『子供たちにとっての本当の教科書とは何か』 ★学習探偵団の挑戦★

生きているとは学んでいること、環覚と学体力を育てることの大切さ、「今様寺子屋」を実践、フォアグラ受験塾の弊害

難関大学合格にフォアグラ指導や缶詰授業は必要か? 7

2013年03月30日 | 学ぶ

課題学習への提言
 ここで、ぼくが日ごろから疑問に思っている、学校や私立進学校の課題学習の問題点について少し触れます。まず、小学校の漢字学習帳(漢字ドリル)についてです。
 熟語の形ではなく、ひとつの漢字だけを何回かくり返し書くような体裁のものが、よく採用されています。しかし、たいていの場合、漢字は文脈の中で「熟語」の形で使います。この方法は漢字を最初に覚えるための便法なのかもしれませんが、熟語で使ってはじめて、漢字そのものがもっている意味が「体感」できるのではないでしょうか。

 ちなみに、団の課題演習は、必ず文の中で熟語で使われている問題集を使用します。子どもたちは、漢字を文脈の中での使われ方とともにノートに解答しているあいだに、意味と使い方を覚えていきます。単文中での使われ方の書き取りをする方が、「記述になれる」など、様々な意味において、はるかに効果的だと思います。
 さて、これは本題から少しはなれますが、中学校以上の課題(宿題)についても疑問をもっています。


 私立進学校(特に中・高)では日々の課題を問題集に直接書き込む形で提出する場合が数多くあるようです。しかし、術語や解答を「一度書き込ませるだけ」で、うまく記憶に定着することは考えられません。授業中に「ほとんど同じ板書をノートさせる」などの工夫をしていれば別ですが、「一度だけの演習」ではあまり意味がありません。記憶は「同一対象に対するくり返し」で効率よく定着します。

 

 

 たとえば参考書や教科書を何回もくり返し学習していると、記憶に残っているあるイラストから「答を思い出した」、「答えのヒントがつかめ、解答が導き出せた」というようなことがよくあります。また「学習回数を重ねる度合いによって、学習内容相互の関連が生まれ、新しい問題でも総合判断で正解できる」ということもよくあります。
 生徒のことをほんとうに考えるのであれば、「ノートを使って何回もくり返すという方法」一見手間がかかる「古典的な」方法に見えますが、その方がより効果的で効率的な方法だと考えます。
 実施に際して多少の障害や抵抗があり、またチェックする際の煩雑さがあったとしても、ノートを使って複数回くり返し提出させる方が生徒のためです。

 

 

漢字学習と計算演習のたいせつさ
 さて、本題に戻ります。団では先の要領で四年生から計算演習と漢字の習得を日々の課題にしています。その理由です。
 ちょっと写真をご覧ください。これは小学生用の科学啓蒙書(「おもしろ理科こばなし」宮内主斗編著 星の環会)の一ページです。
 四年生以上で習う漢字を●で隠してみましたが、「本を読んでいるとき見慣れない漢字を見ている感じは●を見るのにやや近い」のではないでしょうか。
 ふりがなが振ってあっても、「読解のポイントになる熟語が理解しづらく読みにくいこと」、「意味が分かりにくく、嫌になるだろうこと」がよく分かると思います。
 「うちの子は本を読まない」という話をよく聞きますが、本を読むには漢字になじみがなければなりません。漢字が苦手だと「読むことができません」。「本を読む・読まない」という以前に、例のように、「漢字になじみがないと本が読めない」のです。
 ふつうは「本を読むから漢字を覚えるのでは」と考える人が多いと思いますが、実は逆に、「漢字が分からないから本を読むようにもなれない、したがって、さらに漢字が分からなくなる」のではないかと思っています。読書習慣を身につけるためにも漢字はたいせつです。

 そして、やはり読むことができないと、どの科目の勉強もできるようにはなりません。「漢字の習得は早い時期ほど、そして習得量が多いほど、学習を有利に進めることができる」と考えています。
 算数の計算演習も、九九ができないと、かけ算はもちろん、わり算にも大きな影響が出ます。「意識せずとも数字が頭の中で動く状態」が理想です。できるようになるには練習しかありません。計算できず、漢字がわからないと考えていくことができません。考えていけなければ学習は決しておもしろくなりません。四年生から漢字と計算の宿題を出していくのはこういう理由です。

 

