『子供たちにとっての本当の教科書とは何か』 ★学習探偵団の挑戦★

生きているとは学んでいること、環覚と学体力を育てることの大切さ、「今様寺子屋」を実践、フォアグラ受験塾の弊害

「学体力」は偏差値を超克する④

2013年09月28日 | 学ぶ

 表③Bを再録します。この表は京大・阪大以外、医科系や難関国公立大学へ進んだ子たちの六年生時の偏差値を日能研偏差値に比定したものです。昨年度神戸大学合格OBの六年生当時の偏差値は39(日能研換算)、札幌医大に進んだOBも39(同)です。 このように日能研の偏差値では最低ランクにも近い子たちが、高校を卒業するころになれば確固とした学力を培い、神戸大や札幌医大・奈良県立医大などに合格しました
 進学中学はK大附属・U学園また近隣の公立中学等と、決してトップクラスの中高一貫進学校に進んだ子たちではありません。参考のために今年(平成25年)のU学園(③C)とK大附属(③D)の進学実績をホームページ発表分から紹介します。
 なお、後日の難関中高一貫校の実績分析のときにも述べますが、「大学受験者総数」を公表しない合格実績はあまり意味がありません。100人で50人合格するのと、800人の中から50人合格とでは大きなちがいがあります。
 難関大学合格を披露するのであれば、受験者総数も併記するのが誠実ではないでしょうか。その点、今回の両校は卒業生総数(入試受験者数)を記載していますので良心的です。

偏差値39から札幌医大へ
 まず、札幌医大に進んだOB(仮名・S君)の出身校U学園の今年(平成25年)の大学進学状況ですが、発表では受験者は442名、また国公立大学合格者数は③Cの通りです。

 東大・京大進学は見られず、大阪大学が3名(内過年度1名)、後は地方大学で国立計10名、また公立大学は8名、国公立計18名です。大学受験者全体に占める国公立大学合格者の割合は約4.1パーセントという状況です。
 S君が札幌医大に進んだのは約6年前で、U学園の大学進学成績は今より少し良かったかもしれませんが、国公立大学医科系の難易度は一説では京大にも匹敵すると聞いたことがあります。進路指導や受験経験のある先生ならよくわかると思いますが、相当以上の学力の裏付けが必要です。S君は大学受験時にはU学園ではトップクラスの学力をつけたことがわかると思います
 入団が遅かったので中学受験前は1年弱しか指導できなかったのですが、中学時代の3年間、OB教室でしっかり「学体力」を身につけてくれました。S君は日本語以外を母国語とする小学校で、国語の授業が圧倒的に少ないというハンディもありました。日能研換算では約39という偏差値の「差?」を六年間で超克しての札幌医大進学です。小学校で偏差値70を超える難関中学に進学した諸君にも十分匹敵する成長ぶりではないでしょうか。
もうひとり同じく39という偏差値から昨年神戸大に進学したOBに、T君がいます

偏差値39から神戸大へ
 T君の出身校、K大附属の進学実績は③Dです。

 平成25年の卒業生総数が955名。東大合格者はなく、京大2名(内1名は過年度)、大阪大学は15名(内2名は過年度)です。今年の受験結果で、「予備校他」の欄に約60名いますので、大学受験者総数は過年度受験者数もふくめると約1000名(以上)だと考えられます。概算では京大・阪大合格者が大学受験者総数に占める割合は約1.7パーセント。また国公立大学合格者は164名(内過年度は33名)。16.4パーセントです。後日、奈良や大阪の私立中高一貫のトップ校の進学成績を紹介しますが、K大附属も進学成績だけからすれば、中堅下位の進学校でしょう。

   

 T君が受験した平成24年に、東京大・京都大・大阪大に彼が合格した神戸大をくわえた合格者数は29名です。受験者総数(約1000名)が分母の割合では、およそ2.9パーセントになります。入学時日能研換算で39という偏差値だったT君は、最終的には上位3パーセントまで学力を上げ、六カ年一貫難関私立中学進学者に引けをとらない学力を身につけたということになります上の表のその他の国公立大学合格者の出身校にも着目してください。「学力の伸長と充実にもっともたいせつなこと」は「必ずしも有名進学校に行くことではない」ことがよくわかると思います

