外しておかないと」『打つ手』がありません。
漢字の習得如何は、このように「漢字の問題(書き取り)」だけでは決して終わりません。読解力の深化にまで大きく影響するわけです。