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難関大学合格にフォアグラ指導や缶詰授業は必要か? 6

2013年03月23日 | 学ぶ

わかることはおもしろいことなんだ
 もうひとつ、子どもたちに、ぜひ伝えておくべきは、「学ぶことによって、学ぶ面白さが変化していくこと」です。「学ばないと、学ぶことの面白さがわかるようにならないこと」です。
 たとえば課外学習で森に入ったときなどは、「ものごと(事象)を知っている場合と知らない場合で、学習のおもしろさがどう変わるか」を考えさせるチャンスです。

 

 野外、森の中でわき出している小さな泉を見たとき、教室で習った知識を思い出し、「降った雨が何十年・何百年の時間をかけてわき出す、そしてこれらの細い流れが集まって川をつくり、その川が生きものを養い、人を潤し、地形を変え・・・そうか、川はここからはじまるンや、そして海に流れ込むンや、そして蒸発し・・・」と「想像力がはたらき、イメージできる」のと、「ただの水たまりとしか見られない」のとでは「考えることの面白さや広がり」は比較になりません。そのことを伝えます。

 

 


 「同じ『体験』をしても、いろいろなことを知っている方がおもしろい」ということです。「教科内容と自然体験の中での事象との出会い、そのたいせつなつながりを子どもたちに明らかにすること」が、特に腕白ゼミの「学習周辺の知識云々」の指導目標です。これも環覚の育成です。
 将来の発展が見込める学習は、「体験と(教科)学習のどちらもが螺旋状に絡み合う学習」―Field work Studyだと信じています。そうした学習がやがて「ジャックの豆の木」のように天高く成長していくことをいつも夢見ています。
 教科学習を知らなければイメージを膨らませる材料がありません。また体験がなければ、ちゃんとイメージできません。「何もわからないまま見ただけ」あるいは「本で読んだだけで実物を見たこともない」。そうなります。
 どちらか一方だけで十分であれば、「ルールも知らず、むやみにボールを投げたり蹴ったり、教則本を読むだけでも、一流のサッカー選手や野球選手になれる」ことになります。そんな馬鹿なことはないはずです。

 

 

 こうした比較を考えてみれば、「教科書や教室でしか知らない学習」と「豊かな野外体験をともなっている学習」との間には、やがて大きな差ができてしまうであろうことが想像できます。
 小学校卒業後の団の子どもたちの成長力の秘密はそのあたりにあると信じています。こういう視点で見れば、知識のボリュームをあてにする「フォアグラ指導」は、「頭でっかちで両手・両足をもぎ取られた学習」に見えてきませんか。
 宿題は、ただ「宿題」ではありません。学習習慣を身につけること、苦手を克服すること、確実に覚えることなど、それぞれにとって、たいせつな意味をもっています。面倒くさがらないで、保護者自らその意味を考え、それを伝えてあげましょう。
 こうして、小さいころから学習することの意味が納得でき、学習することで得られるおもしろさがわかれば、適量の宿題であれば、それほど苦にならなくなります。それが「学体力」が身についたという状態です。完璧とはいきませんが、それなりに子どもたちが納得しているのとしていないのとでは、以後の学習効果は大きくちがってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

課題学習(宿題)についてー四年生以降の宿題
 団のそれぞれの課程(クラス)の課題については次の通りです。
 基礎課程(四年生以上)以上になってはじめて日曜日を除いて日々の宿題が出ます。さて、宿題内容です。まず、漢字と計算練習の徹底です。
 四年生は、計算問題と漢字練習が一冊になった市販の問題集(四年生用)の各1ページ(計算演習は一回・一日八題・漢字は同じく十題)分をノートに清書して解答すること、さらに必ず「自分で答合わせをしていくように指導」します。「まちがいの確認」のたいせつさです。
 

この問題集は各学年とも四十回で一巡します。それを最低三回くり返すようにしています。一巡だけでは習熟できません。漢字と計算演習をていねいにノートに解答しても、慣れれば二十分で終わる量です。
 充実課程(五年生)は到達度によって、個人別に課題の内容やボリュームを変更します。受験しない子であれば四年生と同じ体裁の問題集の五年生用だけを課す場合もあります。また、受験が目標であれば、国語・算数・理科の単元別の見開きになっている基本問題集を利用します。
 見開き2ページ(問題は1ページのみ)を一日分として三科目、もしくは社会もふくめ四科目が課題です。後者の場合でも、慣れれば各十五分、約一時間で終わります。それぞれ三クールで次の段階に進みますが、学力と学習習慣の定着具合を見て次の課題を指示します。

 