 学力の伸長や充実に必要なことは、「受験のみに特化した学校へ進学すること」でも「フォアグラ学習を続けること」でもありません。そして、子どもたちの学力や能力は小学受験や中学受験時の、「一時の偏差値」では計ることができません。つまり、「難関中学受験に失敗したから」、あるいは「公立しか行ってないから」という言い訳には理由が無く、コンプレックスも必要ありません。
 従来の受験環境しか頭にない人にとっては想像もできないことかもしれません。しかし不思議でも何でもありません。子どもたちが「ほんとうにたいせつなもの」がわかり、「たいせつなこと」を身につければ、大学受験など恐るるに足りません。

「学習探偵団OB」大学進学実績補遺
 参考のために、小学生のときに入団し、OB教室を経て大学進学をした諸君の実績を先ほどのK大附属とU学園と同じように分析しておきます。

 

①の表を参考にごらんください。
 団で一期生から八期生まで2012年までのOB教室受講生は先述のように26名です。彼等は在籍年数を見ていただくとわかるように、小学校から中学校、そして高校までと、ぼくが伝えたいことを、ほとんど伝えることができた、そして理解してくれた諸君たちです。その子たちの成績です(OB教室を受講していない諸君にも神戸大学や大阪府立大学進学者がいますが、途中退塾者とともに計数しておりません)。
  国公立大学合格者は13名。京都大学3名・大阪大学3名・佐賀大学医学部1名・札幌医大1名・奈良県立医大1名・神戸大学1名・広島大学1名・大阪府立大学1名・大阪市立大学1名で国公立大学合格者はちょうど50パーセントです。うち京都大学・大阪大学合格者は6名で23.1パーセント、同じく医歯科系は5名で約19.2パーセントです。
 次週から、これらの数値を全国トップレベルの私立中高一貫進学校と比較します。小学校時代からガンガン受験勉強漬けにして合格したのはよいが、それ以降の創造性や夢・活力が残っている子がほとんどいなくなっていることが、世界での「日本の大学のすさまじい評価の下落」につながっているとは考えられないでしょうか。

 さて、二週にわたっての報告で、難関大に合格した団のOB諸君が受験用の小学校に通っていたり、特別の受験指導を行ったりしたわけではないことは理解していただけたと思います。「やんちゃ」で元気な子どもらしい小学生時代を送り、指導者一人、下町の小さな個人塾で育ってそれぞれ中学校に進み、週一回のOB教室で、個人に応じて指導した学習を進めた結果です。

 教職課程を終えたわけではなく、教職経験の一度もない「下町の頑固親父」にできたことが、専門の指導を受け教職経験豊富な先生方にできないわけはないと思います。先生方、そしてお父さん・お母さん、ぜひ、燃え尽きず大きな夢を抱きつづける素晴らしい子どもたちを育ててください。

 

 


「学体力」は偏差値を超克する③

2013年09月21日 | 学ぶ

 OB教室を経て難関国公立大学に進んだOB13名の成績内容と学力の進み方について、今までくわしく説明できませんでした。より多くの方に指導法や成長のようすについて理解していただくため、先週、K君を紹介しました。

 よい機会ですので、学力を飛躍的に伸ばした他のOB教室卒業生諸君について説明を補足します。成績や進学実績の判断は目先の数値にのみ眼を奪われがちですが、提示する資料をぜひ精査してください。わかりやすいように資料には番号を併記しておきます。
 何かと負担や束縛の多い小学校受験をさせ、以前例に挙げたような「フォアグラ学習」の道を進む必要があるのか、もう一度考えてみてください。
 その期間や時間に、もっと知っておくべきこと・見ておくべきこと・身につけるべき必要のあることがないのか? 「受験専門校に合格できた意味」以上に犠牲になってしまっていることが、ほんとうはたくさんあるのではないか? 「合格できたこと」以上に豊かな可能性を秘めた子どもたちの「未来の夢」を消滅させている危惧(おそれ)はないのか? それらを冷静に振り返っていただけることを願っています。

