「月の軌道がずれると地球の潮汐関係に影響が出ること
が考えられます。その結果海流に変化が生じ、さらに気
候に影響する可能性があると考えられます。そこで彗星
「Ochou」を何とか出来ないかという問題が一つ、何と
かというのは軌道をずらすとか破壊して質量の小さなも
のにするかと言うことです。しかしこれらはリスクが大
きく実行が躊躇されます。が綿密な計算をしてシミュレ
ーションを重ねればどれくらいの確率で可能かというこ
とが明らかになればと考えています。そこでお集まり頂
いた皆さんにはアイデアを出して頂き計画を立てて頂き
たいのです。よろしくお願いします。いろいろ質問があ
るでしょうが丁度昼食の時刻が来たようです。午前中の
話はこれまでにして食道へご案内しますのでおくつろぎ
下さい」
曽根は初めて会った人たちとも直ぐにうち解けて今度の
ことを話し合った。そのために食事は何を食べたか解らな
いうちに終わってしまった。
アイデアを出し合いそれを検討し20日が過ぎる頃によう
やく一つの案が決定された。日本で検討した「Ochou」の
軌道を変更する案は早速、地球科学アカデミーへ送られた。
地球科学アカデミーは各国からの提案について専門家会
議を開き慎重に検討した結果、日本の案を修正して実行さ
れることが決定された。
その頃「Ochou」は木星周辺を軌道を変えながら進んで
いた。SSATとルナー市の観測データと各地の観測所から
集められたデータを解析した結果、地球に向かっているこ
とが明らかになった。そのために国連と地球科学アカデミ
ーの名の下に「Ochou 」の軌道変更計画が実行に移され
ることになった。
この処置は報道規制されていたので一般人の知らない間
に実施された。ルナー市に臨時基地から発射されたロケッ
トは「Ochou」に向かって近づいていった。一般市民はよ
うやく明るさを増した「Ochou 」を夜毎見上げて話に花
を咲かせていた。
ロケットは「Ochou」に命中し目的を達成した。その後
「Ochou」は速度を上げながら太陽への軌道を突き進み衝
突した。太陽は衝突後少し時間をおいて大爆発した。そし
てスーパーフレアーを発生した。スーパーフレアーは水星
軌道まで達したが水星を飲み込むことなく落ち着いていっ。
スーパーフレアー爆発によって大量のヘリウム3が地球
方向に飛んできた。地球上ではコンピューターが大打撃を受
けたがそのことを予想して地中深く掘られた鉱山や炭鉱の
中に主要機器を移しておいたので1年もかからずに復旧す
ることが出来た。
ヘリウム3はヒマラヤ山脈などの高山地帯でも大量に採
掘できるようになった。地球上のエネルギー供給は今後数
千年は安定供給できることになった。
その結果、ルナー市の採掘現場は当分の間休業閉鎖され
た。その代わりに取りあえず観光基地として開発され、低
料金で所得の高低に関わらず初めは抽選で行くことが出来
るようになった。人々はこれを「Ochou」効果と呼ぶよう
になった。
「Ochou」効果によって、国連と地球科学アカデミー、
それに人権擁護団体や各宗教団体などが自分たちの利益を
優先することなく一致協力して人口漸減計画を実行するこ
とになった。人々は彗星「Ochou」の一生を無駄にするこ
となく平和な地球を築いていくことを誓い合った。
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