 六年生(発展課程)になると、原則四科目、充実課程と同レベルの問題集を利用して演習していきます。受験目標がある場合は、志望校レベルによってその後の課題も指示しますが、あわせて一時間半を超える量は出さないようにしています。あくまで「基本の徹底と学習習慣が定着するべく適切な量」で十分です。

 

 

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難関大学合格にフォアグラ指導や缶詰授業は必要か? 5

2013年03月16日 | 学ぶ


宿題を課す前に

 日々の課題(宿題)についての考え方を紹介します。
 小学校時代に家庭学習の習慣が身につかなかった子は、中学進学後も試験前にならないと「勉強」しないという子が多いはずです。逆に、中学入試だけを目標に「フォアグラ指導」のあげく、毎日厖大な宿題量をこなし、「学ぶ面白さ」がわからなかった子は、ストレス回避と合格後の安心感で、適当に「さぼってしまう」のがよくあるパターンです。規則的な学習習慣をできるだけ早く身につけましょう。

 試験前学習だけでは、飛び抜けた才能がない限り、先々の成果は期待できません。記憶は日々継続的にくり返し演習することで定着するからです。厖大な学習量を数日で定着させることはできません。学習は積み重ねです。
 さらに中学校に進学すれば、毎日少なくとも一時間や一時間半の家庭学習が必要となります。そして、ちゃんと理解して前に進もうとすれば、義務的に「こなす」学習姿勢ではなく、きちんとていねいに読み、考える癖・態度が備わっていなければなりません。
 「一人で考えながら学習できる習慣」の確立です。「学体力」です。団の宿題はその準備です。そして、そのための宿題は適量がベストです。
 入団は三年生からですが、入団初年度は宿題は出しません。腕白ゼミ(三年生)の紹介案内で「将来のための学習周辺云々」という表現をしていますが、それは次のような指導をすることです。

学ぶことの意味や必要性・たいせつさをきちんと伝えること
 三年生の間は、「学習することのたいせつさ・学習することの意味」をくり返し話します。
 これは授業中だけではなく、雑談のときにも意識的に話題にします。「学習することの意味」を考えさせるような話題を提供するのです。
 入団してくれる子がすべて、指導の結果、「学習すること」がおもしろくなり、学ぶことに夢中になれればいいのですが、地域的条件・家庭環境など、さまざまな条件が整わない限り、そううまくはいきません。
 ただ「勉強しなさい」と叱られるだけではスムーズに学習に向かうことができません。子どもたちには「勉強する意味が分からないからです」。

 

 ぼくたちおとなも、意味の分からないことを「ともかくやってみろ」と言われるだけでやり続けられる人はどれだけいるでしょう? そんな状態のまま、ずっとつづけられるものではありません。その障壁を乗り越えるためには、学習することの意味が「腑に落ちる」ことが必要です。
 そのためには小さいころから、「学ぶこと・考えることのたいせつさ・必要性」などをきちんと伝えておきましょう。はっきりとは分からないまでも、それなりに理解してはじめて学習に向かう姿勢が生まれます。

 

 団がおこなっている三年生での指導例を挙げます。
 まず、「脳のたいせつさ」の紹介です。やさしく「脳の話」をします。育成環境の差によるラットの脳の成長の大きなちがいや神経細胞とシナプスのようすなど、自らの脳にも興味をもてるような話題をとりあげます。つまり、学習や学習環境によって脳が大きく変化することを伝えておきます。
 記憶のしくみも紹介します。記憶の過程で、シナプスが強化されることやシナプスのつなぎ替えがおこなわれることも話します。小さいなりにも、子どもたちは学習すること・脳を使うことのたいせつさを考えるようになります。
 次も時々指導する方法です。
 写真はDORLING KINDERSLEYのULTIMATE VISUAL DICTIONARYです。いろいろな身のまわりの物の「成り立ちとしくみ」がビジュアルに、究めて詳しく、子どもたちの知的好奇心をそそる体裁になっています。なお、今は他にも類似の本が出ています。

 

 「根」の解説部分(写真は表紙と同書132~133ページ)を見せながら、「外国の子どもたちも、同じような勉強をしているんだよ」、「根毛はRoot hair だ、Rootは根、hairは毛、そのままだね」と説明すると、眼がキラキラします。これだけで「勉強が少し身近に」なります。世界の子どもたちも頑張っているのですから。
 折を見て「将来の可能性」と「学習すること」の密な結びつきを伝えることもあります。また、学力や知力がともなうにつれ、多くの場合、「ものごとを見通せる力」や「俯瞰できる力」が身についていくこと、つまり「わかることが増えていくこと」も話します。
 これらをつづけていくことで、学習する(宿題をする)ことの「前提」をそれなりに納得していきます。「宿題が先ではなく、学ぶことのたいせつさや意味」が先にあるはずです。小さいころ、それを伝えるようにしたいのです。課外学習や「立体授業」の取り組みの中でも「学習すること」のたいせつさを伝えていくことを欠かしません。