「学体力の養成」が将来の学力開花の基盤
 まず①の資料です。

 これらはOB教室まで学んでくれた全26名のうち13名の大学進学成績です。受講した半数が、京都大学3名・大阪大学3名(青枠)を始め、神戸大学、広島大学、札幌医科大学、奈良県立医大、佐賀大学医学部など難関国公立大学へ合格しました。
 彼らのなかには中学受験用私立小学校(小学校受験)の生徒は一人もいません。いずれも近隣の公立小学校の生徒です。大手進学塾のように選抜試験を経て特別クラスを編成し、指導をしたわけではありません。
 次に進学中学を見てください。それぞれバラエティに富んでいることがわかると思います。彼らはすべて、小学生時に「無試験」で入団、個人塾なので指導はぼく一人、単一クラスでの合同授業です。大学受験指導に長けた特定の学校に進んだ子たちだけではありません。「尻すぼみ」ではなく、いずれも成長にともない花開く力を身につけたことがわかるとおもいます。いつ、どこで身についたのか、想像していただけるのではないでしょうか。
 授業スケジュールは①Aの要領です。指導もぼくが考える「当然のこと」をしているだけです。

 当然の約束「日々の宿題をきちんとすること」。そして「学ぶことのたいせつさ・学ぶおもしろさがわかること」が大きな目標です。それがわからないと、次のステップである「自ら学んでいける力」―「学体力」が育たないからです。
 それらを獲得するには、「学習内容はテキストのなかのこと」という感覚のままではかないません。学習内容は「自らの環境の抽象であること」、また「身近な問題であること」という「学習に対する親近感」が育たなくてはなりません。それを養うための立体授業であり、体験学習なのです。「環覚」の養成です
 つまり、ぼくが行っていることは、指導側の意識を少し変えれば誰にでもできることです。しかし、結果を見ていただくとわかるように、子どもたちの隠れた力を開花させるためには、確実に効果のある方法です。子どもたちのために、ぜひ検討してみてください。

偏差値が50以下の京大・阪大進学者(日能研換算)
 さて、③Aと③Bは①表のOBを京大・阪大に進んだ6人(③A)と、それ以外の国公立大に進んだ7人(③B)に分けたものです。
 ②の表は再録で、I社と日能研の偏差値の比較(受験者の学力レベルのちがい)です。③A・③BにはOB諸君の六年生時のI社模擬テスト4科目合計の平均偏差値を日能研偏差値に比定し数値を反映させました。


 なお、ここでお断りしておきますが、説明に日能研の偏差値を取りあげるのは、全国レベルでの判断という意図のもとです。他意はありませんので、関係者の方はご理解ください。 また、厳密に言えば、OB諸君が在籍当時の各年度の偏差値と2012年度受験用の偏差値をまったく同一視するわけにはいきませんが、その後の偏差値の推移を見る限り、目安になると思います。
 ごらんのように(③A)、団からOB教室を経て京大・阪大へ進んだ子は6人です。その6人の六年生時偏差値を日能研の偏差値に直すと全員50以下です。彼らが小学六年生時、日能研の受験学力評価では平均(50)か、平均以下だったということがわかりますつまり、小学生時の日能研偏差値では平均以下と思われる子が6人とも、高校を卒業するころになると、京大や阪大に合格する力が身についたわけです

 もう一つ注目していただきたいのは①の右端の年数です。これは彼らが入団してから卒業するまで、小学生時と中学進学以降の団在籍年数の合計です。
 印は予備校受講などしないで進学先の学校の指導だけで合格した諸君です。京大・阪大合格を「自学」で果たしたわけです。「学体力」の充実です。(ちなみに、在籍7年以上で大学受験を終えたOBは9人ですが、京大2人・阪大3人・神戸大・広島大と国立大に7人合格し、後1人は大阪市立大学《残り1名は不明》に進学しました。)