  

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難関大学合格にフォアグラ指導や缶詰授業は必要か? 4

2013年03月09日 | 学ぶ


 今回はテキストなど、指導内容と指導方法についてです。

 

(3)指導テキストと立体授業等

 


 教室での授業では、市販のテキストと団で編集したテキストを併用しますが、課外学習(立体授業)で使うオリジナルテキストや、指導内容に応じて、様々な本(一般書籍や中・高・大学生用の教科書等もあります)からのコピープリントも柔軟に使っていきます。「知識の細切れ」を詰め込むのではなく、習得した知識を、頭の中でできるだけ立体的に構成していって欲しいからです。

 

 

 また、指導する上で常に心がけているのは、くり返しになりますが、自然(体験)と学習内容・学習対象のつながりを、子どもたちに十分意識させることです。それによって学習や日常生活での興味や好奇心の広がりがまったく変わってきます。
 好奇心や興味の広がりのちがいによって情報をとらえるアンテナの方向や角度が変わります。「自ら学べる脳」はその先にできあがると信じています。
 一方で、米づくりや渓流教室・螢狩り・クワガタ探し・でっかい筍掘りなど「自然の中にはいること、自然に浸ること」、小さいころぼくたちが遊んだような体験を思い出しながらの「追体験」の重視です。
 「光を感じ、風を感じ、生きものに触れ」、の自然に浸る子どもらしい生活が、学習の真の基盤になることがOB諸君の成長ぶりからも確信できました。「様々な体験をもとにしての室内での学習、さらに体験へ」というフィードバックと「やりとりの総体」が「立体授業」展開のポリシーです。

 

 なお、団には指導時間についての独特の考え方があります。「定時間授業が当然」という考え方が一般的です。否定的意見があるのを承知の上で、団では時と場合に応じて(特に小さいころは)、臨機応変に指導時間の切り上げや延長をおこないます。課外学習も集合は定時ですが、解散時刻は当日の活動(遊び・指導)の都合で柔軟に対応しています。
 ぼくは授業にかなりの集中力を要求しますし、目が届く人数ですから、雰囲気を見て集中力が切れたら、ほどよい時間(四十分以上ですが)で切り上げます。逆に、四年生の終わりくらいになり、子どもたちが「前向きで」、乗ってくれば、七十分以上でもつづけることもよくあります。
 もちろんたびたびではありませんが、相手は子どもたちです。子どもたちは「何時から何時まで」と給料をもらっているサラリーマンやパート店員ではありません。学習は時間通り働いて収入を稼ぐパート仕事やアルバイトではありません。

 

 定時間消化したからといって、それだけ学習が進むわけではありません。中身の充実の程度が問題です。「会社で定時まで働いている人がすべて能力が高く、それに見合う実績をあげているとは限らない」ことと同じです。

 あくまでも、「その日の学習内容がいかに浸透したか、身につけられたか」という判断が基準で、面白さや興味の持続の方をできるだけ大切にしたいと考えています、学習は「我苦修」ではありません。
 下記は、毎月の到達度を調べる学力コンクールの国語のオリジナル問題の問題文です。こうした問題だけではもちろんありませんが、団の国語指導の特色の一つになっていると思いますので、主に記述式の設問をピックアップして紹介します。スポーツニッポンの記事を借用した問題など、子どもたちがどう答えてくれるか、ぼくが興味津々でした。
なお、来週は、日々の課題(宿題)についてお伝えします。

  

 

  

 

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難関大学合格にフォアグラ指導や缶詰授業は必要か? 3

2013年03月02日 | 学ぶ


 今週は指導クラス・指導時間等について紹介します。
 東大へはもちろん、京大や阪大に、ただ行かせるためだけに、「睡眠時間を削らなければならないような課題学習の山」や「小学校を休ませておこなう学習指導」が必要かどうか判断してください。
 なお、先に述べました難関大学へ進んだ十三名の中には女子も三名含まれていることをお知らせしておきます

 

 