 小学校受験から受験勉強一筋に邁進し、偏差値70を超えて超難関中学に入った子で「自学」で京大や阪大に合格できた子が何人いるか。できれば、その割合を知りたいものだと思います。
 社会で、あるいは就職しても「役に立たない子が増えた」といわれるのは、「大学受験まで」だれかに頼らないといけないような、「他人頼りの学習スタイルから抜け出せなくなった環境が大きく影響しているはずだ」とぼくは思います。
 つまり、「自ら学習を進める」という「基本的な力」が身についていないまま大学に進学したということです。自立して計画を立てたり、自ら課業を進めたりという経験がなければ一人前に仕事を進めることはできません
 これまでの話で「超難関中学にすすむことだけを目標にしてはいけない」ということをよく理解していただけたのではないでしょうか。ほんとうにたいせつなことは、「自ら学びを進める力」すなわち「学体力が育ったかどうか」ということなのです。
 さて、京大・阪大に進んだ子以外でも、OB教室を経た諸君がすばらしい成長を遂げています。次週は「偏差値39から神戸大・札幌医大」です。


「学体力」は偏差値を超克する②

2013年09月14日 | 学ぶ

K君の選択―医学部学士試験
 (本稿の写真はすべて、現在までの団員諸君の「やんちゃ坊主振り」を紹介しています。こんな遊びを毎回重ねながら学んでいます)

 前回は「学力」を築きあげるためにもっとも必要なもの、ほんとうにたいせつなものは何か?「中学受験時の難関中学合格力や一時的な偏差値の高さでは決してない」ということをお伝えしました。

 それでは団が目指している指導法では、子どもたちはどう育つか? 順調に育ってくれたK君のその後です。
 次はK君から依頼を受けた志望大学あての学士入学推薦書です。
 京大大学院まですすんだ経歴から考えれば、たいせつな入学願書に同封する推薦書に名を連ねるべき、もっとふさわしい人たちがたくさんいるはずです。ところが、大阪の片隅でちっぽけな個人塾を開いているぼくに依頼してくれました。身に余る光栄で感激しました。
K君との小さいころからのやりとりを思い出しながらつづったのが左記です。「できるだけ、彼の等身大を正確に」と考えながら記しました。

推薦する理由
 現職における臨床現場での経験を通じて、社会と人間の一生における医師という存在の責務の重要性を再確認し、その責務を担いたいという熱意と責任感、また新薬の開発経験・医療現場を実地に見聞し、よりいっそう医学の発展に貢献していきたいという本人の強い意志をうけて、この者を推薦するに至った。

 大学合格時、私立の進学校で学んだ経験を振り返り、「先生、同級生にはぼくより優秀な人がたくさんいたけど、ぼくは努力ではだれにも負けなかった」とキラキラした目で報告してくれたことが忘れられない。
 変革の時を迎えなければならないことがだれの目にも明らかな社会や国の現状を思うとき、その変革を可能にするためのパワーと資質をもっている希有な若者である。
 日々仕事に従事しながら自らの思いと願いを実現させようとする強い意志と努力、また自己研鑽を忘れない日ごろの行動、苦しんでいる人・こまっている人を見過ごすことができない優しさは医師として、また医療に携わるものとして、この上なくふさわしい適性と資質であると信じる。

人格・性行
 小学生時代から課題の提出の期限はもちろん、指導や指摘に対しても忠実に教えを守り、努力と精進を重ねつづけてくれている、大きな可能性を秘めた存在である。現在の知的レベルもその賜であろう。

 社会行動や団体活動の中では決して自己を主張し過ぎることはなく、周囲の意見を柔軟に取り入れながら協調していくことができる。一方で、考えぬかれた自らの意見や主張もしっかり確立しており、理解した上で納得しなければ自説を曲げないという強さも備えている。