(2) 指導時間と指導の基本
 各クラスの指導時間ですが、腕白ゼミ(原則三年生)は一日二時間で月四回。国語・算数を各四十分、その間四十分は、主に室外です。腕白に限らず、クラスは単一クラスですから入団当時は学力も様々です。
 最初は大変ですが、少人数ですから工夫をすればそれぞれ対応することは可能ですし、やがて一斉授業できるように平均化してくるのがふつうです。
 一緒に学習すれば、学力のちがう子同士もそれぞれ学ぶべきことが出てきます。努力する必要性がわかり、がまんすること、負けん気も身についていきます。子どもに対する教育は全人的な指導に関わらざるを得ません。そういう面でも単一クラスでの指導には大きな意味があります。

 

 腕白ゼミの間は、まず「学んでいることが自らの周辺にある事象であること」が感じられる指導、野外での活動を通じての「環覚」の育成が大きな眼目です。
 理由は後日展望しますが、最近の子どもたちは特に(実は教室・学校での学習の従来からの大きな問題点だと考えているのですが)、自らの学習対象が、身近にあるもの、手の届くもの、欠かせないものである等の認識が希薄です。それでは学習に親しみが湧きません。

 

 環覚育成指導の一例を挙げれば、近くの公園や神社で自然観察やデジカメで「気になる対象を撮影する」ことがあります。デジカメでの撮影意図は、まず「周りのおもしろいものに目を向けるという習慣」を身につけることです。季節や時期の環境の変化に敏感になる、つまり「環覚」の育成です。
 何気なく通り過ぎているが、傍らにはおもしろいものがたくさんあることに気づくこと、そういう意識を育む試みです。それらがなければ、おもしろいもの、究めたいことは見つかりません。学習はそこからがスタートです。そうでなければ、科学も始まりません。
 ときにはカブトムシの世話や植木の手入れ・水やり、全部の時間を工作に使ったり、作業にあてることもあります。これらもすべて学習や教育に関係してきます。
 作業や工作での指導は企画とノウハウ如何によってその価値が決まると考えています。
 たとえば、「植木の水やり」では光合成や蒸散についての話だけではなく、虹をつくり、観察し、光や色や大気の話にすすむこともできるわけです。今、科学の本がたくさん出版されていますし、インターネットの検索もできますので、材料や情報には事欠きません。
 次に、授業中はもちろん、これらの作業や活動中の子どもたちの「振る舞い」から、「育てられ方」をよく見極め、注意すべきはきちんと注意していきます。中でも最近特に目につくのは、がまんをすることを教えられていない子が多いことです。ときにはがまんしなければならないこともあることは、学ぶためだけに限らず、成人後の社会生活でも外せない基本的なルールです。
 さて、四年生になれば、原則曜日は決まっていますが、月間十回指導の基礎課程に進級します。一回二時間・五十分授業です。
 指導科目は国語・算数・理科の三科目。「国語・算数」、「理科・算数」の組み合わせで年間スケジュールの割り振りをします。

 


 間に気持ちの切り替え・リラックスタイムもかねて二十分間の休憩を挟みます。子どもたちは休憩の間、それぞれ教室に備えてある本(学習漫画や百科事典など)を読んだり、トランプなどをして過ごします。ちなみに最近は「スピード」がはやりです。
 五年生は充実課程、六年は発展課程で、それぞれ指導科目は国語・算数・理科・社会の四科目になります。五年生は、基礎と同じく五十分授業二回の一日二時間で休憩は四年生と同じ。回数は月十三回です。
 六年生になると、六十分授業でやはり二十分の休憩を挟み、計二時間二十分。国語・算数、理科・社会の組み合わせを基本にスケジュールを組みます。回数は月間十六回に増えます。
 ふだんの授業はこれだけです。学校の休みの間には講習もありますが、講習受講は原則、発展課程だけで(希望者は別ですが)、長期間の夏期講習も間に休みの日を挟んだ十分余裕のある指導体制でおこないます。
 こうした授業時間で指導した結果が左記です。テストによる入塾選抜はまったく行わず、無試験で入るふつうの小学生たちを指導しての実績です。日曜講習がある場合は別ですが、入試前も授業は平常通りで、フォアグラ指導や缶詰授業など、まったく必要ありません。

 

 

 さて、受験結果は結果として、ぼくは中学受験を最終目的に指導しているわけではありません。その後の学習の進み方を考慮した場合、小学校卒業時点で、中学受験にも十分対応できる程度の学力、また中学入試問題程度の問題なら「考える」・「追い詰める」という学習姿勢が身についている方が、より望ましいという考えのもとです。さて、来週は指導内容について少し紹介します。

 

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