 今の若者の多くは「自分に甘く他人にきびしく」が通り相場であるが、自身の行動に対しては、彼は曖昧さや妥協を一切許さない。反面、小学生時代の課外学習や合宿での指導体験以来、困っている人や苦しんでいる人に対しては、だれよりも思いやりが深く、優しい性格であることも確認済みである。

学業・研究の状況など

 学業にも、妥協や曖昧さを好まないのはもちろんである。単純に暗記に終わるのではなく、解答に行き着く過程を厳密にたどり、事象の真理をも精査に追求する姿勢は特筆ものである。難解な問題を解決しようとする執念および集中力も申し分ない。学習や研究することの意味、学ぶ面白さ・学ぶ喜びが身についた上での学習意欲や知的探究心は、これから学ぶ医学にも十分発揮されることは疑いない。

その他
 学生時代には部活動にも精力的に取り組み、文武両道を心掛けていたと聞いている。特に大学生活においては、所属する体育会ヨット部で部長を務め上げ、チームを十数年ぶりに全国大会へと導いた実績もあり、立派なキャプテンシーも兼ね備えていると考えられる。
 以上、当人の資質・能力等を客観的かつ冷静に判断して、将来日本のみならず、すぐれた医師としてグローバルに活躍できる人材であると期待している。

「学体力」をともなわない「受験合格!」。その勉強に未来はあるのか?
 もう、おわかりだと思います。

 

 彼は京都大学大学院まで進んだのですが、専攻は保健学科でした。迎えられた治験会社で新薬開発のリサーチに現役の医師と臨床現場に同行するなかで、さまざまな疑念や思いを抱き、問題点に目覚めたのでしょう。そこで選んだのが医学の道でした。
 26才になっていました。経済面のこともあり、勤務しながらの勉強です。しかし、さすがの彼もそれでは学習時間が十分とれず、昨年受験した学校すべてで失敗しました。強さはそこからです。
 会社を退職し一年間を期限と決め、勉強に邁進しました。背水の陣。自分の人生を本当に意味のあるものにしたいという信念と努力。そして、今年。昨年不合格だった国立大学の学士入学試験をすべてクリアしました。

 子どもたちみんなに身につけてほしいと願っている「学体力」の成就を体現してくれたK君。今はぼくが元気と大きな夢をもらっています。
 これを読んでいただいたみなさんにおたずねしたいのです。
 中学入学時の偏差値や難関中学合格という目標。「学体力」の育成をともなわない高い偏差値と受験「合格」勉強。はたして意味をもっていたでしょうか? 
 是非、子どもたちの本当の力を、そして無限の可能性を信じて指導してください。育ててください。キーポイントは偏差値でも、難関中学でもありません。「環覚」を養うこと、そして「学体力」を育てることです。些細な偏差値の上下や受験のテクニックの押しつけばかりで、子どもたちを、どうか「つぶさないように」してください。


「学体力」は偏差値を超克する①

2013年09月07日 | 学ぶ

子どもたちはどう育ったか? 
 今までOB諸君の成績は紹介しました。そして、今シリーズは「学体力」を考えてきました。

 それでは、「学体力」が育つということはどういうことか? この稿のまとめとして、団で育ってくれた「医学生」を紹介します。「学体力」の意味やたいせつさ・団の指導法をさらに理解していただけると思います。
 OB教室を経た諸君はみんなすばらしい青年に育ってくれているのですが、多くが成人しており、プライバシーにも関わってくるので、今まで詳しく紹介できませんでした。今回は特別に許可を得て、理想を体現してくれている一人、京大を出て大学院に進んだKくんの話を紹介します。

京大院卒OB・K君の小学生時代
 K君は、二年間の準備期間後正式に開塾し、学習探偵団として指導を始めた一期生です。四年生からの入団で、小柄だったのですが、前向きで明るく、輝く瞳が印象的でした。負けん気も真面目さも人一倍でした。

 別掲は、まだパソコンを知らずキャノンのワープロで作成していた(!)、K君の5年生から小学校卒業まで二年間の団オリジナル月例テスト「学力コンクール」の成績です。
 入団後約半年の第一回の成績が国語2点(平均26点)・算数18点(平均37点)。二科目合計で20点。満点はもちろんどちらも100点です。
 団の学力コンクールは公立小学校のテストレベルよりかなり難易度が高く、各五十点を得点すると、十分私立中学上位校への進学が可能です。しかし、いくら初回とはいえ、K君の得点は、決してよい点とは言えません。4~5名のクラスでしたが、たしかビリから2番目の成績だったと記憶しています。

 二つ目の折れ線グラフは、近畿地区の子どもたちがよく受験するI社の模擬テストのK君の偏差値推移(5~6年生)です。
 偏差値の数値は受験者の母集団レベルにより大きく変動します。つまり、同じ受験環境でも受験者全体のレベルが高ければ低くなるし、全体レベルが低ければ高くなります。
 I社は小規模の学習塾に通っている子や個人での受験者も多く、大手の中学受験生の全国レベルでの模擬試験と比べれば偏差値はかなり高く出ます。つまり全国規模の大手の受験塾や業者が導き出す私立中学合否判定偏差値も、I社ではかなり高く出ることになります。 わかりやすいように、受験塾の大手「日能研」の偏差値とI社偏差値を比較した表も紹介します(いずれも2012年受験用から)。

 たとえば、表の★印、清風中学理数科の偏差値はI社では58ですが、日能研では48。10点低く、偏差値では50が平均位ですから日能研の模擬テストを受けた母集団のなかでは平均以下の学力ということになります。

学体力は偏差値を超克する
 それを前提にもう一度K君の模擬テスト偏差値推移をよく見てください。
 5年生の第三回に初めて受験したとき、4科のI社偏差値が40で、国語・算数の2科で43です。全国レベルで判断できる日能研の現在の偏差値から類推すれば39相当です。
 現在と当時の偏差値は多少異なりますが、それでも全国の「優秀な」私立中学受験生から見れば、受験の競争相手としては歯牙にもかけないレベルでしょう。数字だけを考えればそうなります。京大大学院に進んだK君の学力レベルは、偏差値からすれば「こんなもの」でした。

 その後、グラフのように努力と真面目さによって偏差値は順調に上昇し、志望中学の偏差値(60)に近くなります。しかし、その値も日能研では推定50以下です。つまり、日能研の模擬テスト受験生の中位に至りません。彼は当初のこういう成績から飛躍的に学力を上げ、京大進学を果たし、大学院まで進みました。
 中学受験生を抱え、受験塾のテスト結果や成績に一喜一憂する日々を送っているお母さん・お父さん方には、きっと「想像をこえる」成長だと思います。中学受験や高校受験に目の色を変えるのも、こと受験だけを考えれば、目的は大学進学のためではないですか? K君の成長が意味していることは何か? 
 優秀な学力を導くのは小学生時の成績ではないのです。70を超える偏差値でもありません。それにともなうべきものが欠かせません。「学体力」です

 「学んでいく条件」がきちんと整えば、つまり、学習の基本・学ぶことの大切さ・学ぶことの意味を納得し、学ぶおもしろさがわかること―つまり「学体力」が身につけば、難関大学合格も容易だということです。そして、その過程で整った「学んでいく条件」は受験のみで終わらず、一生友とすべき「学習」を身近にもしてくれます
 「一時期」の偏差値がいくら高かろうと、たとえ、小学校の時点で70を超える偏差値であったとしても、決して将来にわたっての学力を保証するものではありません。能力を測れるものではありません。
 小学生時は偏差値が低くても、次第に身についた学体力は偏差値を「超克」します。子どもたちの可能性は無限です。それを一時期の偏差値を上げるために「無駄遣い」し、つぶさないことです
 ポイントになるのは受験時の偏差値ではなく、その時点で、先述の「学んでいく条件を整えられたか」「学体力が身についたかどうか」という点です
 今回の冒頭で、「医学生」ということばを使いました。次回はそれについて紹介します。学体力についての理解をさらに深めていただけると思います。